収益不動産の物件情報を眺めていると目にすることがある「オーナーチェンジ物件」
オーナーチェンジ物件とは、どういう意味でどんな特徴がある物件なのでしょうか。
そして、不動産投資をする上でオーナーチェンジ物件には、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
オーナーチェンジ物件とは
オーナーチェンジ物件の「オーナーチェンジ」とは、オーナーだけが変わるという意味です。つまり、「オーナーチェンジ物件を購入する」という事は、既に入居者が付いている物件を前のオーナーから新しいオーナーが買うということになります。
この「既に入居者が付いている物件を買う」という事に、オーナーチェンジ物件最大のメリットがあります。もし、収益不動産を新築した場合、物件が収益を稼ぎ出すまでには某大な手間と時間とお金が掛かります。
ですが、オーナーチェンジ物件なら、これらの手間と経費が省けてしまうのです。
オーナーチェンジ物件のメリットについては、この後、詳しく解説します。収益物件の新築ではなく、中古物件の購入をメインに考えている方なら、基本的にはオーナーチェンジ物件を狙うのがおすすめです。
こう話すと、オーナーチェンジ物件は良いこと尽くめの様ですが、オーナーチェンジ物件ならではの注意点やリスクもあります。オーナーチェンジ物件のデメリットやリスクについても解説しながら、物件を購入する際に必ず気を付けてチェックしなければいけないポイントについてもお話します。
メリット
オーナーチェンジ物件のメリットは、大きく分けて3つあります。
収益物件を新築した場合と比較しながら、オーナーチェンジ物件のメリットについて見て行きましょう。
購入してすぐに家賃収入が入る
オーナーチェンジ物件最大の魅力は、物件購入後すぐに家賃収入が得られる事が約束されていることです。新築の場合、収益アパートやマンションを建てると決めてから、家賃収入を実際に得られるまでに、沢山のステップをこなしていかなければなりません。
- 用地の取得
- 家賃相場の市場調査
- 計画立案
- 建築確認申請
- 工事業者から見積もり取得、業者選定
- 着工
- 完了検査
- 管理会社選定
- 賃貸借契約の内容について検討・精査
- 入居者の募集開始
- 入居審査
新築は、これらのステップをすべてクリアしていく必要があるので、家賃収入を得るまでにかかる時間は、建物の規模や構造にもよりますが、1年~2年先になります。
つまり、その間はお金が出ていくばかりで、1円も収入は無いということです。
また、新築ではなく空室の物件と比較した場合でも、入居者募集の手間と、本当に入居者が決まるのかというリスクを考えれば、既に入居者がいる状態で購入できるオーナーチェンジ物件は魅力的です。
手間と費用が大幅に省ける
オーナーチェンジ物件は、最初から入居者がいるので、募集の手間が掛かからないというメリットがあります。先程、新築した場合に入居者が決まるまでのステップを紹介しましたが、時間もさることながら手間暇もかなり掛かります。
土地の売買時には仲介会社、着工までには設計事務所・工務店、建物完成後は管理会社や賃貸仲介会社などなど。長期間に渡って何度も多数の業者と打合せをしなければなりません。
既に何棟も収益物件を持っていて、不動産経営を行っているベテラン大家ならともかく、初めて不動産投資にチャンレンジするという人や、副業でアパート経営がしたいというような人には、収益物件の新築はかなりハードルが高いと言えます。
また、購入したアパートやマンションが満室稼働だった場合、部屋内のリフォーム工事や原状回復工事の必要がありません。手持ちのキャッシュに余裕のない新人大家に取って、購入直後に資金の持ち出しが必要無いことはとても魅力的です。
空室リスクがない
収益物件の購入において、空室リスクが無いという事は非常に大きなメリットです。
もちろん、空室の物件を購入する際には、事前に綿密な賃貸需要や家賃相場の調査を行います。ですが、いつ入居者が決まるのか、いくらで決まるのかは、実際にやってみないと正確な事は分からないのです。
入学・転勤シーズンであれば、入居者がすぐに決まる可能性が高いです。一方で、賃貸需要の閑散期に物件を取得した場合、賃貸募集をしてもすぐに決まる可能性は低くなります。
その場合、募集開始から1ヶ月で決まるのか、あるいは2~3ヶ月掛かってしまうのかは誰にも分かりません。その点、物件を取得したと同時に家賃収入が約束されているオーナーチェンジ物件なら、空室リスクを考えなくてよいという安心感があります。
デメリットやリスク
ここまで、オーナーチェンジ物件のメリットを3つ紹介しました。
一見すると良いこと尽くめのようなオーナーチェンジ物件ですが、気を付けなければならないデメリットやリスクも存在します。これからオーナーチェンジ物件のデメリットとリスクを一つずつ解説します。
事前に内覧できないデメリット
満室稼働している物件の場合、通常は専有部分(居室内)を事前に見学することが出来ません。その為、建物の外観は綺麗でも、内部は実際にどうなっているのかがまったく分からないのです。
入居者が退去したので部屋へ入ったら、想像以上に痛みが激しかったり、設備が古かったりする可能性もあります。その場合、予想以上に原状回復工事の費用が掛かったり、設備更新が必要になったりと、当初は想定していなかった費用が発生してしまうことになります。
サクラの入居者がいるリスク
利回りを上げて売却価格を釣り上げる為に、サクラの入居者を仕込んで売ろうとする悪質なオーナーもいます。こういった物件を誤って購入してしまうと、購入後にサクラがすぐに退去をして空室が発生し、家賃収入が減少します。
何十室もある満室稼働のマンションであれば、1室か2室にサクラが仕込まれていても被害が少ないでしょう。ですが、大量にサクラが仕込まれていた、もしくはどこかの企業が一括で借り上げていて、その企業がサクラだった。あるいは、サクラではなくても既に退去することが決まっていたというような場合はどうなるでしょうか。
もしその物件を購入してしまうと、新オーナーはすぐに失敗してしまう危険があります。こういった悪質なサクラの被害に遭わない為にも、「誰が」「いつから」「いくらで」「どういった条件」で入居しているのかを、よく確認しておく必要があります。
購入検討時に考えるべき事とは?
オーナーチェンジ物件にもデメリットやリスクはもちろんあります。ですが、それらについてきっちり事前の対策を行えば、より安全性も高まります。投資対象として積極的に狙っていきたいところです。
では、デメリットやリスクに対する対策をしっかり講じていれば、とりあえず買いに入るという事で良いのでしょうか。
筆者は不動産業界で10年以上働いてきました。その間、売買仲介、売主、買主とあらゆる立場でオーナーチェンジ物件を見てきました。そうした経験を通じて、オーナーチェンジ物件の購入を検討する際に、絶対に持っておかなければいけない視点があります。
現オーナーが物件を売る理由は?
オーナーチェンジ物件を検討する際に必要な視点。それは、「なぜ現オーナーは、満室稼働の物件をわざわざ手放さなければならないのか」ということです。
本来であれば、お金を生み続ける物件を手放す必要はないはずです。ですが、敢えてそれを手放そうというのです。そこにはどんな理由があるのでしょうか。
本当は手放したくはないが、資金繰りに困って仕方なく売ることを決意した……こういった理由なら、その物件は買いです。
ですが、そうでないなら、今売らないと損をする理由があるのかもしれません。
- 問題のある入居者が多数いる
- 管理がまともに出来ない状態になっている
- 大規模修繕やエレベーター・キュービクルなどの設備更新時期を迎える
- 屋上防水など、多額の修繕・メンテナンス費用が必要になるので、その前に売り飛ばしてしまいたい
こんな理由であれば、その物件の購入を見送る決断も時には必要でしょう。もし買うのであれば、自身の経験・ノウハウ・手持ち資金で、今後発生しそうなデメリットとリスクを解決出来そうか吟味する必要があります。
「なぜ現オーナーは、この物件を売りたいのだろうか……」という視点を持って考えれば、買い手として調べなければいけない事、相手側に聞かなければいけないこともより具体的に見えてくるはずです。
今回はオーナーチェンジ物件の特徴やメリット・デメリットについてまとめました。
より短期間で確実に家賃収入を得たいというなら、オーナーチェンジ物件は是非とも積極的に検討していきたいところです。その為にも、オーナーチェンジ物件に潜むデメリットやリスクへの対策をしっかり講じることが大切です。