賃貸物件に太陽光パネルを設置する動きが広まっています。
発電した電気を売って収益を得られるのはもちろんのこと、賃貸物件としての付加価値も上がるからです。
では、売電した場合、実際にどれくらい利益が見込めるものなのでしょうか。そして、賃貸物件に太陽光パネルを設置すると、具体的にどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
太陽光発電を設置するメリットとデメリット
保有している賃貸物件の利回りをさらに向上させる選択肢として、太陽光発電は有力な選択候補の一つです。
ですが、太陽光発電への投資に踏み切る前に、メリットとデメリット(リスク)を事前にしっかり理解しておくことが大切なのは言うまでもありません。
太陽光発電は初期投資にまとまったお金が必要です。メリットとデメリットを理解せずに設備投資に踏み切ってしまうと、期待した利回り向上効果を得られないという事にもなりかねません。
設置業者と商談をする際に、何をポイントに考えて判断すればいいのか。その為にも、ここに書かれた「賃貸物件に太陽光発電を設置するメリットとデメリット」をよく理解しておいてください。
メリット
賃貸物件に太陽光発電を導入するメリットは大きく分けて3つあります。
- 電気を売ることができる
- 節税効果
- 最上階の暑さ対策・災害時の電源確保
1つ目のメリット「電気を売ることができる」については、電気を売るメリットや発電した電気の活用、電気の買取り制度について説明します。
実際に売電した際にどれくらい儲けがでるのかについては、最後に具体的なシミュレーションを書きました。そちらも是非読んでください。
電気を売ることができる
賃貸物件に太陽光発電を設置するメリットは、「全量買取制」をという買取り方式を利用して、発電した電気の全量を売電ができることです。
この全量売電の買取り方式を利用できるのは、設置した太陽光パネルの総出力が10kW以上の物に限られます。業者が運営する太陽光発電所や、工場・学校に設置されるソーラーパネルなど、いわゆる「事業用発電」と呼ばれるものが10kw以上の太陽光パネルに該当します。
賃貸住宅の屋根に設置する太陽光パネルの総出力も10kwを超えるので、この「事業用発電」に該当して全量売電を行うことができます。
ちなみに一般住宅で利用する太陽光発電の場合、発電量が10kw未満になるので「余剰買取り制度」が適用されます。余剰買取り制度は、発電した電気を自宅で使い、余った分だけ売ることができる制度です。
アパートやマンションに設置する太陽光発電では、全量買取制度によって発電した全ての電気を買取って貰えることが確約されます。
もちろん、発電した電気を保有物件で使用することも可能です。オーナーが居住する部屋へ電気を供給したり、廊下や階段などの共用部に設置してある照明で使用したりする事も可能です。
それらで使用する電気量は少量なので、発電した電気の大部分を売電することで、高い利回りを得ることができます。
節税効果
賃貸物件への太陽光発電設置の2つ目のメリットは、節税効果です。具体的には、太陽光発電設置することで減価償却費を計上できることです。
どのオーナーも経験していると思いますが、賃貸経営の悩みの一つに経費をなかなか計上できないことがあげられます。
数億円単位の物件を年利10%で購入した場合、年収は数千万円に上ります。所得が数千万円に達するのに対して、物件を運営する上で掛かった経費はそれほど多くはないのが実情です。
その為、節税の為に普通に経費を積み重ねて費用計上し、収益を圧縮しようと思ってもうまくいかないのです。
そこで有効な節税ノウハウとして、物件を追加購入して減価償却を行う方法があります。しかし、新たな物件購入となると、フルローンは別としてかなりまとまった資金の投入が必要になります。
また、美味しい物件が誰もが欲しいことから、良い物件は取りあいです。欲しい時に欲しい物件が手に入るとは限りません。
ですが、太陽光発電への投資であれば数百万円程度で済みます。そして、投資したい時にいつでも始めることができます。
物件購入ほど減価償却費の影響は大きくありませんが、初期費用の面でも投資のタイミングの面でも割と敷居が低くて手軽に始められる節税対策の一つとして有効です。
太陽光パネルの耐用年数は17年になります(管轄する税務署によって15年の場合もあるので確認してください)
減価償却には定額法と定率法がありますが、太陽光発電の減価償却では定額法を採用しているところがほとんどです。
最上階の暑さ対策・災害時の電源確保
賃貸物件に太陽光発電を設置するメリットとして、物件最上階の暑さ対策と災害時の非常用電源確保があります。
夏場のアパートの最上階の暑さは非常に厳しいです。暑さに耐えきれずに、毎年退去・引越しする入居者が必ず出てきます。
そのため、賃貸物件の空室率対策として最上階の暑さ対策をどうするかという事がたびたび話題になりますが、正直なところ屋根裏に徹底的に断熱材を敷き詰めるようなリフォームをする以外、具体的な対策方法はありません。
屋根裏のリフォーム工事をしたからといって家賃を高く設定できる訳でもなく、多額の費用を掛ける割には多少の空室率改善しか望めないという感じで費用対効果はあまり高くありません。その点、屋上への太陽光パネル設置は一石二鳥と言えます。
まず、太陽光パネルを設置することでパネルが熱を吸収し、断熱効果を発揮します。その上、太陽光発電で生みだした電気を売電することで、収益化もできます。
同じコストを掛けるなら費用対効果の低い屋根裏リフォームよりも、断熱+収益化で一石二鳥の太陽光パネル設置の方が断然お得です。
また、昨今は地震などの大災害が日本各地で起きています。今後も地震の被害に遭う可能性を排除することは出来ず、各自で何らかの対策を行うことが求められています。
中でも重要な対策の一つに、災害時の非常用電源確保があります。大災害が起きた場合、発電所からの送電網が破損して停電する可能性が高いからです。
停電した場合、被害の規模によっては長期化する恐れもあります。そんな時でも太陽光発電があれば、自前で非常用電力の確保が可能です。
安否確認の連絡の為にスマホの充電、お湯を沸かしてインスタント麺を食べるなど。晴れてさえいれば発電をしてくれるので、電源確保にとても重宝するのです。
デメリット
筆者は長年不動産業界に携わり、太陽光発電の設置を何十件と見てきました。
こう言ってしまうと身も蓋もないように感じられますが、正直なところ、太陽光発電の設置にデメリットらしいデメリットは無いと思っています。事前の収支シミュレーションをしっかり行ってさえいれば、安心して取り組めるからです。ただ、デメリットは感じなくてもリスクはあります。そこはよく理解しておくべきです。
リスクは2つあります。
- 悪徳業者のリスク
- 屋根の形状によっては付けられない
悪徳業者のリスク
まず、悪徳業者の被害に遭ってしまうリスク。
リフォーム工事には付き物のリスクです。対策としては、よく分からない業者には頼まないことに尽きます。具体的な方法は3つです。
- 信頼のある大手工務店に頼む
- 知り合いの評判を聞いて紹介してもらう
- 太陽光パネル設置の一括見積もりサイトを利用する
信頼できる業者が良く分からない、知り合いに太陽光発電を付けた人がいないので評判が分からないと言うのであれば、一括見積もりサイトを利用してみてください。
一括見積もりサイトは登録業者の審査が非常に厳しく、審査に通った後もお客さんからクレームがたびたび入るような設置業者はすぐに登録を抹消されてしまいます。その為、一括見積もりサイトに登録されている業者は信頼できるのでおすすめです。
屋根の形状によっては付けられない
2つ目のリスクとして、建物の状況によっては太陽光パネルを設置出来ない可能性があることです。
新築で最初から取り付ける予定の場合は、太陽光パネルの設置を考慮した設計、パネル荷重を含めた強度計算を行うので問題ありません。ですが、既存物件の場合は何でも取りつけられるわけではないのです。
周囲の建物が高くて日陰ばかりなら取り付ける意味はありません。屋根上に想定外の荷重が掛かりますので、建物強度に設置する為の余裕が必要です。また、陸屋根なら設置の自由度が拡がりますが、勾配屋根だと制約を受けることもあります。
既存物件に設置する場合は、取り付けられるかどうか工事業者に確認してもらい、NGとなる可能性があることを承知しておいて下さい。
売電収入の目安は?
賃貸物件に太陽光発電を設置することのメリット・デメリットを理解したところで、では実際に売電収入がどれくらいになるのかシミュレーションをしてみましょう。
設置する太陽光パネルは流通量や信頼性を考慮して、パナソニックを採用したと考えます。安い海外製メーカーの太陽光パネルもありますが、それらと比較してもパナソニックの太陽光パネルは、設置後の製品生涯発電量・生涯売電量で高い実績を有しているからです。
型番は人気モデルのHIT247αPlusを選択。居住地域を東京と仮定します。東京の場合、年間予測発電量が13,000kw/年弱です。平成29年度の売電単価は税込で22.68円。そうなると、年間売電収益はおよそ30万円弱の計算になります。パナソニックのHIT247αPlusは、諸条件に大きく左右されますが300万円~300万円台前半の費用で設置出来たとします。
この場合、太陽光発電による実質利回りは10%前後で、初期投資の回収期間の目安は10年となります。
賃貸物件に太陽光発電を設置した場合の売電収入の目安は以上になります。設置するメリットが多いですが、デメリットも存在するので、2つを理解して設置するのか決めるとよいでしょう。