単独名義で土地を所有していれば、もちろん自分で自由に活用したり、時には売却したりできます。しかし必ずしも自分の所有する土地が単独名義とは限りません。知らない間に共有名義で土地を所有していたということもあります。そこでもし自分の土地が共有名義だった場合に、どのように活用していけばいいのかを探ってみましょう。
共有名義の土地を活用する際の注意点
共有名義の土地を活用するには様々な注意点があります。土地の権利の全てが自分の所有ではないので、思ったように活用できない点に特に注意しましょう。
共有名義の土地とは
共有名義の土地とは、一つの土地に対し、複数の所有権を持つ人間がいる状態のことを指します。夫婦でマイホームを共同で購入すれば、その土地と建物は共有名義になりますし、最も多いケースとしては、親が子どもたちに対し、遺産相続として自宅の土地を共有名義として残すというケースです。
また親子ローンなど親子共同名義で不動産を購入した場合も、共有名義になることが多いです。親子共同名義で揉めることはあまりありませんが、夫婦の共同名義の場合は離婚の際に揉めることがありますし、兄弟や姉妹で一つの土地を共有名義にしていた場合は、土地の活用法や遺産分割で揉めるケースは非常に多いです。
親から相続した土地にアパートを建てたいと思っても、所有権を持つ人間全員が同意をしなければ建築物の建て替えもできませんし、売却も同様に全員の同意が必要です。
とにかく共有名義のままだと、色々と同意を得なくてはいけないので手間がかかりますし、自由に使うことも難しいです。
共有名義の土地の特徴
夫婦でそれぞれが住宅ローンの融資を受け、共有名義で土地を所有していた場合は、住宅ローン控除を夫婦双方が受けられるというメリットがあります。
共有名義の土地のメリット
共働きの家庭では、夫婦双方が負担を軽減するために、それぞれが住宅ローンの融資を受けることもあります。その場合住宅ローンの利用を受けているそれぞれが住宅ローン控除として、住宅ローン残高の1%を所得税や住民税から控除できます。ただし住宅ローンの控除の上限は4,000万円と決まっているので、一人で5,000万円の住宅ローンがある場合は無駄になる部分が出てきます。
そこで夫婦共有名義で不動産を購入し、それぞれ3,000万円、2,000万円の住宅ローンを利用すれば、住宅ローン控除の制度をより活用できます。共有名義で不動産を購入する時には、住宅ローン控除の活用を考えることでメリットが出てきます。
その他にも、子の住宅購入支援を援助する際には、一定の金額を超えると贈与税が発生します。しかし親子共有名義で購入をすれば、半額ずつの負担にしても、あくまでも親の所有分もあるので、贈与税は発生しません。
共有名義の土地のデメリット
それでも共有名義の土地は取り扱いが難しいために、やはりデメリットの方が大きいとも言えるでしょう。
住宅ローンを夫婦それぞれが利用するにしても、保証金や手数料など、住宅ローンに関する費用が2倍かかりますし、審査も二度行わなければいけません。また妻が退職し、夫が住宅ローンの返済を一手に担う時には、妻が支払ってきた金額分の土地を夫に贈与する扱いになり、贈与税が発生することもあります。
そして最大のデメリットは、先にも書いたように所有者全員が同意しないと自由に物件を取り扱いできない点です。公平な相続にするために、遺産の不動産を兄弟の共同名義にする親もいますが、実際にはトラブルの火種になって、兄弟間のいざこざが起こり仲の良かった兄弟が疎遠になってしまうことも多いのです。
特に親の面倒を実際に見ていた長男などが、実際に不動産を相続したら兄弟との共有名義になっていたので困ったという相談は多くあります。
単独名義か、共有名義かを調べるには
もし自分の土地が共有名義ではないかと不安になった時には、法務局にある土地の登記簿を確認すればわかります。
600円の費用を法務局に支払えば、登記簿謄本もしくは登記事項証明書を入手できます。その中に自分の名義だけ書いてあれば単独名義の所有者ですが、複数の人間の名義があれば共有名義ということになります。また持分の割合も登記簿謄本には記載してあります。
共有名義の土地をするなら単独名義で
土地を自由に活用したいと思うのであれば、なんとかして共有名義を単独名義にしなければいけません。
その方法としては相続、売買、贈与の3つの方法があります。贈与を行うには親や兄弟から贈与を受けて土地所有者の名義変更を行います。しかし親族間とはいえ、110万円を超えれば多額の贈与税が発生します。
相続は所有者が亡くなった時にしか行えないので、兄弟間では兄弟の誰かが無くならない限りは不可能です。
つまり現実的なラインでは兄弟間で共有名義から単独名義にするには兄弟間で売買を行うしか無いでしょう。その価格は兄弟間での交渉になるので、決まった金額はありませんが、売却をした人間には取得時の価格と比較して、譲渡所得税が発生する可能性があります。
単独名義に出来ない時はどうすればいい?
兄弟が売買に応じない、贈与も難しい場合は単独名義にする方法として、以下のような方法が考えられます。
自分の持分だけ売却する
土地の持分だけ自分に所有権があるので、その持ち分を売買することはできます。もちろん所有権を持つ分だけの売買なので、他の所有者の同意も必要ありません。
しかし自分でも活用しにくい共有名義の土地を買ってくれる人は中々いないものです。また価格も足元を見られて安く買い叩かれてしまうかもしれません。
土地を分筆する
土地を分割することを分筆と言います。自分の持分に応じて土地を分割し、分割した分だけの単独所有権を得ることができます。しかしいくつかの手続きと問題があります。
まず1/2ずつ所有している土地でも道路に接地していない土地にはほとんど価値が出ないので、公平な資産価値で分筆をすることが非常に難しいという点です。正方形の土地、道路への接地面積が広い土地ならば分筆しやすいですが、小さな土地を分筆しても、活用が難しいので、資産価値が大幅に下がることもあります。
分筆をすると土地の境界線が新たに生み出されます。そのために土地家屋調査士に測量を依頼し、測量図を作ってもらいます。土地家屋調査士への依頼料が必要です。
次に分筆の登記を行います。関連する人間全員で行う必要があります。この登記作業も、土地家屋調査士に依頼します。
分筆登記をしたからといって、すぐに土地の所有者名義が変わるわけではありません。そのため分筆した土地の所有者が共有名義ではないようにするために、新たに所有者の登記作業を行います。登録免許税が課税され、また司法書士に登記を依頼する場合司法書士報酬も発生します。
土地を売却したお金を分割する
土地はなくなってしまいますが、公平に相続するには、これが最も適当な手段でしょう。親から相続した土地と建物にそのまま住み続けている場合は引っ越しをしなくてはいけませんが、現金化をすることで、持ち分に応じて非常にわかりやすく公平に分割できます。
1/2、1/4、1/4の持ち分で土地を所有し、4,000万円での売却ができれば3人で
2,000万、1,000万、1,000万と分けて相続しましょう。
また共有名義の土地を売買するのであれば、合同で売る必要があります。所有者全員が立ち会うことができない場合は、委任状を用意し、売買契約書に捺印や書名を行いましょう。
まとめ
共有名義で所有している土地は、活用が難しく、その状態で不動産投資を行うのは容易ではありません。可能であれば持ち分の売買を共有名義での所有者に持ちかけるか、持ち分の売買、もしくは共有名義の土地を売却して現金化し、分配することを考えましょう。