大家が入居者の家賃交渉に臨む際の注意点

大家が入居者の家賃交渉に臨む際の注意点

大家として賃貸物件を運営していると、決して避けられないのが家賃交渉です。基本的に賃貸物件の契約は2年間ですから、2年経過した時点で継続の意志があれば再契約を結ぶことになります。

契約中に家賃を下げてくれ、と言ってくる入居者はあまりいないのですが、契約更新の際に更新をする替わりに家賃を下げて欲しい、と言ってくる入居者は珍しくありません。

大家としてそんな時にはどういった行動を取れば自分が不利にならないのか、またこういった状況では応じる方が良いなどケースバイケースで大家として取るべき行動をお伝えします。

入居時の家賃交渉

入居時の家賃交渉は、いくつかそのエリアで物件を探していてその中である程度に目星をつけた後に、安く契約できないかとダメ元で言ってくる人が多いです。

そのような人は物件自体の条件は気に入っているので、断っても入居をする気は持っています。そのため2月や3月の繁忙期であれば断ったとしても、そのまま入居してくれることも多いです。

ただし前の入居者が5月などの中途半端な時期に退去をしてしまい、場合によっては年明けの繁忙期が来るまで、1年近く空き室が発生するようなケースもあります。そのような時は空き室リスクを考えればそのまま素直に家賃交渉に応じてしまったほうが良いでしょう。

例えば家賃が52,000円のマンションを持っていたとして、6月に空き室が出れば次の4月まで入居者が入る可能性が少ない、そうなると10ヶ月分、52万円もの収減になります。そこで2,000円値下げをしたとしても、260ヶ月住まれてようやくマイナスになる程度で、ほとんど痛手にはなりません。

こういった最終的な収支予測をした上で、家賃を値下げすることを検討してみましょう。

家賃の値引き交渉は注意

しかしむやみに家賃を値下げするのはやはり得策ではありません。もし過剰に値下げしてしまった場合にはそこで何年も住まわれてしまうことも考えられます。契約更新の際に見直して、明らかに周辺の相場と比較して家賃が低くなるようなことが決して無いように気をつけましょう。

それよりあくまで一時的な施策として家賃を下げる方法をも考えましょう。例えば年度の途中での契約でしたら、年度いっぱい、3月までの家賃を値下げするなどの状況にすれば、ずっと安い家賃の状態で長く住まれ続ける危険性もなくなります。

また相手にとっても決して悪くない話であり、メリットが大きいので、入居してくれる可能性もぐっと高くなります。 

敷金や礼金の値引き交渉を上手に行う

またもう一つの値下げの方法として、礼金や敷金を割安にすると行った方法も考えられます。礼金は純粋に大家の収入なので、減らすことは自腹を切ることに近いですが、空き室リスクを抱えるより安全性が高くなります。

さらに効果的なのが敷金の金額を少なくすることです。敷金はもともと修繕費を前もって預かっておくものであり、大家の収入になるわけではありません。

それでいて敷金2ヶ月分が初期費用として必要だと、収入の少ない人、貯金が少ない人にとっては大きな金銭的な負担として感じられるものです。

そこで敷金を1ヶ月どころか0ヶ月にするという手段を講じてみましょう。敷金を取らなくても、入居者は退去時に修繕費の支払の義務は発生します。結果的に原状回復に必要な費用を退去時に徴収できれば、大家としても問題はないわけです。

初期費用を抑えながらも、退去時にはしっかりと修繕費を負担してもらえれば、大家にとっては入居者を呼びこみやすく、かつしっかりと退去後には原状回復できるので、入口と出口の両方の段階でメリットを得られます。

このように家賃を直接少なくするのではなく、できるだけ入居者に対してお得感や、入居へのハードルを下げる方法を採っていきましょう。そうすれば手取の収入や支出を変えること無く、物件の経営をスムーズに行えるでしょう。

また家賃ではありませんが、鍵交換等を入居差変更時に行うことがあります。これも一度行うには2万円程度の費用がかかることが多く、入居者への義務とすると、負担感を入居者に与えてしまいます。

そこで鍵交換は入居者のオプションとして、自分で交換を行うかどうかを決めてもらいましょう。セキュリティをそれほど気にしない人ならば、鍵交換をしないで安く済む方がいいという人もいます。

もちろんアパートやマンション内盗難が起きれば、その物件自体の信用を下げることにもつながるので、他の面で防犯対策をするといった取り組みは忘れないようにしましょう。

更新時の家賃交渉

契約更新時に家賃交渉を持ちかけられるケースは多いです。その時はどのような対処をするのがベターでしょうか。

入居者との家賃交渉する際のポイント

最も多い更新時の家賃交渉ですが、相手がこれからも住んでくれることを前提にしていれば、家賃交渉に応じるのも悪い選択ではありません。何しろ一度空きが出ると、その負担は大家にとってばかにならないものがあります。

空き室期間係に1ヶ月だとしても、空き室期間の家賃収入源だけではなく、仲介手数料で1ヶ月、クリーニングや設備の好感など大家負担で行う分の支出、更には不動産屋に客付けのための広告費を支払わなければいけない時もあるでしょう。

これだけで3ヶ月分以上の出費は確実です。さらに季節によってはすぐに入居者が決まるとは限りませんから、更新のタイミングが年度半ばなどであればある程度の家賃交渉には応じても良いでしょう。もちろんせいぜい1000円、2000円等にしておくことも大切です。

同じアパートの中で入居者同士の会話で家賃に差額があることが発覚することも考えられますし、そうなると他の入居者も当然黙ってはいないでしょう。すべての部屋の家賃を一気に下げないといけない時もあります。

さらに『まとめて支払ってくれれば家賃を割引する』という選択肢もあります。まとまったお金を1年分など払ってくれるのであれば、大家はそのお金をもとに投資に回すなど、様々な活用をすることができます。交渉に応じられる人はあまりいませんが、場合によってはこのような提案をしてみても良いでしょう。

物件の募集情報が漏れるケース

家賃は基本的に物件の経年数に応じて下がっていくものです。10年前から住んでいる人はずっと5万円払ってくれているが、他の部屋を募集するときには4万円が一般的な相場なのでそうした、というケースは意外に多いです。

当然募集をかけるとインターネットの情報サイトにも掲載されて、だれでも家賃を確認できます。

万が一その家賃情報が、既存の入居者に知られてしまうおと、「私は5万払っているのに、今は4万だ、下げて欲しい」と思われることになるでしょう。場合によっては差額の返還と言ってくる人もいるかもしれません。

差額の返還に応じる必要はないですが、10年など長く住んでくれている人はその周辺で仕事をしているなど、これからも長く住んでくれる可能性の高い上客です。

そういった人には交渉された後での家賃値下げは悪手あり、相手の印象はよくありません。できれば契約のタイミングで少しずつ下げていったほうが、相手の印象も良く、これからも住み続けてくれることもあるでしょう。

家賃の値下げ交渉は、応じたほうがいい場合と、応じる必要のない時の2つに別れます。

不当に割合の高い値下げ、一部屋だけ極端になる値下げはやめたほうがいいですが、値下げをすることで最終的な収支が、よくなるのであれば空室を発生させるより、値下げで客付けをしたほうが良いことも多いです。

つまりはケースバイケースで状況を考えて、収支を重視するようにしましょう。また初期費用を下げるテクニックも使えるので、初期費用の内訳を分析し、後回しにできるもの、不要なものを削っていけば、家賃の直接的な値下げをせずに、相手にお得感を感じさせて入居してもらうこともできます。


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