駐車場経営の収益性に大きく関係する要因の1つが駐車料金です。これは月極駐車場、コインパーキングともに言える共通点となってくる最重要事項と言えるでしょう。
駐車料金の設定しだいで収益は大きく変わってくるので、駐車料金をいくらにするのかは駐車場経営を成功させる上で欠かせないピースとなってきます。そこで問題となってくるのが適正価格です。
駐車料金は何も安くすればいいというものではありません。安くしすぎると収益が低くなり、利益が上がりませんし、高ければほかの駐車場に利用者が逃げてしまい、これもまた経営が立ち行かなくなってしまいます。
駐車場経営を成功させるには、駐車料金の適正価格を知った上で利用者を増やすための集客対策を練る必要があります。そこで今回は駐車料金はどう設定すればいいのか、適正価格はどうなっているのかを解説していきます。
駐車場の料金設定方法
駐車料金は経営する駐車場が下記のどちらかによって、その料金設定方法が違ってきます。
- 月極駐車場
- コインパーキング
特にコインパーキングは時間帯に応じた詳細な料金設定が必要になってくるので、月極駐車場よりも細かい調整が必要になってきます。
月極駐車場の場合
月極駐車場とコインパーキングでは支払う料金に対する概念が違ってきます。コインパーキングはどこかに出かけた時の駐車に利用するだけですから、常時出費がかかるものではありません。しかし、月極駐車場は長期間に渡って借りる事になるので、毎月出費がかかる固定費となります。
年間いくらの出費となるのかは、家計を預かる者にとっては大きな関心事となってくるでしょう。少しでも安いところへと考えるのは当然で、周辺に安いところがあれば、それを知った利用者はそこへ流れてしまいます。
よって駐車場経営者は周辺の月極駐車場の料金設定がどうなっているのかをタイムリーに知ることを心がけ、周辺条件に合わせた料金設定を行う必要があります。
安くする分には問題はないでしょうが、高くする際にはそれだけのメリットがあるかを慎重に検討してください。本当に利用者が高い料金を支払ってもメリットを取りたいと思うものかどうかが重要なポイントとなってきます。
下記のような駐車場環境も料金設定には影響してきますが、それでも周辺の駐車場料金と比較して高いなと感じられるような料金設定では、利用者の維持や増加を期待することはできないでしょう。
- 舗装しているか
- 屋根があるか
- 室内か、屋外か
あまりに従来の料金設定にこだわると利用者の現象を招き、下記のような結果を生む原因となります。
- 空車率が高くなる
- 収益総額が低くなる
空車率が50%ともなれば、半額の駐車料金で貸しているのと同じ状態です。そう考えれば周辺の駐車場料金とのバランスを取ることがいかに重要なことであるかがお分かりいただけるかと思います。
コインパーキングの場合
コインパーキングも月極駐車場と同じく利用者を獲得するには、周辺との料金バランスが重要なポイントとなってきます。しかし、先程言ったように、支払う駐車料金に対する利用者の概念が違ってくる上、利用目的も多様なため、月極駐車場のように周辺とのバランスを考えただけの料金設定では満足のいく利用者の獲得はできません。
コインパーキングで利用者率を上げるための料金設定ポイントは下記の2点です。
- 時間単位は長めに、料金設定は高めに
- 上限料金は安く
それではこれらポイントが利用者アップにどう関係してくるのかを解説します。
時間単位は長めに、料金設定は高めに
平日昼間のコインパーキング利用者の大半がビジネスマンです。その目的が営業先との打ち合わせや商談となるため、コインパーキングの駐車料金は会社の経費によって賄われます。
そのため月極駐車場のように自分の懐が傷まないこともあって、多少の料金の違いは気にしない人が少なくありません。また、訪問先での滞在時間もはっきりとしないところがあるため、予定滞在時間よりも余裕を持った時間設定が好まれる傾向があります。
そこで料金設定時に意識して欲しいのが下記の2点です。
- 時間の区切りを多めにする
- 金額もその分高めにする
通常よく見るコインパーキングの時間設定の区切りは30分ですが、周辺のコインパーキングが30分200円という設定ならば、こちらは40分300円という設定にします。これが30分300円という設定ならば高いと思われて敬遠されてしまいますが、これならばそんな心理も働きません。100円くらいの違いは気にしないという人の方が多いでしょう。
この方法には回転率と収益性を上げる効果がある
この設定方法は、短時間利用者が多い地域ほど高い回転率と収益性を上げる効果を生み出します。周辺のコインパーキングが15分100円で、こちらは30分200円だとしましょう。利用者が15分間利用した際の売上はこちらの方が100円多いことになります。この100円が最終的には大きな収益差を生み出すことになります。
また、設定した区切り時間よりも利用時間が短い利用者が多い地域では、回転率が高くなることで、さらに収益性を上げることができます。極端な話になりますが、60分400円で設定して平均利用時間が15分だったとしましょう。しかも回転率100%で考えればそのコインパーキングの1台分の1時間あたりの売上は1,600円となり、設定した時間料金の4倍もの収益が見込めることになります。
この効果は短時間利用者が多い回転率の高い立地条件であることが必須となってきますが、平均利用時間よりも高めの時間設定にすることで収益性は確実に高くなってきます。時間の区切り合わせた料金設定を考えるようにしましょう。
上限料金は安く
コインパーキング利用時に上限料金を気にする人は長時間駐車が必要で、端から上限料金を支払う覚悟でいます。よって、コインパーキングを選ぶ際にはできるだけ上限料金の安いところをと考えています。
このような理由から長時間利用者を獲得したいのであれば、周辺のコインパーキングよりも上限料金を安く設定することをおすすめします。
しかし、コインパーキングは上限料金の利用者を多く獲得するよりも、さきほど解説したように短時間利用者を多く獲得して回転率を上げた方が高い収益を上げることができます。よって、立地条件によっては上限金利を設定しない方が収益性が高くなるケースが出てきます。
また駅や学校など来訪者が多いのに駐車場環境が十分でないところのコインパーキングでは、料金が高くても利便性を優先する利用者も少なくありません。長時間利用者に頼らざるを得ない立地環境であれば上限料金を安くすることが収益性を上げる手段となりますが、立地環境によっては上限料金を設定しない方が収益性が高くなるケースがあるというわけです。
地域別の駐車料金相場
駐車料金は全国一律ではありません。基本的には地価に応じてその料金設定は違ってきます。地方から出てきた人が東京の駐車料金の高さに驚くのは決して物価が高いという理由だけではなく、地価が高いことが原因の1つです。
それでは実際に駐車料金は地域によってどう違うのかを見ていくことにしましょう。
1. 東京
- 月極駐車場 31,000円
- コインパーキング 600円~1,200円
2. 大阪
- 月極駐車場 26,500円
- コインパーキング 600円~1,200円
3. 名古屋
- 月極駐車場 13,500円
- コインパーキング 300円~600円
4. 福岡
- 月極駐車場 11,800円
- コインパーキング 300円~600円
5. 札幌
- 月極駐車場 8,800円
- コインパーキング 400円~600円
※コインパーキングの駐車料金は平日日中の料金
以上が現在の各地域の駐車料金ですが、日本で一番地価が高いと言われる東京では月極駐車場の料金は30,000円を超えており、年間維持費だけで400,000円を超える高額料金となっています。またコインパーキングの1時間あたりの料金は全国平均が300円前後とされています。ここでも1時間1,000円を超える料金ですから、全国的に見ても駐車料金の高さは桁外れです。
これは日本でも100万人都市と呼ばれ、地方でも大都市に分類される名古屋、福岡、札幌の3倍近い料金であることからも、地価が駐車料金にどれだけ大きな景況を与えているのかお分かりいただけるでしょう。
料金を値上げする場合は?
駐車場経営で収益を上げるのに一番手っ取り早いのが駐車料金の値上げです。しかし、この方法は一長一短な面があり、駐車料金を値上げしたからといって確実に収益が上がるとは限りません。
料金値上げによって解約者が増え、新規の借り手が見つからず稼働率が下がってしまう可能性が考えられます。施設改修等で経費がかかった、固定資産税が上がったなど、どうしても値上げしなければならない理由があれば話は別ですが、収益拡大を狙っての料金値上げはリスクを伴うことになるので止めた方がいいでしょう。
どうしてもという際には周辺の駐車料金とのバランスに気をつけて、慎重に値上げを行うようにしましょう。余りにも突出しすぎた料金になれば、必ず周辺の安い駐車場へと利用者は流れていきます。上げるにしても周辺とのバランスを重視した料金設定を心がけるようにしてください。
またコインパーキングならば簡単に料金変更が行えますが、月極駐車場の場合には契約書に特記事項が記載されていなければ、基本的には値上げができるのは次回の契約更新時期になります。どういう契約内容となっているのかを再確認し、契約トラブルとならないよう注意することも必要です。
まとめ
駐車場経営で成功するためには、どれだけの利用者を確保できるかが最重要事項になってきます。そしてその利用者確保に大きく関係してくるのが駐車場の料金設定です。
利用者を確保するための料金設定は月極駐車場、コインパーキングで違ってきます。どちらのタイプにしても共通して言える重要ポイントは周辺駐車場との料金バランスです。今回解説したポイントをよく把握して、できるだけ多くの利用者を確保できる駐車場経営を目指しましょう。