不動産投資をする時に、一般の人に住居用として貸すよう物件経営を考える人が多いでしょう。実際に中古不動産を探してみても、その大半は戸建てやアパート、マンションといったいわゆる住宅になります。
しかし不動産運営はもちろん賃貸住宅のみの経営ではありません。駐車場、店舗や事務所、倉庫などの事業用の賃貸物件経営もあります。
住宅の賃貸経営と比べると、どうやって行っていけばいいのか情報も集めにくいかもしれません。ここでは基本的な事業用物件投資のメリット、そしてデメリットやリスクを解説していきます。
事業用不動産投資とは
事業用不動産投資とは、ビルやテナントなど、事業を行うための建物や土地に対する投資と物件の運営のことを指します。
不動産情報サイトを見ても、賃貸用物件以外にも、ビルやテナント、また倉庫や工場などの売買情報も、数はそれほど多くはありませんが見つけられるでしょう。
事業を行いたい人が必要とする不動産を購入し、それを貸し出すことで賃料収入を得ていくのです。
事業用不動産投資を行う流れは、普通の賃貸用住宅経営と大きく変わりません。物件を購入したら、不動産屋にお願いし、入居者の募集を行ってもらいます。
そして賃貸契約を結んで、賃貸をして、管理などは管理会社に任せて運営を行うのが一般的になっています。ただ展開する事業によって、事務所や飲食店、販売店など入居者が求めるものも変わってきます。
一般の住宅はそのままの状態で貸し出すので、原状復帰もそれほど費用がかかりませんが、事業用物件の場合は、入居する事業者が大幅に物件の改装を行うことがあります。また不特定多数の人が出入りするので、建物が汚れたり、損壊したりすることもあります。
そのため敷金や保険料などが一般的な賃貸住宅よりも高くなっています。
また中古物件を購入するのでしたらそれほど気にする必要はありませんが、事業用の建物は建築基準法で建てられる場所が決まっています。
住宅地の中に大型のビルやテナントを建てることはできませんし、平屋のコンビニ用の建物を建てても、用地の用途によっては店舗経営ができないこともあります。
自分で事業用の建物を建てる場合には、そういった点にもよく注意をしましょう。
事業用物件投資のメリット
では一般的な賃貸住宅経営とは違う、事業用物件のメリットは安定性と収益性の高さです。
事業用物件は収益性が高い
賃貸住宅に住む人は、そこで利益を出すことを目的にしていません。そのため賃料に関しては一定の相場があり、よほど豪華で優れた物件でもない限りは相場から乖離した賃料を取ることは難しいでしょう。
住んでいる人にとっては、お金を得る目的で借りていないのですから、安いことに越したことはないのです。しかし事業用物件の場合は、そこに事務所や店舗を借りることで収益を発生させることを目的としています。
もちろん立地や機能、スペックによる相場というものもありますが、収益性の高い物件であれば相場から乖離した、高額な家賃をつけることもできます。
借りる方もその物件にすることで、自分の収益が増える見込みがあれば、高額な家賃でも必要経費として借りてくれるのです。そのため事業用物件の家賃は、賃貸用物件のものよりも高くなる傾向があります。
事業用物件は、一度入居が決まれば何年も入ってくれる
賃貸用物件が2年契約であることが一般的です。そのため2年や4年のタイミングで住み替えをする人が多いですし、そもそも一人暮らし用の物件であれば、結婚や出産などで出ていくことが当たり前なので、10年、20年といった長期の利用は考えにくいです。
しかし会社の事務所や店舗などは頻繁にその場所を変えることがリスクにもなります。
特にお店にとって立地は命ともいえますから、一度良い立地を確保したら極力そこから移転をしたくないものです。つまり事業用物件は長期に渡って借りてくれる可能性が高く、安定した経営が期待できるのです。
ただしお店の売上が不振になれば出ていく可能性もあるので、その物件の立地や魅力次第という側面もあります。
法人利用に適しており相続税対策にもなる
事業用物件を所有すれば、賃料収入が高くなるので、個人事業主で運営するよりも法人を起ち上げるほうが何かと都合が良くなります。
法人になれば使える経費の幅が増えますし、身内に給料を与えることで節税も可能です。さらに利益をコントロールできるので、その面での節税効果も大きくなります。
そして法人の建物ということで物件を所有していれば、相続のときにも法人の所有ということ自分から子供や孫に建物を与えることが可能になります。子供や孫は建物が生み出す利益を法人給与として受け取れるので、相続税がかかりません。
事業用不動産投資のデメリット
一方で事業用不動産投資は賃貸住宅経営にはない難しさやリスクもあります。具体的には物件購入の難しさと、運営の手間になります。
価格が高い上にローンが組みにくいので、購入しづらい
まず事業用の建物はテナントや中型のビルなど大規模な物が多いので、普通のアパート等よりも購入価格が高くなります。立地面でも、高い建物が建てられるのは商業用地に限られるので、土地代も高いです。
さらに事業用ローンは審査が住宅ローンやアパートローンよりも厳しく、買いたいと思う人間が大金の返済能力があるのか、ビルに収益性があるのかなど、厳密に査定されていきます。
多額の融資を受けるには頭金を揃えなくてはいけませんが、頭金を揃えるにはそもそも自分の収入が多くないといけません。その意味では初心者には手が出しづらいともいえます。ただし小さな建物であれば、駅前でも数千万円など、一般的な戸建と同程度の価格で買えるものもあります。
大幅な改装をされることが多く、想定外の利用がある
事業用物件は、借りた側が大幅が改装を加えてくることがあります。特に飲食店や販売店などは自分たちの店舗の魅力を挙げるために、内装づくりや設備投資に力を入れるでしょう。
もちろんどう改装するのか、借りた側がオーナーに許可を得てから決めていくわけですが、それでも退去時に原状回復などで問題が発生しやすいです。大幅に改装した場合、スケルトン状態に戻すのか、居抜きで新しい入居者を探すのかなど頭を悩ませるでしょう。
さらに夜逃げされたり、経営不振で撤退するので原状回復費が満足に払えない、といったこともあります。しかもよく監視していないと、契約内容以上の改装を行い、建物に対して何らかの毀損を発生させていることもあります。
賃貸用住宅では住人が勝手に大幅な改装をしてトラブルになるケースは少ないですが、事業用は改装が前提であることも多いので、こういったリスクがあります。
管理の手間や修繕が大変
階層と同様に、管理や修繕も大変なのが事業用物件の特徴です。不特定多数の人が出入りするので、何が起こるかわからず、飲食店などでは客同士のトラブルもよく起こります。設備が壊されたら修繕をしなくてはいけませんし、出来や水道、エレベーターなど管理の手間やお金もかかります。
立地で全てが決まる
事業用不動産が、立地が集客に大きく影響します。駅から離れた場所、また人の流れが変わってしまうと、お店や会社が集まる場所でないと大変苦戦することになります。またすでに駅前には建物が多く建っているために、新規に良い物件を買う、建てられるチャンスもそう多くはありません。
少なくとも駅から離れた、人の流れのない場所は住宅地にはなりえますが、事業を行っていくのには全く適していません。
事業用物件は、一般的な賃貸住宅と比較すると、ハイリスクハイリターンであるといえるでしょう。初期費用も管理の手間も、また客付けにも苦労をすることは間違いありません。しかし苦労をしても大きな利益を手にしたい、最初に苦労しても軌道に乗れば楽をできるというメリットもあります。
そのような希望を持っているのであれば、事業用物件への投資を検討してみてはいかがでしょうか。