不動産投資でデッドクロスになる原因と対策

不動産投資でデッドクロスになる原因と対策

不動産投資のメリットとして「減価償却費」が語られる一方で、不動産投資に失敗する一因として「減価償却費」が絡んだ「デッドクロス」が問題視されます。この「デッドクロス」とは、一体どういうことなのでしょうか。

また、不動産投資を成功させる為に、「デッドクロス」対策として何をすれば良いのでしょうか。今回は「デッドクロス」の原因は何なのかについて解説しながら、具体的な対策方法も合わせて説明したいと思います。

不動産投資におけるデットクロスとは、以下のような状況になることです。

  • 手持ちの現金を実際には支払うことなく経費計上できる減価償却費
  • 実際にお金を支払っているにも関わらず、経費計上が出来ないローンの元金返済額

この減価償却費を、ローンの元金返済額が上回った状態を「デッドクロス」と言います。デッドクロスの何が問題かと言うと、手持ちの現金が無いにも関わらず会計帳簿上は黒字になってしまう為に、翌年支払う所得税が大きくなってしまうことです。その結果、黒字倒産に陥るのがデッドクロスの問題点なのです。

デッドクロスの原因

不動産投資におけるデッドクロスとは、減価償却費をローンの元金返済額が上回ってしまうこと。そして、その結果として黒字倒産を引き起こすことが問題だと説明しました。

この一連の流れを因数分解して考えると、デッドクロスを引き起こす原因を探るには、次の2つの側面から考えることが必要だと理解できます。

  • 時間の経過と共に、経費計上できる減価償却費が減少する
  • 時間の経過と共に経費計上ができないローンの元金返済額が増加する

つまり、この2つの要因によって手取り金額が減少してしまう事が、デッドクロスの原因になるという事です。では、この2つの側面についてもう少し掘り下げて解説しましょう。

なぜ減価償却費は減少するのか

不動産の減価償却費では、法律で決められた耐用年数に従って、毎年同じ額の減価償却費を経費計上します。その為、耐用年数を経過した途端、今まで経費計上出来ていた減価償却費が出来なくなってしまうのです。

例えば、築15年で建物価格2000万円の木造アパートの場合、毎年の減価償却費は200万円となります。そして、これを10年に渡って償却していきます。

ところが、償却期間の10年を経過した翌年の11年目からは、今まで経費として計上出来た200万円が出来なくなるのです。そういう意味では、「減価償却費が減少する」というよりも、「耐用年数が経過したら、減価償却費が無くなる」と理解するのが正しいと言えるでしょう。

つまり、デッドクロスのリスクを回避する為には、物件を購入する最初の段階で「減価償却費は耐用年数を経過したら無くなる物だ」とオーナーが理解しているのかどうかがポイントになるということです。

ローンの元金返済が増加する

銀行から借りたローンは、利子については経費計上出来ますが元金については経費として計上出来ません。つまり、ローンの元金返済分については、実際にお金を支払っているにも関わらず経費として計上出来ないので、翌年に支払う所得税を減らす事が出来ないということです。

そして、不動産投資で利用される事の多い元利均等方式のローンでは、最初は元金の返済が小さくて経費計上できる利子の支払いが大きく設定されています。その為、最初は経費計上額を大きく取れるというメリットがあるのですが、時間の経過と共に元金の返済額が大きくなるという側面もあります。

それによって、何の対策も立てずにいると、減価償却費の耐用年数が終わる頃にはローンの元金返済が膨らんで「デッドクロス」を引き起こしやすい状態になっているというリスクがあるのです。

デッドクロスの対策

ではデッドクロスを避ける為には、具体的にどんな対策を立てればよいのでしょうか。デッドクロス回避の為のポイントは、「手元のキャッシュの支出を抑えて、手取り金額を増やしてキャッシュを出来るだけ沢山残す」ことにあります。

このポイントを実践するために、ここではデッドクロス回避の為の具体的な対策を6つ紹介します。

ローン期間と減価償却期間を一致させる

耐用年数を経過した事で、減価償却費をローンの元金返済額が上回ってデッドクロスが引き起こされるなら、ローンの返済期間そのものを耐用年数の終了期間と一致させてしまえば良いという考え方です。

ただし、ローン期間が短くなることで毎月の支払い額は増える傾向にあるので、しっかりとした返済シミュレーションを事前に行っておくことが重要になります。

自己資金を多く投入する

物件購入の際に自己資金をより多く投入する、もしくは繰り上げ返済を積極的に行う方法です。自己資金をより多く投入すれば、毎月の返済額を圧縮することが出来ます。そして、借入期間を短縮する事も可能です。

返済額を圧縮する、もしくは借入期間を短縮することが出来れば、デッドクロスを引き起こすリスクを抑えることができます。

築古の物件を避ける

築古物件は安く購入出来るというメリットがある半面、耐用年数がかなり経過している物件がほとんどな為に、減価償却できる期間が短いというデメリットがあります。減価償却を出来る期間が短いということは、それだけデッドクロスを引き起こすリスクが高いということです。

同じ考え方で、木造や鉄骨造などの耐用年数そのものが短く設定されている物件も、注意が必要です。耐用年数が長く設定されているRC造の物件には、地震や火災などの災害に強い、入居者から人気が高いというメリット以外にも、デッドクロスを引き起こしにくいというメリットがある事も覚えておきましょう。

ローンは元金均等方式を選択

不動産投資では元利均等方式を選ぶのが一般的です。しかし、元利均等方式は時間の経過と共に経費計上できない元金返済額が増加して、デッドクロスを引き起こしやすいことを先ほど説明しました。

そこで、時間が経過しても毎月の元金返済額が一定である「元金均等方式」を選ぶという事が、デッドクロス対策として有効になります。元利均等方式に比べて、元金均等方式には最初の支払い額が大きいというデメリットがあります。

ですが、初期の支払い計画を綿密に練っておけば、時間の経過と共に資金計画に余裕が生まれ、デッドクロスを回避しやすくなります。

ローンの借り換えで融資期間を延ばす

今のローンを別の銀行のローンに借り換えることで融資期間を引き延ばす事も、デッドクロス回避の為の有効な手段になります。なぜなら、借り換えで融資期間を延長することで出来れば、毎月の返済額を減少させることができるからです。

毎月のローン返済額を少なくすることが出来れば、手持ちのキャッシュの持ち出しを抑える事が出来るので、デッドクロスに備えることが出来るようになります。

物件を買い替える

耐用年数が経過して減価償却費を取れなくなる前に今の物件を売ってしまう。そして、より耐用年数が長くて、引き続き減価償却費を多く取れる物件と買い替えてしまうという方法です。

この方法を繰り返していれば、デッドクロスを引き起こす心配が無くなります。デッドクロスを引き起こした物件は銀行評価が下がってしまい、黒字倒産のリスクだけでなくその後の出口戦略を描きにくくなってしまうという重大なデメリットがあります。

その為、売り時を見定めて定期的に物件を入れて替えてポートフォリオを更新する事は、デッドクロス対策として非常に有効な手段になります。

今回は不動産投資でデッドクロスに陥る原因と、その対策について6つ紹介しました。最初は減価償却費を大きく確保できるので、手元に現金がどんどん溜まるイメージの不動産投資ですが、何の対策を立てずにいるとやがてデッドクロスに陥り黒字倒産する危険性が高い事を理解してもらえたと思います。

今回紹介した6つの対策を実践することで、デッドクロス回避に是非役立ててください。


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