物件の空室がすぐに埋まるオーナーと埋まらない大家。この両者の違いは、何だか分かりますか?
いくつか原因はあるのですが、一番大きな問題は不動産仲介の営業マンに好かれている大家か、嫌われているオーナーかの違いです。今回は、なぜ仲介営業マンに嫌われると空室が埋まらなくなるのか、どんな大家が嫌われて、好かれる大家は何をしているのかについて解説します。
不動産業者の営業マンってどんな人?
賃貸仲介の営業マンは非常に忙しいです。
部屋を探しに来たお客様の接客や内見案内、契約作業などの事務作業から物件の管理まで非常に多種多様な業務を、複数同時こなさなければなりません。そして彼らは「歩合の世界」で生きています。つまり、成約しなければ給料が発生せず、それまでの仕事がすべて無駄になってしまいます。
そうした環境に長年、身を置いて生き抜いてきた彼らは、極度に無駄な作業、無駄な時間が発生することを嫌います。
その為、彼らの行動や、成果報酬に繋がるような動きに協力的な大家は必然と好かれ、反対に愚痴や文句、理不尽な要求を突き付けてくる「勘違い大家」は、表面上は笑顔で接していても、裏ではブラックリストに入れられて「要注意大家」として敬遠されます。
収入はどれくらいなのか?
歩合制の世界で生きる彼らを見ていると、繁忙期にはバンバン成約を決めるので「きっと良い給料をもらっているんだろうなぁ……」と思ってしまうかもしれません。ですが、実際には彼らの給料はそれほど多くはありません。彼らが稼いだ手数料は、一旦会社に納められます。
そこから会社の取り分と必要経費を差し引かれるので、彼らの手元に残るお金はそれほど多い訳ではないのです。また、繁忙期があれば閑散期もあります。繁忙期で稼いだ手数料も、閑散期と合わせて通年で平均すると、彼らの給料は決して多くはないのです。
営業マンの仕事内容
最初にお伝えしましたが、仲介営業マンの仕事は沢山あり、彼らは非常に忙しいです。まず、彼らのメインの仕事は、来店したお客様から希望条件を聞いて、沢山ある物件の中からお客様に合った物件を紹介する事です。
そして、紹介した物件の中から気になる物件をピックアップし、現地まで社用車で移動して内見の案内をします。いくつかの物件をハシゴして内見した後、お客様が物件を決めたら契約に向けた作業に入ります。具体的には、
- 申込書の受付
- 入居審査
- 保証人の電話確認
- 契約書の作成
- 重要事項説明書の作成と説明
- 入金の段取りと着金確認
- 契約書への記入捺印
- 鍵の受渡し
以上の流れで契約作業を行います。また、お客様が一般の方か、法人のお客様かによっても契約の方法が変わります。契約までの作業のみならず、入居者の退去が発生した場合は、退去時の立会い確認、退去後のリフォーム・原状回復工事の手配を行います。
そして、新しい入居者の募集も行います。その他にも、ホームページやブログの更新、賃貸情報誌に掲載する物件紹介記事の作成、取引のない大家を訪問して、新規の管理物件獲得に向けた営業など、本当に沢山の業務を彼らは毎日行っています。
気に入られるオーナー、嫌われる大家の違い
筆者は長年、不動産業界で賃貸仲介の営業マンとして働いてきました。その中で、賃貸仲介の営業マンに好かれるオーナーと嫌われるオーナーには、明確な違いがあることに気付きました。
そこで、ここでは筆者の実体験も交えた上で、「こんなオーナーは賃貸仲介の営業マンから嫌われる、反対に好かれる」というポイントを6つにまとめました。
連絡がつかないオーナー
連絡が付きにくいオーナーは、賃貸仲介の営業マンから敬遠される、もしくは嫌がられて物件をお客様に紹介してもらえなくなります。なぜかと言うと、お客様との商談中に必ず大家に物件の状況確認をする場面が発生するからです。
賃貸仲介の営業マンは、自分がお客様に紹介する物件の最新の状況を逐一把握している訳ではありません。
空室確認や設備の更新状況、家賃の値交渉は可能かなど、商談を決める為に必要な事を物件オーナーに確認する必要があります。その時に、肝心のオーナーと連絡が取れないと、その商談は流れてしまう可能性が高くなります。
物件の状況確認が必要なタイミングは商談の真最中がほとんどです。その絶妙のタイミングでオーナーが捕まらないようでは、纏まるはずの商談も纏まりません。彼らは契約が成立しないと報酬が発生しないので、連絡の取りづらいオーナーは物件を決めづらいという事で敬遠されてしまいます。
上から目線の偉そうな大家
当たり前ですが、上から目線の偉そうな大家はもの凄く嫌われます。賃貸仲介の営業マンも人間です。偉そうな態度で接してくる大家の相手をしていると辟易してしまいます。今は物件余りの時代、借り手優位の時代です。物件が余っている中、賃貸仲介の営業マンは必至で物件を決めようと動いてくれます。
そんな彼らに対して、上から目線の偉そうな態度で接していたら、二度とお客様を紹介して貰えなくなるのは必然です。偉そうな大家を切っても、他に紹介する物件は沢山あるのが今の世の中なのですから、嫌われて物件をお客様へ紹介してもらえなくなるのは当然ですよね。
交渉に応じない頑固な大家
何度も言いますが、今は借り手が圧倒的に優位の時代です。空室物件は沢山ありますし、ネットのポータルサイトを利用すれば簡単に家賃の比較も出来てしまいます。そんな状況下では、商談の場でお客様の側から交渉をしかけてくる事が日常茶飯事になりました。
敷金礼金をもっと安くできないのか?
エアコン付きにして欲しい!
家賃を下げて欲しい!
など様々な交渉をお客様の側から持ちかけられます。そうした時に、何の交渉にも応じない頑固なオーナーだと、仲介営業マンは契約を纏める為の戦う武器が無くなってしまいます。
結果、「何の交渉にも応じない頑固なオーナーの物件は決まらない物件」として敬遠され、お客様に紹介されなくなってしまいます。
物件に投資しない大家
当たり前の話なのですが最も決まりやすい物件というのは、家賃が安くて設備が新しく、部屋が綺麗な物件です。現実にはそんな理想の物件は中々無いのですが、最低限、部屋が綺麗であることや設備が新しい物であることを求めてくるお客様は沢山います。
家賃が安ければ、部屋がリフォームされていなくても汚くても決まるだろうと思っている大家がいるのですが、実際にはそういう部屋は敬遠されて決まりません。多少、家賃が上がっても清潔感のある部屋が選ばれる傾向にあります。
とりあえず家賃を安く設定しておけば、物件に投資をしなくても決まるだろうと勘違いしている大家は、時代の流れを読めないオーナーとして賃貸仲介の営業マンから敬遠されてしまいます。
感謝の気持ちを伝えない大家
一生懸命動き回ってやっと入居者を決めた営業マンに対して、感謝の言葉のひとつも言えない大家は彼らから好かれることはありません。入居者募集に積極的な大家は、営業マンに対しての接し方やねぎらい、感謝の言葉をしっかり伝えることを徹底しています。
沢山のオーナーと日々接する営業マンは、感謝の言葉の無い大家と、感謝をしっかり伝えてくれる大家をどうしても比較してしまいます。
彼らも人間です。感謝の言葉の無い大家が、やがて人間性の魅力に欠ける人だと映り出し、そのうち「何となく嫌いだ」「適当な扱いでいい大家」と感じるようになってしまいます。
謝礼を渡しているのか?
俗にいう「キックバック」です。会社に支払う「広告料」とは違い、キックバックは直接営業マンの懐に入る報酬です。キックバックが無いからと言って、営業マンに嫌われる事はありません。ですが、キックバックがあれば営業マンの紹介意欲は間違いなく高まり、入居率改善に大きく貢献します。
ただ、キックバックに関しては賄賂的な扱いに捉えられる事もあるので、仲介会社によっては禁止している所もあります。キックバックを渡すなら、事前に仲介会社の店長に確認を取っておくことをおすすめします。店長がOKを出せば、キックバックの受け取りは問題無しとしている会社もあるからです。
気になるキックバックの相場ですが、家賃の半分~1ヶ月と考えておけば良いでしょう。
キックバックの渡し方ですが、現金や商品券・クオカードで渡すなど、いくつか方法があります。仲介会社によっては現金を会社の報酬として処理しなければならないなど、色々と事情がありますので、相手に合わせて受け渡し方法を考えるのがベストです。
年々空室率が上がっていく昨今、物件を安定運営させる為に賃貸仲介の営業マンの力を借りる事は絶対に不可欠です。そんな状況下にありながらも、昔ながらの大家気質で営業マンに嫌われてしまい、物件が空室まみれでどうしようもない状態の勘違い大家が未だに沢山います。
今回記載した営業マンから好かれる大家と嫌われる大家の違いをよく理解して、是非とも彼らを味方に引き入れて下さい。