駐車場経営で利益が上がれば確定申告の必要が出てきます。これまでも個人事業主として経営に携わっていた人ならば周知のことかと思いますが、会社員で今まで確定申告をしたことがないという場合には、戸惑う人も出てくることでしょう。
確定申告には下記2つの申告方法があり、いずれかの方法で納める税金の申告手続きをする必要があります。
- 青色申告
- 白色申告
そこで経営者として考えなければならないのが、確定申告における経営効果です。確定申告によって納税額が決まってくるのですから、申告手続きはできるだけ節税効果の高いものとしなければなりません。
一般的には青色申告よりも白色申告の方が申告手続きが簡単なことから、申告初心者の経営者の中には白色申告を選ぶ人が多いのですが、そのメリットにおいては断然、青色申告の方に分があります。よって駐車場経営の確定申告は青色申告の方がおすすめとなってきます。
しかし、そう言われたからといって簡単に話を鵜呑みにするようでは、経営者
としての器が疑われるところです。そこで今回はその理由をよく理解してもらうためにも、白色申告と青色申告の違いを見ていきながら、青色申告がいかにおすすめなのかを解説します。
- 駐車場経営での確定申告は白色と青色どちら?
確定申告が必要になるのは?
それではまずは以降の話をよく理解してもらうためにも、まずは個人における確定申告の必要性について簡単に解説しておきましょう。
確定申告とは国や地方に納める税金の申告手続のことで、下記のように定義されています。
- 課税期間はその年の1月1日から12月31日まで
- 課税期間内の所得を計算し、納付する所得税額を確定
私たち国民は様々な税金を納めていますが、所得税を特定するために必要になってくるのが確定申告というわけです。
会社員の場合には会社が代わりに手続きを行ってくれるので、基本的には個人が確定申告を行う必要はありません。
しかし、会社員でも副業として駐車場経営を始め、所得が基礎控除額となる38万円を超える場合には駐車場経営における確定申告が必要になってきます。
基礎控除額とは所得税を計算する際に一律で差し引かれる控除額のことで、他にも下記のような控除があります。
- 医療費控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 配偶者控除
- 青色申告特別控除
課税対象となる所得額は下記の計算式によって求められます。収入から必要経費と基礎控除額を差し引いた金額がプラスとならない場合には、課税対象となる所得額がないことになるので、所得税を納める必要はありません。
「課税所得金額」=「収入」−「必要経費」−「各種控除」
できるだけ支払う所得税を抑えるためには、必要経費と各種控除の2つが大きく影響を及ぼすことになります。
よって、必要経費として認められるものはできるだけ必要経費として計上し、受けられる控除はできるだけ利用することが、高い節税効果を得る重要ポイントとなってきます。
白色申告と青色申告の違い
それでは確定申告について理解してもらったところで、早速、その申告手段となる青色申告と白色申告の違いを見ていきましょう。
今回比較するポイントは下記の4つです。
- 帳簿付けの違い
- 届出が必要かどうかの違い
- 申告時に必要となる作成書類の違い
- 節税効果の違い
青色申告と白色申告とにどんな違いがあるのかを理解できれば、駐車場経営で青色申告がおすすめとなる理由が自ずとわかってくるでしょう。
青色申告の特徴
冒頭で言ったように青色申告は後で解説する白色申告に比べれば、申告手続きの面倒さというデメリットはありますが、控除金額が大きいため、高い節税効果が得られる大きなメリットがあります。
帳簿付け
青色申告の帳簿付けは下記の2つから選択できます。
- 複式簿記
- 単式簿記
この2つの違いについての詳しい解説は省きますが、簡単に言うと家計簿のようなイメージで非常に簡単に作成できるのが単式帳簿、そして様々なルールがあり専門性が高いために作成に知識が必要になるのが複式帳簿です。
となれば簡単な単式帳簿の方がいいと考える人は多いでしょうが、どちらを選択するかによって下記のように受けられる控除額が違ってきます。
- 複式簿記 最大65万円
- 単式簿記 10万円
控除額に50万円以上の差額が出てくるのですから、帳簿付けに手がかかっても複式帳簿の方が断然お得です。手軽さを取るか、高い節税効果を取るかを選べるのは青色申告の1つの特徴となります。
届出
青色申告を行うには下記届出を納税地の所轄税務署長宛に行う必要があります。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
また届出にも下記期限があり、これを過ぎると自動的に白色申告になります。
- 新規事業開業時 業務開始日から2ヶ月以内に開業届と青色申告承認申請書を提出
- 新たに青色申告を申請する時 その年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出
- 相続等による事業継承時 継承日から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出
申告時に必要となる作成書類
青色申告の場合には確定申告書の他に、青色申告決算書の作成提出が必要です。
青色申告決算書は4枚構成となっており、1~3枚目が損益計算書、4枚目が貸借対照表になります。
青色申告決算書は所定用紙による提出が必要となりますが、12月中旬ころから1月に税務署より送付されるほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
控除金額による節税効果
青色申告の最大の特徴であり、最大のメリットとなるのは、下記のように多くの経費計上ができ、特別控除が受けられる点です。
- 青色申告特別控除が最大65万円
- 赤字の3年間繰越
- 1年で最大300万円を減価償却として一括計上できる
- 家族への給与を経費にできる
- 家事按分を利用できる
先にも言ったように必要経費として認められるものはできるだけ必要経費として計上し、受けられる控除はできるだけ利用することが、高い節税効果を得る重要ポイントです。その点から言えば、そのチャンスが多く用意されていることは見逃せない大きなメリットとなってきます。
白色申告の特徴
それでは次は白色申告の特徴を見ていきましょう。ここまで解説した青色申告とどう違うのかをよく見て、青色申告の方がおすすめとなる理由をよく理解してください。
帳簿付け
白色申告の帳簿付けは単式簿記のみです。よって、青色申告のように大きな控除を受けることはできません。しかも単式帳簿だからといって、青色申告時のように10万円の控除が受けられるわけではありません。
素人でも簡単に作成できるメリットはありますが、節税効果を捨てなければならない大きなデメリットが発生します。
届出
白色申告の場合には青色申告のように税務署への届出は必要ありません。面倒さという点で言えばメリットの1つとなってきます。
申告時に必要となる作成書類
白色申告では確定申告書の他に、収支内訳書の作成提出が必要になってきます。
収支内訳書は2枚構成となっており、1枚目は収入金額や売上原価、経費、専従者控除を記入して事業所得などを算出し、2枚目はその内訳を記載します。
収支内訳書は所定用紙による提出が必要となりますが、確定申告書と同様に税務署で配布されているほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
控除金額による節税効果
白色申告は帳簿付けの解説でも言いましたが、青色申告のような節税効果は全く期待できません。青色申告で挙げたような経費計上や控除金額によるメリットが一切ないのです。
青色申告よりも簡単に申告できますが、申告による優遇特典は一切ないことをよく覚えておきましょう。
まとめ
今回は青色申告と白色申告の違いについて解説してきましたが、どちらがおすすめなのかは言うまでもなく青色申告となってきます。確かに申告が面倒になるというデメリットはあるものの、受けられる節税効果はそれをも凌ぐ大きなメリットを生んでいます。
経営者にとっては絶対に見逃すことのできないメリットと言えるでしょう。複式帳簿は作成に専門知識が必要な上、複雑になるため単式帳簿よりも多くの手間暇がかかってきます。しかし、詳しく帳簿を記入することは今後の経営計画を立てる上でも、大いに役に立つ参考資料となります。
最初は面倒かもしれませんが、それも慣れてしまうまでの間です。受けるメリットを考えて駐車場経営をする際には青色申告で確定申告に臨むようにしましょう。