2020年の東京オリンピック開催に向けて、首都圏の都市機能向上やインフラ整備が続いています。それにともない不動産投資も活発化しており、投資家なら、このチャンスを是非とも生かしたいと思うはずです。
同時に、金融政策面ではマイナス金利が実施されました。銀行融資が欠かせない不動産投資において、マイナス金利が及ぼす影響も無視できません。
そこで今回は、オリンピック開催を控えた今の時期に、不動産投資を始めるのは適切なのか。そして、マイナス金利が不動産投資にどのような影響を及ぼすのかについて解説します。
現在の不動産市況
今、不動産市況は過熱していると言われています。
「過熱している」と言う部分だけを聞けば、投資に対して自重した方が良いというようにも聞こえます。実際のところどのような過熱ぶりなのかを、冷静に分析してみる必要があるでしょう。
過熱している市場に参加せず、クールにやり過ごしたほうがいいのか。それとも、市況の波にのって投資のチャンスをうかがうべきなのか。
不動産における各指標をもとに、今の市況の実態を分析してみましょう。
地価の推移
2008年のリーマンショックの影響で、それまで好調だった不動産市況が崩壊。リーマンショックの翌年には、東京をはじめとした都心の地価は大きく下落。それに釣られて全国的にも地価が下がり続けました。
しかし、首都圏は経済、人口、資本が集中し、インフラ面の充実ぶりなど、都市として極めて高いポテンシャルを有しています。そのため、地価はすばやく回復基調に転じます。
そして、アベノミクスの好景気やオリンピックの影響もあり、地価は上昇し、堅調に推移しています。
新築マンションの供給戸数
次に、首都圏をはじめとした不動産市況の活性度を計るうえで重要な、新築マンションの供給戸数について見てみましょう。
首都圏の新築マンション供給戸数は、2015年1月~7月の月間平均が5930戸。2016年の同じ期間の月間平均が5,849戸でした。数値的にはほぼ横ばいです。
この約5,900戸という数字だけを見ると、多いのか少ないのかよく分かりません。
「不動産市況が過熱していると言われているのだから、きっとこの数字は多いのだろう」と勝手に決めつけると、間違った判断をしてしまいます。
実はリーマンショック前の半分以下だった供給戸数
約5,900戸という数字が多いのか少ないのかを判断するために、不動産市況が活況だったと言われるリーマンショック前の数値と比べてみましょう。
調査対象期間を、2008年に起きたリーマンショックより、そこから10年前まで拡げてみます。
すべての期間を見てみた結果、この期間で供給戸数が最も多かったは2006年です。2006年の月間平均供給戸数は1万439戸です。2016年の供給戸数と比べると倍近い数値です。
つまり、不動産市場は過熱していると言われていますが、新築マンションの供給戸数は多いどころか、リーマンショック前の数字を回復すらできていないと言えます。
首都圏の中古マンション成約価格
次に、中古不動産の成約単価について調べてみましょう。首都圏の中古マンションの㎡単価を見てみると、前年比で成約単価が53ヶ月連続で上昇しています。
オリンピック景気に沸く湾岸エリアだけではなく、成約単価の上昇は都内全域で続いています。一時は消費税の増税によって住宅価格に影響が出て、下落するのではないかと心配されたこともありました。
ですが、ふたを開けてみれば首都圏の中古マンション価格にほぼ影響はありません。個人間取引が中心になる中古マンションでは消費税が掛からないため、相場への影響がほとんどなかったのでしょう。
不動産市況が過熱していると言われる理由
首都圏をはじめとした地価や、中古不動産価格の上昇を見ると、不動産市況は活発であると言えそうです。
一方で、首都圏の新築マンション供給戸数を見てみると、リーマンショック以前の半数程度しか回復していないということも分かりました。
これらのデータを見ると、「不動産市況は過熱していると言われるほどのものか?」という疑問もわいてきます。
では、なぜ今の不動産市況は過熱していると言われるのでしょうか。それは、銀行の不動産融資に対する積極性に理由があるからです。
今の銀行は、サラリーマンに対する不動産融資も積極的に行っています。実際、年収400万~500万円クラスの個人投資家にも融資が付きやすい状況です。
つまり、銀行融資を受けやすくなった個人投資家の数が増えて、物件価格を押し上げていることが理由として挙げられます。
銀行がこれほど不動産融資に積極的なのは、日銀の金融緩和政策と、マイナス金利の影響によるものでしょう。
では、マイナス金利と不動産投資の間には、どのような関係性があるのかについて、このあと詳しく解説します。
マイナス金利と不動産投資との関係
日銀の金融緩和政策とマイナス金利の影響によって、不動産市況が過熱していると先ほど話しました。
では、なぜマイナス金利が、不動産市況の活性化に影響を与えるのでしょうか。ここでは、マイナス金利と不動産投資の関係性について、深く掘り下げて解説します。
マイナス金利とは
そもそも、「マイナス金利の仕組みとは何なのか」について知っておく必要があります。金利がプラスであれば、銀行にお金を預けて利息を受け取ることができます。これは誰でも知っていると思います。
ですが、金利がマイナスになる「マイナス金利政策」が実施されると、利息の流れが逆になります。つまり、マイナス金利の状態で銀行口座にお金を預けていると、金利を支払って損をすることになります。
このマイナス金利を日銀と銀行との間に設定したのが、今回の金融政策です。銀行は、日銀に決済用の口座を持っています。今までは、この日銀の決済用口座にお金を預けておけば、何もしなくても年0.1%の金利を受け取れました。
つまり、銀行はリスクを取って企業や投資家に融資をしなくても、日銀の決済用口座にお金を預けておけば安全に資産を増やせたのです。そのため、各銀行は融資に消極的で、日銀口座にお金を預けることに積極的でした。
しかし、マイナス金利が実施されたことで、日銀の口座にお金を預けると逆に損をすることになります。
たとえば、今まで日銀に3000億円預けておけば、何もしなくても3億円の利息をもらえたのが、逆に3億円の利息を払わないといけなくなりました。これがマイナス金利の仕組みです。
マイナス金利が不動産投資に及ぼす影響
では、なぜ日銀はマイナス金利を実施したのでしょうか。
銀行が日銀にお金を預けるよりも、市場に貸しだしてお金を回すことを期待しているからです。実際、「日銀に預けて損をするくらいなら、お金を貸し出して利息を受け取ろう」という機運が、各金融機関の間で拡がっています。
では、一体どこにお金を貸して儲けを出すのでしょうか。ここで銀行が貸出し先として目を付けたのが、不動産投資家。つまり、不動産担保ローンです。
銀行の貸出先には、大きく3つあります。
- 住宅ローン
- 企業向けの事業融資
- 不動産担保ローン
マイナス金利下では、国債の利回りが下がります。そのため、国債の利回りと連動する住宅ローンの固定金利も下がります。つまり、住宅ローンで貸すよりも、不動産担保ローンの方が、金利をより高く取ることができるのです。
しかも、不動産担保ローンは住宅ローンよりも、不良債権化のリスクが低いというメリットもあります。
また、企業に対する事業融資は、審査が複雑で手間もかかります。その点、不動産担保ローンの審査は、事業融資よりも簡単でコスト削減にもつながります。
よって、マイナス金利下の現在、各金融機関は不動産担保ローンに積極的なのです。
オリンピック前に始めるのはどうなのか?
地価が上昇し、銀行が不動産融資に積極的で競争率が高くなった為、物件価格は上昇しています。ではこの物件価格と地価の上昇はいつまで続くのか。
その一つの節目として投資家達が注目しているのが「オリンピック」でしょう。
つまり、オリンピックまでは景気が良くて不動産価格の上昇が続くが、オリンピック後には景気がしぼんで不動産価格が下落する可能性もあるとなれば、「今買うのは高値掴みで損をするのではないか」、と考える投資家もいるでしょう。
ですが、10年以上不動産業界で働いてきた筆者から見ると、オリンピック前のこのタイミングは不動産投資のチャンスだと思っています。
たしかに物件価格は上昇していますが、その物件が銀行から評価されて融資を受けられるのであれば問題ないと考えるからです。銀行が評価しているということは、貸したお金に対する担保価値が、物件にちゃんとあるということです。
北京オリンピック後のようにならないか
また、オリンピック後に不動産価格が下落するのではという懸念についても、筆者は真逆の考えです。
オリンピック後の不動産価格下落を心配する人は、北京オリンピック後のバブル崩壊を見て心配しているのだと思います。
ですが、北京オリンピックと東京オリンピックでは事情が違います。オリンピック後にも、東京には目玉的な都市開発がたくさん控えているからです。
リニア中央新幹線開業にともなう、山手線新駅設置や品川エリアの再開発。虎ノ門、渋谷、新宿といった各ターミナル駅の再開発もあります。
これらの再開発で、オリンピック後も東京の物件価格は上昇を続ける可能性が高いと考えられます。ですが結局のところ、将来の不動産価格がどうなるかなど誰にも分かりません。
分からないのであれば、銀行融資を受けやすいタイミングの今が、やはり買い時だと考えます。
今回は、マイナス金利と不動産投資の関係性や、今は不動産投資のタイミングとして最適なのかについて解説しました。
銀行が不動産融資に積極的な今のタイミングは、絶好のチャンスだと思います。是非、前向きにこのチャンスを生かして不動産投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。