「駅前の物件、絶対値上がりするから買うなら今ですよ!!」と不動産屋にすすめられて買ったAさん。
一方、「このエリアは賃貸で家を借りたい人がたくさんいるから、将来も安定して家賃がとれます。この物件はおすすめです!!」と不動産屋にすすめられて買ったBさん。
さて10年後、この二人の不動産投資は、いったいどちらが成功している可能性が高いのでしょうか?
キャピタルゲインとインカムゲイン
ひとくちに不動産投資と言っても、実は利益の上げ方に二通りの方法があります。
ひとつはキャピタルゲインと呼ばれるもの。もうひとつはインカムゲインと呼ばれる利益の上げ方です。
同じ不動産投資の利益でも、この二つには利益が発生するまでの過程や、利益の受け取り方などに大きな違いがあります。そして、この違いを理解することが、さきほどのAさん、Bさんの10年後の投資結果を予想する上で、とても大切なことなのです。
キャピタルゲインとは
キャピタルゲインは、不動産を売った時に手に入る利益のことです。そのため、キャピタルゲインを手にする為には、「安く買って高く売る」ことが絶対条件になります。
同じくキャピタルゲインを狙った投資手法としては、株式やFXの売買があります。ここでは、不動産投資におけるキャピタルゲインには、どんなメリットとデメリットがあるのか見ていきましょう。
メリット
不動産投資におけるキャピタルゲインのメリットは、値上がりの波にうまく乗ることが出来れば、非常に大きな利益を狙えることです。
例えば、物件周辺で再開発がある、そのエリアに人口の流入が続いている、住環境が良くて教育水準が高く、世帯収入の高いファミリー層に人気があるという物件なら、今後、値上がりする可能性があります。
そういった物件を、価格が安い時にうまく買うことが出来れば、あとは賃貸で貸しながら値上がりを気長に待つだけです。大きな利益を得られるチャンスがある一方で、手間が少ないのもメリットのひとつでしょう。
デメリット
キャピタルゲインのメリットを文字で書くと、「なんだか手間いらずで簡単そうだな。これなら自分にもできそう……」と思うかもしれません。ですが、実際は真逆です。
キャピタルゲインは狙って利益をあげるのが非常に難しく、安定して利益を上げ続けるのは更に難しいのです。これこそキャピタルゲイン最大のデメリットと言えるでしょう。キャピタルゲインで利益を上げるのは不動産のプロでも難しく、素人にはまったくおすすめできません。
難しい理由は、キャピタルゲイン狙いの不動産投資が、「誰が一番高値で物件を掴み、損をするのかというババ抜きゲーム」だからです。一番高値で物件を掴んでしまったら、あとは値引きをして損を出しながら売り抜くしかありません。
では、誰がババを引く可能性が高いのでしょうか?このゲームは、持っている資金力と情報力の差で勝負が決まってしまいます。
何度も言いますが、「物件が値上がりするのかどうか」「仮に値上がりしたとして、どこまで値上がりしていくら利益が出るのか」を予測することは、プロでもむずかしいものです。そんなババ抜きゲームに、資金力も情報力も劣る素人が参加しても、勝ち目はありません。
税率が高い
キャピタルゲイン狙いの不動産投資には、税制面でもデメリットがあります。短期間で売買を行うと、税率が高くなるのです。
この税率が「高くなるか低くなるか」を決めるのは、「長期譲渡」「短期譲渡」のどちらになるのかで決まると覚えておいてください。
長期譲渡と短期譲渡の分かれ目は、物件を購入してから1月1日を6回超えるまで保有しているかどうかです。1月1日を6回超えれば長期譲渡、それ以下なら短期譲渡になります。
長期譲渡の場合は22.1%の税率ですが、短期譲渡になると41.1%に跳ね上がります。
つまり、最低でも5年以上は保有しないと短期譲渡の税率が適用されてしまいます。短期譲渡の税率が適用されると税率が高すぎて、売却益の多くが税金として消えていくのです。
日本の不動産価格は値下がり傾向
人口が減っている日本では、基本的に不動産市場はダウントレンドです。値上がり益を期待しにくい状況であるということを知っておいてください。
逆に、値下がりしにくい物件を予測することは、それほど難しくありません。ですが、市場全体がダウントレンドの中で、値上がりするものを予測することは難しいのです。
インカムゲインとは
売却した時に発生するキャピタルゲインとは違い、インカムゲインは保有している間に受け取る利益のことを指します。不動産投資で言えば、毎月振り込まれる家賃がインカムゲインにあたります。
不動産投資で安定して資産拡大を行うには、キャピタルゲインよりもインカムゲインの方が重要になってきます。
メリット
インカムゲイン狙いの不動産投資には、大きく分けて3つのメリットがあります。
この3つのメリットは、不動産投資で資産形成・拡大をしていくための投資スタイルを決める、重要な要素でもあります。とても大切な内容なので、しっかり理解しておいてください。
計画的に資産を作っていくことができる
インカムゲイン狙いの不動産投資では、収入が安定していることが最大のメリットです。
家賃は、毎月きまった日に入ってきます。そして、空室の発生によって多少前後はしますが、毎月いくら収入があるのかが分かります。
毎月の収入が安定しているからこそ、5年後、10年後といった中・長期的な資産形成の計画が立てられるのです。
これがキャピタルゲイン狙いの投資では、こうはいきません。「いつ入るのか、いくら入るのか」かが分からないので、計画の立てようがないからです。
ですが、はじめからインカムゲイン狙いで計画を立てていれば、むりに売買を行って利益を作る必要はありません。「いつ売れるのだろう……いくらで売れるのだろう……」と悩まずとも、入居者が入っていれば家賃は毎月勝手に入ってきます。
そして、長期保有すればするほど、毎月の家賃収入が積み上がり、資産が安定して拡大していくのです。さらに、家賃収入をあらたな不動産に再投資すれば、福利の力を使って、資産を加速度的に拡大することもできます。
また、老後が本当に年金だけでやっていけるのかという不安がつきまとう人にも、毎月キャッシュが入ってくるインカムゲインはメリットになるでしょう。
節税対策
不動産投資で利益をあげる方法は、キャピタルゲインやインカムゲインだけではありません。
節税対策を駆使することで、利益をさらに大きくすることができます。なかでも、もっとも節税効果を期待できるのが、「減価償却」でしょう。
物件の構造による耐用年数の違いはありますが、毎年、建物の価値を償却していくことで、経費として計上することができます。これは、帳簿上の建物の価値が減っていくだけで、実際に現金が減るわけではないというメリットがあります。
ですが、経費として申告できるので、節税効果を得られるのです。この減価償却による節税効果も、建物の耐用年数内で長期保有すればするほど大きくなっていきます。
ここでもやはり、中・長期保有を前提としたインカムゲイン狙いの不動産投資と相性がいいのです。
インフレ対策
インフレ対策のメリットを得られるのも、インカムゲインを狙った不動産投資のメリットです。
株式やFXなどと違い、不動産投資は「土地」と「建物」という実物を保有します。当然、物価が上昇すれば、それにともなって実物資産である不動産の価値も上昇します。
そして、このインフレ対策のメリットは、物件を長期保有しなければ得られません。中・長期保有が前提になる、インカムゲイン狙いの不動産投資と相性が良いのです。
デメリット
インカムゲインを狙った不動産投資のデメリットは、間違った情報によって「楽して稼げる」と勘違いしてしまうことです。家賃は、毎月決まった金額が振り込まれるので、入居者さえいれば本当に何もしなくてよさそうに見えます。
そのため、ネットや書籍に書かれた「何もしなくても自動でお金が入ってくる」という文章をうのみにしてしまうのです。ですが、実際はまったく違います。
大家業は会社経営と同じ
大家業は立派なビジネスであり、会社を経営するのと同じです。そのため、大家さんにはやることが沢山あります。
管理会社から入居者や物件について報告と相談があれば、打合せを行う必要があります。そして、「こうして欲しい」と具体的に指示を出さなければなりません。また、退去後の原状回復工事や設備更新、外壁塗装などの各種工事について、工事内容・金額・工事業者の選定などを決めたりしないといけません。
物件の近隣住民からクレームがあったら、その対応についても考える必要があります。全部、管理会社に任せることもできますが、それでは管理会社の都合がいいようにリベートをのせられてしまい、赤字になります。
今の時代は、キメ細やかなサービスを提供して入居者の顧客満足度をあげていかないと、空室が埋まらない時代です。そのため、何もせずに楽して稼げるというわけではないのです
ただし、早いうちから大家としての経験を積み、管理会社・仲介会社・工務店などの外部業者に信頼できるパートナーを見つけることができれば、話が変わります。一度、安定経営をする仕組みを作ってしまえば、少ない労力で経営できるからです。
まとめ
今回は不動産投資におけるキャピタルゲインとインカムゲインの違い、それぞれのメリットやデメリットについてまとめました。
不動産を活用して、安定的に資産を増やす。その為には、キャピタルゲインよりもインカムゲインが大切であることが、わかっていただけたと思います。
不動産は値上がりを狙うよりも、値下がりしにくい物件を選ぶほうが簡単です。インカムゲインで確実に資産を増やしながら、キャピタルゲインは当たればラッキーくらいの気持ちで取り組むのが、不動産で長く安定して稼ぐためのコツです。