アパートやマンション経営での減価償却費の計算方法

アパートやマンション経営での減価償却費の計算方法

アパートやマンションなどの不動産経営を行っていく上で、絶対に知っておかなければない経費として、減価償却費があります。

減価償却費は現金の支出の伴わない帳簿上の経費として扱うことができます。そのため事実上の利益を維持したまま、帳簿上では利益を減らし、赤字にできるなど節税に対して非常に大きな効果を発揮します。

もちろんこれは脱税になるわけではなく、きちんと法律で決められた経費であり、減価償却費を知っているのか、知っていないかで不動産経営上のキャッシュフローが大きく違ってきます。

そこで減価償却費を正しく計算して、帳簿につけて税金を計算していくための基礎知識をお伝えしていきます。

減価償却費の考え方

まず、減価償却費とは、長期間を前提に購入した資産(車、建物、工場、機械)を購入した年だけの費用にするのではなく、資産として計上し、その後徐々に経費にしていくという考え方になります。そのため資産を毎年経費として支出しているものとして計算できるのです。

減価償却費の計算方法

減価償却費は不動産の場合、建物と建物設備で計上できます。さらに建物の構造によって減価償却費を計上できる期間が違ってきます。購入した費用を建物の構造ごとに決められた年数で割って計算をします。

不動産を購入する時には土地と建物をまとめて買うことになりますが、土地は消耗品扱いをされないので、減価償却費の対象にはなりません。あくまでも建物とその建物に付随する設備にかかった費用を合計した金額を物件取得費用とします。

物件取得費用には建物の評価額だけではなく、付随して発生する登録免許税や不動産取得税などの税金、さらに諸経費も含めることができます。

法定耐用年数とは

耐用年数とは法律で定められた、建物構造別に決められた数字になります。減価償却費の計算も法定耐用年数を使用して計算をします。

マンションやアパートに用いられる構造としては多いのは、木造や軽量鉄骨造、そして鉄骨造RC造などになります。それぞれの建物に応じた構造別の法定耐用年数は以下のようになっています。

  • 木造22年
  • 軽量鉄骨造19年
  • 鉄骨造34年
  • RC造47年

木造など簡単な構造のものほど、法定耐用年数は短く、RC造のように建てるのに費用がかかる建物ほど長くなっています。

大まかな目安として、これらの数字は大規模修繕をせずとも使用に耐えうる一般的な年数という見方になっています。

ただし法定耐用年数を過ぎたからといって、これらの物件を賃貸や事業用に使用できなくなるということではありません。減価償却費の計算においては、これらの年数が減価償却費を計上できる年数だと知っておけば十分です。

またこれらの数字はあくまで新築で取得したときの数字になるので、中古で取得した時にはまた別の計算方法になってきます。その計算方法は後ほどお伝えします。

減価償却費の計算方法

それでは具体的に減価償却費を計算してみましょう。減価償却費には二つの計算法があり、
毎年5%など一定の割合で減価償却費を計算していく方法を定率法、毎年100万円など一定の金額を期間中ずっと減価償却費として考えていく定額法と呼びます。

定率法とは

定率法とは毎年一定の数字の割合で減価償却を行っていく計算方法です。1100万円の建物を購入したと仮定し、物件が木造物件で毎年11%ずつ減価償却をしていくとしましょう。
購入の翌年度に計上できる減価償却費は以下の計算式となります。

1100万×0.11=121万

このように、121万円もの金額を減価償却費にすることができます。現金支出を発生させずに赤字にすることができるでしょう。また翌年は1100万-121万×0.11=1076千900万になります。

しかし徐々に減価償却ができる数字は減っていくために、耐用年数が経過するほど、帳簿上の利益を確保することができなくなってしまう欠点もあります。
10年間の計算表は以下のようになります。

年数 減価償却残高 減価償却費
1 1,100万円 121万円
2 979万円 107万6,900円
3 871万3,100円 958,441円
4 775万4,659円 853,012円
5 690万1,647円 759,181円
6 614万2,465円 675,671円
7 546万6,794円 601,347円
8 486万5,447円 535,199円
9 433万248円 476,327円
10 385万3,920円 423,931円

また現在では新築で購入した建物は定率法を建物の減価償却に用いることはできません。建物に付随する設備のみ使用できます。そのためあまり定率法を活用できるシーンはないでしょう。

定額法とは

建物の減価償却費を計算する時は、今ではすべて定額法を用います。こちらは定率法よりもよりシンプルな計算方法です。

1100万円で習得をした木造物件の場合、法定耐用年数22で取得価格の1100万を割るので、1100万÷22=50万となります。

物件を所有していれば、22年間に渡って50万円の減価償却が可能になります。

中古物件を定額法で計算する

ただし上記の定額法の計算は新築で物件を購入した場合のみになります。中古の状態で物件を購入した場合はまた違った計算方法になってきます。下に例を二つあげてみます。

築15年の木造物件を1000万で購入した場合は、耐用年数の22年から、築年数の15年に0.8の係数を掛けた数字を引きます。「15×0.8=12」です。

つまり、22-15=7ではなく、22-(15×0.8)=10年の耐用年数があるとして、毎年100万円減価償却を行っていけるのです。

築25年のRC造マンションを2000万で購入した場合は、47-(25×0.8)=27であり、
毎年74万740円を減価償却できます。

ただし木造築15年やRC造25年になると、購入時の建物価格もかなり低く評価されてしまうことも多いので、物件の購入時に建物の費用がどの程度含まれているのかをしっかりと確認しましょう。

減価償却期間を中古で取得した場合は

中古物件を購入するときには、木造アパートで築25年など法定耐用年数が過ぎたものを購入することもあるでしょう。耐用年数を経過していればもう減価償却ができないものと考えがちですが実際には数年間にわたって減価償却費を計上できます。

計算式としては法定耐用年数に0.2をかけた数字です。木造であれば22×0.2=4.4切り捨てで4年で、RC造は47×0.2=9.4切り捨てで9年です。

木造物件の取得に500万円かかっていたとすると、500÷4=125万円を4年間にわたって減価償却費にできます。

減価償却の開始はいつから?

減価償却は確定申告の際に使う数字なので、初年度の計算は月割で行います。7月から賃貸物件の運営を始めたら、7月から12月分、つまり6ヶ月分の減価償却費を計上できるので、年間の減価償却費は100万になる時は、初年度は50万円です。

一般的には減価償却が可能になるのは事業用にその建物を使用し始めた時点です。

また少しややこしい例ですが、賃貸併用住宅を建築し、この物件が11月に完成したとします。しかし賃貸部分の準備が十分に整っておらず、また勝手がわからないなどの理由で入居者の募集開始が1月になってしまったらどうなるでしょう。

この場合は、11月から減価償却費が発生し、初年度2ヶ月分を計上するのではなく、翌年の1月から減価償却費が発生します。つまりどのタイミングで建物を事業用に活用したのかが重要になるので、購入してすぐに減価償却を計上したい時は、早めに事業用物件として募集を開始すると良いでしょう。

まとめ

減価償却費は不動産物件にスムーズに行うために必要なキャッシュフローの獲得に大きな役割を果たしてくれます。個人の場合は定額法で毎年同じ金額だけ減価償却費として計上することしかできませんが、事業規模で物件を運営して法人化すればさらに便利に活用できます。

利益のあった年にのみだけ大きく減価償却費を計上し、利益がなかった年には減価償却をしないという選択もできます。いずれ法人規模で物件を運営する時のためにも、減価償却費について計算方法をよく理解しておきましょう。


目次一覧

アパート経営の基礎知識

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