不動産物件の価値を算出するときにはいくつかの計算方法があります。その物件を建てるのに、いくらの費用がかかるのかをもとにした原価法。似たような条件の物件が市場でどの程度の価格でやり取りされているのかを参考にする、取引事例比較法。物件が生み出す価値を元に価格を算出する、収益還元法です。
それぞれ主に使われるシーンが違ってくるのですが、不動産投資用物件に関しては、収益還元法がよく使われます。では収益還元法がどのようなものかをここでは見ていきましょう。
収益還元法とは
収益還元法が、不動産投資用物件の価格算出で最も使われるのは、その物件が将来的にどの程度の利益を出してくれるのか、という点を最も重視するからです。
原価法などは、投資用の賃貸物件よりは住宅用の戸建て物件の価格算出に使われますし、取引事例比較手法は、いずれの場合も参考に使われます。ただし不動産価格というのは当然ながら生き物であり、刻一刻と変化をしていくものです。
取引事例比較法だけでは、相場の変化についていけないために、主な価格算出手段として、一棟アパートやマンション等の投資用物件では収益還元法を主に使っていくのです。
収益還元法の種類
収益還元法と一口に言っても、実は2種類の計算方法があります。まず非常にシンプルにその物件の価値を出す事ができるのが、「直接還元法」になります。
この計算方法では物件を賃貸に出したとして、周囲の賃貸相場と比較しながら、その物件が年間で生み出す価値をもとに、物件の価格を算定していきます。取引事例比較法も併用しながら価格を算出する、ともいえます。
では具体的な計算をしていってみましょう。
経費などを考えない表面利回りが10%と言われるエリアで、家賃8万円×10室を所有するマンションを売りに出す、と考えたとします。その場合適切な相場を利回りから逆算していくのです。
80万×12で年間の収入が960万円。960万円が年間の表面利益になるわけですから、適切な相場に則ったその物件の価格は、9600万円としていくのが直接還元法の計算になります。
ただしこの960万円、年間の利回りはあくまで表面的な数字に過ぎません。実際に不動産軽々は満室経営ができることは、部屋数が多ければまずありませんし、家賃の未納や滞納、修繕費や管理費や広告宣伝費など、数々の出費が必要になってきます。
年間の経費は収入の20%ほど掛かることも珍しくはありませんし、そこから借入金があれば返済もありますし、もちろん所得税や住民税の納税も考えなくてはいけません。
それでも税金や金利返済について、個人によって事情が違うので、利回りに換算する必要はありません。一方で経費については考慮して、自分がその物件を売りに出すのではなく、購入するときには表面利回りだけではなく、実質利回りも考慮入れて、その物件の価格が適正であるのかを考えたほうが良いです。
先の例で行くと利回り10%から2割の経費を考えて実質利回りが8%。家賃が10万円で8室ならば年間収入は960万円ですが、2割を経費とすれば手取り収入は年間752万円です。9600万円で買っても、収入はその程度になるということは、把握しておく必要があるでしょう。
また家賃は築年数の経過によって物件の競争力を高めるために、徐々に下げていく必要があります。直接還元法ではそこまでを考慮に入れていないのですが、経年による価格の変化を考慮に入れたのがDCF法になります。
DCF法の計算方法
直接還元法をさらに推し進めた計算方法がDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)になります。
DCF法においては、物件を賃貸に出すことにより得られる毎月の収入=インカムゲインだけではなく、売却時にどの程度で売れるのかという想定額を含めて、その物件の価格を算出していきます。
賃料は年々徐々に下がっていくものですから、インカムゲインは目減りしいてくことを想定し、物件価格自体も10年後、20年後の価格を考えて価値を出していきます。
直接還元法と大きく異なる点として「資産を所有する期間で、物件の価値が上下していく」というのがDCFの特徴となっています。
極端な例で示すと、1000万円の収益が得られた物件Aがあるとします。毎年100万円×10年間、10年間合計で1000万円の収益が得られる物件。もう一つは初年度から5年間は200万円の収入があり、6年目以降は0円になってしまった物件Bとします。こちらも200×5で10年間の収益は1000万円となります。
同じ10年間で1000万円の収入額ですが、Aは10年間所有し、ようやくキャッシュフロー1000万円が得られますが、Bは5年所有した時点で1000万円のキャッシュフローが得られます。DCF方ではこの2つの物件の価値の差はどのように現れるでしょうか。
まずBの例で価格を算定してみましょう。両者とも10年後には同価格の1000万円で売却できるものとします。初年度で200万円の利益が生まれ、5年間200万円ずつ入ってきます。一方で2年目以降に得られる収入は所有期間の短さによる3%ずつ目減りしていくものとします。
(2,000,000×1)+(2,000,000×0.97)+(2,000,000×0.97×0.97)+・・・=を5年目まで繰り返します。その結果の合計の金額は9,417,732円になります。
一方で物件Aが1年目100万円の収入。10年間それぞれ3%ずつ目減りをするのであれば
(1,000,000×1)+(1,000,000×0.97)+(1,000,000×0.97×0.97)+…を10年繰り返します。
その結果の合計は8,752,529円となり、AとBでは10年で1000万円の収入という総額は同じながら、DCF法では50万円以上も違ってくるのです。
また物件の価格に関しても同様の計算となり、10年後に1000万円で売れることがわかっていたとしても、DCF法で3%目減りすると考えたら、計算上の価値はAもBも87,525,291円になります。
DCF法では収入を所有できる期間が長いほうが価値が高い物件とみなされるように、不動産投資においてキャシュフローがあるということは重要なのです。
不動産投資に限らず、投資信託などの投資をしている人ならばわかりやすいですが、DCF法は複利投資ができるかどうかという考え方に近いです。
自分が得た利益をまた投資に回していけるのであれば、その投資効果は非常に大きなものになります。
しかし利益を投資に回すことができずに、利益が出ることがわかっていても、実際に自由に使えるキャッシュフローにならなければ、その利回りは大きく下がるものと考えられるのです。
収益還元法は絶対的なものではないが、考え方は役立つ
不動産の価値は結局は、需要と供給により変化をするものなので、どの計算方法を持ってしても絶対にこれが正しい、というものはありません。
それよりも重要なのは多角的な角度でそれぞれの価値を見定めていくための考え方を持つことであり、収益還元法はその中でも最も相場にあった価値を算出し易い計算方法と言えます。
もちろん利回りも絶対的なものではありませんし、的確な価格を出すためには、常にアンテナを高く張って、消費者の動向を掴んでいくことが大切になります。
自分で価格を算出するだけではなく、提示された価格が正しいのかどうかを見抜くためにも、収益還元法を身に付けておきましょう。そうすれば収益性が本当に高い物件を自分の目で探すことができるでしょう。