
アパートやマンション投資を勧誘するサイトでは「自己資金0でも不動産投資を始められる!」と謳っているものが時々見受けられます。自己資金を用意せずに不労所得が得られるのですから、それが本当ならば始めてみたいという人もいるかもしれません。
しかし本当に自己資金を用意していなくても、不動産投資はできるのでしょうか。また危険性はないのでしょうか。気になるその点について詳しくお伝えします。
アパマン経営で必要な自己資金の目安
結論から言ってしまえば、
「頭金は用意しなくても不動産投資は始められる。しかし諸経費は用意しておかなければいけない」
ということになります。また「頭金はできるだけ用意しておいたほうが、後々のリスクを軽減できる」ということも言えます。
物件価格の何割が必要?
頭金0でも投資を始めることは可能ですが、さしあたり必要だといわれる一般的な頭金は物件価格の1割から2割です。
これは普通の住宅ローンでも同様となっており、頭金は用意できるだけ用意しておいたほうが良いことは間違いありません。頭金が多ければ以下のようなメリットが有ります。
金利返済分が減る
金利の返済分はローンの返済において非常に大きな負担になります。特に返済は始めたばかりの頃は残債も大きいので、初年度の返済金の大半が金利ということもあるでしょう。
例えば2000万円の物件を全額融資を受けて金利3%で買ったとします。そうすると初年度の金利返済分だけで60万円になり、毎月5万円も金利を支払わなくてはいけません。しかし1500万円ならば年間45万円、月間の金利返済は3万7500円と大幅に負担が減りますし、残債の減り方も速いです。
融資が通りやすくなる
まず頭金が用意できない人間に、どうぞどうぞと融資をしたがる金融機関は少ないといえます。貯金ができない、返済が破綻する可能性が高いのでは、金融機関にとってもリスクになります。
しかし十分な頭金を用意しているということは、収入が多くまた浪費癖がない、ローンを抱えていないなど金銭管理のできる人間だということの証にもなります。
不動産会社が提携している金融機関であれば、頭金0でも融資をしてくれることも有りますが、往々にしてそのようなケースでは金利が高めとなっており、後々の返済は苦しくなります。条件の良い金融機関で融資を受けたいと思うのであれば、十分な頭金を用意しておきましょう。
頭金なしでは無理なのか?
一方で頭金が0円でも不動産投資を始めることは不可能ではありません。それは物件の属性や担保価値が高いものを用意することがポイントとなります。
頭金なしでも融資してくれるケース
賃貸用の不動産物件の購入時、金融機関が融資の審査で重要視をするのは、借り入れをする本人の属性よりも「物件自体の担保価値」「物件の収益性」となっています。1億円の融資を金融機関が行ったとしても、その物件を売却して1億円以上の金額になるのであれば、金融機関の損失のリスクは低くなります。
アパートローンや不動産ローンが、住宅ローンでは考えられない金額を融資してくれるのは、収益性や担保性の高い物件を対象としているからです。担保価値だけではなく、駅前のビルなど確実に収益が見込める物件であれば、これも売却が簡単なので融資を受けることは不可能ではありません。
物件の担保価値=つまり評価額は国土交通省の発表する路線価をもとに算出されるケースが多くなっています。路線価に面積をかけて土地の価値を算出するので、運良く1億円の価値がある土地を9000万円で買えるチャンスであるならば、融資も受けやすくなります。
また建物の価値も面積や構造、経年数で算出されます。建物の構造によってRC造ならば47年、鉄筋は33年、木造は22年と耐用年数が決まっているので、築23年のRC造の物件は、建物の価値がおよそ半分になっていると考えましょう。
また建物の担保価値や収益性をローンの審査に適用しない、住宅ローンを利用するという手段もあります。自宅以外に住宅ローンは使えないと思われがちですが、アパートと自宅を一体化した賃貸併用住宅であれば、「面積の50%以上が自宅」という基準を満たすことで、住宅ローンの利用が可能になります。
住宅ローンは個人の年収や安定性が物件の属性よりも重視されるので、仮に頭金がなくても安定した収入と職業についている人であれば、融資を受けられることもあります。
ただし当然自宅を購入するためのものなので、二件目以降の投資物件には使えませんし、最大でも融資を受けられる金額は、年収の8~9倍といったところでしょう。高額な物件を買いたいという人には向いていません。
頭金なしで経営する際のリスク
頭金無しで投資用物件を購入できても、その分リスクは高くなります。頭金0物件の代表的なリスクとしては、以下の様なものが挙げられます。
金利リスク
借入金が少なければ、金利の支払いが減ることは先にお伝えしましたが、当然借入金が多ければ金利の支払いは増えます。更に現在は空前の低金利とも言える状況なので、融資を受けるのは決して悪い条件ではありませんが、これから先に金利が上がっていく可能性も非常に高いといえます。
変動金利で融資を受けている人は、今の金利でずっと返済顔続くわけでなく、金利の上昇で毎月の返済額が増える可能性が高いことは理解しておきましょう。
空き物件リスク
賃貸物件において、ローンの返済は家賃収入から行う人がほとんでしょう。逆に家賃を超える毎月の返済額になるようでは、その物件を所有しているメリットは非常に低いといえます。しかし返済額以上の収入があるという場合でも安心できません。
人口減少が進んでいる今、いつ空き室が発生し、家賃収入が減ってしまう事態が起こるかはわかりません。毎月の返済を停滞させないためには、できるだけローン返済額を減らす、つまり融資を受ける金額を減らさなくてはいけないでしょう。
破産リスク
もし想定以上に空き室が発生し、家賃収入がローン返済できない金額になる。自分の給料などから持ち出しにも限界がある場合は、物件を売って処分するしかありません。それで借入金をすべて返済できればいいのですが、借入金が多いと物件を売っても完済できないこともあります。
その場合には物件を手放すだけではなく、最悪破産という事態も発生します。そうすると財産を失うばかりではなく、実生活にも大きな影響が出てしまいます。
頭金以外の諸経費はローンを利用できない
また最初に書いたとおりに、「頭金0での投資は可能」ですが「諸経費は自己資金が必要」ということも忘れてはいけません。不動産の購入には様々な経費がかかります。
不動産屋への仲介料、不動産取得税、登録免許税。ローンの融資手数料、火災保険などがあり、中古物件ではおよそ物件価格の7~10%必要になることもあります。3000万円の物件を買うのであれば、250万円程度は余計に購入費を計算して置かなければいけません。
しかもこういった諸経費は金融機関が融資してくれるローンで支払うことはできません。金融機関のローンはあくまでも「不動産の購入費」のみに使えるローンなのです。それで諸経費の捻出のために、サラ金などに手を出すと、肝心の不動産ローンの融資が受けられなくなる可能性が非常に高いです。
諸経費だけはほぼ確実に自己資金が必要になるので、自己資金0とはいかないわけです。
まとめ
不動産経営はリスクが低いといわれるものの、それは「リスクを自分次第でコントロールできる」からだともいえます。自己資金がないのにフルローンで投資用物件を買っても、支払いが滞る可能性は高くなりますし、自己資金をしっかり用意しておけば限りなく返済不履行になるリスクは低くなります。
リスクをできるだけ無くしたい、確実に経営を軌道に乗せたいと思うのであれば自己資金は3割程度用意しておきましょう。そうすれば満室経営でなくても、利益を出していくことは可能です。