住み替え(買い替え)ローンを組む際の注意点

人は長年同じ住宅に住んでいると、ライフサイクルの中で、新しく住宅を購入して住み替えの必要性が出てくることがあります。

たとえば子どもが成長して独立したため、住んでいる居宅に余裕ができてしまった時、転勤によりそれまで住んでいた自宅が勤務先からかなり遠くなって不便になった時などです。

そのような時、住み替えを考えるようになりますが、問題点が発生することがあります。それは新しく住宅を購入する場合にも住宅ローンを利用しますが、現在住んでいる住宅にも住宅ローンがまだ残っている場合などです。

本来なら旧宅の売却代金で住宅ローンの残金を全額返済したのち、新しく家を探して移り住めればいいのですが、不動産屋に相談してみると、売却代金だけでは住宅ローンを精算できず、まだ債務が残りそうなケースがあります。

さらに自己資金も乏しく、残りの残金を払えそうにありません。こんな場合、どのようにしたら全てがうまくいくのでしょうか。

実はこのようなケースを想定して金融機関で作られた商品が、住み替え(買い替え)ローンです。

住み替え(買い替え)ローンを賢く使いこなすことで、手持ちの自己資金を極力使うことなく、また売却代金でローン残金を精算できず依然としてローンが残る場合でも、スムーズに住み替えを行うことができるようになります。

今回はその住み替え(買い替え)ローンを組む際の注意点を中心に詳しく解説します。

住み替え(買い替え)ローンを組む際の注意点
  1. ダブルローンと住み替えローンの違い
    1. ダブルローンはリスクが高いので避ける
    2. 住み替え(買い替え)ローンとは
  2. 住み替え(買い替え)のローンの注意点
    1. 物件価値以上のローンを組む点
    2. 返済と融資のタイミングに注意
    3. 住み替えする際の買い替え特約について
    4. 住み替え(買い替え)ローンを取扱いしている銀行

ダブルローンと住み替えローンの違い

住み替えに伴い新しい家の購入に住宅ローンを利用した場合、仮に現在住んでいる居宅にまだ住宅ローンが残っていれば、ローンが二重の状態になります。この状態を金融用語ではダブルローンと呼んでいます。

また元の自宅が最終的にうまく売却できたとしても、その売却代金で元の住宅ローンが全額返済できるとは限りません。運悪くローンの残金が残ってしまうケースもあります。

しかしそれはあまり現実的な話ではありません。なぜなら自宅には、住宅ローンが実行された時に銀行が抵当権を設定しているため、いくら本人が売却したくても、売却代金でローン残金を全額カバーできないと、依然として債務が残るので、銀行が抵当権の抹消に応じないからです。抵当権の残ったままの自宅は売却できません。

その場合、もちろん所有者に十分自己資金があって、そのローン残金を返済できるなら、銀行は抵当権の抹消に応じてくれて売却も可能ですが、問題は本人にローン残金を返済できるほどの自己資金がない場合です。

そこでそのように場合に、利用できるローンが住み替え(買い替え)ローンです。以下の章では、住み替え(買い替え)ローンについてさらに詳しく説明しますが、まずはローンが二重にある状態、ダブルローンについてです。

ダブルローンはリスクが高いので避ける

繰り返しになりますが、ダブルローンとは、元の住宅に対する返済中の住宅ローンと、新しく購入する住宅に対する住宅ローンが同時にある状態を指します。

ダブルローンのメリットは、住宅の売りと買いのタイミングを無理して合わせる必要がないので、自分の都合で手続きを進行できる点です。

ただしダブルローンは、いわば利用者が2本の住宅ローンを同時に抱えている状態であり、単独の住宅ローン契約者に比べて色々なリスクがあります。

具体的なリスクとは以下のような点です。

リスクその1

ダブルローンを抱えると、毎月の返済が2倍になってくるので、もし債務者の収入が単独で住宅ローンを支払っている頃とあまり変わらないのであれば、返済が非常にきつくなり、さらに自己資金に余裕がなければ他の急な出費にも対応できず、返済の遅延・滞納を起こす可能性も出てくる

リスクその2

旧宅の住宅ローンの残高を残したまま、新しい住宅ローンを借りようとすると、銀行の審査も当然厳しくなり、仮に借ることができても、その金利は返済リスクを反映して割高なものとなってしまう

リスクその3

ローン付の住宅を抱えたまま新しい物件の住宅ローンを借りると、もし旧宅が当面売却できなかった場合、メンテナンス費用も掛かるし、仮に売れるまで間、旧宅を貸家に出した場合、他人が住むことになるので、それがネックとなって売却タイミングを逃す可能性がある

これらのリスクを考えると、自己資金に余裕がなく、さらに旧宅の住宅ローンを売却代金だけでカバーできない見込みの人は、住み替えに関して、ダブルローンを利用することだけはやめておいたほうがいいと思います。

住み替え(買い替え)ローンとは

住み替え(買い替え)ローンとは、現在住んでいる住宅を売却し、新たに住宅を購入する場合、仮に旧宅の売却代金で住宅ローンの残高が全額返済できずローンが残った場合でも、その状態のままで新たに購入する物件に対して組める住宅ローンのタイプをいいます。

この場合、住み替え(買い替え)ローンでは、新住宅に対するローンに加えて、ローン取り組みに掛かる諸費用、および売却後の旧住ローン残金も組み込んで借れます。

つまり住み替え(買い替え)ローンを利用すれば、新しい住宅に対する担保評価を超えて借り入れができるのです。ダブルローンと比べても、極めて便利な住宅ローンだと思われませんか ?

ただし住み替えローンはあくまで住宅ローンなので、借主の収入、勤務先の安定度や勤務年数、返済比率等の属性を審査して、融資額や金利、返済期間が決まってくるのは従来通りです。

住み替えローンの利用の流れ

住み替えローンを利用する場合、ケースによって、旧宅を先に売却するか(売り先行)、新宅を先に購入するか(買い先行)で、ふたつの流れに分けることができます。

この流れを簡単に説明すると以下のような流れになります。

売り先行のケース
  1. 不動産会社に旧宅の売却相談・買主探し開始
  2. 売り物件・買主決定
  3. 金融機関に住み替え(買い替え)ローンの相談
  4. 住みたい物件の調査・決定・購入・仮契約
  5. 旧宅売却手続き・住み替えローン実行(含む旧住宅ローン債務の決済)
買い先行のケース
  1. 住みたい物件探し
  2. 住みたい物件の決定・購入・仮契約
  3. 金融機関に住み替え(買い替え)ローンの相談
  4. 新物件購入時に世話になった不動産業者等に旧宅の売却依頼
  5. 売り物件・買主決定
  6. 旧宅売却手続き・住み替えローン実行(含む旧住宅ローン債務の決済)

※一般的には、売り先行で住み替えローンを利用するのがオーソドックスな取引です。

住み替えローンのメリット・デメリット

住み替えローンに関するメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット
  • 売り先行、買い先行関係なく、住宅ローンの残金が残っていても住み替えができる
  • 買い先行の場合、手に入れたいタイミングで新しい住宅を手に入れられる
  • 住み替えローンを利用すれば、極力自己資金を使わず、手元資金に留めておける
デメリット
  • 借入額が大きくなり毎月の返済が厳しくなる
  • 金利を含む総支払額が増えてしまう
  • 初めて住宅ローンを借りた時に比べて審査が通りにくくなる

住み替え(買い替え)のローンの注意点

住み替えローンを利用するにあたり、注意しておきたい点は以下の3点です

物件価値以上のローンを組む点

住み替えローンを組む場合、どれ位融資が受けられるか、銀行の審査にもよりますが、基本的に新しい購入物件の価値以上のローンを組むことになります。

なぜなら、仮に今回購入する物件の100%評価の住宅ローンが受けられるとしても、住み替えローンの場合はさらに旧宅ローンの残金、および諸費用が融資額に上乗せされてくるからです。
当然銀行審査も、初めて住宅ローンを組んだ時に比べても厳しくなるでしょう。

ここでの問題点は、物件価値以上の借入をする場合、仮に返済途中で何らかの原因で返済ができなくなると、ケースによっては、その不動産物件を売却してローン残金を返済しなければならないことです。

しかし売却代金を持って返済しても、ローン残金が残る可能性が極めて高いです。その理由は当初から物件価値以上のローンを組んでしまっているからです。

その返済リスクを避けるためには、住み替えにかかる必要資金に、極力自己資金を充てて、当初の住み替えローンの融資残高を減らしておくことです。そうすれば返済可能な範囲に毎月返済額を押さえておくこともできます。

返済計画に余裕を持たせること

住み替えローンは、当初取り組みした旧宅に対する住宅ローンの時以上に、返済計画を綿密に組んで返済に余裕を持たせておかねばなりません。

理由のひとつは最初の住宅ローンを取り組みした時点より、取り組み時の年齢が高くなっていることです。

高齢になっているので、一般的には若い時より収入が高くなっているものの、住み替えローンでは融資残高も増えていることもあり、場合によっては年齢制限により長期の返済期間が組めない可能性もあります。

そうなると毎月の返済額も増えるので、返済が厳しくなってしまうリスクや、さらに返済期間にもよりますが、返済が終了する前に定年を迎えてしまうリスクもあります。

定年以降、主な収入源は年金のみになり返済面で不安定感が増します。返済計画では、返済を定年前に終わらせるような配慮も必要になるでしょう。

さらに、返済で延滞や滞納を絶対起こさないよう、余裕を持った返済計画を作っておく必要があります。余裕を持った返済計画とするためには、

  • 自分の現在の収入に対して、返済比率が高くても30%~35%以内に収まるように、融資金額や返済期間を調整すること
  • 上記返済比率を超えて融資を受けられる場合でも、絶対延滞を起こさないよう、常に一定の余裕資金を手元に確保しておくこと

などの配慮が必要になります。

返済と融資のタイミングに注意

住み替えローンを利用する場合、住み替えローンの実行日と、旧宅の売却日(含む旧ローンの返済日)は、必ず同じ日に合わせる必要があります。1日でもずれたら住み替えローンが利用できないと考えて下さい。

住み替えローンの取り組みの流れを思い出して頂ければその理由がよく分かります。

住み替えローンを実行すると、その資金の一部は旧宅の住宅ローンの返済に充てられます。旧の住宅ローン全額が、売却代金と住み替えローンの一部で返済されて、初めてその住宅ローンにセットされていた抵当権の抹消ができることになります。

ところがもし、顧客の希望に合わせて、先に銀行が自行の抵当権を抹消・解除して、その後、銀行への返済が一日でもずれて後日になってしまうと、旧宅に住宅ローンを融資している銀行は、その間色々な返済リスクにさらされることになります。

たとえば、住み替えローンのお金が他の目的に使われてしまって、返済そのものがなされなかったり、別の人がその物件の上に新たに抵当権を設定してしまうケースなどです。
銀行としては当然そのような最悪の事態は避けたいですよね。

そのため、住み替えローンの実行では、必ず「旧宅に対する住宅ローンの決済と抵当権の抹消」とを同じ日に行わなければならない仕組みになっているのです。

この点は住み替えローンを利用する上でとても重要な点なので、利用予定の人はしっかり押さえておいて下さい。そうでないといざ取引となって、銀行、不動産業者、物件の売主や買主等、多くの人に迷惑をかけてしまう結果になります。

住み替えする際の買い替え特約について

住み替え方式で新しい自宅を購入する場合、物件の売り主に対し、売買契約書に「買い替え特約」を入れて契約してもらうことは、買主にとって大きなメリットがあります。

ここで「買い替え特約」とは、売買契約書の中に、「もし平成○年○月○日までに、売却物件が○○円以上で売れなかった場合、本契約も同時に白紙に戻すことに売主は同意する」と一筆、特約を入れてもらっておくことです。

こうすることで買主は、別に進めている旧宅の売却話が最終的にダメになっても、先に売主に渡している手付金(通常売買代金の1割程度)をそのまま返してもらえるほか、違約金を払う必要もありません。

しかし一方で、この買い替え特約は売主側には何のメリットもなく、デメリットばかりのものとなっていることも知っておく必要があります。

たとえば、買い替え特約を受け入れることで、売主は常に契約が解除されるリスクにさらされるとか、買主の旧宅が売却できるまで売主の物件は他に売却に回せない、などのデメリットがあります。

したがって、このようなリスクが売主側にある以上、誰でも「買い替え特約」に応じてくれるわけではありません。

たとえば、その旧宅が極めて立地の良い場所にあり、短期で確実に売れる見込みがあるなど、極めて限られたケースなら、売主も買い替え特約に応じてくれるでしょう。

しかしいずれにしても、買い替え特約に応じてくれるのはまれなケースで、相手次第と考えておいた方がよさそうです。

住み替え(買い替え)ローンを取扱いしている銀行

住み替え(買い替え)ローンを取扱いしている銀行は全国でも多くありません。その理由は、一般的な住宅ローンと比べても取引も複雑でかつ最終までの処理に時間が掛かるからです。

最後に、メガバンクと大手地方銀行から、住み替え(買い替え)ローンを取扱いしている以下の銀行サイトをご紹介します。ぜひ参考にして下さい。

参照サイト


目次一覧

返済方法について

住宅ローンの基礎知識

審査について

住宅購入までの流れ

ローンの借り換え

住み替え・リフォーム

収益物件の購入

よくあるトラブル

住宅ローンの豆知識