家が地震や土砂災害で全壊したら住宅ローンはどうなる?

家が地震や土砂災害で全壊したら住宅ローンはどうなる?

自然災害は住んでいる人に多大な被害をもたらしますが、その最たるものの1つが住宅損壊です。全壊や半壊など被害状況は多岐にわたりますが、災害後は必ず修復が必要なってってくるので、地震が多発する日本では心配している方も多いことでしょう。

近年は地震や台風、土砂災害に備えた保険加入者の数が増大しています。そこで気になってくるのが住宅ローンだと思います。

自然災害で住宅が全壊してしまった場合、ローン支払いはどうなるのでしょうか?
今回はここに焦点を絞って、話を進めていくことにしましょう。

自宅が被災した場合の住宅ローン対応は?

被災によって住宅が全壊したのだから、住宅ローンの残債は支払わなくてもいいのではと期待している方もいるでしょうが、残念ながらそんな都合のいい話はありません。

ローンを組んだ契約者には完済までローン支払いする義務が課せられています。よって、自然災害で被災して住宅が全壊したとしても、住宅ローンの返済が免除されることはないのです。

過去の災害事例から見る被災状況

それでは大規模災害が起こった場合、どれくらいの被災が発生するのでしょう。

深く私たち日本人の記憶に刻み込まれている阪神淡路大震災と東日本大震災から実際の数値を見ていくことにします。

阪神淡路大震災

阪神淡路大震災は1995年1月17日淡路島北部沖の明石海峡を震源地とした(Mw)7.3の兵庫県南部地震によって引き起こされました。

被災地は近畿県広域に及び、最も震源地に近い神戸市市街地は甚大な被害を受け、近年発生した東日本大震災までは最悪の自然災害と言われていました。

その際の住宅被害は下記のとおりです。

  • 全壊   104,906棟
  • 半壊   144,274棟
  • 一部損壊 390,506棟

東日本大震災

東日本大震災は2011年3月11日宮城県牡鹿半島の東南東沖を震源地とした(Mw)9.0の東北地方太平洋沖地震によって引き起こされました。

その規模は阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震を遥かに凌ぐ超規模地震で、日本周辺における観測史上最大級の地震でした。

その際の住宅被害は下記のとおりです。

  • 全壊   121,764棟
  • 半壊   280,121棟
  • 全半焼  297棟
  • 一部損壊 726,443棟

地震規模が最大級のこともあって、住宅被災は阪神淡路大震災を上回る数値となっています。

被災時には2重支払いとなる可能性が!

返済が免除されないとなれば、まず心配しなければならないのが当面必要となってくる居住費です。

先に説明した大きな自然災害であれば政府が用意した仮設住宅に住むこともできますが、そこで何十年と暮らせるわけではありません。

いずれは自分で居住先を用意する必要が出てきます。しかし、ここで問題となってくるのが居住費です。毎月の住宅ローン返済は決して安価なものではありません。それを支払いつつ、新居の家賃や、新しい住宅ローンを組むとなると、その費用は簡単に捻出することはできません。

つまり、自然災害による住宅被災が全壊となった場合には、被災にあった住宅のローンと新居の家賃、もしくは新しいローンの2重支払いという最悪の状態を迎える事になるのです。

事実、1995年に起こった阪神淡路大震災では約25万棟の住宅が全半壊し、そのうちの約15,000人が2重ローンの支払いを課されています。

残りの約23.5万人はおそらく住宅ローンを組めず賃貸物件に移り住んだと考えられるので、2重ローンよりは負担が軽いとは言え、生活費における居住費がいかに負担になったかは容易に想像がつくでしょう。

以上のように新居が必要な方にとって、被災住宅のローン返済は返済義務が免除されないだけでは済まない大きな問題となってくるのです。

残った住宅ローン返済の対応策は?

それではどうすればいいのでしょうか?

今後の住居のこともありますから、自然災害だから仕方ないと諦めることなんてできませんよね。そこでまずは住宅が被災した場合の住宅ローン返済に備えて、現状で取れる最善の対策法を紹介していきましょう。

特約のついた住宅ローンなら一部返済の免除も可能!

近年はローン契約者が返済中に死亡や高度障害を患った場合、残債の返済を保証する団体信用生命保険(通称、団信)に加入するケースが多くなったため、人的被害においては住宅ローン返済を免れる仕組みが確立しています。

しかし、こと自然災害による住宅被害においては、団体信用生命保険のように完全にローン返済から免れる保険は販売されていません。

基本的には残債を完済するまで支払い続けなければならないのが現状です。ですが全額ではありませんが、下記のように一部免除という特約をつけた住宅ローンも販売されています。

自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(三井住友銀行)
  • 自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)
    損壊状態によって、6、12、24回分のローン支払いが免除される。
  • 自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(残高保障型)
    全壊認定を受けた場合、ローン残債の50%相当額が支払い免除される。
自然災害補償付き住宅ローン(関西アーバン銀行)

損壊状態によって、6、12、24回分のローン支払いが免除される。

もちろんこれらの特約がついた住宅ローンになれば支払い金利が0.1~0.5%ほど上昇し、支払額の上積みは必要になってきますが、住宅ローン返済の全額負担という最悪の状況は逃れることができます。

まだ対応している金融機関は多くはありませんが、住宅ローン選びの際にはこの補償があるかないかの確認も重要となってくるでしょう。

火災保険による補償

火災保険にはオプションとして地震や噴火、津波による被災の補償が受けられる地震保険がつけられます。よって火災保険と自信保険に加入しておけば、被災時にも損害額に応じた補償を受けられるのです。

しかし、火災保険は掛金が高額で、一般的には建物評価額2,000万円の木造住宅で年間約39,000円もの掛金が必要になるので、全ての方が簡単に加入できないのが実情です。

しかも地震保険の場合には火災保険で補償される額の50%が上限となっており、被災原因が火災認定されなければ実損の補償を受けれません。となれば高額な火災保険を支払ったとしても、完全な補償を受けることは難しいのが実情です。

よってすべての災害に万全を期するなら、火災保険と自信保険の加入に加え、先ほどの50%のローン返済免責が受けられる三井住友銀行の自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(残高保障型)を利用するのが今のところベストな補償対策となってきます。

公的補助の利用

被災したとしても基本的には残った住宅ローンの処理は個人が行わなければなりません。しかし、災害における被災時にまず利用しもらいたいのが公的補助です。自然災害による住宅被災に対しては、阪神淡路大震災をきっかけに施行された「被災者生活再建支援法」という法律によって公的補助が受けられます。

その内容は下記のとおりです。

  • 基礎支援金 全壊100万円、大規模半壊50万円
  • 加算支援金 住宅建設、購入200万円、補修100万円、賃借50万円

最高で300万円の公的補助が受けられるので、是非とも申請するようにしましょう。

家を再建するには?

ここまで震災にあった場合の住宅ローンへの対応策を説明してきましたが、やはり必要なのはもしもの時に備えた対策でしょう。被災した住宅ローンを抱えたままで、新居建設による新たなローンを組んで、2重ローンに苦しむ方も少なくありません。

よって被災時にどれだけの補償が受けられるのかが、この2重ローンの苦しみを避ける最善の方法となってきます。

しかし、この20年足らずで阪神淡路大震災、東日本大震災と大規模地震が起こったことから、被災による2重ローン負担者を減らし、それが原因で自己破産者とならないように2016年4月から新しく被災ローンの減免制度が始まっています。

これを利用すれば、今回説明した対応を取っていなくても住宅ローンの返済免除ができる可能性があります。

被災ローンの減免制度とは?

被災ローンの減免制度とは東日本大震災の被災者を対象として作られた制度が元となっており、すべての自然災害時に利用できるよう全国銀行協会と日本弁護士連合会が中心となりガイドラインがまとめられ、熊本地震で適用された災害救助法とともに運用が始まりました。

対象は被災により住宅ローンをはじめとした各種ローンの返済ができなくなった方、もしくはできなくなる見込みの方で、金融危機案の同意があれば下記のような免除が受けられます。

「貯蓄最大500万円と公的資金を手元に残し、その他の余力で返済しきれない分を免除」

これは返済不能となった時の債務整理と似ているのですが、被災ローンの減免制度は債務整理とは認識されないため信用情報機関に登録されません。債務整類の記録が信用情報機関に登録されると、住宅ローンをはじめとするローンや借り入れ利用が一切できなくなります。

しかし、この減免制度を利用した住宅ローン免除ならば、債務整理と全く同じことをしても新たに住宅ローンを組むことができるのです。

被災による住宅ローンが残っているが、家を再建しなければならないという際には、必ず利用してもらいたい制度と言えるでしょう。ですが理解しておいてもらいたいのは、この制度はまず金融機関との話し合いで条件等が決められ、利用できるかどうかも金融機関の同意が必要となります。

よって、必ずしも満足いく結果となるわけではありません。同意が得られないということはまずないでしょうが、確実性を求めるのであれば、いざという時に補償が受けられる対策は講じておくことをおすすめします。


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