マイナス金利政策による住宅ローン金利引き下げによって、大きな資金を持たなくても手が出せるようになったのが不動産投資。近年は資金を潤沢に持たないサラリーマン投資家が増加傾向にあります。
しかし、いくら住宅ローン借入で不動産投資ができるようになったといっても、申込後すぐに融資が受けられるわけではありません。不動産購入にはかかわる人も手も、そして時間も自動車ローンのように簡単なものではありません。
よって、不動産投資ローンを利用して不動産投資を行う場合は、購入物件を決めてからバタバタしないためにも、ローン申込から融資実行までの流れをよく頭に入れた上で計画を進めなければならないのです。
そこ今回はスムーズな不動産投資を行うためにも、不動産投資ローン借り入れの流れと必要になる各書類について説明していきましょう。
不動産投資ローンを借りる際の流れ
不動産投資ローンの申し込みから融資実行までの流れは、利用する金融機関によって若干の違いはありますが、主な流れは下記のとおりとなります。
- 金融機関へのローン申込(事前審査申込)
- 事前審査
- 事前審査の結果通達後、正式な借入審査手続き(本審査申込)
- 購入物件の売買契約
- 本審査
- 本審査の結果通知後、契約手続き
- 融資実行
それではこれら各流れを詳しく説明していきましょう。
事前審査申込
不動産投資ローンに限らず、住宅ローン申込の場合は事前審査と本審査の2つの審査が行われ、事前審査を通過した方だけが本審査へと進めます。申込者の中には不動産投資ローンを利用できるだけの条件が揃っていない方も少なくありません。
多くの時間と労力が必要となる不動産投資ローンの審査では、申込者すべてを本審査にかけていては掛かるコストが大きくなり、金融機関の利益率は低くなってしまうのです。そこで金融機関では事前審査によって利用可能な条件がちゃんと備わっているのかを審査して、それをクリアした方だけを本審査へと進めるのが一般的な流れとなっています。
またこの事前審査は申込者にもメリットがあります。ローン申込は対象物件の買い付け申し込みが行われた後というのが一般的です。売買契約は購入資金となるローン契約が成立しないことには完全に締結できません。
申し込んだからといって必ず融資実行となるわけではありません。時間のかかる本審査に進んで融資NGとなるよりも、事前審査によって短期間で結果が出た方が、早めに次の融資先を探すことができるのです。
事前審査
事前審査は申込者の返済能力と対象物件の投資評価を、最小限の情報から短期間で判断します。つまり事前審査は申込者が不動産投資ローンを利用できそうかどうかの確認が焦点となるのです。
そして必要とされる情報は金融機関によって違ってきますが、主には下記のような情報提供が求められます。
- 年収
- 物件購入額
- 借入希望額
- その他借入残高
- 借入希望時期
- 物件構造
- 物件の築年数
- 物件の専有面積
- 希望借入期間
これら情報を元にしてその結果が金融機関の求める審査基準をクリアしていれば、事前審査通過となります。必要となる日数は金融機関によって違い、最短1日というところもありますが、一般的には3~7日くらいだと言われています。
本審査申込
事前審査を通過すると金融機関から連絡が入り、本審査に進むための申し込みを行います。
この際の申し込みには事前審査申込時よりも多くの提出書類が求められることになります。スムーズに審査を進めるためにも、事前にどんな書類が必要となるのかをしっかりと確認して自分で用意しなければならない書類は早めに用意しておくようにしましょう。
購入物件の売買契約
事前審査を通過して本審査申込を行うのと並行して、買い付け申し込みをしていた物件の売買契約を行います。しかし、ここで注意しなければならないのがローン特約付きで売買契約を締結することです。
売買契約時に支払った手付金は申込者都合で契約解除(キャンセル)となった場合でも全額返還されますが、下記の契約解除場合には違約金支払の義務が発生し、支払う額も違ってきます。
- 手付解除 手付金の倍返し、または放棄によって契約解除
- 契約違反による解除 不動産売買代金の10%~20%の違約金支払で契約解除
もしもどの不動産投資ローンも審査通過できず、支払いできなかった場合には「契約違反による解除」となり、3,000万円の物件購入を予定していたならば300万円~600万円の違約金支払の義務が課せられることになるのです。
このリスクを回避するために結んでおいて欲しいのがローン特約。これは買主がローン借入できなかった場合、無条件で売買契約を解除できる特約となります。
絶対に審査通過できるという方なら必要ないでしょうが、自己資金も潤沢でなく、初めての不動産投資となるサラリーマン投資家の人はローン特約をつけた売買契約を行うことをおすすめします。
本審査
通常の住宅ローンの場合は担保物件となる不動産評価も確認されますが、どちらかといえば申込者の返済能力が重要視されます。しかし、不動産投資ローンは申込者の返済能力とともに不動産評価も重要視されるので、住宅ローン審査よりもさらに厳しい審査となります。
住宅ローンの場合は申込者の年収が返済原資となりますが、不動産投資ローンの返済原資は投資物件が生み出す家賃収入です。よって、十分な返済原資が得られるだけの物件であるかという点が重要視されます。
この本審査にかかる期間は住宅ローンよりも少し長い、2~4週間程度が目安と言われています。
ローンの契約手続き
本審査を通過すれば無事、審査合格となり契約へと進みます。この契約時には金銭消費貸借契約と呼ばれる本契約の他に、下記2つの契約が行われます。
- 抵当権設定契約
- 団体信用生命保険の加入契約
抵当権設定契約は返済不能となった場合に金融機関が物件処分できる権利、つまりは担保設定の契約となります。また団体信用生命保険は今では住宅ローン締結ではお馴染みとなった、借入者が病気や死亡で返済できなくなった際に、残債補填が保証される保険となります。
これら3つの契約手続きが完了すれば、不動産投資ローンの手続きはすべて完了となり融資実行となります。
不動産投資ローンを借りる際の必要書類
それでは不動産投資ローンの申し込みから融資実行までの流れを分かってもらったところで、利用するために必要となる書類にはどのようなものがあるのかを説明します。基本的に不動産投資ローンは業者を介した契約となるため、すべての書類を申込者が用意する必要はありません。
しかし、どのような必要書類があり、どれを自分で用意しなければならないのかは理解しておく必要があるでしょう。
提出が求められる必要書類は利用する金融機関によって若干違ってきますが、基本的には下記書類の提出が必要となってきます。
- 不動産登記簿謄本
- 物件概要書(1で代用される場合もあり)
- キャッシュフロー試算表(賃料想定表)
- 物件取得関連費用概算表(物件購入時の諸費用)
- 固定資産税評価証明書
- 賃貸借契約書
- 公図
- 住宅地図
- 販売図面
- 建物図面
- 物件写真
- 源泉徴収票もしくは確定申告書
- .本人確認書
- 印鑑証明書
- 住民票
- 課税証明書
- 保有資産一覧
- 家系図
基本的には1~11までの書類は業者が用意してくれるので、申込者はさほど気にすることはないでしょう。しかし、12以降は自分で用意することとなるので、その内容と収集方法はよく理解しておく必要があります。
それでは自分で用意する必要のある12以降について、詳しく説明するのでしっかりと理解するようにしてください。
源泉徴収票もしくは確定申告書
これはともに所得があることを証明する書類となり、給与所得者であるかどうかで下記のように提出書類が違ってきます。
- 給与所得者 源泉徴収票3年分(原本)
- 個人事業主、及び法人経営者 確定申告書3年分(コピー)
給与所得者の場合は勤務先に発行してもらう必要がありますが、どちらの場合も用意するのに日数はかからない書類と言えるでしょう。
本人確認書
これはあまり説明する必要はないでしょうが、申込者が本人であると証明する書類となり、主に下記のものが本人確認書として認められています。
- 運転免許証
- 保険証
- パスポート
- 個人番号カード
他にも多くのものが本人確認書として認められていますが、金融機関によってその範囲は違ってきます。一番汎用性の高い運転免許証がないという方は、本人確認書として認められている書類に何があるのかを必ず確認しておきましょう。
印鑑証明書
不動産購入をするのに必要となるのが印鑑証明書で、契約書類に捺印した印鑑が本人の実印であると自治体が証明する書類となります。この印鑑証明があることで契約書に押した印鑑の正当性と信頼性が自治体によって保証されることになるのです。
印鑑証明書は印鑑登録証と本人確認書、数百円の手数料があれば本人だけでなく代理人でも取ることができ、役所だけでなく多くの場に証明書発行コーナーが設置されているので簡単に取得できます。発行場所は各自治体によって違ってくるので、まずはどこで取得できるのかを市町村窓口に問い合わせるようにしましょう。
住民票
住民票は申込時に申請した住所に住んでいることを証明する公的文書となります。
印鑑と本人確認書と数百円の手数料があれば印鑑証明書と同様、役所以外にも証明書発行コーナーで簡単に取得できます。どこで取得できるのかは市町村窓口に問い合わせるようにしましょう。
課税証明書
課税証明書は1年間の所得にかかる住民税額が証明されたもので、一緒にその所得金額も記載されているため、源泉徴収票や確定申告書とともに所得の有無とその大きさの証明となります。
課税証明書は本人確認書と印鑑、数百円の手数料があれば役所で発行することができ、本人以外でも取得できます。しかし、本人もしくは三親等以内の家族以外の人が取得する際には委任状が必要となるので、この点にだけは注意するようにしましょう。
保有資産一覧
不動産投資ローンでは保有資産があれば優位に審査を進めることができます。購入当初の賃貸収入の不安定さや、経営していく中で空室が増えた際の家賃収益の減収など、不動産投資は必ずしも家賃収益だけで返済を賄えるわけではありません。
そんな時に頼りになるのが保有資産で、保有資産一覧はそれを数値化した書類となりす。保有資産があればその際の返済原資に充てられるため、返済不能に陥る危険性を回避できるので審査時には高い評価となるのです。
保有資産がある方は、スムーズで条件のいい借り入れをするためにも、保有資産がある場合は提出することをおすすめします。
家系図
「なんで家系図が?」と思われる人もいるでしょうが、不動産投資は親から子へ引き継がれるケースも少なくありません。よって、誰が相続人になるのか、または配偶者がいる場合は配偶者を連帯保証人にできるかなどを確認します。
すべての金融機関で提出が求められるわけではありませんが、必要となる場合もあると頭にとどめておきましょう。
まとめ
住宅ローン申込は高額借入となるため、通常のローン申込よりも流れが複雑で提出書類も増えてきます。そしてその住宅ローンよりも更に手がかかるのが不動産投資ローン申込です。
不動産投資の場合、いかに優良物件を購入するかが成功の鍵となります。他人の手に渡らないようにするため、いかに短期間で融資実行にたどり着くかも重要なポイントです。優良物件は他の投資家からも引く手あまたですから、この点はよく分かってもらえるでしょう。
そうならないためにも今回説明した流れと、自分で用意しなければならない書類は何なのかををよく頭に入れ、融資実行が遅れて目的の物件購入が他人の手に渡ることにならないようスムーズな融資実行を心がけるようにしてくださいね。