なぜマイナス金利が住宅ローンに影響するのか?

なぜマイナス金利が住宅ローンに影響するのか?

2016年2月16日から開始されたマイナス金利政策は新聞やテレビをはじめとする様々なメディアで取り上げられているので、知らないという人はいないでしょう。

しかも、このマイナス金利の影響で住宅ローン金利は低金利状態となり、今ではその金利は底値の底とまで言われる状況となっています。マイナス金利政策のおかげで、住宅ローン金利が下がったということを耳にした方は随分といるのでは?

ですが何故、マイナス金利政策が住宅ローンの低金利を招いたのかまで理解している方は一部の人に限られてくるのが実情です。

そこで今回はマイナス金利が何故、住宅ローン金利に影響を与えるのかを詳しく説明していきます。これから住宅ローンを組むという人には重要な話となるので、途中でめげることなく最後までしっかりと読んでくださいね。

銀行の住宅ローン金利の仕組み

それでは今回の話をよく理解してもらうためにも、まずは銀行の住宅ローン金利がどのように決定されているのか、その仕組みについて説明していきます。

住宅ローン金利はこうして決められる

住宅ローンに限らず銀行の金融商品の金利は常に変動しています。となれば金利決定がただ銀行の意向だけで決定されているとは考えられず、何かしら金利決定の基準となるものが存在するはずです。実際にその基準となるものは存在します。

住宅ローン金利は下記の2つに分類されます。

  • 変動金利
  • 固定金利

実はこの2つの金利の決定方法は、基準となるものが全く違っているのです。

変動金利はこうして決まる

近年は固定金利に押されていますが、住宅ローン金利で最も利用者が多いのが変動金利です。金利見直しは行われるものの、固定金利よりも低金利で住宅ローンを組めるメリットがあります。

しかも金利が上昇したら住宅ローン金利を上げ、下落したら金利を下げられるので、銀行にとってもリスクのない融資手段と言えるでしょう。

この変動金利の決定は日本銀行が銀行に融資する際の金利となる政策金利と連動しています。銀行が融資に利用するお金はすべてを保有金で賄うわけではありません。足りない分は違うところから借りてきているのです。その一つが日本銀行です。この借入利子が下がれば、民間への銀行金利が下がるのは言うまでもありませんよね。

また銀行が企業融資する際の最優遇金利を短期プライムレートと呼び、この金利が銀行融資の金利決定の基準ラインとなります。短期プライムレートが下がれば銀行金利全般が下がります。

そしてこの短期プライムレート金利も政策金利に連動しています。よって政策金利が下がれば連動して短期プライムレートも下がるというわけです

固定金利はこうして決まる

そしてマイナス金利による住宅ローンの低金利化で近年利用者が増加している固定金利は、金利が底値の底と言われている今こそ大きなメリットを生み出します。

固定金利は金利が上昇しても住宅ローン金利を上げられないので、変動金利とは違い銀行としてはリスクを孕む融資手段となってきます。

この固定金利の金利決定は国債金利に連動しています。国債はいわば国への貸付とも言え、国が利子と元本を保証している債権です。そして金利決定は国債の中でも最も市場規模が大きいと言われる10年国債の金利と連動しています。

国債は購入者が増えれば国債の価値は上がりますが金利は下がり、逆に購入者が減れば国債の価値は下がりますが金利は上がります。よって、国債の購入者が増えれば国債金利が下がり、固定金利も連同して下がるというわけです。

マイナス金利とは?

それでは次は肝心のマイナス金利について理解してもらい、住宅ローンの金利決定にどのように関わってくるのかを説明していきましょう。

マイナス金利とは?その導入目的から検証

何故マイナス金利が導入されたのか、その理由はアベノミクスの3本の矢の1つでもある金融政策による景気拡大が目的です。

「なんでマイナス金利が景気拡大のための金融政策になるの?」そう思った人は多いのでは?

これはまさに、マイナス金利がもつ性質そのものが理由と言えるでしょう。

銀行に預金すれば利子が発生して利息がつきますが、この利子がマイナスだったとしたらどうでしょう。預金すればするほど銀行に支払う利息が増大することになりますよね。これがマイナス金利です。

しかし、マイナス金利が導入された今でも、預金金利がマイナスになっていません。実はこのマイナス金利政策は銀行と国民ではなく、銀行と日本銀行との間での話のため、我々国民には何の影響もないのです。

銀行へのマイナス金利が経済を活性化させる!

銀行は日本銀行にほかの銀行や日本銀行、国との取引の決算手段として利用するための日銀当座預金を持っています。

マイナス金利導入以前はこの日銀当座預金へ預金しておけば、年利0.1%の金利を受け取ることが可能でした。1,000億円預金しておけば1年で1億円の利息を得ることができるというわけです。

となれば市場で利益が稼げないならばこの日銀当座預金に預けたままにして、利息を得たほうが利益が上がると考える銀行も出てきます。こうなると市場に出回るお金は増えることなく、経済の活性化は図れません。

そこでマイナス金利導入による-0.1%の金利が市場にお金を出回らす引き金となります。マイナス金利導入後は1,000億円預金していれば、1年で1億円を日本銀行に支払う羽目になってしまいます。こんな不利益なことはやってられませんよね。

となれば銀行は預金をそのままにしておくことはできず、民間企業に融資したり、投資に回したりという動きに出ます。これによって市場にお金が出回り、経済が活性化して景気拡大効果が発揮されるのです。

こうしてマイナス金利の本質とその効果を考えれば、マイナス金利が金利政策の1つとして導入されたのにも合点がいきますよね。

住宅ローン金利が下がるわけは?

それでは肝心のマイナス金利が住宅ローン金利にどう影響するのかを説明していきましょう。

変動金利と固定金利は金利決定の基準が違ってくることを説明しましたが、その観点からすれば変動金利に関してはマイナス金利による金利変動の影響はないと考えられます。

しかし、固定金利は話が別です。

マイナス金利導入により日銀当座預金に預金をプールしておけなくなった銀行がまず目をつけたのが国債です。金利は高くないとは言え、国の金利と元金保証があるのですから、確実に利益を生む国債に投資しようという動きに出たのです。

これによって国債への投資額は増大し、固定金利の金利決定の基準となる10年国債の金利は史上初のマイナス0.01%まで下落しました。そして当然、10年国債と金利連動している固定金利も引き下げられることになったのです。

近年住宅ローンの変動金利と固定金利には差がなくなったと言われるのも、マイナス金利が影響して下落した固定金利と影響せず据え置きとなった変動金利との違いに理由があったというわけです。

また変動金利はそのまま据え置きとしている銀行も多いのが実情ですが、一部銀行では金利引き下げが行われています。もちろん固定金利との兼ね合いもあるでしょうが、マイナス金利が長期化となれば、自然に変動金利へも低下圧力がかかる可能性は高いと考えられます。

よって、最終的には変動金利へもマイナス金利の影響が出ていると言えないではありませんね。

マイナス金利はいつまで続く?

住宅ローン金利が下がったとは言え、できるだけ低金利で住宅ローンを組みたいというのが消費者の本音でしょう。よって、今が決めどきかどうかに頭を悩ませている人も多いのでは?

そこで気になってくるのがマイナス金利はいつまで続くのかという点です。マイナス金利は住宅ローンに限らず金利低下を招いている1つの要因ですから、マイナス金利が中止されると金利上昇が起こることは目に見えています。

となればその見極めは重要になってきます。

マイナス金利政策は住宅ローン借り入れの増大という点においては経済的効果を発揮しましたが、短期金利だけでなく超長期金利まで押し下げたとその副作用を指摘する声も少なくありません。

事実、日本銀行は長期金利が0%で推移できるように国債買入措置を導入するなど、下がりすぎた金利を修正しようとする動きを見せいています。

しかも、マイナス金利はアベノミクスという現在の与党による政策ですから、政権交代でもあろうものなら存続すら不確かなものとなってしまいます。よって、いつまで続くのか確実な予測を立てることは不可能なのが実情です。

現在の住宅ローン金利はこれ以上、下がることはないだろうと言われるほどの底値です。となれば、いつまで続くか分からない予測を立てるよりも、早めの申し込みをするのが1番おすすめの選択肢となってくるでしょう。


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