近年はマイナス金利政策の影響もあり、超低金利時代に突入しています。そこで注目されているのが不動産投資。低金利の恩恵がある不動産ローンを利用して不動産投資を行う人が増えており、投資専門家だけでなく社員投資家も多く出てきました。
しかし、不動産購入目的が投資の場合、通常の住宅ローン利用はできません。投資目的で不動産購入をする場合には、投資としての利用が認められたローン商品を選ぶ必要があるのです。
そこで今回は投資目的に利用できる以下の不動産ローンを紹介していきながら、その特徴からメリット・デメリットを検証していきます。
- 不動産投資ローン
- 不動産担保ローン
- ビジネス(事業者)ローン
不動産投資ローンの特徴
この不動産投資ローンは今回紹介するローン商品の中で、唯一、融資条件が不動産投資に限定されたものになります。あとで説明する他の2つは不動産投資としてローン借入することはできますが、目的としては事業性資金としての利用となります。よって、投資目的で不動産ローンを組むのであればまずはこの不動産投資ローンの検討からということになるでしょう。
それではこの不動産投資ローンのメリット・デメリットを見ていくことにします。
不動産投資ローンのメリット
不動産投資ローンの利用メリットは下記の2つです。
- レバレッジ効果が活かせる
- まとまった資金がなくても不動産投資が始められる
レバレッジ効果が活かせる
まず1つ目のメリットがレバレッジ効果を生かすことができる点です。レバレッジ効果とは小さな力で大きな効果を生むことを指し、不動産用語として利用する際には少ない資金で投資効果を上げることで高い収益を上げることを意味します。
簡単な例を上げて説明しましょう。
仮に1,000万円の資金で年間50万円の家賃収入を上げれるとしましょう。この場合の利回りは5%となります。これに対して3,000万円の物件を1,000万円頭金とし、2,000万円のローンを組んだ場合、年間150万円の家賃収入が上げられるとします。
この場合は利回りは年間50万円の家賃収入の物件と同じ5%ですが、収益は3倍の150万円となっています。そして借入金利を3%とすると初年度の年間利息額は約60万円です。となれば収益から利息支払いをしても90万円の利益が残ることになります。
借り入れをしたのにもかかわらず、借り入れをしなかった時の2倍近くの利益を得たことになるのです。
このようにレバレッジ効果を利用すれば同じ自己資金でも、より有効的な資産運用ができることになります。しかし、このレバレッジ効果を活かすためには、金利が大きく影響してきます。借入金利によっては年間利息額が高くなり、利益が減少することで、自己資金のみで不動産運用した方が収益が高かったというケースも出てきます。
よって、不動産担保ローンで変動金利を利用する場合は、将来的な収益計算も視野に入れた借り入れが必要となってくるのです。
まとまった資金がなくても不動産投資が始められる
一般的に投資となれば元手となる投資資金が必要となってくるので、まとまった投資資金を持つ人しか投資家となることはできません。しかし、不動産投資ローンを利用すればまとまった投資資金を貯めることを待たずに不動産投資を始めることができるのです。
近年、若年層をはじめとする社員投資家が不動産投資を始めたのも、このメリットを有効活用した結果と言えるでしょう。
不動産投資ローンのデメリット
不動産投資ローンの利用デメリットは下記の2つです。
- 空室リスクがある
- 売却すると残債が残る可能性がある
空室リスクがある
不動産投資の収益源は家賃収入です。よって不動産投資ローンの返済原資は家賃収益となります。審査時に物件評価や事業性の見通しが重要視されるのも、安定した家賃収入が得られるかを判断するためです。
返済に当てられる家賃収入が上がらなければ、ローン返済は自己資金でまかなわなければなりません。短期間なら問題はありませんが、長期間に及ぶと返済不能となってしまい、最悪購入物件が競売にかけられることにもなりかねません。
特に今は下記の理由から賃貸住宅の空室率が年々増加しています。
- 賃貸住宅の供給過剰
- 人口減少に伴う賃貸住宅の需要減少
- 満足な空室回避措置が取られていないことによる空室放置
よって、空室リスクを十分に加味した上での物件購入が必要となってくるのです。
売却すると残債が残る可能性がある
ローンの完済前に物件を売却することもあるでしょう。しかし、売却するタイミングも関係しますがローン残債が大き過ぎる場合は、売却益によるローン完済が難しくなる可能性が高くなってきます。
不動産投資ローンは契約時に不動産物件へ抵当権を付けますが、この抵当権はローン完済しない限り外す方法はありません。しかも、抵当権を外さなければ売却することはできませんから、何かしらの事情で売却しなければならなくなっても、売却できないという状況となる可能性が考えられます。
よって不動産物件を選ぶ際にはいつ売却しても高く売れることを第一条件とし、資産価値が高いものを選定する必要があるのです。
不動産担保ローンの特徴
このローンは不動産投資を目的としたローン商品ではなく、既にある自宅や土地の不動産物件を担保として融資を受けるためのローンです。よって資金使途も不動産購入に限られておらず、自由に使うことができます。
無担保・無保証で借り入れできるフリーローンに不動産物件の担保を付けたものと考えればいいでしょう。不動産物件という高額物件を担保とすることで従来のフリーローンの金利や借入額、返済期間等の諸条件が大幅に向上しています。
それではこの不動産担保ローンのメリット・デメリットを見ていくことにします。
不動産担保ローンのメリット
不動産担保ローンの利用メリットは下記の2つです。
- 担保とする不動産価値に応じた融資が受けられる
- 無担保融資よりも好条件で融資が受けられる
担保とする不動産価値に応じた融資が受けられる
フリーローンの場合は金利や借入限度額がカードローンとさほど変わらず、下記のような条件が一般的です。
- 借入限度額 500万円
よって、これ一本で不動産投資ができる条件を兼ね揃えたローン商品とは言えませんが、これに不動産担保をつけることによって、下記のように条件が大きく変わってきます。
- 借入限度額 5億円~10億円
しかし、これは担保とする不動産評価額が大きく影響してきます。一般的には不動産評価額の70~80%が借入限度額となり、不動産評価額が1億円の場合なら7,000万円~8,000万円の借り入れができるというわけです。
不動産評価額が低い場合、これ一本では不動産投資に必要な資金を借り入れする事ができないケースも出てきますが、評価価値の高い不動産を所有していれば不動産投資のための十分な資金が借り入れできます。
無担保融資よりも好条件で融資が受けられる
無担保融資あるフリーローンの場合は、金利や借入限度額が同じ無担保融資であるカードローンとさほど変わりませんが、先程説明した借入限度額だけでなくすべてにおいて優位な条件で借り入れできます。
- 金利 5%前後
- 返済期間 10年~30年
不動産担保ローンのデメリット
不動産担保ローンの利用デメリットは下記の2つです。
- 所有する不動産がなければ利用できない
- 不動産投資ローンよりも金利が高い
所有する不動産がなければ利用できない
不動産担保ローンは不動産を担保にすることで利用できるローン商品ですから、利用するには担保とする不動産を所有していることが最低条件となってきます。
これは不動産担保ローンの1番大きなデメリットと言えます。
しかし、不動産物件の所有者は申込者に限定されていません。申込者以外でも3親等以内の親族であれば、連帯保証人とすることでその不動産物件を担保とできるので、利用者幅は広がってくるでしょう。
不動産投資ローンよりも金利が高い
不動産担保ローンは貸し手が不動産を担保にとっていることから貸し倒れリスクが低いことで、低金利ローンとなっています。しかし、先に説明した3%を切る不動産投資ローンの金利と比較すると5%前後と若干高くなってきます。
たった2%ほどのものですが、これが投資収益には大きく関係してきます。
レバレッジ効果は不動産投資ローンよりも確実に落ちることになります。先に説明したように年間総利息が高くなることが予測され、収益性が落ちる可能性も出てくるのです。利用する際にはこの点を十分考慮する必要があるでしょう。
ビジネス(事業者)ローンの特徴
ビジネスローンは事業者ローンとも呼ばれ、基本的には事業者を対象とした事業資金の借り入れを目的としたローン商品です。よって、審査時には申込者である事業主の属性だけでなく、事業の将来性や現状の経営状態が重要視され、融資によって事業性が向上することが審査通過に大きく影響してきます。
この事業資金としての資金使途を利用して、不動産投資の借入手段にできるのです。
ですが今回紹介した中では1番不動産投資には向かない借入手段であることは否めません。本来が住宅購入という高額借入を想定したものでなく、運転資金やつなぎ資金としての資金使途を目的に販売されているローン商品ですから、金利、借入限度額ともに満足のゆく条件設定とはならないのが実情です。
それではこのビジネスローンのメリット・デメリットを見ていくことにしましょう。(*近年は担保や保証人を付けた有担保型のビジネスローンも広く販売されていますが、このタイプは先ほど説明した不動産担保ローンとなるので、今回はその説明を省くこととします。)
ビジネスローンのメリット
ビジネスローンの利用メリットは下記の2つです。
- スピード審査で即日融資も可能
- 資金使途が問われない
スピード審査で即日融資も可能
ビジネスローンは先に説明した2つのローン商品のように不動産部権の担保権設定が必要ないため、スピード審査で最短即日融資もできます。もちろん住宅ローンとしての借り入れとなれば高額となるため、即日融資というわけにはいきませんが、他の2つのローン商品の中では最も早い融資実行となるでしょう。
資金使途が問われない
ビジネスローンは事業性資金であれば、その資金使途は自由です。不動産投資に利用できるのもこの資金使途が事業性であれば自由であるおかげなのです。
ビジネスローンのデメリット
ビジネスローンの利用デメリットは下記の2つです。
- 金利が高い
- 借入限度額が低い
金利が高い
ビジネスローンの一般的な金利は4.0%~17.0%と、消費者金融カードローンと変わらない金利設定となっています。住宅ローンとしての借り入れですから上限金利の17.0%が適用されることはないでしょうが、一番安い下限金利が適用されることはほとんどないことから、今回紹介した中では最も高い金利となってきます。
よってレバレッジ効果を期待しての借り入れとはならないため、不動産投資には向かない金利設定となってきます。
借入限度額が低い
また無事ネスローンは金利だけでなく借入限度額も他の2つと比べると全然物足りなさを感じます。中には最大1,000万円の借入限度額設定ができるビジネクストのようなところもあありますが、一消費者金融カードローンと変わらない500万円というのが一般的な相場です。
また借入限度額もいっぱいいっぱい借り入れできるわけではありません。借入額は審査結果によって変わってくる上、その審査は申込者である事業主の返済能力の他に事業規模、必要運転資金額など総合的な判断によって決定されます。
よって、自己資金が少なくレバレッジ効果を狙って借り入れしようとする社員投資家は十分な融資を受けることはできないでしょう。
しかも借入目的が1,000万円を超える高額借入が必要となる不動産投資という性質を考慮すれば、これ一本の借り入れで不動産購入をすることは不可能に近いと考えられます。
金利面も合わせて考えれば簡単に借り入れできる手段のため、短期のつなぎ資金として借り入れをするには向いていますが、長期返済が前提となる住宅ローン返済には決して向いているとは言えませんね。