不動産投資で地方の収益物件を購入しても成功する?

不動産投資で地方の収益物件を購入しても成功するのか?

都心の収益物件の利回りと競争率を考えると、高利回りの地方物件への投資が気になりますよね。

ですが、価格と高利回りに釣られて、本当に投資をして大丈夫なのか、不安もよぎると思います。

そこで今回は、不動産業界で10年以上働いてきた筆者が、地方の収益物件を購入して成功するのかについて解説します。

地方の収益物件の特徴

「地方の収益物件は投資対象として適切なのかどうか」を調べている方が、必ず知っておくべきことがあります。

それは、日本はこれから人口減少時代に入り、地方の賃貸経営が難しくなるということです。

人口減少の影響をもっとも受けるのが、地方なのは言うまでもありません。そして人口減少の影響を受けるということは、地方の収益物件の賃貸需要も同じく減少が続くということです。

賃貸需要が低く、物件運営の安定性にも欠くということは、言い換えると、地方の収益物件は、空室期間の長期化リスクを抱え込んでいるということでもあります。

物件は保有しているだけで、税金や設備更新などでお金が出ていきます。お金が出ていくのに、空室の長期化で収益が上がらないとなると、オーナーの資金繰りが深刻な事態に陥る可能性が高い、ということになります。

地方の収益物件は家賃相場の暴落にも注意

ここまで、地方の人口減少という視点で賃貸需要について見てきましたが、今度はもう少し小さな要因で起こる、地方の収益物件の特徴について解説します。

地方の収益物件の賃貸需要は、ある特定の企業や大学などによって支えられているものが多くあります。

そういったエリアにある収益物件は、企業の撤退や大学の移転などが起こったり、または周辺に賃貸物件が乱立してしまった場合、そのエリアの需給バランスが一気に崩壊し、家賃相場が大暴落します。

暴落が起きた場合、家賃が2万円~3万円、中には1万円台まだ下がってしまい、キャッシュフローが回らない物件も出てきてしまいます。

東京23区内の駅近物件なら、1Kの間取りで8万円~10万円の家賃を十分見込める物件を探すことができます。ですが、地方の場合は需給崩壊で、2万円~3万円台まで家賃下落が起きてしまうのです。

また、需給バランスが崩壊してしまった場合、需要の復活はほぼ見込めないと思ったほうが良いでしょう。そのため、家賃をどれだけ下げても、空室がまったく埋まらないことがあることも知っておかなければなりません。

地方と都市の物件の特徴を比較

日本の人口減少という問題がある中、さきほど述べた地方の収益物件の特徴(課題)については、理解してもらえたと思います。

ですが、地方物件の抱えている問題を認識するだけでなく、投資対象として優良なのかどうかを、もう一歩踏み込んだかたちで検討をするために、何か比較対象が欲しいところです。

そこで、より詳細に地方物件の特徴を明確にするために、都心の物件と特徴を比較しながら見ていきましょう。

都心にある収益物件のデメリット

最初に地方の収益物件のネガティブな面をお話したので、今度は都心の収益物件のデメリットについて解説します。

都心の収益物件にもデメリットがあります。地方物件に比べて、都心の物件は人気が高いがゆえに、物件が欲しくても競争率が高くてなかなか買えないというデメリットがあります。

また、地方の収益物件と比べて、都心の物件は取得費用が高いのもネックです。そのため、もし都心の物件をフルローンで購入した場合は、キャッシュフローが回らない、もしくは赤字になるリスクが高いとも言えます。

都心にある収益物件のメリット

では次に、都心にある収益物件のメリットを見ていきます。都心の物件の最大のメリットは、地方にくらべて人口が多く、長期に渡って安定した賃貸需要が見込めることです。

東京、大阪、名古屋、福岡など、都心部の賃貸物件であれば、空室期間の長期化や、需給バランスの崩壊といったリスクが、地方と比べて小さくなります。

中でも群を抜いて有望なのは「東京23区内」です。東京23区には日本全国から人口流入があり、人口の一極集中が続いています。東京には大企業の本社もたくさんあり、外資系企業の日本支店も、そのほとんどが東京です。

都心の物件は物件売買時に売却差益も狙える

東京に人口が一極集中していることを表すエピソードとして、筆者の個人的体験談を紹介します。

これは筆者が、ある大手証券会社の重役と話をしていた時のことです。「日本にある金融資産の8割が東京に集中している。だから、日本における企業戦略は東京を最重視せざるを得ない」と、彼は言いました。

つまり、富が集中するということは、そこに人も集中するということです。都心の収益物件の賃貸需要がいかに安定しているかがわかると思います。

また、都心の収益物件は、出口戦略(物件売却時)に売買差益が狙えるというメリットがあります。

都心の収益物件は人気があり、買い手がたくさんいるので競争率が高くなり、物件価格が釣り上がりやすいです。

これに加えて、市況が好景気であれば、都心は地価が大きく値上がりします。そのため、タイミングをうまく見極めれば、売却時にキャピタルゲイン(売買差益)が狙えるのです。

地方にある収益物件のメリット

今度は地方の収益物件の特徴について、都心の物件と比較しながら解説します。

まず、地方の収益物件のメリットは、都心の収益物件と比較して競争率が低く買いやすいということです。

そのため、競争率が激しく都心の物件を買えなかった投資家やファンドが、次に目を向けるのが地方の収益物件になります。また、都心にくらべて地価が安いため、物件の取得費用が安くすむというメリットもあります。

節税がしやすい

地価が安いということは、安く購入できる以外にも大きなメリットがあります。それは節税がしやすくなることです。

節税効果を大きくするには、減価償却費を大きくするのがポイントです。不動産は、土地については減価償却できません。一方、年月とともに老朽化が進む建物については、減価償却ができます。

地方の収益物件は、物件価格全体にたいして土地の値段が安いので、建物部分の価格の割合が高くなります。建物部分の価格の割合が大きく取れるということは、減価償却費も大きく取れるということなので、節税がしやすくなるのです。

地方にある収益物件のデメリット

上でも地方の収益物件のデメリットについて触れましたが、ここではもう少し掘り下げて、3つのデメリットについて詳しく解説します。

家賃水準が低い

地方の物件は、都心に比べて家賃水準が低いということは最初に話したとおりです。都心の駅近物件なら、家賃8万円~10万円台の物件をたくさん見かけます。

ですが、地方の場合は需給バランスが崩壊して、家賃の大幅下落が起きるリスクが高いです。崩壊した場合は、家賃が2万円~3万円台まで下がり、中には1万円台まで下げても空室が埋まらない物件もあります。つまり、キャッシュフローが回らず、オーナーは深刻な事態に直面するということです。

売却価格は、家賃収入をもとに利回り計算してはじきだすのが一般的です。さらに地方の場合は、買い手を増やすために高めの利回りで設定します。

すると売却価格は下がり、高利回りの物件になります。都心の高価格、低利回りの物件ばかり見てきた投資家には、地方の高利回り物件が魅力的に映るのです。

しかし、ここに落とし穴があります。いくら高利回りでも、そもそもの家賃設定額が低いと、キャッシュフローは小さくなります。

そのため利回りが高くても、原状回復時の内装工事費や、エアコン、給湯器といった大きなお金が必要な、設備更新費用を捻出するのが難しいという問題が発生するのです。

つまり、せっかく稼いだ家賃収入を食いつぶしてしまう、または最悪の場合、赤字も覚悟しなければならないこともあります。

高利回りでもキャッシュフローが小さく、物件維持費が捻出できずに破綻してしまうのが、低家賃設定の地方物件が抱える深刻な問題です。

出口戦略が立てづらい

地方の収益物件が抱えるデメリットは、キャッシュフローの問題だけではなく、その物件の売却時にもあります。買い手が少なく、出口戦略(売却)が描きにくいのです。

今度はただの「下落」ではなく、「下落率」という視点で見てみましょう。家賃の下落率で地方の収益物件を考えた場合、単純に「家賃が下がっただけ」という話では片付けられない問題が浮かび上がります。

都心の物件と地方の物件の、家賃の下落率を具体的な事例を使って考えてみましょう。

例えば、都心にあるワンルームで家賃10万円の物件が、3000円安くなって9万7000円になったとします。家賃の下落率は3%です。

しかし、これが地方にある家賃3万円の物件だと、3万円から3000円安くなると2万7000円。同じ3000円の値下がりなのに、家賃下落率は10%にになってしまいます。

つまり、出口戦略で売却価格を利回りで考える時に、この家賃の下落率に準じて、売却価格も一緒に下がるということです。都心では3%の売却価格の下落ですむものが、地方の場合だと10%も安く売らなければならないということになります。

買い手不足が起こりやすい

3つ目のデメリットは、金融機関が不動産への融資引き締めを行った場合、地方物件は都心の物件以上に、買い手不足が深刻になるリスクがあることです。

東京や大阪など、大都市にあるメガバンクをはじめとした金融機関は、景気が良い時には地方物件への融資を積極的に行います。そのため、都心にいる投資家も地方物件を購入しやすい環境が整います。

しかし、都心の金融機関が地方物件への融資引き締めを行った場合、東京や大阪にいる投資家が、地方の物件を買うことが出来なくなります。

そのとき地方物件への融資は、地元の金融機関(地銀や信金など)に限られてしまい、買い手の数が減ってしまいます。その結果、競争率が下がり、物件価格の下落を引き起こしてしまいます。

つまり地方物件は、銀行融資による買い手の増減や、価格変動のリスクが都心の物件にくらべて、はるかに高くなるということです。

地方の収益物件は成功するのか?

ここまで、地方物件について都心の物件と比較しながら、特徴をまとめてきましたが、実際のところ、地方の収益物件に投資をして成功するかどうかが知りたいところです。

本来、不動産投資の魅力は、ミドルリスク・ミドルリターンな投資手法にあります。

失敗例などの事例が集めやすく、リスクコントロールの手法が確立されているので、成功する可能性を高めやすいからです。ここでは、地方の収益物件に投資した場合に、うまくいく可能性はどの程度なのかについて考えていきます。

物件の将来性を考える上でのポイント

地方の収益物件に投資して成功するのかを考える場合、「物件の現状」も大切ですが、「物件の未来」がどうなるのかを考えるのが重要です。そのために、物件を因数分解して考えてみます。

各要素が、時間の流れの影響を受けるのかどうかで分類します。そして、時間の流れの影響を受けにくい要素を重視して、物件の将来性を判断します。

変わらない物 変わりにくい物 変わりやすい物

・立地
・建物構造

・交通アクセス
・周辺環境

・物件価格
・利回り
・築年数
・内装・設備
・ランニングコスト

この中で、10年後、20年後も収入をもたらしてくれる物件を見極めるポイントは、「立地」、「建物構造」、「交通アクセス」の3つです。

交通アクセスの良いところは、必然的に周辺環境もよくなります。時間の流れの影響を受けやすい要素については、将来どうなるのかを考えても、誰にも分かりません。

ですので、時間の影響を受けない、もしくは受けにくい要素について考えながら、物件の将来性を判断しましょう。

地方は都市と比べると失敗するリスクが高い

3つの要素の中の、立地と交通アクセスの将来性を考えると、やはり地方は失敗する可能性が高いと言わざるをえません。

縮小する市場で勝ち抜くには、機関投資家のような豊富な資金力と情報力がある、もしくは個人投資家でもそのエリアの賃貸需要に圧倒的に詳しいなど、他の投資家を出し抜く特別な武器が必要です。

つまり、地方物件への投資はハイリスク・ハイリターンで、失敗するリスクが高いといえます。

ミドルリスク・ミドルリターンで、リスクコントロールがしやすいことがメリットの不動産投資で、あえて地方のハイリスク物件へ投資する意味合いは薄いとも思いますの。

このように考えると、たとえ競争率が高くても、収益が安定していてリスクコントロールのしやすい都心の物件が魅力的に感じてしまいます。

まとめ

成功している投資家は、今回解説したような様々な視点から物件の将来性を考えて、投資をしています。

そして彼らは、「その物件がなぜその価格・利回りで売りに出されているのか」をロジカルに分析して、投資するかどうかを決めます。「この利回りならおいしいかも」、「この価格なら私にも手が届く…」といった、感情に流された判断はしません。

今回解説した中で、以下の2点を考えれば、あなたにも冷静な判断が出来るはずです。

  • 地方と都心の物件の特徴を比較
  • 時間の流れの影響を受けない物件の3要素

物件のよしあしを合理的に見極めながら、是非あなたの不動産投資を成功させてください。


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