今では電力供給の一手段として多くの一般住宅に設置されている太陽光発電ですが、その売電収入には確定申告の必要があることを知っている人は意外に少ないことでしょう。
すべてのケースで確定申告が必要になるわけではありませんが、売電収入の大きさによっては確定申告する必要が出てきます。近年は新たな土地活用ビジネスとしても注目を集めているので、売電ビジネスを検討している人は特に注意する必要があるでしょう。
そこで今回は太陽光発電の確定申告について理解してもらい、その注意点や経費処理など申告時に重要になるポイントを紹介します。
- 太陽光発電での確定申告の申請方法と経費処理
太陽光発電(ソーラー)経営の確定申告
太陽光発電の確定申告は必要性の有無がある上、収入高、申請者状況によって申請方法が違ってきます。よって太陽光発電をビジネスとして考えるのであれば、その基本情報についてはしっかりと理解しておく必要があるでしょう。
確定申告が必要なのは?
冒頭でも申しましたが太陽光発電は売電による所得額によって、確定申告の必要の有無が決まってきます。これはその設置目的は全く影響せず、売電ビジネス、住宅用の電力供給に関係なく、判断基準は売電による所得額だけです。
そして、その際には申告者が給与所得者であるかどうかが、下記のように必要性の有無を決定する売電による所得額にも影響します。
- 給与所得者の場合 売電による所得が20万円を超えるケース
- 給与所得者でない場合 売電による所得が38万円を超えるケース
よって、太陽光発電ビジネスにおいても給与所得者が副業として行う際には20万円、給与所得者でない人が行うならば38万円を超える際に確定申告が必要になってきます。
売電所得は下記の計算式によって求められます。
売電所得 = 売電収入 - 総経費
まずは売電所得が幾らになるのかを計算して、確定申告が必要かどうかを確認しましょう。
雑所得と事業所得
売電所得が先ほど挙げた所得額を超えて確定申告が必要な場合、その所得区分が下記のどちらに当たるのかによって申告方法が違ってきます。
- 事業所得 青色申告、または白色申告
- 雑所得 白色申告
確定申告は簡単に言うといくらの所得税を支払うのかの深刻です。よって、経営者としてはできるだけ節税効果の高い申告内容としたいところですが、申告方法が白色か青色かでその節税効果は大きく違ってきます。
青色申告には下記のように多くの節税効果がありますが、白色申告にはその節税効果は全くありません。
- 青色申告特別控除が最大65万円
- 赤字の3年間繰越
- 1年で最大300万円を減価償却として一括計上できる
- 家族への給与を経費にできる
- 家事按分を利用できる
確定申告をするにしても青色申告の方が間違いなく高い節税効果を発揮するというわけです。となれば青色申告ができる事業所得に区分される方が特に決まってますよね。それでは申告方法によるこのメリット差を念頭に置きながら、どんな太陽光発電がそれぞれのケースに当てはまるのかを見ていきましょう。
事業所得になるケース
事業所得になるかどうかの判断基準は下記の2点です。
- 太陽光発電システムの出力量が50kw以上
- 一定の管理を行っている
このどちらかの条件に合う太陽光発電システムを設置した場合には、無条件で所得区分は事業所得になります。
また、一定の管理は下記のような状態を指します。
- 土地の上にシステム設置し、その周囲にフェンス等の設備を設置している
- 土地の上にシステム設置し、その周囲の除草やシステムの除雪等を行っている
- 建物の上にシステム設置し、そのシステムの除雪等を行っている
- 賃借不動産(建物や土地)の上にシステムを設置している
これら条件にあてはまる際には、出力量が50kw未満でも事業所得になります。売電ビジネスとして太陽光発電システムを設置する場合には、野立てとなるケースが多く見られます。となれば出力量にかかわらず、上記の条件に当てはまるケースは多くなってくるので、高い節税効果のある青色申告が利用できるでしょう。
しかし、これら条件に当てはまらなくても自宅兼店舗に太陽光発電システムを設置し、発電した電力を店舗で利用している際は、事業所得を得るために電力が供給されていることから事業所得とみなされます。このケースも今後多くなってくるので、よく覚えておいてください。
雑所得になるケース
雑所得に区分されるのは先ほどの事業所得に区分されない場合です。よって、判断基準は下記の2つになります。
- 太陽光発電システムの出力量が50kw未満
- 一定の管理を行っていない
よって、売電ビジネスとして太陽光発電システムを設置する際には、節税効果が得られる青色申告とするためにも注意が必要となってくるでしょう。
太陽光発電をビジネスとして考える場合にはそれ相応の発電量が求められるので、出力量が50kw未満というケースは少なくなるでしょう。しかし、50kw未満となるケースがないわけではありません。その際には青色申告が利用できる事業所得となるように、先に話したそのための条件をクリアする対策を講じることをおすすめします。
税制上の特例
太陽光発電システムによる発電量を全て売電する場合には、税制上で下記の特例措置が受けられます。
- グリーン投資減税
- 経営力向上計画認定による固定資産税減額
特例措置には期間限定のものが多く、平成30年3月現在は上記2つとなっていますが、以前には下記の特例措置も用意されていました。
- 生産性向上設備投資促進税制
- 償却資産税の特例
今後も新たな特例措置が設けられる可能性もあるので、定期的に確認することをおすすめします。それでは現状利用できる2つの特例措置内容について簡単に紹介しておきましょう。
グリーン投資減税
10kw以上の太陽光発電システムを導入し、下記の条件をクリアした場合に利用できる特例措置です。
- 再生可能エネルギー事業者支援事業費補助金を受けた取得
- 青色申告で確定申告を行っている
特例措置の内容は太陽光発電システムに課せられる3年分の固定資産税が3分の2に減額されます。
経営力向上計画認定による固定資産税減額
平成31年3月31日まで利用できる特例措置で、期間内に太陽光発電システムを導入して、経済産業省から経営力向上計画が認定された場合に利用できます。
特例措置の内容は認定後の翌年から太陽光発電システムに課せられる3年分の固定資産税が2分の1に減額されます。
消費税の還付が受けられるケースも!
太陽光発電システムを導入すると、下記の条件に限って消費税の還付が受けられます。
- 売電収入で得た消費税より、システム購入で支払った消費税が多い場合
- 売電収入以外に所得がない場合
消費税の還付を受けるには初年度の確定申告の際に、「消費税の還付申告に関する明細書」を提出すればOKです。しかし、消費税の還付を受けるには消費税の課税事業者であることが条件です。
新事業としてスタートした場合、基本的に2年間の免税事業者となります。本来は収入と支出にかかる軽消費税の総額において収入の消費税額の方が多い場合、その差額を納税する微無が課せられますが、免税事業者となればそれがそれが免除されます。
しかし、免税事業者はこの消費税の還付を受ける対象外です。事業スタート時には確実に支出面での消費税額が大きくなるため、免税事業者となってもメリットはありません。消費税の還付を受けた方が大きなメリットになります。
よって、課税事業者となるためにも、その申請を行わなくてはなりません。
消費税課税事業者となるための方法と注意点
課税事業者となるために必要なのが消費税課税事業者選択届出書の提出です。消費税課税事業者選択届出書を税務署に提出することで課税事業者になることができます。しかし、提出はいつ行ってもいいわけではありません。提出期限は事業開始年度の12月31日でですから、早めに申請を済ませるようにしましょう。
また課税事業者となれば3年間は免税事業者に戻ることはできません。3年間は課税事業者として消費税の確定申告が必要になります。消費税の還付を受けられたことで2年目以降の処理を忘れる人も多いので注意してください。
経費処理上の注意点
確定申告時の節税対策として忘れてはならないのが経費計上です。所得は収入から経費を差し引いた額ですから、経費計上できるものが多いほど所得が低くなるので、納める所得税額を抑えることができます。
売電ビジネスで経費として認められるものは下記のとおりです。
- 減価償却費
- 償却資産税
- 災害保険料
- 借入利息
- 不動産の賃貸料
- 不動産の固定資産税
- メンテナンス費用
- 定期点検費用
- パワーコンディショナー交換費用
- 清掃費用
- 除草費用
- 電気代
- 通信費
運営形態によって必要となるものとそうでないものが出てきますが、経費として認められるのは事業収益を上げるための大事な財源となってきます。きっちりと経費計上できるように、領収書やレシートは必ず保管しておくようにしましょう。
まとめ
太陽光発電システムによる売電ビジネスは基本的に大掛かりなものとなるため、事業所得として認められるケースが多くなってきます。よって、青色申告による高い節税対策を取ることができるでしょう。
経営者としては高い節税効果のある青色申告が利用できるかどうかは深刻な問題です。まずは事業計画の際に青色申告となる事業とできるのかを検討してください。
また、節税には申告方法だけでなく特別措置の利用と、経費計上も必須です。これらも効率よく利用することで高い節税効果が生み出せます。今回話したポイントをうまく利用して、節税効果の高い確定申告としましょう。