新しい土地活用方法として注目を集めている民泊経営ですが、2018年6月に新たに施行予定の民泊新法が利用できない2018年3月現在では、民泊経営を営むには大きく分けると下記どちらかの方法しかありません。
- 簡易宿所の許可を受ける
- 国家戦略特区で特区民泊の認定を受ける
このどちらかの方法を取っていない民泊は無許可営業となり、違法ということになります。民泊のマッチサイト大手のAirbnbは違法という話をよく耳にするのも、無許可営業の民泊オーナーが多数存在することが原因でしょう。
民泊新法が施行されれば申請だけで民泊経営ができるようになるので、無許可営業の民泊は大きく減ることが予測されます。しかし、現状では民泊経営の許可を取るのが難しいこともあって、無許可営業の民泊が多いことも事実です。
そこで今回は国家戦略特区に焦点を絞って、合法的に民泊経営を営むにはどうすればいいのかを解説していきましょう。
国家戦略特区での民泊経営
結論から言えば国家戦略特区での特区民泊は認定を受ければ合法です。そもそも「国家戦略特区って何?」という人も多いでしょうが、民泊新法が施行されるまでは国家戦略特区で特区民泊となることが合法的に民泊経営を営むひとつの方法であることに違いありません。
しかも特区民泊となっておけば民泊新法で新たに許可を取る必要はないので、なるべく早く民泊経営を合法的に始めたいという人は、その条件をしっかりと理解しておくべきでしょう。
国家戦略特区とは
それではまず聞きなれない国家戦略特区とはどんな地域を指すのかを解説します。国家戦略特区とは内閣総理大臣主導で進められている日本再興戦略の1つで、世界で戦える国際都市形成を目的に集中的に改革を推進する地域として創設された区画を指します。
その国家戦略特区に指定された区画は下記のとおりです。
- 東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市、千葉県千葉市)
- 関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)
- 秋田県仙北市
- 宮城県仙台市
- 新潟県新潟市
- 愛知県
- 兵庫県養父市
- 広島県
- 愛媛県今治市
- 福岡県福岡市
- 福岡県北九州市
- 沖縄県
特区民泊として合法的に民泊経営するためには、事業を開始する地域が上記区画に入っていることが前提となります。上記に事業開始予定地が含まれていない場合は、国家戦略特区で特区民泊として民泊経営を営むことはできません。
特区民泊を検討している人は、まず国家戦略特区に含まれているかどうかを確認するようにしましょう。
合法か違法かについて
国家戦略特区で民泊経営を始めたからといって、必ずしも合法的な民泊経営となるわけではありません。先に言ったように特区民泊となるためにはその認定を受ける必要があるのですが、国家戦略特区である自治体が特区民泊に関する条例を定める必要があります。
民泊経営を営む上で各自治体がそれぞれ細かな決まりごとを規定して、健全な民泊経営が継続できるようにします。これを民泊条例というのですが、この民泊条例を制定していない自治体の地域では国家戦略特区での特区民泊は営めません。
よって、認定を受けるもなにも、国家戦略特区の自治体が特区民泊を認めてる民泊条例を制定しているかどうかが重要なポイントとなります。実は民泊条例を定めて特区民泊が可能な国家戦略特区は限定されており、大阪府は可能地域が非常に多いのですが、その他の地域では決して多いとは言えないのが実情です。
自治体が特区民泊を認めている地域は下記のとおりです。
(東京都)
- 大田区
(大阪府)大阪府
- 守口市
- 大東市
- 泉佐野市
- 能勢町
- 忠岡町
- 岸和田市
- 池田市
- 泉大津市
- 貝塚市
- 茨木市
- 八尾市
- 富田林市
- 寝屋川市
- 河内長野市
- 和泉市
- 箕面市
- 柏原市
- 羽曳野市
- 門真市
- 摂津市
- 高石市
- 藤井寺市
- 泉南市
- 四條畷市
- 大阪狭山市
- 阪南市
- 島本町
- 豊能町
- 熊取町
- 田尻町
- 岬町
- 太子町
- 河南町
- 千早赤阪村
(新潟県)
- 新潟市
(福岡県)
- 北九州市
特区で民泊施設として認定される条件
また国家戦略特区で合法的な民泊経営をするためには、都道府県知事への特区民泊の認定申請が必要になります。その際に認定を受けるために必要となってくる条件は下記のとおりです。
- 居室の床面積が25㎡以上
- 出入口および窓が施錠できる
- 出入口と窓を除いた居室と居室、廊下との境が壁造り
- 適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有する
- 台所、浴室、トイレおよび洗面設備を有する
- 寝具、テーブル、椅子、収納家具を有する
- 調理のために必要な器具や設備を有する
- 清掃のために必要な器具を有する
- 消防法への適合
またこれらに加えて各自治体が設けた条例によって追加条件が出てきます。申請後にはこれら条件がクリアできて法令を遵守した営業ができるかどうかが審査され、審査をクリアすれば晴れて合法的に民泊経営を営むことができる状態になります。
また営業時の条件にも注意が必要で、宿泊期間が7日から10日以上に規制されています。最低でも7日以上の宿泊でなければ宿泊を請け負うことができないのは大きなデメリットと言えるでしょう。
2018年の春を目処にして大田区の特区民泊を2泊3日から利用できるように条例を改善する動きが見られますが、他の地域の特区民泊は長期滞在者しか宿泊できないのは経営にも大きく影響してきます。大田区以外で特区民泊を検討している人は注意するようにしましょう。
手続きの流れと必要書類
それでは最後に特区民泊の特定認定申請の流れを簡単に紹介しておきます。
大まかな流れは下記のとおりです。
- 特区民泊の認定申請書と必要書類の提出
- 書類審査
- 実地検査
- 審査の合否通知
書類を提出したあとは特区民泊の条件を満たしているかの書類審査となり、書類審査に問題がなければ申請内容と実際の施設内容に相違がないかを実地検査で確認します。この双方で問題なしとなれば審査通過となり特区民泊の認定となります。
しかし、特区民泊の認定を受けるにはかなり多くの提出書類が求められるので、提出漏れのないよう慎重に事前準備を進める必要があります。提出が求められる書類は下記のとおりです。
- 定款又は寄附行為及び登記事項証明書(申請者が法人の場合)
- 住民票の写し(申請者が個人の場合)
- 賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款
- 施設の構造設備を明らかにする図面
- 滞在者名簿の様式
- 消防法およびその他消防に関わる関連法令に適合していることを証明する書面の写し
- 水質検査成績書の写し(使用する水が水道法に規定される水以外の場合)
- 賃貸借契約に係わる契約書の写し(申請者が施設の賃借人または転借人の場合)
- 施設所有者、賃貸借契約に係わる全ての人が特区民泊利用に承諾している書面の写し(申請者が施設の賃借人または転借人の場合)
- 施設の構造設備の概要
- 旅客者滞在に必要な役務の提供等の概要
- 付近見取り図
- 居室内に設置されている施設の使用方法に関する案内書
- 近隣住民の周知を得るために使用した資料と周知方法と実施結果を記載した書面
上記のように提出が求められる書類には作成する必要のあるものが多数含まれます。これらはあくまでも一般的に必要とされる書類であり、申請先の自治体によってこれ以外にも提出が求められる書類が出てくる可能性もあります。
提出書類が揃わないことにはスムーズに審査が進められないので、どんな書類が必要になるのかを事前に確認し、提出漏れのないように注意してください。
まとめ
国家戦略特区で特区民泊の認定を受ければ、合法的な民泊経営を営むことができます。しかし、大阪府以外では特区民泊を認めている自治体は少なく、誰もが特区民泊として民泊経営を始めることができないのが実情です。
大阪にお住まいの人ならばその可能性は大きいと言えますが、それ以外の地域にお住まいの人は、かなりの制限を受けることになるでしょう。
2018年6月には簡単な申請で合法的に民泊経営ができる民泊新法が施行されます。2020年の東京オリンピックに向けて民泊需要が高まる東京以外では、無理をして民泊特区となるよりも、民泊新法の施行を待つ方が得策もしれません。
しかし、できるだけ早く民泊経営に取り組みたいという方は、現状においては特区民泊の認定を受けるのが一番簡単な方法と言えるでしょう。その場合には今回解説した内容を参考にして、スムーズな認定申請を行うようにしてください。