皆さんは現在契約中の住宅ローンを、全期間固定型金利のフラット35に借り換えすることを考えられたことがあるでしょうか ?
フラット35とは、政府100%出資の独立行政法人、住宅金融支援機構と全国の金融機関が提携して販売している住宅専用ローン商品のことです。
最長35年間、金利が固定されており、もし低金利の時に新規・借り換え問わずフラット35が借りられたら、毎月の返済額も少なくて済み、また金利の変動リスクもないのでとても魅力的ですね。
今回は、そのフラット35借換え融資について、すでに返済中の住宅ローンをフラット35に借り換えする場合、どんな人におすすめか、またその利用条件、必要書類、借換え融資の流れなどについて詳しく解説します。
- 住宅ローンをフラット35借換融資に変更する際の利用条件
フラット35借換え融資とは
フラット35はその名の通り、「全期間固定金利」「返済期間最長35年」を特徴とする、住宅金融支援機構(以下機構)と全国提携金融機関が共同で販売している住宅専用融資商品です。
ただフラット35は機構が直接販売しているのでなく、全国に約330先ある提携金融機関が代理店として販売している商品で、利用者はそれぞれの金融機関に出向いて申し込みをします。
また各金融機関でフラット35が利用者に実行されると、金融機関は即日機構に対し、そのフラット35の債権を譲渡(販売)するので、以後住宅ローンの債権は機構に移ることになります。
そのため機構にフラット35が譲渡された後は、フラット35を販売した金融機関では利用者からの毎月返済金を受け取り機構に返済する回収業務のみが残ります。
フラット35借換え融資とは、このフラット35を核として、2009年、あらたに機構で「住宅ローン借換え専用商品」として登場してきた商品です。(提携金融機関は約290先)
この借換え商品は、金利の体系や水準、返済期間については全てフラット35を基本としていますが、その他に借り換えの対象として、民間金融機関の住宅ローン、さらに過去のフラット35のローン契約分(含む旧住宅金融公庫分)も借り換えの対象にできるという大きな特徴があります。
また民間金融機関の住宅ローンの借入には必ず融資条件として付いてくる保証会社の保証料も、このフラット35借換え分では無料ですし、さらに繰り上げ返済や返済方法の変更等を行う時の手数料も掛かりません。
借り換えには大変優れた融資条件を兼ね備えたローン商品だと言えます。
そこでまずはこれまでの知識を元に、どのような人にこの借換え融資がおすすめできるのか、3つの事例を上げて解説します。
おすすめの人
現在フラット35以外の住宅ローンを利用中で、現在の金利水準で借入金利を固定したい人、あるいは安定した返済計画を立てたい人にはおすすめです。
例えば現在利用中の住宅ローン金利が3.0%で、借り換え後のフラット35の金利が1.2%だった場合、金利差が1.0%以上あるので、ローン残高1,000万円以上、残りの返済期間15年
※以上あれば、借り換えにより返済期間を変えずに毎月返済額及び総返済額の削減ができます。
さらに全期間固定金利なので、計画的な返済も可能です。
※フラット35借換え融資は最短返済期間が原則15年以上
他にも、現在フラット35を利用中で、借り換えによりフラット20の低い金利に乗り換えしたい人にもおすすめです。
※フラット20とは、フラット35のうち、15年以上20年以下の借入期間を選ぶ場合をこのように呼びます。
例えば、借り換え前のフラット35の金利が2.5%、借り換え後のフラット20の金利が1.0%だった場合、金利差も1.5%あり、仮に借り換え前の残り返済期間が23年あったとして、借り換え後の返済期間を20年以内に短縮しても、毎月返済額を大きく変えることなく、フラット20の低金利が利用できます。
その結果、総返済額の削減等の借り換えメリットが得られます。
また、現在フラット35S ※を利用中で、金利引き下げ期間が近日中に終了予定の人が、借り換えでより金利の低いフラット35に乗り換えしたい人にもおすすめできます。
フラット35Sの金利条件が当初10年以内1.10%、11年目以降2.1%、借り換え後のフラット35の金利を1.20%と仮定すると、仮にフラット35S取組時から6年後に借り換えしても、すでに残り返済期間は29年になっているので、現在の低い金利水準のフラット35で借換えができます。
一時的に借り換え前のフラット35Sの金利1.10%より高い1.20%で借り換えすることになりますが、11年目以降、借り換えしないと金利は自動的に2.10%になってしまうので、その後借り換えで全期間1.20%に返済することと比較すると、後者のほうが総支払額で少なくて済むようになります。
※フラット35Sでは、フラット35対象の住宅の技術基準に加えて、耐震性、省エネルギー性等に優れた住宅を取得する場合、取組時から一定期間フラット35の金利を引き下げてくれます。
利用条件
フラット35借換え融資の利用条件のうち、主なものは以下の通りです。
申込要件
- 原則として借換え対象となる住宅ローン債務者と借換え融資の申込人が同一であること
- 申込時年齢が満70歳未満の人
- 全ての借入に対し、年収に占める年間返済割合が以下の基準を満たす人
年収400万円未満・30%以下、年収400万円以上・35%以下 - 住宅ローンを最初に借入した日から借換え融資の申込日まで1年以上経過し、かつ借換え融資の申込日前日までの1年間、正常に返済できている人
資金使途
申込者本人が所有し、かつ本人もしくは親族が住むために建設・購入した物件の住宅ローンであること
借換え対象となる住宅ローン及び住宅
住宅取得時に借入した住宅ローンの借入額が以下の2つの要件を満たすこと
- 8,000万円以下
- 住宅の建設費または購入価額が土地取得費を含む総額の100%以内であること
- 機構が定めた技術基準に適合すること。住宅の床面積が1戸建て住宅の場合、70平方メートル以上(共同建て住宅・マンションの場合30平方メートル以上)
借入額
100万円以上8,000万円以下で、「借換え対象となる住宅ローンの残高」または「機構による担保評価額の200%」のいずれか低い額まで
借入期間
15年以上(本人または連帯債務者が満60歳以上の場合、10年)ただし上限あり
借入金利
全期間固定金利扱い
借入期間(20年以下・21年以上)に応じて借入金利が異なる
※借入金利は取扱金融機関によって異なる(ただし機構が下限金利~上限金利を示しているので、多くの金融機関が機構の指針に沿って下限金利を選択している)
※金利の適用は申込時でなく資金受取時の金利となる
返済方法
元利金均等返済または元金均等返済から選択、さらにボーナス返済も利用できる
担保
借り換え対象となる住宅及び敷地に住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定
※借り換え前がフラット35を利用していた場合も同様に、改めて借り換え後に抵当権を設定する必要あり
保証人
用意する必要なし
団体信用生命保険
借換えと同時に機構団体信用生命保険制度が利用できる、ただし保険料は本人負担、かつ保険加入は任意
※旧住宅ローン返済と同時に加入していた団体信用生命保険の権利もなくなるので注意のこと
融資手数料
融資手数料は取扱金融機関毎に異なるので注意のこと
※融資手数料については、3万円~10万円等の定額式、融資額×1.0%~2.0%等の定率式、無料対応など
保証料・繰上げ返済手数料
フラット35借換え融資に関しては全て無料
※繰上げ返済に関しては、ネット利用の場合、最低返済単位として10万円以上から、金融機関窓口利用の場合は100万円以上から返済できる
必要書類
フラット35借換え融資を金融機関経由で利用する場合の申込、契約等に必要な書類を一覧にしました。
ただしごく標準的なケースでの必要書類を取り上げたので、ケースによって一覧表以外の書類が必要な場合もあります。詳しくは取扱金融機関に問い合わせてください。
申込書類
- 長期固定金利型住宅ローン申込書
- 今回の住宅取得以外の借入内容に関する申出書(兼既融資完済に関する念書)
- 個人情報及び個人情報取扱いに関する同意書(兼火災保険及び家財保険見積依頼書)
- 長期固定金利型住宅ローン(機構買取り型)フラット35の特徴について
- フラット35借換え対象住宅に関する確認書
上記の書類は申込人、連帯債務者ともに必須の書類です。なお、今回の住宅取得以外の借入内容に関する申出書は借り換え分も含めて記入が必要です。
本人確認書類
- 住民票謄本(発行後3ケ月以内)
- 運転免許書コピー
- 健康保険証コピー
上記の書類は申込人、連帯債務者ともに必須の書類です。なお、住民票謄本は発行後3ケ月以内で入居者全員記載のあるもの、運転免許書および健康保険証のコピーは、両面・裏面ともに記載がなくても必要になります。
物件に関する書類
注文住宅および建売中古戸建住宅の場合
- 敷地の登記事項証明書コピー(全部事項証明書・共同担保目録付き)
- 建物の登記事項証明書コピー(全部事項証明書・共同担保目録付き)
- 住宅地図コピー
※融資物件所在地にラインマーカーでマーク - 火災保険証券または契約者カード等加入状況が分かる書類コピー
※現在加入していない場合、加入が条件
上記の書類は注文住宅、建売中古戸建住宅の場合は、すべて必須です。敷地の登記事項証明書コピーおよび建物の登記事項証明書コピーは、いずれも発行後3ケ月以内のものが必要になります。
マンションの場合
- 敷地の登記事項証明書コピー(全部事項証明書・共同担保目録付き)
※該当する場合のみ必要 - 建物の登記事項証明書コピー(全部事項証明書・共同担保目録付き)
- 火災保険証券または契約者カード等加入状況が分かる書類コピー
※現在加入していない場合、加入が条件
敷地の登記事項証明書コピーおよび建物の登記事項証明書コピーは、いずれも発行後3ケ月以内のものが必要になります。
収入に関する書類
- 源泉徴収票コピー
※給与支払先が複数あれば全部必要 - 下記のいずれかひとつ
1.住民税特別徴収税額通知書原本
2.住民税課税証明書原本(給与収入の記載されたもの) - 確定申告書及び付表コピー(収支内訳、青色申告決算書、所得の内訳を含む)
- 所得税納税証明書(その1・その2)原本
上記の書類は申込人、連帯債務者ともに必須の書類です。なお、対象期間は、源泉徴収票コピーについては直近1年分で、他はいずれも直近2年分が必要になります。
その他の必要書類
- 現在返済中の住宅ローンの返済(償還)予定表コピー(過去1年分)
- 返済口座通帳コピー(表紙及び明細過去1年分)
- 団体信用生命保険申込書兼告知書(加入希望の場合)
など。
フラット35借換え融資の流れ
それでは次に借換え融資の流れについて説明します。
STEP1 借換え融資の検討
まずは現在返済中の住宅ローンを借り換えるか検討する必要があります。その場合、以下の3つのポイントを必ず押さえて検討して下さい。
- 借り換えに伴う諸費用を含めた総費用をチェック
- 借り換えに伴う効果(メリット)をローンシミュレーションで確認
- 民間金融機関の住宅ローンのほか、すでに借りているフラット35(旧住宅金融公庫分含む)からの借り換えもできるので、該当していないかチェック
STEP2 金融機関と商品タイプの選択
STEP1同様、選び方には3つのポイントがあります。
- 借入金利は取扱金融機関や商品タイプで異なるので注意
- 融資手数料は大きく分けて定額型(目安は3万円~5万円程度)と定率型(借入額の1%~2%程度)に分かれており※、借入金利同様、取扱金融機関や商品タイプで異なるので、詳細にチェックが必要
※三井住友信託銀行の場合は無料対応 - 返済は申込した取扱金融機関の口座から引き落としとなるので、残高等管理しやすい金融機関を選ぶことが肝心
また「金融機関と商品タイプ」の選択には、住宅金融支援機構のフラット35借換え融資関連ページの「金利情報」タブから検索することで、自分の希望する金融機関や借換えローン商品を早く見つけることもできますので、ぜひ利用して下さい。
金融機関50音順、金利の低い順、総支払額の低い順など、色々な検索が可能です。
STEP3 借換え融資の手続
上記の流れで金融機関、商品タイプが決まったらいよいよ申込です。最期はフラット35借換え融資の一般的な手続きの流れです。
- マイホーム取得(住宅ローン申込)
- 借換え融資の申込及び団信加入の申込
- 審査結果のお知らせ
※通常申込から1~2週間程度かかる
審査の結果、無事通過したらすぐに住宅に関する技術基準適合の確認書の提出が必要になる - 借入契約、資金受取、登記(抵当権設定)、かつ火災保険の加入
- 返済開始
まとめ
以上、住宅ローンをフラット35借換え融資に変更する際の利用条件について、色々な面から解説してきました。
もちろん住宅金融支援機構は公的機関だけに、民間金融機関の住宅ローンに比べても、手続きや必要な書類等かなり複雑であり、全てをこの記事だけでカバーすることはできません。
しかしフラット35借換え融資に関する限り、基本的な情報は全て押さえています。
この記事がフラット35借換え融資を利用して借り換えを検討されている人のお役に立つことを願っています。
フラット35借換え融資に関する詳細は以下の住宅金融支援機構のサイトを参照して下さい。