不動産投資はキャッシュフローの計算ができないと破綻?

不動産投資はキャッシュフローの計算ができないと破綻?

不動産投資を行う上で、非常に重要なお金の流れの一つに、キャッシュフローがあります。このキャッシュフローを重視していないばかりに、物件の運営は帳簿上順調にいっているはずなのに、全く利益が出ていないといくこともあるのです。

そしてその結果、ローン返済が滞って物件を手放さざるを得ない状況に追い込まれてしまう大家もいます。

そこで、キャッシュフローとは一体どういうものか、キャッシュフローはどのように計算するのか、さらにキャッシュフローを確保しておく意味を考えていきましょう。

キャッシュフローとは

キャッシュフローとは非常にシンプルに考えると不動産運営を行っていて最終的に手元に残るお金のことを指します。

キャッシュフローと物件運営の利益というものは似ているように見えますが、実際には物件運営の利益とは物件収入から経費を差し引いた金額のみをさします。

一方でキャッシュフローの場合は物件運営の利益から経費だけではなく、ローン返済や税金を差し引いた金額、そして減価償却費までまとめてまで考えていきます。

キャッシュフローの計算方法

キャッシュフローを計算する時に必要になる項目をまずは説明します。

収入

物件を運営して生まれた収入になります。基本的には家賃収入が大半を占めますが、礼金も収入になります。一方で敷金は一時的に預かるお金なので収入には入りません。

経費

不動産物件を運営していく中で必要となる数々の出費です。物件の修理費や積立修繕費。その他にも客付けのための広告費や不動産屋に支払う仲介手数料、また管理費などがこの中に含まれます。

不動産屋に赴いた際の交通費や接待費、書籍代やパソコン代なども経費に含めることができます。

ローン返済

借入しているローンの返済の金額になります。ただし、ここで注意したいのはローン返済の中でも元本の返済と金利分の返済に分かれるということです。

金利分の返済は経費に含めることができるのですが、元本の返済は経費には含まれません。元本返済分が増えていくと、税金を減らしづらくなるのです。

税金

20万円以上の利益が発生した場合は、確定申告を行って税金を申告しなければいけません。不動産収入に伴う税金には、所得税と住民税がありそれぞれ利益に応じて累進課税されます。

所得税や住民税は利益がなければ支払わなくても良いのですが、固定資産税及び都市計画税は物件を所有しているだけで課税されます。

減価償却費

不動産物件を購入した場合、その建物の建築費を、木造は22年、鉄筋は34年、 RC造 の場合は47年間、それぞれの建物を数字で割って費用として計上することができます。

不動産経営において減価償却費は非常に重要な意味を持つ数字になり、実際には支出がないながらも、経費として計上をすることができます。

キャッシュフローの具体的な計算

キャッシュフローを算出するモデルケースとして、家賃収入が年間300万円、諸経費が60万円、ローン返済が80万円で利息分が40万円、 税金が収入の20%、減価償却費が50万円とします。

  • 実際のお金の流れ・・・収支計算 :CF=収入-(各種経費+借入金返済+所得税・住民税)
  • 税額を求めるため・・・ 所得計算 :不動産所得=収入-(各種経費+借入金利子+減価償却費)

キャシュフローの計算式は

収入-経費-ローン返済額-税金=キャッシュフローです。

300-(60+40)=200(税引前収入)を出します。そこからさらに減価償却費を経費とするので200-50=150万円が収益になります。さらに150×20%で30万円を引いて120万円。

ローン返済額の80万円を引いた40万円、そこに実際は支出が発生していない減価償却費の50万円を加えて90万円が最終的なキャッシュフローになるのです。

減価償却費がないと利益が200万になり、そこから税金を算出するので、税金は40万円。キャッシュフローは200-40-80で80万円に減ってしまいます。さらに収入次第で税率が変われば、減価償却費の影響はもっと大きくなります。

キャッシュフローから見えてくるもの

キャッシュフローから見えてくる、不動産投資に与える影響を考えてみましょう。

キャッシュフローは年々悪化するもの

キャッシュフローの計算において、減価償却費が非常に大きな意味を持つということが分かってきたでしょう。しかし、減価償却費は耐用年数に応じて設定されるので、個人事業主の場合は木造物件ならば22年間しか計上できません。

鉄骨や RC造についても耐用年数を越えれば減価償却費はなくなってしまいます。

法人の場合は任意で減価償却費の数字をコントロールできますが、やはり築年数が経てば減価償却費は減ってしまいます。

新築の物件を購入した場合は、長期間減価償却を織り込むことができますが、中古物件の場合は減価償却が既に計上済みものもあるので、物件購入の際には減価償却がどうなっているのかを確認しましょう。

また、不動産は物件の築年数に応じて基本的には収入が減ってきます。物件競争力を高めるために家賃を下げなくてはいけないこともあるでしょうし、設備投資に使う金額も、物件の老朽化に伴い大きくなります。タイミングを見て大きなリフォームリノベーションをしなくてはいけないこともあるでしょう。

こういった要因から、収入は徐々に減っていきキャッシュフローも悪化していくのです。

キャッシュフローを改善するには

キャッシュフローを改善させるには、毎月のローン返済額を減らすのが最も有効な対策になります。ローン返済金額も物件の購入から年数が経っていけば、返済が進んで徐々に減っていきます。

金利は元金に係数をかけて算出するので、元金が減ることで金利の出費も少なくなります。ただし、変動金利で借りていた場合、最初の数年は安い金利になっており、数年後に見直しが入って借り入れ金利が上昇することもあります。

家賃収入が多い初期のうちに貯金を作り、繰り上げ返済をして金利支出を減らしておくという対策もありますし、元利均等返済ではなく、元金均等返済を利用するという方法もあります。

元金均等返済の場合は、初期から一定金額の元金を返済できるので、毎月の負担は大きいですが、元金を早く減らすことが可能になります。またローンの借換えなども状況に応じて検討してみましょう。

キャッシュフローがないと、現金が必要なことができない

キャッシュフローがないと、新たな投資に回す資金が捻出できないため、物件の新規購入が難しくなります。物件の新規購入時には一定の頭金が必要ですが、頭金が用意できない場合にはフルローンの融資を受けなければいけませんが、金利負担がその分大きくなりリスクが増大します。

また非常にお得な物件を見つけることができたとしても、キャッシュがなければローンの審査に時間がかかり、他人に先に購入されてしまうこともあるでしょう。

もちろん想定しない物件の故障や破損に対する修理費、リフォーム代などもキャシュがなければ支払うことができません。キャッシュフローを用意しておけば、投資においてできることの選択肢が大きく広がっていくのです。

黒字倒産とは

黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているのに、キャッシュがないために各種の支払いが滞って負債を返済できなくなってしまうことです。

不動産投資においてはデッドクロスが起こると、黒字倒産のリスクが高まってしまいます。デッドクロスとは、減価償却費の金額を、経費の対象とならない返済元金が上回ってしまうことです。

減価償却で圧縮できていた利益を支出が上回ることで利益が大幅に悪化してしまい、課税対象金額も大きくなってしまうのです。

しかし返済元金は帳簿上の黒字には影響しないので、黒字が出た後に返済元金を支払ってキャッシュがなくなってしまうこともあるのです。減価償却が無くなるタイミングに注意し、それまでに十分なキャッシュを要しておきましょう。

借入金をできるだけ少なくし、キャッシュフローを確保する

キャッシュフローは黒字倒産を防ぎ、投資の選択肢を増やすという意味で非常に役立ってくれるものです。副業サラリーマンであれば、本業の収入からキャッシュを捻出することもできますが、専業投資家の場合はそのような方策も取りづらいです。

借入金をできるだけ少なくすれば、黒字倒産の原因にもなる返済元金を減らし、金利支出も少なくすることができます。初心者はもちろんのこと、ベテラン投資家こそキャッシュフローの確保は十分に気を配るようにしましょう。


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