屋根の上に設置されている太陽光パネルを見かけたことがある人は多いと思いますが、ここ数年は屋根の上だけではなく、遊休地に太陽光パネルを並べているところが増えてきました。
数年前までは太陽光発電ブームとも言えるほど、企業や個人投資家がこぞって太陽光発電に参入していました。そのブームも今は少し落ち着いてきたと言われていますが、どうしてこのタイミングで太陽光発電に取り組む人が増えたのでしょうか。
その背景には、太陽光発電などの再生可能エネルギーを普及させたいという、国のエネルギー政策の影響があります。個人でも取り組みやすい太陽光発電は、買取価格の優遇や補助金の支給など、普及への後押しがあったのです。
しかし、こういった後押しも、その時々に応じた国の考え方によって大きく軌道修正されます。マンション経営などの他の不動産投資のプランよりも政策の影響を受けやすいので、太陽光発電を始める時の制度の中身に注意を払わなければなりません。
不動産投資としての太陽光発電を理解するためには、現状をおさえておくことが必須条件となります。
この記事では、太陽光発電を取り巻く現在の状況を見ていくことで、太陽光発電の収益性や今後の展望について考えていきます。まずは太陽光発電の概要から説明し、メリットやデメリットを解説します。
太陽光発電(ソーラー)経営とは
太陽光パネルを屋根や土地などの屋外に設置し、パネルに照射される太陽光のエネルギーを使って発電します。
発電した電気はオーナーの自宅等で使用することができる他、電力会社に買い取ってもらうことができます。小さな発電所を自前で持つのと同じことですね。
そして、自家発電した電力を電力会社に売ること、すなわち「売電」によって収益を得ていくのが、太陽光発電(ソーラー)経営です。
石油や石炭などの化石燃料は物理的に限りがありますが、太陽光発電、風力発電、水力発電は、石油等の資源とは異なり、なくなることはほぼないと言っていいでしょう。
石油を使って電力を生み出す火力発電のように、限りある資源を食いつぶしていくわけではないので、これらは「再生可能エネルギー」と呼ばれています。再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電は個人投資家でも参入できるため、多くの人が不動産投資の一貫として取り組んでいます。
太陽光発電の種類
太陽光発電には、「余剰買取」と、「全量買取」の2つの種類があります。
「余剰買取」では、余った電力を電力会社に買い取ってもらいます。まず最初に自宅等での消費電力に充てて、そのうえで余った余剰電力を売ることになります。
一般家庭の屋根の上にパネルを設置して行う太陽光発電はこのタイプになるので、「住宅用」とも言います。
発電した電気をすべて自家消費してしまった場合には売る電気がなくなってしまうため、売電収入は得られません。もちろん、自分でつくった電気を自分で使うのですから、電力会社へ支払う電気料金の節約になります。
余る電力が多ければ多いほど収入につながりますが、自家消費が優先されるので、使用電力によって売電収入額が左右されることになります。
もうひとつの「全量買取」は、発電したすべての電気を電力会社に売ることをいいます。ただし、10kw以上の太陽光パネルを設置することが条件となります。
余剰買取よりも大容量の発電となるため、自宅での電力使用というよりも、産業目的が前提となっています。
そのため、「住宅用」の余剰買取の対比で、「産業用」とも呼ばれます。全量買取は少なくとも10kw以上の太陽光パネルが必要となるため、個人住宅の屋根の上に太陽光パネルを乗せるレベルのものではありません。
土地の上に太陽光パネルを設置する場合は「野立て」と言います。1kwの太陽光パネルを設置するのに、10㎡~15㎡(3坪~4坪)の土地が必要となることは目安として覚えておいてください。
10kw以上の全量買取の場合には、100㎡~150㎡(30坪~40坪)は最低限必要な計算となります。パネルのメーカーや土地の状態によっても必要な広さは変わりますので、あくまでも目安として参考程度ではありますが、ある程度の広さの土地が必要であることは実感できると思います。
これから不動産投資としての太陽光発電をするのであれば、どのくらいの広さの土地を用意できるのかも、考慮すべき重要なポイントということになります。
太陽光発電のメリット
まずは、不動産投資としての太陽光発電のメリットを見ていきます。
- 自家発電によって電気代を節約できる
- 売電収入が得られる
- 一定の買取期間が定められている
- 社会貢献になる
自家発電によって電気代を節約できる
太陽光発電は、自宅に発電所をつくるようなものです。余剰買取の場合は、自分でつくった電気を使えるのですから、電力会社に支払っていた電気料金を節約できます。
そのうえで売電できるので非常にお得です。太陽光発電を始める前よりも電気料金がかからないばかりか、さらに収益を得られます。
売電収入が得られる
不動産投資としての収益は電気を売って得られる売電収入です。あらかじめ設定されている売電価格に基づいて電気を電力会社に売ることになります。
収益性に大きな影響を与えますから、売電価格は太陽光発電の基礎知識なのでしっかりと理解してください。売電価格については、のちほど詳しく解説します
一定の買取期間が定められている
あらかじめ決められている買取期間中は売電収入が得られるため、収益の計画がたちやすいメリットがあります。
10kw未満の余剰買取・住宅用は10年間、10kw以上の全量買取・産業用は20年間です。長期間買い取ってくれることが保障されているので、オーナーとしては安心して取り組めます。この期間が終了するまでのあいだにどれだけ収益を得られるかが、太陽光発電の収益性を評価するときの大事な要素となります・
社会貢献になる
原子力発電や火力発電など、他の発電システムの代わりとしての太陽光発電が注目されています。太陽光パネルを置くだけで発電ができて非常にエコだからです。
原子力発電は管理が難しく大規模な事故の心配がつきまといますし、火力発電には地球温暖化や資源問題のリスクが指摘されています。その一方で、太陽光発電は太陽光を利用するだけなので環境に優しく、社会貢献にもつながります。
太陽光発電のデメリット
メリットがある反面、デメリットもあります。リスク回避の対策をたてるためにも、これらのデメリットを理解することが大切です。
- 売電価格が自分で決められない
- 買取期間終了後の取り扱いがわからない
- 天候に左右される
- 太陽光パネルの故障リスクが高い
売電価格が自分で決められない
発電した電気を電力会社に売る際の価格は、自分で決めることはできません。ビジネスをする場合は通常、価格を自由に決めることができます。しかし、売電価格はエネルギー政策や発電コストなどを踏まえ、さまざまな要因に応じて国が決めています。
国が買取価格を上げると言えば上がりますし、下げると言ったとたん下がってしまうので、国の電力政策における太陽光発電の位置づけをきちんと見極めなければなりません。
国の一存で決まってしまうので不安定ではありますが、気にしなければならないのは太陽光発電に参入する年度の買取価格です。いったん適用されれば、その後に変更されることはないので、その点は安心できます。
買取期間終了後の取り扱いがわからない
メリットの項目で紹介した買取期間は、電力会社が買い取らなくてはならない「義務」の期間を意味します。つまり、10年か20年を過ぎたあとは電力会社が買い取らなくてもよくなります。
最長でも20年間で太陽光発電投資は終わりますので、買取期間が終わったあとにどうなるかは不透明で、はっきりしたことは言えません。
太陽光発電システムの耐用年数は30年程度と言われています。推測に過ぎませんが、買取期間が過ぎても太陽光発電システムが稼働する場合には、太陽光発電を始めたときの買取価格よりも安い価格での買取になることが予想されます。
そうしないと、せっかく設置したシステムそのものがもったいないですし、野ざらしのまま放置されてしまえば、遊休地と増やしてしまうことになるからです。
固定価格買取制度は2012年に始まりましたので、最初の10年を過ぎる2022年に近くなると、なんらかの方向性が示されるはずです。どのようなことになりそうか、注目する必要があります。
いずれにせよ、太陽光発電を始める際には、買取期間終了後はあてにすることはできません。買取期間内でどのくらいの収益が得られるかどうかを考えておく必要があります。
天候に左右される
雨が続いたり、曇りの日ばかりになってしまうと、発電に必要な太陽光が不足してしまいます。晴れの日が続いてくれればいいのですが、天候をコントロールすることはできません。
結局のところ神頼みになってしまいますので、太陽光発電が稼働できるかどうかが不安定なことは、特徴的なデメリットです。
太陽光パネルの故障リスクが高い
太陽光パネルを屋外に設置しますので、台風や豪雨被害によって太陽光パネルが打撃を受けてしまうことがままあります。
雨風にさらされることによる被害だけでなく、人間によるいたずらや鳥のフン害など、屋外に設置することで生じるトラブルに巻き込まれる可能性が捨てきれません。
太陽光パネルの表面は、こういったデメリットに対処するために衝撃にも強くつくられています。しかし、裏面は衝撃に弱いという特徴があります。太陽光発電システムを維持するためには、太陽光パネルの表面だけでなく、周囲を含めての保守管理が必要です。
太陽光発電の収益性と費用について
実際のところ、投資効果はどのくらいあるのでしょうか。太陽光発電経営がブームとなってしばらくたちましたので、これまでに集積されたデータを見てみることにしましょう。
太陽光発電の利回り
利回りは、不動産投資の効率を考えるうえで非常に重要な指標となります。簡単に説明すると、年間に得られる収入の投資額に対する割合が利回りです。利回りが高ければ高いほど、収益性に優れ、すぐに投資金額を回収できることを表します。
太陽光発電は、おおよそ10%前後の利回りになります。利回りが10%であれば1年間で投資額の10分の1が得られる計算です。理論上は、10年間で初期投資金額を回収できることになります。
利回りが10%となるのは、固定価格買取制度における買取価格が、10年以内での初期費用の回収を想定して定められているためです。もちろん、天候や太陽光パネルの設置状況などの不確定な要素によって初期費用の回収期間は変わってくるので、個別のケースを精査する必要があります。
全量買取の場合は20年間売電ができるので、利回りが10%であれば、11年目以降の売電収入がまるまる利益になります。
ただし、これはあくまでも表面的な利回りです。土地にかかる費用、メンテナンス費用、監視費用、その他、緊急時のためのプール費用などによって収益は変わってくるので、個別のケースによって実質的な利回りは異なります。
太陽光パネルを設置してくれる業者からも、こういった利回りの説明があると思います。この時に、初期投資だけを使って利回りを計算する業者はとても危険です。メンテナンス費用や突発的に必要となる費用も計算したうえで、実質的な利回りを計算するのが不可欠だからです。
より実態に沿ったかたちで利回りを計算するためにも、これから説明する初期費用やランニングコストの内容をしっかりと把握しておく必要があります。
必要な費用、経費
太陽光発電の特徴のひとつとして、ある程度の初期費用がかかるものの、維持にかかるランニングコストが比較的安いことが挙げられます。
初期費用
太陽光発電は、まとまった初期費用が必要になります。太陽光パネルの購入や設置に加えて工事費用がかかってしまうためです。一般的なお店で売ってるわけではありませんので、値段の想像がつかない人がほとんどだと思います。
設置する場所にも変わってきますし、太陽光パネルの面積によっても変動がありますが、太陽光発電協会が発表しているデータをもとにした平成27年度の平均値としては、およそ180万円弱はかかっている計算です。
電力1kwあたりのシステム価格38.5万円(新築と既築の合計)と平均設置用量4.56kwをかけると、175.6万円となります。
資源エネルギー庁が出しているデータによれば、全量買取の初期費用は、1kwあたり30万円程度です。全量買取の最低ラインである10kwであっても、300万円かかります。
初めて太陽光パネルの値段を聞く人は、「結構かかるな」という印象を持つかもしれません。太陽光パネルは、平地にそのまま置くのではなく、ななめに設置しなければなりません。
ななめに置いておけば太陽光に当たりやすくなりますし、ホコリなどのゴミも自然と流れていきます。太陽光パネルに角度をつけるために土台を設置するのですが、この土台の価格が馬鹿にならないという事情もあるようです。
ただし、このデータはあくまでも平均値で、個別のケースによってはこの金額が当てはまらないこともあり得ます。実際、とある業者の見積もりによれば、20坪の土地に6.7kwの太陽光パネルを設置する場合、300万円程度(1kwあたり45万円)かかるといった試算もあります。
そのため、事前に安く見積もってしまうよりも、余裕を持って多めに考えると安心でしょう。1kwあたり、だいたい40万円~50万円程度はかかるものと想定しておけば、ほとんどのケースで対応できると思います。
ランニングコスト
資源エネルギー庁から出されている資料では、運転維持費用として1kwあたり3,600円(10kw未満)から6,000円(10kw以上)と推定されています。
さきほども例にあげた20坪で6.7kwの場合、年間25,000円弱となります。10kwであっても年間6万円程度です。
点検や草刈り、清掃時に日々の状態をチェックするのはもちろんのこと、デメリットの項目でも見たような突発的なトラブルに対処するための費用がかかってきますので楽観視はできません。しかし、マンション経営などと比べれば、太陽光発電の維持費用は格安と言えます。
費用は安くても、屋外に設置する精密機器ですから、正常に動作させるための管理自体は必要になります。パネルとパネルの間やパネルの下に生えてきた雑草の刈り取り、イタズラの有無やパネルの作動確認など、ちゃんとやろうとすると時間と手間がかかることは知っておきましょう。
オーナー自身でこういった管理をできればいいのですが、全量買取の10kw以上ともなると広い土地になりますので、収益の得られる20年もの間、自分だけでメンテナンスをする自信はあるでしょうか。
そのような自信が持てなかったり、物理的に時間のない人は、専門業者に管理を委託してしまうのが現実的な解決策となります。その場合の費用もランニングコストとして計上しておくと、余裕を持った投資計画ができ上がります。
太陽光発電に関する補助金
国が実施していた補助金制度があったのですが、2014年度から廃止されてしまいました。それまでは1kwあたり3万円くらいの補助金があったのでコスト削減に役立ち、太陽光発電の後押しにもなっていました。
現在は、各地方自治体が補助金を出しています。各自治体で内容が異なるのですが、たとえば東京都品川区の場合、「太陽光発電システム設置助成金」として、1kwあたり3万円(9万円が上限)が支給されます。
ちなみに、県からの補助金と市区町村からの補助金の両方をもらうことができる場合もあります。複数の補助金を活用できることもあるので大いに活用してください。
ただし、先着順で支給対象となるかどうかが決まってしまう自治体もあり、必ず支給されるわけではないことに注意してください。もちろん、補助金を受け取るには各自治体ごとに定められた申請期間に申請する必要があります。
先着順であることをことさらに強調して、太陽光発電への参入を即決させる業者がいることは、先に述べた通りなので注意してください。
太陽光発電を始めるかどうか検討する段階で、なるべく早めに自治体のホームページを確認したり、自治体に直接問い合わせてみることをおすすめします。補助金の有無によって太陽光発電への参入を決めるというのもひとつの方法です。
よくある失敗例
さまざまなリスクを回避するために具体的な失敗例を知っておくと、対策を立てることができて効果的です。
太陽光発電システムを設置するには、業者へ依頼する必要があります。良心的な対応をしてくれる業者がいる一方で、残念ながら強引な営業をしてくる業者も多くいることに注意しなければなりません。
業者の不誠実な対応による失敗談として多く報告されている事例が、実際の売電が契約前のシミュレーション通りいかなかったというものです。
たとえば、太陽光発電システムを設置するためにローンを組み、電気を売った収入で返済する計画をたてプラス収支になるというシミュレーションをもらったにも関わらず、実際には返済額にもならない程度の発電しかできないというケースです。
また、後述するように、太陽光発電には自治体から補助金が支給されることがあります。この補助金を受けられる人数に限りがあることを理由に、業者が申請を急かしてオーナーを焦らせてしまい、考える時間を与えないという例も報告されています。
太陽光発電をめぐる失敗例の中でも、業者にまつわる話が多いのはとても悲しいことです。基本的に、業者はメリットばかりを強調します。営業活動である以上仕方がないことかもしれません。
しかし、良心的な業者であれば、ずさんなシミュレーションではなく、デメリットまでを踏まえて丁寧な説明をしてくれるはずですから、じっくりと時間をかけて、信頼できる業者を選んでください。複数の業者から見積もりをもらえるサイトを利用すると便利です。
太陽光パネル設置までの流れ
次に、太陽光発電を始めるまでの流れを説明します。
- 施工業者を決める
- 現場を調査する
- 発電システムをどのように設置するかを計画する
- 電力会社との売電に関する契約を締結する
- 太陽光パネルの設置
施工業者を決める
太陽光発電システムの構築は、専門業者が行ってくれます。複数の専門業者にコンタクトを取り、それぞれを比較してみることが重要です。
決して、費用の安さだけで飛びつくようなことがないようにしましょう。施工業者を選ぶ際には、これまでの実績や担当者との相性など、総合的な判断によって決めてください。
そのためにも、いくつかの施工業者の中からベストなところを選ぶという姿勢がおすすめです。まずは、近隣エリアでの施工実績のある業者を探してみるとよいでしょう。
現場を調査する
施工業者が現場を調査し、効率のよく太陽光発電が行えるかを調査します。太陽光が重要ですから、日照を妨げるものがないか、風の強さといった自然環境の状態などを見ていきます。
発電システムをどのように設置するかを計画する
現場の調査結果を踏まえ、具体的な設計がなされます。太陽光パネルの種類や数、土台の設置などが決まります。
設計が終わった際には、必ず報告を受けるようにして、わからないことがあれば質問して解決させておきましょう。
電力会社との売電に関する契約を締結する
電気を売るための諸手続きを行う必要があります。この申請まで代行してくれる業者を選んでください。
太陽光パネルの設置
そしていよいよ、太陽光パネルの設置が始まります。設置が終わったらきちんと発電できるか検査、測定を行います。
以上が大まかな流れです。
売電価格の推移と今後の予想
2011年の東日本大震災での原子力発電所の事故をきっかけとして、エネルギー政策が見直されるようになりました。
エネルギー政策に対してはさまざまな考え方があり、ここではどちらがいいのかについての言及は避けますが、原子力発電のように事故があったときのリスクが高いものから、自然の動力を活用した再生可能エネルギーを利用したほうがいいという考えが無視できなくなったことは明らかです。
このような背景から、太陽光パネルを一般家庭にも普及させようという取り組みが活発になりました。これまでのエネルギー政策を転換させる象徴とも言えるのが、太陽光発電経営の広がりです。
まず、理解してほしいのが、太陽光発電でつくられた電気の価格は自分では決められないということです。商品の価格設定を自由にできないという点は非常に重要で、収益が政策に左右されうることを意味します。
では、売電価格はどのように決められているのでしょうか。その基本となるのが、「固定価格買取制度」です。
固定価格買取制度とは
固定価格買取制度は、太陽光発電だけでなく、風力や地熱発電を含む再生可能エネルギー全般の普及を目的に2012年7月に定められました。
再生可能エネルギーで発電した電気を10kw未満の余剰買取(住宅用)であれば10年間、10kw以上の全量買取(産業用)であれば20年間、電力会社が買い取ることを義務付ける内容となっています。
ポイントとなるのは、電気を売る価格は買い取り先の電力事業者が決めるのではなく、国が定めている点です。
現在の売電価格と価格の推移
これから太陽光発電に参入しようか迷っているオーナーは、固定価格買取制度によって定められた売電価格の推移が気になっていると思います。
今のところ、買い取り価格は下落を続けています。固定価格買取制度が始まった当初よりも普及が進んできたこともあって、価格の下方修正がなされているのです。価格については毎年変わっていきますが、オーナー自身で自由に設定できないのがもどかしいところです。
2012年度の固定価格買取制度では1kwhあたり42円(余剰買取)と40円(全量買取)だったものが、2017年度では30円(余剰買取・出力抑制あり)、28円(出力制御なし)、21円(全量買取)まで下がってしまっています。
現在、2018年度と2019年度のおける余剰買取の買取価格まで決まっていますが、2018年度は28円(余剰買取・出力制御あり)、26円(出力抑制なし)、2019年度はさらに2円下げられ、26円(余剰買取・出力制御あり)、24円(出力制御なし)まで下がってしまっています。尚、10kw以上の全量買取は入札で決まる予定で、まだ決定されていません。(2017年7月現在)
出力制御とは、太陽光発電が急速に広まり、想定以上に売電量が増えてしまったことによってつくられたルールです。この出力制御ルールが適用される場合は、年間360時間に限って買取を拒否することができます。
価格の推移を見ると、わりと大きく下がっていることがわかります。参入のタイミングで単価が変わってしまうことは、太陽光発電の大きな特徴です。
電気料金に上乗せされる賦課金とは
電力会社が買い取る際の費用は、電力会社が負担しているのではなく、電気料金に上乗せされた賦課金が充てられています。再生可能エネルギーを発電するための、原資を国民全体から少しずつ徴収しているということです。
賦課金は、1kwhあたり2.64円です。これだけを見ると安そうにも思えますが、一般的な標準家庭で年額8,232円になりますから、実のところ結構大きな負担となっています。
手元に電気料金の領収書があれば、確認してみてください。「再エネ発電賦課金等」のような項目があるはずです。意外と高い金額に驚かれるかもしれません。
電力会社が再生可能エネルギーを買い取るためのお金ですから、巡り巡って太陽光パネルを設置して発電している人のところに渡ります。つまり、太陽光発電経営によって賦課金が戻ってくることにもなります。
もしかしたら、強制的に賦課金が徴収されることに違和感を覚える人もいるかもしれません。賦課金の目的は、再生可能エネルギーの普及にあります。それでは、なぜ再生可能エネルギーを普及させる必要があるのでしょうか。
経済産業省エネルギー庁が出している「エネルギー白書2017」によると、2015年時点の火力発電が84.6%を占めています。火力発電は石油や石炭を利用しますので、海外から資源を輸入する必要があるので不安定です。
太陽光発電などの再生可能エネルギーの比率が高まれば、海外から輸入する石油や石炭などに頼らなくてもよくなり、結果として電気料金の安定化にもつながります。そうすれば、電気を使用する国民全体が恩恵を受けることになるのです。
こういった考え方が背景にあっても、スパンの長い話でなかなか実感がわかないと思いますが、賦課金の負担から免れることは基本的にはできません。
このように、太陽光発電経営を支える固定価格買取制度は、国民負担のもとで成立しています。設備投資に必要な価格など、さまざまな状況に合わせながら適宜変更されていきますので、今後、どのような政策判断になっていくのかを注視する必要があるでしょう。
今後の動向予測
売電価格が下がっている背景には、太陽光発電の導入コストの下落もあります。普及が進むにつれて太陽光パネルも安くなっていて、それに合わせるかたちで売電価格が調整されています。
設備投資に必要なコストも買取価格が決まる要素になっていることから、買取価格が下がっているからといって収益も下がるわけではありません。
しかしながら、固定価格買取制度が始まったときに期待できた収益を得るのは非常に厳しいと言わざるを得ません。当初の価格は、普及を後押しする意味においても高めに設定されており、政策的な意図を反映した「プレミア価格」だったのです。
実は、価格買取制度が始まってからの3年間は「利潤に特に配慮する」とされていて、買取価格に利潤が上積みされていました。
買取価格が高めに設定されていたことが、太陽光発電事業の参入ブームを生んでいたのです。この「利潤配慮期間」が終わった今、買取価格は下がる方向に改定されていきます。
ちなみに、電力会社から電気を買う場合(一般的な電気の使い方)の電気料金は地域によって異なりますが、だいたい27円から30円くらいです。
かろうじて売電価格の方が高いか同じくらいの状態にありますが、今後は買取価格が下がるので電気料金の方が高くなります。
自宅で電気を使用して電気料金を支払いつつ、その電気料金よりも安い単価で電気を売ることは、不動産投資として損をすることになってしまいます。つまり、これからの太陽光発電は、電気料金の節約という意味合いのほうが濃くなってきていると言えます。
こういった事情を踏まえると、不動産投資として太陽光発電に取り組むべきかどうか、自身の投資目的に合うかどうかをよく吟味する必要がありそうです。
まとめ
固定価格買取制度が始まった当初から比較すると、太陽光発電の不動産投資としての収益性は見劣りしてしまいます。また、「プレミア価格」が設定されていた、当初に参入した太陽光発電に関連する企業の倒産もニュースになるなど、太陽光発電を取り巻く環境が明るいとは言えない状況があります。
そうは言っても、安定的な収益を得るという意味では、太陽光発電には一定期間の買取が約束されているというメリットがあります。広大な土地を持っていて活用に困っている場合などは、全量買取が選択肢に挙がります。
ただ、余剰買取の場合には発電量があまり多くないので、自宅の電気料金を賄う程度にとどまると考えたほうがよさそうです。準備できる土地の広さが、太陽光発電の参入を検討するうえでの大きなポイントとなります。
余剰買取か全量買取か、どちらであったとしても、買取価格はこれからも下がっていくことが予想されていますので、現段階で買取価格が判明している2019年度までが、太陽光発電で稼ぎたい人が参入するべきタイミングの山場となるでしょう。
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