サラリーマン大家は年末調整すれば確定申告は不要?

サラリーマン大家は年末調整すれば確定申告は不要?

給与収入があるサラリーマンの場合、不動産投資などの副業による収入が発生すれば確定申告を行って、税金の納税額を確定させなければいけません。また場合によっては確定申告を行うと、税金が還ってくることもあります。

そこでサラリーマン大家にとっての確定申告の意味と、その手順をお伝えします。

年末調整と確定申告の違い

まず確定申告とは一体どのようなことか、また会社によって行われる年末調整との違いを見ていきましょう。

年末調整とは

年末調整とは、会社員などの毎月給与をもらっている給与所得者の税額を精算する手続きのことを指します。

会社員の場合、毎月の給与から所得税や住民税などの税金、その他に雇用保険や健康保険料などが最初から引かれた数字で手取給与が支給されます。いわゆる「天引き」が行われた状態で給料が入ってきます。

これは会社が社員に代わって納税を行ってくれているからです。そのためサラリーマンは基本的に自分で税務署に対して納税の手続きをしなくてもよいのです。

しかし年間の医療費が10万円を超えた、生命保険や学資保険に入っている場合、それらは給料に対し一定額の控除が行われるので、控除に関する書類を提出すれば、控除額に応じて一部の税金が戻ってきます。

この手続きが年末調整です。毎年12月前には総務や経理に控除に関する書類を記入して提出したり、生命保険の支払書を提出したりするでしょう。殆どの人にとっては意識をせずとも実行している手続きです。

確定申告とは

確定申告とは、会社の給料以外に収入がある人が、いくらの収入があったのかを税務署に申告し、その金額に応じた納税額を確定させるための手続きです。

年末調整を行っている給与所得者であれば基本的には確定申告は不要ですが、年間の給与所得が2,000万円以上、また20万円以上の給与以外の収入がある人は、確定申告を行う義務があります。

確定申告は毎年2月15日から3月15日以内に行う必要があります。確定申告を行わないと納税漏れとして、追徴課税などの罰則がありますし、悪質な場合は逮捕されることもあります。そのため必ず確定申告を行いましょう。

確定申告をしないと損するケース

不動産投資を行う人にとっては、確定申告で税金の還付を受けられることもあります。それは不動産所得が給与所得と「損益通算」ができるからです。

損益通算

損益通算とは、給与所得と不動産所得を合わせて計算し、税金額を確定できる仕組みです。不動産所得は、新しい物件を購入した初年度には、税金などの支払いが多く、減価償却費も発生するので帳簿上で赤字になることもよくあります。

給与所得は900万円を超えると、所得税率は33%になってしまいますが、もし不動産の所得がマイナス50万円だった場合には損益通算を行うことで、最終的な所得総額を850万円にできます。

その場合は所得税率が23%になるので、所得税率が下がり、支払いすぎていた税金を還付してもらえるのです。

年末調整で控除証明書の提出を忘れた

不動産を持っていれば、地震保険に加入していることもあるでしょう。控除を受けられるので、年末調整で提出し忘れていた時は、確定申告で提出しましょう。不動産には関係ありませんが、生命保険や学資保険の控除証明書を出し忘れた場合も、確定申告で提出すれば控除を受けられます。

災害で不動産に損害があった

盗難や災害などで被害を受けた場合には被害額を雑損控除として提出しましょう。一定の控除を受けられます。

耐震や省エネのための工事を行った

所有物件の耐震工事などを行った場合にも控除を受けられます。住宅特定改修特別税額控除を申請しましょう。

年末調整を行わずに退職した

サラリーマンだったが、12月の年末調整前に退職した人も確定申告を行えば、税金が戻ってきます。

サラリーマンが確定申告する際の注意点

ではサラリーマンが確定申告を行うときにはどうしたら良いでしょうか。その手順をご説明します。

確定申告のやり方と必要書類

確定申告を行う時には青色申告を利用しましょう。青色申告をすれば10万円を所得から控除できるので節税効果があります。

また事業規模(5棟もしくは10室以上の物件を所有している)相当の不動産物件を所有していれば、65万円もの控除が受けられます。

さらに赤字損失が出た場合は3年後まで繰越できるので、利益の金額をコントロールし、節税効果を高められます。

青色申告を行うには以下の手順に沿って確定申告をします。

1.青色申告承認申請書の提出

青色申告を行う事業者であることを税務署に知らせるために、書類を提出します。事業開始から2ヶ月以内に行います。

2.確定申告に必要な資料と書類を集める

不動産経営の収入や支出に関する領収書や書類を集めます。これがないと書類に数字を記入できません。

例として以下のような物が必要です。

  • 売渡精算書(売買の仲介に入った不動産会社から)
  • アパートローンの明細書(融資を受けている金融機関から)
  • 源泉徴収票(勤務先から)
  • 家賃支払い送金書(管理を任せている不動産会社から)
  • 修繕工事などの支払い書(工事を任せた業者から)
  • 賃貸契約書(管理を任せている不動産会社から)
  • 固定資産税や不動産取得税の納付書(自治体から)
  • 火災保険や地震保険の領収書(保険会社から)

簡単にいえば、家賃や礼金などの収入がいくらあったのか、そして税金やローン金利、修繕費などの経費がいくらあったかを証明する書類を集めておきます。

3.青色申告決算書と収支内訳書を作成する

不動産収支内訳書は国税庁のホームページからダウンロードできます。

参考:国税庁「不動産収支内訳書

収支をそれぞれ記入します。用意した書類を見ながら記入していきましょう。確定申告の直前ではなく、こまめに毎月行うほうが良いです。青色申告決算書と損益計算書。そして1枚の貸借対照表という構成になっています。

4.確定申告の記入用紙に記入する

税務署に行くか、国税庁のホームページから「確定申告書B」という書類を入手します。
この確定申告書Bは第1表と第2表で構成されています。ここに住所氏名、該当する情報、不動産収入、支出、最終的な納税額を記入していきます。

5.税務署に提出する

作成した「確定申告書B」と「源泉徴収票」、また控除関係の書類を税務署に提出します。郵送でも受け付けています。「青色申告決算書」や「収支内訳書」も必要です。

6.税金を納付する

計算した税金を税務署に納付します。税務署に納付書があるので、それを利用しましょう。期間内に書類だけ提出しても、納付をしなければ当然延滞利息が発生します。3月15日までに納税しましょう。

青色申告と白色申告の違い

青色申告よりも簡単な方法の確定申告に、白色申告があります。白色申告は青色申告と異なり、複式簿記の記入が必要ありませんが、所得からの控除は1円も受けられません。

不動産投資を完全に労働が伴わない副業にしたい人ならばともかく、真剣に取り組んで、いずれは法人を作ったり独立を考えていたりするのであれば、青色申告を行う習慣を身に付けましょう。

不動産投資では住宅ローン控除は使えない

マイホームの購入で住宅ローンの融資を受けていた場合、住宅ローンの残高に応じて一定の所得税の控除が受けられます。この制度は住宅ローン控除といい、この制度を利用するには副収入がなくても確定申告を行わなければいけません。

その効果は毎年最大で40万円の控除にもなるので、不動産購入ローンに利用したい、と考える方もいるでしょう。

しかし残念ながら住宅ローン控除が利用できるのは、その名前の通り住宅を購入した時のローンのみです。収益物件を購入した際のアパートローンなどにはこの制度は利用できません。

ただし賃貸併用住宅を購入した場合には、建物の面積の半分以上が自宅であれば、住宅ローンも利用できるので、住宅ローン控除も受けられます。

会社に副業がバレないようにする方法

会社の職務規定で副業を禁止している会社もあります。基本的に事業規模の不動産経営でなければ、公務員でも認められているので、民間の会社で禁止される可能性は低いのですが、同僚のやっかみなどが起こる可能性もあるので、会社には副業を内緒にしておきたい人もいるでしょう。

その場合には確定申告の際に「住民税に関する事項」という書類の記入欄があります。住民税の納付方法を選べるのですが、「自分で納付」という項目を選びます。

そうすれば住民税が会社からの天引きではなくなるので、会社が「給料に対して住民税の金額が高い。副業をしているのではないか」と気づくこともなくなります。

まとめ

サラリーマン大家にとって確定申告は、税額を確定する意味で必ず行わなければいけないことですし、不動産物件を購入し、赤字になっている場合は節税にも大きな効果を発揮してくれます。年末調整を会社がやってくれているのでOKと思わないようにしましょう。

手間がかかるので、小規模な経営の時は億劫に感じてしまう人もいますが、青色申告を行えばそれだけで単純に控除も受けられます。必ず確定申告を行い、税に対する知識を身につければ、後々きっと不動産物件の規模拡大や法人を作って独立する時にも役立ってくれるでしょう。


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