2019年10月に消費税は現在の8%から10%に引き上げられる予定となっています。現在、住宅購入を検討している人にとって、消費税増税により支払いの負担が増えるのは気になるところでしょう。
なんとか消費税が引き上げられるまでに住宅購入を完了しようと考えている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回はまずは消費税増税が住宅購入にどのような影響をもたらすのかを理解してもらい、現在の消費税8%を適用して住宅ローンを組むためにはどうすればいいのか、そのスケジューリングについて説明していきます。
消費税増税が住宅購入にもたらす影響は?
消費税増税がもたらす最大の影響は、住宅購入費の負担が大きくなるという点でしょう。
建物が2,500万円として消費税率が8%なら消費税額は200万円ですが、10%となれば50万円増額の250万円となります。しかも住宅購入時に消費税がかかるのは建物だけではありません。住宅購入で発生する下記諸費用にも消費税がかかってくるのです。
- 仲介手数料
- 融資手数料
- 登記手数料
- オプション費用(エアコンやカーテンなどの室内用具)
- 引越し費用
- 家具、家電費用
となれば住宅購入は消費税率引き上げ前に済ましておいた方が得策ということになってきますよね。しかし、そう簡単に判断してはなりません。消費税増税は上記のように住宅購入時にはデメリットとなる点もありますが、実はメリットとなる点もあるのです。
消費税増税がもたらすメリットとは?
住宅購入後の支払い負担を軽減するために実施されている制度として有名なのが下記の2つ。
- 住宅ローン減税
- すまい給付金
住宅購入を検討中の方ならば、消費税増税にともないこの2つの制度はどうなるのか気になるところでしょう。
消費税増税後もこの2つの制度は引き続き実施される予定となっています。しかし、住宅ローン減税には変更点はありませんが、すまい給付金には下記のように一部変更点があります。
- 給付額決定基準となる収入額上限 510万円 → 775万円
- 給付額 収入額425万円以下:30万円 → 収入額450万円以下:50万円
上記のように変更後はすまい給付金を受けられる人、受け取る金額ともに増えることになるのです。となれば消費税増額前に住宅購入するのが必ずしもベストな選択とは言い切れません。消費税は言うまでもなく購入する建物の価格によって増減し、その金額も高額となるため、発生する消費税差額がすまい給付金として受け取れる50万円を上回るとは言い切れないからです。
それでは2,500万円の物件と2,000万円の物件とで、簡単にシミュレーションしてみましょう。
2,500万円の物件
消費税 (変更前) |
消費税 (変更後) |
|
---|---|---|
建物代金 2,500万円 |
200万円 | 250万円 |
土地仲介手数料 510,000円 |
40,800円 | 51,000円 |
融資手数料 30,000円 |
2,400円 | 3,000円 |
登記手数料 150,000円 |
12,000円 | 15,000円 |
その他諸経費 150万円 |
120,000円 | 150,000円 |
⇒消費税差額 543,800円
2,000万円の物件
消費税 (変更前) |
消費税 (変更後) |
|
---|---|---|
建物代金 2,000万円 |
160万円 | 200万円 |
土地仲介手数料 360,000円 |
28,800円 | 36,000円 |
融資手数料 30,000円 |
2,400円 | 3,000円 |
登記手数料 150,000円 |
12,000円 | 15,000円 |
その他諸経費 120万円 |
96,000円 | 120,000円 |
⇒消費税差額 463,400円
上記計算はあくまでも概算となりますが2,500万円の物件は50万円を上回る消費税差額が発生しているのに対し、2,000万円の物件では50万円を下回っており、消費税差額はすまい給付金で補えるわけです。
ですが消費税増税前ならば受け取れるすまい給付金30万円を住宅購入費用として全額利用できることを考えれば、その方が断然得じゃないかと思われる方が大半でしょう。
しかし、どうしても購入時期が消費税増税後となってしまう方もいるでしょうし、忘れてはならないのは住まい給付金は新築住宅だけでなく、中古住宅購入時にも利用できる点です。つまり1,000万円を下回る住宅購入をする人もいるでしょうから、その場合には消費税差額も小さくなり住まい給付金の一部を住宅購入費に充てることもできるのです。
購入時期を前倒しできない人や、比較的低価格な物件購入する人にとっては、この住まい給付金の変更はメリットとなる可能性が高くなってきます。
現在、住宅購入を検討している人は、この点をよく理解しておきましょう。
ケース別のスケジューリング
それでは消費税増税後のメリット・デメリットを理解してもらったところで、住宅ローンを消費税増税前に間に合わせるためのスケジューリングをケースごとに簡単に説明します。
しかし、その前にスケジューリングを立てる際に最も重要となってくる「消費税率引上げに伴う住宅に関する経過措置」を理解してもらうことにします。
この経過措置が利用できるかどうかで適用される消費税率が違ってくるので、よく理解しておくようにしましょう。
消費税率引上げに伴う住宅に関する経過措置とは?
住宅購入時に適用される消費税率は、基本的には物件引渡し時点の税率が適用されます。よって、引き上げ予定である2019年10月1日以降に引き渡された物件は10%の消費税となります。しかし、経過措置に該当する場合は特例として8%の消費税が適用されるのです。
経過措置に該当するのは消費税率引き上げ予定の2019年10月1日の半年前、つまりは2019年3月31日以前に契約が取り交わされた物件となりますが、ここで注意しなければならないのはその契約が請負契約に限定されている点。
経過措置が適用されるのは基本的に注文住宅などの請負契約を行う物件が対象とされており、分譲住宅やマンション等、契約形態が売買契約となる場合は2019年3月31日以前に契約が締結されていても経過措置の対象とはなりません。
ですが国土交通省のHPでは請負契約だけでなく、マンション等の売買契約も概ね対象となるとの記載があります。ここで注意しなければならないのが「概ね対象となる」という文言。売買契約で経過措置の対象となるのは契約事項に「工事の請負に係わる契約」が含まれている場合のみ。
分譲住宅やマンションの契約に壁の色などの内装変更やドアの形状などの設備の追加工事を特注できる契約事項が織り込まれている場合、その契約が「工事の請負に係わる契約」として類されるため請負契約とみなされ経過措置の対象となるのです。
よって、この経過措置を利用するには、下記2つのいずれかが必須条件となってきます。
- 2019年9月31日までに物件引渡しが完了している
- 2019年3月31日以前に請負契約が締結されている
*売買契約の場合は「工事の請負に係わる契約」が含まれる契約であること
これから住宅購入を進めようという人は、上記条件をしっかりと頭に叩き込んでおくようにしましょう。
消費税率引上げを逃れるためのスケジューリングは?
それでは消費税率引き上げを逃れるための経過措置について理解してもらったところで、各ケースにおけるスケジューリングについてその要所を説明していきます。
今回説明するケースは下記のとおりです。
- 注文住宅
- 新規住宅
- 中古住宅(リフォーム)
- 増改築
- 住宅ローンの借り換え
- 住み替え
- 収益物件の購入
基本的には経過措置を利用するためのスケジューリングとなりますが、ケースによっては大きくスケジューリングが違ってくるので、特に該当するケースはよく理解しておくようにしましょう。
注文住宅
一般的には注文住宅の購入計画開始から引渡しまでは、約11ヶ月~14ヶ月の期間が必要となると言われています。2018年の夏以降から開始すれば2019年9月31日までの物件引渡しには十分余裕があるでしょう。
また注文住宅の場合は引渡し時期が2019年10月1日以降となっても、2019年3月31日以前に請負契約を済ませておけば経過措置が受けられ8%の消費税率が適用されます。ですから最低でも2019年3月31日までに契約締結となる計画が必要となってきます。
しかし、注文住宅でネックとなってくるのが、契約までの日数が長くかかるという点です。
契約までには土地の購入から建物プランニング、そして設計と分譲住宅やマンション購入では発生しない作業が出てきます。またこれらの決定には多くの要因が絡んでくるため契約までには最短でも5ヶ月、最長で19ヶ月もの日数が必要となってきます。
注文住宅の購入を検討しているならば、契約までに長い日数が必要となることをまず念頭に置いておかなければなりません。
注文住宅の場合は居住する人たちの意向が強く反映されたものとなるため、経過措置に間に合わせようと急げば結果的に満足のいく住宅購入とならないケースが予測されます。注文住宅の購入を検討しているならば、満足のいく住宅購入とするためには早急に計画を進めることをおすすめします。
新規住宅
新規住宅の場合は売買契約となるので、8%の消費税率を適用するには下記のどちらかの条件をクリアする必要があります。
- 2019年9月31日までに物件引渡しが完了している
- 2019年3月31日以前に売買契約が締結されている
*契約内容に「工事の請負に係わる契約」が必ず含まれていること
これか分譲住宅やマンション等の新規住宅は契約までに注文住宅ほどの日数はかかりません。長くても半年位を目安にしておけばいいでしょう。よって、今からゆっくり検討を始めれば消費税増税は気にする必要のありません。
しかし、住宅購入の最終的な着地点は満足のいく物件購入をすることです。となれば余裕があるからと後回しにせず、注文住宅と同様に早めに計画を進めるのがベストな選択でしょう。
中古住宅(リフォーム)
中古住宅の場合は売買契約となりますが契約内容に「工事の請負に係わる契約」が含まれていれば経過措置の対象となります。リフォームを前提に物件購入する場合は間違いなく対象となるわけです。
しかし、8%の消費税率を適用するには下記どちらかの条件をクリアする必要があるのは、今まで説明した購入物件と同じとなります。
- 2019年9月31日までに物件引渡しが完了している
- 2019年3月31日以前に売買契約が締結されている
*契約内容に「工事の請負に係わる契約」が必ず含まれていること
リフォームは新築住宅のように工事期間は長くかからないので、新築住宅購入よりもさらに期間的余裕があると言えます。しかし、中古物件の場合は建築時期に応じて安全規格が違ってくるため住宅ローン組みに手間取る可能性もあります。
今から始めれば十分余裕を持って住宅購入ができるでしょうが、駆け込み購入とならないようにだけ気をつけるようにしましょう。
増改築
「工事の請負に係わる契約」に該当するのはリフォームだけでなく、修繕や改修工事も対象となります。よって増改築の場合も経過措置の適用となります。よって、スケジューリング時の注意点はリフォームと同じと考えていいでしょう。
住宅ローンの借り換え
住宅ローンの借り換えは工事が発生しないため経過措置の対象とはならず、8%の消費税率を適用するには2019年3月31日までに契約を締結しておくことが唯一の条件となってきます。
一般的に住宅ローン借り換えは申し込みから契約まで約1ヶ月の日数が必要となってきます。現在は住宅ローン金利が底値とも言われているので、借り換えには絶好の時期と言えます。時間を置いてもこれ以上の金利下落は望めないので、支払い金利を軽減するためにも早めの借り換えがおすすめと言えるでしょう。
住み替え
住み替えの場合は次の物件が新築か中古かで先に説明したスケジューリングを行えばいいのですが、ひとつだけ注意しなければならないのが住んでいる物件を売却する場合です。
個人間売買ならば消費税はかかってきませんが、仲介業者を介した売却時には消費税が発生します。その場合は2019年3月31日までに売買契約を締結しておかなければ消費税率が10%となってしまいます。
新規の購入物件と合わせてこの点も注意したスケジューリングを行うようにしましょう。
収益物件の購入
収益物件だからといって物件購入時に特別な制度は用意されていないので、購入物件に応じて今回説明したスケジューリング対応を行えば問題ありません。
しかし、投資物件の場合には購入物件が利益を生み出すための条件が備わっていなければなりません。それもあって購入時期を消費税率変更に合わせたスケジューリングに合わせることが困難となるケースも出てくるでしょう。
投資別件購入に関しては消費税率の変更時期を気にするよりも、いかに収益性の高い物件を購入するかの方が重要になってきます。購入時には諸費税率が上がった場合の収益性を考慮した計画も用意する必要も出てきます。
消費税アップを気にした買い急ぎはくれぐれもしないよう心がけ、収益性アップを重要視する必要がありますね。
まとめ
今回はケースに合わせたスケジューリングの注意点を説明してきましたが、どのケースにも言えることは焦って事を急かさないことです。
消費税増税に合わせて住宅購入が急増するのは間違いありません。よって、先にも説明したように増税時期だけに囚われてじっくりと検討せずに住宅を購入してしまう人も出てくるでしょう。
しかし、その場合には後悔する可能性が高くなるだけでなく、契約が集中して間に合わなかったとういうことも考えられます。今から準備すればどのケースでも十分余裕を持った住宅購入計画が立てられます。
住宅購入を消費税増税前にと考えている人は先送りにせず、すぐにでも計画を進め、本当に満足できる住宅購入とするようにしてくださいね。