不動産投資をする時には、金融機関からアパートローンなどの融資を受けて物件を購入することになります。その際には金融機関に購入する物件の評価してもらってから、その評価に準じた金額を融資してもらうのが一般的な流れです。
ではどのように金融機関が物件を評価するのかというと、基準として積算価格という数字を算出しています。
ではその積算価格とは一体どのような価格のことを指すのか、また積算価格と収益価格の違いなどについて触れていきます。
積算価格は金融機関が不動産を評価する基準になる
金融機関がローン融資を審査する時に、不動産投資用のローンにおいてはその物件を購入する人間の収入だけではなく、担保となる物件についての評価も考慮に入れます。その理由としては、万が一貸し倒れが発生した際に、金融機関が融資したお金を確実に回収したいと考えるからです。
投資用物件の場合は、価格が高額になることも多いので、債務者本人から全ての融資金額を取り立てるのが困難なこともあります。それよりも担保として抵当権をつけた物件を売却して、融資した資金を回収できるかどうかを重視するのです。
そのための評価額としてよく利用される数字こそが不動産の積算価格なのです。
積算価格と収益価格の違い
金融機関が物件を評価するときに用いるのが積算価格、もう一つ不動産の客観的な評価額基準に収益価格という数字があります。積算価格と収益価格は具体的にどのような点が異なるのでしょうか。
積算価格とは
積算価格とはその物件と、同レベルの物件を用意する時にいくら程度のお金がかかるのかということを計算して算出する数字になります。土地と建物のそれぞれで算出し、最終的に合計した価格がその不動産の積算価格になります。
例えば100平方メートルの土地に80平方メートルの鉄筋コンクリートの建物が建っていたとします。100平方メートルの土地の価格を算出するには、国土交通省が発表している路線価などを用います。路線価は1平方メートルごとの価格が提示されているので、その価格に面積をかけます。
路線価が10万円であれば100平方メートルの土地の評価額は1000万円になります。ただし土地の形状によって評価は変化します。
例えば、角地などは利用がしやすいので、評価額は高くなる傾向があり、土地の評価額が100平方メートルながら1100万になることもあります。逆に縦や横に細長いような土地は建物が立てづらいので、奥行補正率という数字をかけて、評価額が最も低くなります。
最小では路線価の80%程度になることもあります。その他にも、細い通路の奥に土地が広がっているいわゆる旗竿地という土地の計上も評価額が低くなります。
建物の評価額の出し方は同じ条件の物件を現在建てたら、どの程度の再調達価格がかかるのかを考え、そこに現在の築年数に応じた経年補正率をかけていきます。
建物の耐用年数は木造は22年鉄筋コンクリートは34年 rc造は47年と決まっているのでその建物の現在の築年数と耐用年数を比較して割合で価格を出していきます。
計算に用いる構造別の費用は、以下のように定められています。
- 鉄筋コンクリート(RC)・・・20万円/平方メートル
- 重量鉄骨・・・・・・・・・・18万円/平方メートル
- 木造・・・・・・・・・・・・15万円/平方メートル
- 軽量鉄骨・・・・・・・・・・15万円/平方メートル
先ほどの例で行きますと木造の80平方メートルの建物を建てるとしたら80×15で1,200万円かかることになります。そして、現代評価をすべき対象の建物がすでに木造で築11年経った場合は、11/22を1,200万円にかけて600万円の評価額になるのです。
土地の評価額1,000万円と建物の評価額600万円を足した1,600万円が、その建物の積算価格となるのです。
収益価格とは
一方で、収益価格とはその建物がどの程度の収益を発生させられるかということを評価した金額になります。 計算方法としては想定される家賃収入 と還元利回りを元に価格を出していきます。
例えば、その物件の実質利回りが5%だったとします。そこで家賃収入が年間100万円でしたらその物件の収益価格はおよそ100×100/5=2000万円という金額になります。
積算価格とはその建物と土地の価値を算出していくものですが、収益価格は、不動産投資を行った場合の評価額を出していくので、自分が購入したい不動産の用途によって使い分けられることもあります。
ただし、不動産物件の収益性というものは徐々に変化し、一般的には低下していくものなので、金融機関としては基準が会って判断がしやすく、周囲の環境や条件に左右されにくい積算価格を重視して融資に用いているのです。
積算価格と収益価格が乖離する原因
積算価格と収益価格という二つの価格を比較した時に、その価格が大きく乖離していることがあります。金融機関が重視をするのは積算価格になりますが、なぜこの二つの価格が大きく乖離してしまうのでしょうか。
建物を見ていくと、何よりも用途の違いで差が出やすいのです。戸建て物件を購入する場合はその建物は賃貸用に作られたものはないので、たとえ賃貸に出してもそれほど収益性は高くありません。
同程度の面積の建物であっても、戸建とアパートではアパートの方が多くの人を住ませられるので、収益性が高くなります。
積算価格は、あくまでもその物件をもう一度建てた時の金額を元に算出するので、アパートと戸建てで大きな差は出ないのですが、 収益性においてはアパートと戸建ては大きく異なってきます。そのため建物の収益価格は積算価格よりも高くなることが多いのです。
また用途や環境で土地の収益価格と、積算価格も大きく異なってきます。
収益価格は賃貸に出した場合の利益を元に算出する価格ですので、需要がないようなエリアではこれから先賃貸収入も減っていくことが想定されることになり、収益価格は低くなりがちです。不動産価格は、現状都心では上昇傾向にあり、対して地方では下落傾向にあります。
家賃に関しては土地価格の変動にもちろん影響を受けますが、直接大きく影響を受けることはなく、平均的な労働者の給与収入や周辺相場の推移から、緩やかに変動していきます。
例を挙げるならば、土地の売買価格がバブル崩壊後に半額になったときでも、家賃は半額までには落ち込まなかったということです。
集合住宅が少ない住宅街の中にある建物であれば、その周辺で利用が少ないと見込まれるのでやはり収益価格は低くなる傾向がありますし、逆に集合住宅が少なく常に満室が見込まれる、事業用不動産が希少なエリアに経っているなどの受給の関係で収益価格はどんどん変化をするのです。
つまり収益価格は様々な用途によって左右されやすい価格であり、積算価格と比較した時に、大きく変わることもありますし、ほとんど乖離しないこともあるのです。
不動産投資目的で物件を購入する人は収益性を重視して物件を購入するでしょうが、金融機関は物件の運用ではなく物件を売却した時の資金の回収性を重視します。
言い換えれば融資を受けた人と融資をする側でのギャップこそが、積算価格と収益価格の差と言えるでしょう。
収益価格は運用によって大きく変化しやすく、その価値は上下が激しいものになっています。それだけに金融機関は、価格が変動しにくい積算価格を評価基準とするのです。
不動産投資では収益性ばかりを重視しがちですが、金融機関から融資を受けて不動産投資を行いたいのであれば、積算価格を重視して、投資用物件を選ぶ必要もあるでしょう。