近年は共働き夫婦が増えたことから、住宅購入する際のローンの組み方に関して、様々な選択肢が用意されるようになりました。現状夫婦で住宅ローンを利用する方法は主に下記の2つが用意されています。
- ペアローンで住宅ローン組む
- 収入合算で住宅ローンを組む
しかし、夫婦合同でお金を出し合い住宅ローンを組むのはメリットもあるのですが、デメリットも出てきます。よって夫婦が将来を見据えてどういった住宅ローンを組むのが得策であるのかを慎重に検討する必要があるでしょう。
そこで今回は夫婦で住宅ローンを借りる方法について、詳しく検証していくことにしましょう。
夫婦で住宅ローンを借りる方法
冒頭で言ったように夫婦で住宅ローンを借りる際に利用できる手段は、大きく分けると2つに分類することができますが、どちらの借入手段を利用するのかによって、受けるメリット・デメリットは違ってきます。
よってこれら借入手段がどのような特徴を持ち、どのようなメリット・デメリットがあるのかをよく理解しておく必要があるでしょう
ペアローンで住宅ローン組む
今回説明する夫婦で住宅ローンを組む手段は、ともに両者の収入を元に住宅ローンを組むという点ではどちらも同じです。しかし、契約内容が全く違ってくるため、受けるメリット・デメリットも全く違ったものになります。
ペアローンの一番大きな特徴は夫婦それぞれが単独で住宅ローンを組み、そのローンの借入金額を合算した総額で住宅を購入する方法となります。
不動産価格が5,000万円の物件があったとしましょう。これをペアローンを利用すると旦那さんが4,000万円、奥さんが1,000万円の住宅ローンをそれぞれ個別に組み、5,000万円の物件を購入することができます。
つまり、1件の不動産購入に対して2つの個別された住宅ローン契約が存在することになるのです。それではペアローンにはどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていくことにしましょう。
ペアローンのメリット
ペアローンの主なメリットは下記の3つです。
- 借入可能金額が大きくなる可能性が高く、高額物件購入ができる
- 民間の住宅ローンを組むことが多いので団信の保険料が無料のことが多い
- 夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる
夫婦それぞれが個別にローンを組むため、高額物件の購入ができるようになります。よって、理想としているマイホームの購入ができる可能性が高くなるので、マイホーム購入に大きな夢を持っている方には、大きなメリットとなってくるでしょう。
また、両者が個別に住宅ローンを組んでいるので、当然、住宅ローン控除もそれぞれ受けることができます。そして団信の保険料が有料となるフラット35ではなく、無料の民間ローンを利用するケースが多いため、保険料がかからないことも見逃せません。
ペアローンのデメリット
ペアローンの主なデメリットは下記の3つです。
- 個別に団信保険へ加入するため、どちらかが死亡しても住宅ローンは残る
- 面倒な契約が2つ必要な上、手数料も2倍掛かることになる
- 離婚した際の各処理が複雑で面倒
この中でも一番よく理解しておかなければならないのが団信保険です。団信保険は契約者が重篤な病気になったり死亡したりした場合、ローン残債の支払が免除されますが、ペアローンはそれぞれが個別に団信保険に加入するため生存している方のローン支払いが残ってしまいます。
この点も踏まえて夫婦間の借入比率は収入が大きい旦那さんに比重を置く契約とするのが一般的です。
しかし、比重の少ない奥さんが死亡して返済が免除されたとしても、決して支払いが楽とは言えない比重の大きな旦那さんのローンは残ります。その際、支払いに困らないためにも、奥さんには死亡保障付きの保険に加入してもらうといったリスク対策が必要となってくるでしょう。
収入合算で住宅ローンを組む
収入合算とは、その名のとおり夫婦の収入を合算した所得をベースに住宅ローンを組む方法ですが、ペアローンと違いどちらか一方が契約者である主債務者となります。そして残った一方が連帯債務者、または連帯保証人となりローン契約を締結する形をとります。
よって収入合算による住宅ローンは下記の2つに分類できます。
- 連帯債務型
- 連帯保証型
どちらの収入合算を選ぶのかは受けられるメリット・デメリットも関係してきますが、連帯債務者になるのか、連帯保証人になるのかの判断も重要です。よって、これら2つの言葉の意味もしっかりと理解しておく必要があるのです。
連帯債務型の特徴とメリット・デメリット
連帯保証人という言葉はよく耳にするでしょうが、連帯債務者という言葉には聞きなれないという方は多いことでしょう。
連帯債務者とは契約者である主債務者と同様の債務責任を負うこととなります。つまり、契約者が旦那さんであっても、債務連帯者である奥さんはいつでも金融機関から支払請求される立場に置かれるということです。
連帯債務型のメリット
連帯債務型のメリットは両者が住宅ローン控除を受けられる点です。ペアローンのように契約者として実際に支払いを行っている契約ではありませんが、主債務者と同様の債務を負っている事実から住宅ローン控除を受けることができます。
連帯債務型のデメリット
またデメリットは団信保険に関する下記の2点です。
- 団信保険加入は主債務者である契約者のみ
- 連帯債務型の取り扱いは主にフラット35となるため団信保険料が有料となる
保険料が有料となるだけでなく、同じ債務責任を負っているのに保険加入が契約者だけですから、連帯債務者が死亡等で返済不能となった場合に何の保障も受けることができません。よってペアローンで説明したように何らかの保障が受けられるように対策を立てておく必要があるでしょう。
連帯保証型の特徴とメリット・デメリット
連帯保証人は連帯債務者とは違い、契約者である主債務者が返済不能となった時はじめて、債務に対する責任が発生します。よって、金融機関から支払請求が行われるのは、金融機関が契約者が返済不能と判断してからとなるのです。
この点が連帯債務型とは一番大きく違う点であり、もっとも大きな特徴となってきます。
連帯保証型のメリット
残念ながら連帯保証型のメリットは夫婦で住宅ローンを組めるということ以外、主だったものは見当たりません。しかし、これまた残念なことにデメリットはしっかりと存在するのです。
連帯保証型のデメリット
連帯保証型の主なデメリットは下記の2つです。
- 契約者しか住宅ローン控除を受けられない
- 団信保険加入は契約者のみ
契約者と同じく住宅ローン支払いに参加しているにもかかわらず、上記デメリットしか発生しない事を考えれば、何だか利用する意味は感じられません。
連帯債務型の場合は団信保険の面では同様にデメリットがありますが、住宅ローン控除を両者が受けられる上、取り扱いがフラット35となるため金利等の借入条件で民間の金融機関よりも優遇される可能性があります。
しかし、連帯保証型の場合はそのメリットもなく、デメリットのみですから、利用するならばこれまで紹介したなかで総合的にメリットの高いペアローンを検討した方がいいでしょう。
離婚した場合、住宅ローン処理はどうなるの?
今回は夫婦で住宅ローンを借りる方法について説明してきましたが、この住宅ローンで一番心配なのは離婚した場合どうなるのかという点でしょう。離婚を考えながら生活している方はいないでしょうが、もしもの時の対処法は知っておく必要があります。
ペアローンの名義変更はできるの?
ペアローン契約書には「ペアローンの支払い期間中は、名義変更を金融機関の承諾なしに行うことはできません。」といった文言が記載されており、「承諾を得ずに名義変更をした場合、住宅ローン残額の一括請求を行う場合もあります。」と続きます。
つまりペアローンは離婚したとしても、ローン借入先の金融機関の承諾なしには名義変更は行えないのです。
しかし、金融機関があっさりと名義変更を認めてくれることはありません。ローン契約自体が夫婦の支払いを前提としたものですから、共有名義だったものがどちらか一方の名義になれば支払いが滞り、返済不能となる可能性が高いからです。
離婚したからといってペアローンの支払いが免除されるわけではありません。それぞれが個別に組んだ住宅ローン支払いは完済しなければなりません。
離婚による名義変更を行う場合には、金融機関を納得させられるだけの返済方法を明確にする必要があるでしょう。よって、今後の支払い方法について両者でよほどしっかりした話し合いが必要となってきます。
話し合いが中途半端だとどちらか一方がローン支払いを完済して、勝手に処分してしまうことも考えられます。そうなると不動産の一部が第三者の手に渡ることとなり、自分が持分権利を持っていたとしても家から出ていかなければならない羽目にもなってしまいます。
離婚となれば以前と同じく同居するわけにもいきませんから、どちらか一方は家を出ていくことになります。となれば残った人だけで今後の支払いをコントロールするのは難しいため、返済が不安定になると金融機関は判断するのです。
よって、住宅ローンを残したままで名義変更を行うには、これら問題をきちんとクリアして、もしもの時は法的措置が取れるような対策を講じる必要も出てくるでしょう。
連帯債務者と連帯保証人は解除できるの?
収入合算で連帯債務者や連帯保証人となっている場合には、簡単にその責任から逃れることはできません。連帯債務者や連帯保証人は夫婦間の取り決めごとではなく、住宅ローンを組んだ際の金融機関との契約事項となるからです。
ともに債務保証をすることが条件で住宅ローンを組んでいるので、これら債務責任から解放されるのは基本的には住宅ローンが完済された時に限られます。
よって、離婚したからといって連帯債務者や連帯保証人の任を抜けることはできないと考えておいてください。
それでもなんとかしたいという場合には下記のような方法も考えられますが、どれも簡単に行えることではありません。
- 住宅ローンを借り換えして契約内容を変える
- 代わりとなる連帯債務者、または連帯保証人を連れてくる
- ローン残金に充当する固定資産を担保にする
一番現実的なのは住宅ローンの借り換えですが、ローン残金によっては単独契約では借り換えできないケースも考えられます。また代わりを連れてくるというのもあまり現実的な方法とは言えないでしょうし、持っている固定資産を担保にするのもできる人は限られてきます。
よって、離婚したからといって連帯債務者や連帯保証人の任から抜けるのは難しいと言わざるを得ないのが実情です。
まとめ
契約先の住宅ローンを完済しない限り、契約において債務責任を負っている方は、おいそれとその責任から逃れることはできないのが実情です。
夫婦で住宅ローンを組むことは多くのメリットがありますが、これは全て2人でローン支払いをすることが前提となっています。よってその条件で契約している金融機関に対しては、離婚したからといって債務責任がなくなるわけではなく、支払いを免除してくれるわけではありません。
ペアローンや収入合算で住宅ローンを組む際にはこの点をよく理解して、慎重に検討した上で利用するようにしましょう。