アパートやマンション購入をはじめとする不動産投資は、高額な初期投資費用がかかるのは難点ですが、その分、大きな収入が得られる可能性のあるビジネスのため、初めてみようという人が後を絶ちません。
しかし、不動産投資はいい話ばかりではなく、多大な損失を出してしまうこともあります。そこで注目してもらいたいのがその失敗談です。
成功談ばかりを見てしまいがちですが、失敗談を知ることこそが成功するための大きな鍵となってきます。
そこで今回は失敗を成功に繋げるためにも、実際に不動産投資に失敗した人の理由や事例を見ていくことにします。
アパマン経営でよくある失敗例
不動産投資で最も多く扱われているアパマン経営での失敗は、大きく分けると下記の2つに分類できます。
- 知識不足による失敗
- 物件選びによる失敗
アパマン経営で成功するには、この2つにおける失敗例をよく理解しておく必要があります。
知識不足で失敗
それではまずは知識不足による失敗にはどのようなものがあるのかを紹介していきましょう。
ローンでの失敗
近年は住宅ローン金利が驚くほど低くなったことから、まとまった資金を持たなくても住宅ローンに頼ったアパマン経営もできるようになりました。サラリーマン投資家と呼ばれる新しい投資家が参入したのも、低金利によりアパマン経営が比較的簡単に始められるようになったことが原因の1つでしょう。
ですが住宅ローンに頼り切ったアパマン経営は、危険としか言いようがありません。アパマン経営時の住宅ローンの返済原資は賃貸収入となります。銀行がアパマン経営に融資実行するのも返済原資として賃貸収入を当てにできるからですが、100%の入居率をいつも維持できるとは限りません。
よって空室が埋まらず、住宅ローン返済分に当てる賃貸収入を得られないケースも想定しておかねばなりません。これを想定せずローン負担率の大きい投資を行うと、もしもの時に返済不能となりその不動産投資は失敗に終わることにもなりかねないからです。
投資額に対する投資負担率は40%が上限です。一般的にこの数値を超えなければ空室問題だけでなく、仮に借入金利が倍になったとしても問題なくローン返済ができると言われています。実際には綿密なシミュレーションが必要になりますが、まずはローンに頼りすぎるローン負担率の大きいアパマン経営だけは行わないようにしてください。
長期化する空室で失敗
不動産投資で収益を上げるためには長いスパンが必要です。よって、検討する際には将来的な賃貸需要を見据えた立地選びが重要になってきます。いくら高利回りで家賃収益の全てが短期間で収入となると言われても、そうなった時点で入居者確保ができなければ、収益性の低い不動産投資となってしまいます。
アパマン経営での不動産投資は、初期投資費用が回収できたあとが本当の収益確保となってきます。それ以降で高い空室率が長期化するようでは元も子もありませんし、回収以前にその状態となってしまえばローン返済すら窮することとなり、経営存続も危うくなってきます。
そうならないためにも長期間において高い賃貸需要が見込める物件選びが重要なポイントとなってきます。
家賃の減額での失敗
中古よりも新築の方が家賃が高いのは当たり前の話ですが、アパマン経営に取り組む際に必ず必要になるのが家賃下落時の備えです。新築のアパートやマンションでも築年数の経過によって家賃単価も下落していきます。
一般的にその下落幅は周囲の家賃相場に合わせる必要があるので、数年後には一気に5,000円もの値下げが必要になる場合も出てきます。つまり、アパマン経営では長期にわたる安定した家賃収入を得る必要があるので、築年数に応じて家賃がどう推移していくのかを事前によく確認しておく必要があります。
家賃が下がった状態でも、ちゃんと収入が得られる経営が行えるものでなくてはなりません。中にはこの家賃収益が下がることを考えず、当初の家賃で事業計画を立てる方がいますが、その計画では赤字経営となる可能性が高くなってしまいます。
家賃収益はずっと同じ額が見込めるわけではありません。この点はしっかりと頭に入れておくようにしましょう。
悪徳業者に騙されて失敗
投資家に非がなくてもアパマン経営は失敗することがあります。アパマン経営は不動産業を生業としない個人事業主によるものが多いため、不動産知識が高い人が少ないのが実情です。その弱点を突いて詐欺行為を行う悪徳業者も少なくありません。
悪徳不動産業者の手口は下記の例をはじめとして多岐にわたります。申込者の知識の低さを匠についてくるものばかりですから、被害に遭う人も少なくないのが実情です。
- 頭金を受領後に倒産
- 入居者がいるのに空室だと偽り賃貸料を横領
- 家賃保証契約を交わしたあとに短期間で倒産
- 営業マンの言ったことと、契約内容に大きな隔たりがある
このような不動産詐欺にあった場合、これら不動産業者は大抵雲隠れしていたり、返済能力がないため、失ったお金を取り戻すことができないのが大半です。そんなことにならないためにも、利用する不動産業者は経営年数が長く、信頼性の高いところを選ぶようにしましょう。
コスト管理により失敗
アパマン経営には物件購入後に発生するこれらコストをどれだけ削減するかが、収益アップにつながる必要不可欠なパーツになってきます。もちろん収益性を上げるにはいかに空室率を下げるのかが最重要課題となってきますが、その上でこれら経費コストのムダを省くことができるのかも非常に重要なポイントです。
アパマン経営で発生するコストには下記のようなものが挙げられます。
- 配管の交換、維持費用
- 外壁塗装費用
- 屋根のメンテナンス費用
- リフォーム費用
- 台風等の災害による修繕費用
- 付帯設備の交換、維持費用
上記のようにアパマン経営には実に多くのコストが掛かってくるのですが、これら発生コストを見据えた事業計画を立てていなければ、コスト発生による赤字転落となり経営は失敗に終わってしまいます。
アパマン経営は高利回りの中古物件購入がおすすめという話もありますが、中古物件ほどこれら維持コストの発生率は高くなってきます。中にはこれらコストのかからない新築物件の方が結果的には安く購入できたというケースも少なくありません。
中古物件は維持コストがかかる割に賃貸料の引き下げが必要となったり、入居者確保が難しいという状況も出てくるでしょう。そうなればこのコスト管理を甘く見たがために、経営破綻という結果を招くことになります。中古物件を購入する際は購入価格だけでなく、購入後に発生するこれらコスト管理を見据えた事業計画が必要不可欠だとよく理解しておきましょう。
サブリース契約での失敗
近年定着したアパマン経営の1つとして挙げられるのがサブリースです。長期間の一括借上契約により家賃保証を受けられるだけでなく、下記のような管理運営も一任できることから、副業としての土地活用を検討している人にとってはこの上もない好条件を有する不動産投資となります。
- 入居者募集
- 入居者のクレーム対応
- メンテナンス対応
しかしその実態は謳われている好条件とは全く違ってくるケースが多いようです。実際は下記のような条項が契約に織り込まれており、入居者が少ない場合には土地オーナーに大きな損害が出ることになります。
- 業者がいつでも解約申し入れできる
- 保証している家賃収益に免責期間が設けられている
- 家賃保証が50%前後になる条項が設けられている
よって、一見好条件かのように見えるサブリースを利用する際には、営業担当者の言うことだけを間に受けずに、その契約内容をシッカリと確認する必要があります。確認せずに契約して、ローン返済中に挙句の果てに解約申し入れされたケースも少なくありません。
うまい話には裏があると言われるように、建てれば儲かるなんて話はまずありえません。サブリースを利用する際にはくれぐれも契約内容に注意するようにしましょう。
物件選びで失敗
次は物件選びによる失敗について紹介していきましょう。
新築マンションの購入で失敗
新築物件購入で得られる税金還付を見込んだアパマン経営に着手する人も多いのですが、この節税効果が得られる時期は限定されています。よって、始めたころは黒字経営で推移できたいたが、節税効果がなくなり赤字経営に転落してしまうというケースも少なくありません。
この時点で高い入居率があればこれも問題とはなりませんが、そうでなければ毎月のローン返済に充てる持ち出しが多くなり、最終的には経営存続は難しくなってしまいます。売却して経営をやめようにも物件査定が低くなっているため、ローン完済できずにどうしようもない状況に追い込まれてしまいます。
節税効果を謳い文句に新築マンションを勧めてくる業者は多いのですが、新築マンションは往々にして販売促進費用等が購入価格に上乗せされているため、決して利回りのいい投資とは言えません。
新築マンション購入時にはこの点をよく理解し、決して節税効果だけに捕らわれた考えを持つことだけは避けるようにしましょう。
地方アパートの購入で失敗
アパマン経営で成功する鍵は、いかに空室率を低く維持するかという点に集約されます。この問題さえクリアできればアパマン経営は成功したと言っても過言ではないでしょう。それほど空室率を低く維持することは簡単なことではありません。
しかし、この問題を簡単に解決できる環境条件が1つだけあります。それは近隣に大学や工場など地方からの入居者をゲットできる立地環境にあることです。日本の人口減少に伴い空室率が問題視されている現状でも、こういった需要の高い環境であれば高い入居率を維持できます。
ですがこの強みは時として大きな弱みとなります。このような特定需要が見込める地域は、その重要先がなくなることで一気に空室化が拡大する問題と隣り合わせです。大学などの文教施設の場合は簡単に移転することはないでしょうが、工場のように簡単に閉鎖されてしまうケースもあります。
そうなれば特定需要であったことから空室の長期化は深刻な問題となってきます。この特定需要は地方に多いパターンですが、このケースの不動産投資ではこれらリスクを念頭に置いた、短期スパンでローン返済できるなどの対策を立てておく必要があるでしょう。
高額賃貸物件の購入で失敗
こんな家に住みたいという願望は誰にでもありますが、アパマン経営を始める際にはその願望を強く物件に反映するには大きなリスクを伴います。高額物件ならばその分、高額な賃貸収入が望めますが、それを維持するには高い賃貸需要が見込めなければ話になりません。
しかも高額賃貸物件の設備は通常の賃貸物件にはない設備が設置されており、その設備交換コストも高額になってきます。高額賃貸物件への入居希望者は限られてくることからも、高い入居率の維持は決して容易なことではありません。
自分の住宅への願望を入居者確保の第一条件とすれば、どうしても高額賃貸物件となりがちですが、一般的な入居者が条件とするのは立地条件です。この点を見誤り入居者確保ができない立地条件のところに高額賃貸物件を建ててしまえば、高い確率で入居者確保がままならず、高額なローン返済と設備維持のために経営破綻となってしまいます。
戸建賃貸物件の購入で失敗
戸建住宅を賃貸物件と貸し出したものを戸建賃貸物件と呼びますが、この物件の場合は中古物件を利用するケースが大半です。基本的には同じ土地に複数の入居が可能なアパマン経営の方が賃貸収益が高いため、戸建物件を賃貸収入目的に購入するケースは限られてくるからです。
ですが賃貸需要さえあれば入居者がファミリー層となるため、長期間の安定した賃貸収入が得られ、駅に近い等の条件が入居理由となりません。この点においては入居者を見つけやすいというメリットが出てくるでしょう。
しかし、中古戸建物件を賃貸物件とするためには、物件購入価格に加えて高額なリフォーム費用が必要になります。そして入居シーズンを逃すと空室が長期化する可能性が高いため、想定していた賃貸収入が得られず投資失敗となるケースも出てきます。
それに加えて日本の抱える少子化問題を考慮すれば入居者確保への懸念もでてきます。中古物件購入ということで高利回りも期待できる戸建賃貸物件ですが、手を出す際には入念な事業計画を立てる必要が出てくるでしょう。
高利回り物件の購入で失敗
アパマン経営でいかに収入を得るのかに大きく関係してくるのが高利回りです。高利回り物件ならば初期投資費用の回収が早くなり、家賃収益を短期間で全て収入とすることができます。
となれば、できるだけ高利回りの物件を購入するのが望ましいということになるのですが、この高利回りの算定方法には注意が必要です。大抵の場合、高利回り計算は満室時が想定されたものですから、購入物件が満室となるだけの賃貸需要があるものでなければなりません。
しかし、一般的に高利回りとされる物件は、地方や郊外の賃貸需要が低いとされるものが大半です。いくら高利回りだと言われても、返済に充てる賃貸料が見込めなければ高利回りを実現できる物件とはなりません。逆に利益率の低い低利回り物件となってしまい、ローン返済すらできなくなり失敗するケースも多いのが実情です。
高利回りと言われる物件にはこういったリスクがあることをよく理解した上で、利回りだけでなく、それを裏付けできるだけの賃貸需要が見込める物件であるかどうかの確認を怠らないようにしましょう。
まとめ
アパマン経営をはじめとする賃貸収入を目的とした不動産投資は、現在の住宅ローンが低金利なこともあって、多くの人が手を出しやすい状況にあります。
しかし、アパマン経営はただ物件を購入すれば収益が確保できるという投資ではありません。現在の不動産投資ブームに乗り、安易に手を出す人もいますが不動産投資はそんなに簡単なものではありません。ですが、今回紹介した失敗例をよく理解して対策を立てさえすれば、経営が成功する確率はぐんと高くなってきます。
まずは不動産投資は決して簡単なものでないと認識し、失敗する原因を念頭に置いた上で、成功に導ける不動産投資計画を立てるようにしましょう。