借り換えで別のタイプの金利に変更する際の注意点

固定金利から変動金利、変動金利から固定金利への借り換え時は?

住宅ローンを借りようとする時、まず申込者が理解しなければならないのが金利とそのルールです。金利の種類とその水準、また適用ルールは直接本人の返済に影響するだけに、否が応でも真剣にならざるを得ません。

そこでここでは金利のタイプと運用ルール、また金利を借り換える時にどのような点に注意しなければならないか、またそのメリット・デメリットを踏まえて借り換えのタイミングはいつがいいか、などを中心に詳しく解説します。

別の金利タイプに借り換えする際の注意点

住宅ローンの金利タイプは大きく分けて2種類あります。変動金利と固定金利です。また固定金利には全期間固定金利型と一定期間固定金利型があります。

住宅ローンの種類の違い

変動金利は市場金利の動きに常に敏感に連動するタイプの金利です。そのため、変動金利は銀行で半年ごとに金利が見直されるルールとなっており、また固定金利に比べて常に金利が低い体系になっています。

ただ急激な市場金利の上昇があった場合、それに合わせて変動金利も上昇すると、毎月のローン返済額も大きく上がり、返済で困る人が増えるケースが多くなるので、そのような事態にならないよう2つのルールが敷かれています。

ひとつは一度返済額が確定すると、金利の上昇に関係なく向う5年間は毎月返済額が変わらないということ、もう一つは仮に次の5年間で返済額が上がっても前回返済額の1.25倍以内とするルールです。

一方固定金利は、市場金利の変動に関係なく、全期間または当初から一定期間、金利が固定されているタイプです。固定金利はいったん低金利で固定して顧客と契約してしまうと、その後市場金利が上昇しても銀行は金利を上げられないので、逆ザヤになり損をする可能性が高くなります。

そのため、銀行はその金利リスクを避けるため、常に固定金利を変動金利より高く設定する傾向があります。また固定契約期間が長くなるにつれて店頭表示金利も高くなっていきます。

固定金利の中には、全期間固定金利型以外に一定期間固定金利型があり、住宅ローン取組時から2年~20年程度、金利を固定することができ、固定金利特約期間を過ぎればそのまま変動金利か、再度一定期間固定金利を選択できるルールとなっています。

ただし特約期間終了後、顧客が何も意思表示しなければそのまま変動金利に移行し、再度一定期間固定金利を選びたい場合、顧客から銀行に申し出して契約書を更新しなければなりません。

またこの場合、契約と同時に変更手数料を支払う必要がある銀行とない銀行があることや、ネットと窓口でも手数料の額が変わることも知っておいた方がいいと思います。

住宅ローン利用者は、金利タイプを借り換えする時には、後で後悔しないよう、それぞれの金利型の特徴や変更ルール等、しっかり把握した上で納得のいく変更をする必要があります。

住宅ローン・金利タイプ別利用状況の実態

ここで住宅ローン利用者が過去にどのような金利タイプを実際に利用していたか、まずその実態をみてみましょう。データは全期間固定型金利型のフラット35を取り扱う国の独立行政法人、住宅金融支援機構が過去に実施したアンケート結果を参考にしています。

調査結果は2~3年前とやや古いのですが、調査日から現在まで同程度の低金利の状態が続いており、金利型に対する顧客のおおまかなニーズは変わっていないと考えています。

この調査は民間金融機関の住宅ローン利用者を対象に行われましたが、傾向としては以下の事が読み取れます。

  • 利用者の約50%が変動金利型を選択している
  • 固定金利型のうち、全期間固定金利型が約25%、残りの25%が一定期間固定金利型を選択し、さらにそのうちの10%~15%が10年固定金利型を選んでいるということ

固定金利から変動金利への借り換え

住宅ローン利用者の金利選択の傾向が理解できたところで、それでは固定金利から変動金利への借り換えのケースを見ていきましょう。

固定金利から変動金利へ借り換えた場合、どのようなメリット・デメリットがあるか、また実際どんな失敗例が考えられるか、そしてどのようなタイミングで借り換えしたらいいか、いくつかの事例を示します。

メリット

銀行の住宅ローンの金利タイプの中で最も低い金利で借入ができる

なぜなら一般的に変動金利が固定金利より常に利率が低く設定されているからです。

借り換え後、最終返済期日までの利息を含む総支払額が減る

ただし変動金利の場合、市場金利の動きに合わせて適用金利が変動するので、これはあくまで予想値です。借り換え前の固定金利より変動金利が低く借り換えできれば、その後大きな金利上昇がない限り、総支払額を減らすことができます。

デメリット

市場金利の上昇に弱い

いったん借り換えにより、前の固定金利より低い水準の変動金利で借れたとしても、後に市場金利が予想を超えて上がれば、それにつられて変動金利が借り換え前の固定金利より高くなることもあり、結果が逆転して総支払額が増えてしまいます。

変動金利に借り換え後、予定外に総支払額が膨らむ

前の章で変動金利に関する返済ルール(市場金利の変動に関係なく5年間毎月返済額は固定、次の5年間は最大でも返済額の増加は前5年間の返済額の1.25倍まで)を説明しましたが、このルールにもデメリットがあります。

このルールにより仮に急激な市場金利上昇があっても、返済額に大きな変更がないので、返済する人は以前と変わらず計画的に返済ができます。しかしもしこのルールが適用されると返済の中身が変わります。

つまり改定後、毎月返済額は一定でも、返済額の中で金利の部分がより多く支払われるようになる一方で、元金の償還が遅れます。利息は元金の残高に応じて支払われるため、最終的にはローンの最終支払い期日にしわ寄せが来て、未収利息が発生、ひいては総支払額の増加につながります。

失敗例

住宅ローン利用者のAさんは自分の選択した5年固定金利型に不満を持っていました。住宅ローン取組み当初に比べて市場金利が下がり、Aさんの住宅ローンの金利もかなり割高になっていたからです。

そこでAさんは目前に5年間の特約期間終了が迫っていたので、今度は必ず変動金利にしようと決めていました。

そして実際、次は同じ銀行で変動金利に借り換えたのですが、金利が低くなって良かったと喜んでいたのも少しの間、予想に反してその後市場金利がどんどん上がってしまい、せっかく借り換えした変動金利も一緒に上がってしまいました。

もし固定期間終了後、変動金利でなく同時期の一定期間固定金利型に変更しておけば、多少変動金利より金利水準が高くても低金利の固定金利が確保できたのにと、今ではAさん、後悔の念に駆られています。

タイミング

固定金利から変動金利への借り換えはどんなタイミングで行ったらよいかの事例です。

住宅ローンの借入残高が少なくなってきた時

仮に変動金利に借り換え後、金利が上昇したとしても返済元本がすでに残り少ないので影響は小さくなっています。

住宅ローンの最終返済期限までの残存借入期間が短い時

残りの借入期間が短いため、金利上昇の影響を受けにくくなっています。

半年、もしくは数年以内に繰り上げ返済の予定が立っている時

固定金利から変動金利の借り換えで、当然金利変動リスクは高くなりますが、すでに近い将来、住宅ローンを全額繰り上げ返済する予定が立っていれば、その変動リスクも怖くありません。さらにあまりにも金利の上がり方が急激な場合、予定を早めて全額繰り上げ返済する選択肢もあります。

デフレ状態が続き、当面金利は上がらないと判断した場合

景気予測や金利予想はプロでも難しい分野ですが、周りを見て当面景気の状態も悪くデフレ状態が続くと判断すれば、それに連動して金利も低い状態のまま、あるいはさらに低下することが予想できます。

そのタイミングで固定金利から変動金利に借り換えすれば、変動金利の低金利メリットを受けながら、同時に一定期間金利が上がるリスクを避けられる可能性が高くなります。

変動金利から固定金利への借り換え

次は逆に変動金利から固定金利への借り換えのケースです。同じく、変動金利から固定金利へ借り換えた場合、どのようなメリット・デメリットがあるか、また実際どんな失敗例があるか、そしてどのようなタイミングで借り換えしたらいいか、いくつかの事例を示します。

メリット

金利変動リスクの回避

それまで変動金利だったものを低めの固定金利で一定期間固定すると、その期間中、仮に市場金利が上昇しても住宅ローン金利は上がらないので、変動リスクが避けられます。

計画的返済が可能

変動金利を借り換えで固定金利に一定期間確定させると、その期間の総支払額は完全に確定するので、毎月返済額の変動を気にせず安心して支払いができます。また変動金利型に比べて固定金利型は、全期間固定か、または一定期間固定型は2年~20年と固定期間を選ぶ自由度が高いので、自分のライフプランに合わせた弾力的な設定ができます。

デメリット

金利低下によるメリットが得られなくなる

変動金利から固定金利に借り換えする場合、もし判断ミスで高い水準の固定金利で一定期間(もしくは全期間)固定すると、その後市場金利が下降しても固定金利は高いままなので、市場金利に連動して下がっていく変動金利のような金利メリットが得られません。

長期間契約の固定金利ほど金利変動に対し弾力性がない

固定金利型は期間が長くなるにつれて金利が高くなる構造になっているため、その時の判断で長めに期間を固定した固定金利に借り換えた後、その後予想に反して市場金利が長期間下がり続けた場合、短期契約の固定金利にした場合に比べてもさらにデメリットが拡大します。

変動金利から固定金利に借り換えると、変更手数料が掛かることも

一部の銀行ではすでに金利借り換えに伴う変更手数料も無料対応していますが、もし最初に借り換えで変更手数料の掛かる銀行を選んでいた場合、固定金利に契約変更するたび手数料を支払う必要があります。ひいては住宅ローンに係る諸費用も膨れることになりデメリットが大きくなります。

失敗例

Bさんは住宅ローンを借りるにあたり、C銀行で変動金利を選びました。理由は単純に色々な金利タイプの中で最も金利水準が低かったからです。ところがその後、経済が活発化するにつれて市場金利もどんどん上がり、それに連動してBさんの住宅ローン変動金利も上がっていきました。

Bさんは自分の変動金利の動きに強く不満を覚えていた折、そのことを友人に話したところ、その友人からD行での住宅ローンの借り換えの話をすすめられました。D行ではたまたま固定金利型で借り換えキャンペーンを展開しており、店頭表示金利よりかなり下げた優遇金利で一定期間固定金利型の住宅ローンが利用できました。

その優遇金利を見たBさん、ろくに比較計算もせず衝動的にD行に借り換え相談に行き、D行の行員にすすめられるまま、その固定金利型でC行から借り換えをしました。たしかに、変動金利型から一定期間固定金利型に借り換えした結果、再び金利水準は下りましたが、Bさんは大きなミスを犯していました。

一定期間固定金利型はその固定特約期間が過ぎると、本人が意思表示しない限り、変動金利に移行するルールになっているのですが、Bさんは目先の低い優遇金利にばかり目が行って、D行の変動金利の高さまで配慮できていませんでした。さらにD行の変動金利は平均して他行より当初の水準そのものが高かったのです。

固定期間特約終了後、変動金利移行時にBさんはその事実を知って驚くことでしょう。しかも変動金利そのものが高いので、仮に変動金利でなく再び固定金利型に変えても、その金利は低い優遇金利でなく、変動金利より高い水準の固定金利に過ぎないのです。
どちらにしてもBさんが後悔するのは目に見えています。

失敗の原因は、Bさんが目先の優遇金利に常に目を奪われてしまったこと、判断を自分でするのでなく、友人や銀行員に任せたことなどです。

タイミング

変動金利から固定金利への借り換えはどんなタイミングで行ったらよいかの事例です。

景気が良くインフレぎみ、市場金利も上がってくると予想する時

市場金利に連動して確実に住宅ローン金利も上がってくるので、その前に金利を現在の水準で固定金利に契約すれば、金利の上昇リスクを一定期間回避することができます。

今が市場金利、住宅ローン金利とも底と判断した場合

変動金利・固定金利問わず、最も低い水準の金利で契約できますので、固定金利契約で長期間低金利を確保する絶好の借り換えタイミングです。

自分のライフプランに合わせて、一定期間、金利を固定する場合

たとえばこれから子どもの進学で、一定期間どうしても教育費の出費が増える場合、それの対応で頭が一杯なのに、さらに変動金利の動きに一喜一憂したくないですよね。

そのような場合、多少変動金利より金利が高くても、一定期間固定金利型を選択することで、毎月返済額を確定させ、ライフプランに合わせた返済計画が立てやすくなるとともに、ひとつでも心配事を減らすことができます。

まとめ

固定金利から変動金利、変動金利から固定金利への借り換え時は、というテーマで色々な角度から解説を行いましたがいかがでしたか。
金利は常に動く存在であり、プロでさえなかなか予測不能なものなので、正直どの質問にも明確な回答はありません。

また金利の動きを期待して、その通りの動きにならなかった場合、損失が拡大するので逆に落胆してしまいます。
それよりあまり金利の動きに神経質にならず、自然体で対応したほうが方がかえっていい結果に結びつくかもしれません。

ただ金利は色々な要素やルールからできあがっていることもあり、住宅ローン利用者は金利に対し最低限の知識は必要と考えていますので、その知識を身に着ける上で参考にして下さい。


目次一覧

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