2018年6月に施行予定の民泊新法を除けば、2018年3月現在で合法的に民泊経営を行うには下記どちらかの認可を受ける必要があります。
- 旅館業法
- 民泊条例
2020年の東京オリンピックを控えて今後益々注目が集まる民泊経営ですから、経営に乗り出してみようと検討している人は少なくないでしょう。しかし、合法的に民泊経営を始めるにはどの方法が一番いいのか頭を悩ませている人も多いことでしょう。
そこで今回は民泊経営を始めるためにクリアしなければならない、これら3つの法律について詳しく解説していきます。現在、民泊経営を検討している人は、これら3つにどのような違いがあり、どれが自分に一番適しているのかを判断する参考にしてもらえればと思います。
民泊に関わる3つの法律
これら3つの法律はそれぞれが大きく異なる性質をもちます。よって、その違いをよく理解して、どの法律を利用して民泊経営を始めるのが最善なのかをよく検討する必要があります。
民泊新法が施行されていない2018年3月現在では、民泊経営を始めるにはクリアしなければならない条件が多いのが実情です。それを打開すべく新しく施行されるのが民泊新法というわけです。
それではそれぞれの特徴を開設していくので、その違いをよく理解するようにしてください。
旅館業法とは
現在の民泊経営において各方面で違法性が問われるのは、旅館業法に違反しているのではないかという点です。旅館業法とは下記の条件を満たす宿泊施設に適用される法律で、この条件に適する施設は旅館業登録が義務付けられています。
- 宿泊料を受けている
- 人を宿泊させている
- それを営業として営んでいる
上記条件を見れば民泊経営が旅館業登録が必要だと言われる理由も理解できます。よって、法律上で言えば民泊経営を営むには旅館業登録が必要と考えるのが妥当なところでしょう。
しかし、民泊という宿泊形態を見れば取得が難しい旅館業登録は必要ないのではないかとする声は多く、それに当たらないとする多くの経営者がグレーゾーンの中で民泊経営を行っているのが実情です。
ですが旅館業法における旅館業の形態は下記の4つに分類されており、民泊はその中の簡易宿所営業に分類されます。
- ホテル営業
- 旅館営業
- 簡易宿所営業
- 下宿営業
簡易宿所営業は下宿営業を除く、ほかの主な旅館形態となる2つの条件において、下記2点が大きく緩和されています。
- 客室延床面性が33㎡以上(宿泊者が10人未満時は1人当たり3.3㎡以上)
- 簡易式寝台を設置する場合には、その上下の間隔を概ね1m以上とすること
以上のように民泊新法が施行されていない2018年3月時点ではグレーゾーンの問題はありますが、合法的に民泊営業を始めるには簡易宿所営業での旅館業登録するのが一番確実な方法となってきます。
民泊条例とは
国家戦略特別区域においては旅館業法の特例が認められており、国家戦略特別区域に該当する各自治体が制定した条例に基づき、旅館業法にとらわれない宿泊営業が認められています。
これを民泊条例と呼ぶのですが、先に話したように現在は民泊経営を営む際には旅館業法への抵触の有無が取り沙汰されており、無許可営業の是非が問題視されています。
その問題解消のために生まれたのがこの民泊条例で、下記の条件を満たすことで民泊条例を利用して民泊経営を始めることができます。
- 国家戦略特別区域内
- 賃貸借契約、およびそれに付随する契約に基づくこと
- 宿泊期間が7日~10日であること
- 宿泊居室が国家戦略特別区域法施行令12条3号を満たしていること
- 外国語案内が設置されていること
- 事業の一部が旅館業に該当すること
しかし、民泊条例を利用して民泊経営を始めるには上記条件をクリアする以前に、国家戦略特別区域に該当する自治体が条例を制定していることが条件となってきます。現状指定されている国家戦略特別区域は下記のとおりです。
- 東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市、千葉県千葉市)
- 関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)
- 秋田県仙北市
- 宮城県仙台市
- 新潟県新潟市
- 愛知県
- 兵庫県養父市
- 広島県
- 愛媛県今治市
- 福岡県福岡市
- 福岡県北九州市
- 沖縄県
しかし、この中で民泊条例を定めているのは下記のように大阪府を除けば、たったの3地域なのが実情です。
(大阪府)
- 守口市
- 大東市
- 泉佐野市
- 能勢町
- 忠岡町
- 岸和田市
- 池田市
- 泉大津市
- 貝塚市
- 茨木市
- 八尾市
- 富田林市
- 寝屋川市
- 河内長野市
- 和泉市
- 箕面市
- 柏原市
- 羽曳野市
- 門真市
- 摂津市
- 高石市
- 藤井寺市
- 泉南市
- 四條畷市
- 大阪狭山市
- 阪南市
- 島本町
- 豊能町
- 熊取町
- 田尻町
- 岬町
- 太子町
- 河南町
- 千早赤阪村
- 東京都大田区
- 新潟県新潟市
- 福岡県北九州市
該当する地域に住んでいる人はこの民泊条例によって民泊経営を始めることができますが、実際のところ大阪府意外で利用できる人はかなり限定されてくることからも、問題解消のために作られたという目的が達成できているとは言い難いのが実情です。
民泊新法とは
世界中で民泊が注目を集めたのは、現行の空き部屋や空き家を利用した簡易ビジネスができるという点です。よって、その施設も一般的な宿泊施設であるホテルと旅館とくれべれば雲泥の差が出てきます。
しかも、民泊を始める上でそれと同等の条件を求められれば、個人をはじめとする小規模ベースで民泊経営を始めようという人はいないでしょう。となればここまで解説してきた民泊を合法的に始めるための法律は、決して実情を考慮したものではないことは一目瞭然です。
そこで、その問題を根本的に解消するために施行されるのが民泊新法です。民泊は旅館業法や民泊条例に当てはまらない概念に基づき、対象となる施設を宿泊施設ではなく、あくまで住宅と位置づけることで、合法的な民泊経営者増加への間口を大きく広げています。
下記のように諸処の条件はありますが、旅館業法や民泊条例のように許可や認可が難しくなく、行政への届出だけで始めることができるのが一番のメリットです。
- 年間営業日数は最大180日まで
- 都道府県知事へ2ヶ月ごとの定期報告義務
- 宿泊者名簿の3年間保管義務
- 民泊運営代行サービスへの委託が必須(家主不在型の場合)
これから民泊経営を検討しているのであれば、この民泊新法を利用しての経営開始が一番おすすめの方法となってくるでしょう。
違いまとめ
今回は合法的に民泊経営を始めるために必要となる法律について解説してきましたが、話の内容だけ見れば民泊新法が最も魅力的な方法に思えたことでしょう。だからといって全ての民泊経営者に民泊新法がおすすめというわけではありません。
何を目的にして民泊経営を始めるのかによって、経営内容や方法を縛る法律のメリットは違ってくるからです。
各条件を比較した表を見てください。
旅館業法 | 民泊条例 | 民泊新法 | |
---|---|---|---|
申告方法 | 許可 | 認定 | 届出 |
営業日数制限 | なし | なし | 最大180日 |
宿泊日数制限 | なし | 2泊3日以上 | なし |
住宅専用地営業 | × | ○(条例による) | × |
運営目的 | 投資収益 | 文化交流・休眠地活用 | 投資収益 |
収益性 | ○ | △ | ○ |
上記の条件を比較してもらえれば一目瞭然ですが、民泊新法による民泊経営には営業日数の上限が決められています。民泊をビジネスとして捉えるならば、これは決してメリットとは言えません。まずは自分の経営目的に合った法律による開業を検討してみるようにしましょう。