従来は高額な元手が必要だった不動産投資も、近年のマイナス金利制作の影響によって超低金利時代に突入したことで、融資利用をした不動産投資に手を出す人が随分と多くなりました。
サラリーマン投資家と呼ばれる投資家が多くなってきたのも、不動産投資に融資利用ができる機会が増えた結果でしょう。
事実、不動産投資向けの専用ローンである不動産投資ローンは、金利や融資枠は以前と比べて随分と投資家にとって有利な内容となり、審査基準においても随分と甘くなったという声も聞こえます。
そこで今回は実際にその不動産投資ローンの借入条件はどうなっているのか、その真相を詳しく検証していくことにしましょう。
不動産投資ローンの審査基準は?
不動産投資ローンは通常の住宅ローンと比較するとローンの借入目的が180度違ってくるため、その審査基準は厳しいと言われています。住宅は居住するという生活基盤としての目的があるため、最後まで死守しようとするため返済資金に困っても最後まで返済しようとします。
しかし、投資物件にはその目的はなく、あくまでも収益を上げることなので住宅ローンに対するような返済姿勢は見られません。よって、利用者の返済に対する信頼度は住宅ローンよりも低くなってしまうのです。
また不動産投資ローンの返済原資は投資物件にからの家賃収益です。よって、しっかりとした家賃収益が上がる物件でなければ、返済原資が低いとされて審査通過は難しくなってきます。
そこで審査基準の中で重要視されるのが下記の3つです。
- 物件の収益性
- 年収や勤務先
- 自己資金
それではこれら審査基準について見ていきます。
物件の収益性
不動産投資ローンは住宅ローンと同様に購入物件に抵当権が付けられ担保とされますが、審査時には物件評価だけでなく収益性も評価対象となり、収益性も投資物件同様に担保対象となります。
担保は返済不能となった場合、転売してローン残金に充てるための保証となるので、売却した場合の目安となる評価額以上の融資は行われないのが鉄則です。よって、同じように担保対象とされる収益性も融資条件に大きな影響を及ぼすことになるのです。
不動産担保ローンは不動産評価だけでなく、収益性評価によって下記の借入条件に大きく関与します。
- 借入額
- 設定金利
- 返済期間
物件評価とともに収益性評価が高いことで、有利な条件で不動産投資ローンを利用できることをよく理解しておきましょう。
年収や勤務先
不動産投資ローンは住宅ローンよりも物件に対する審査基準が厳しくなってきますが、申込者本人の審査をおざなりにしているわけではありません。住宅ローン審査同様に申込者本人の審査も厳しく行われます。
この本人審査で重要となってくるのが年収と勤務先です。この2つは返済能力と信用度を測る上で重要な判断材料となってくるのです。
必要とされる年収は?
不動産投資ローンに限らず融資審査において欠かせないのが、返済に足る安定した収入が得られているかという点です。
先ほど不動産投資ローンの返済原資は家賃収入だと言いましたが、購入後に賃貸経営を始めたとしてもすべての空室が埋まるわけではありません。また空室が埋まったとしても、いつ何時空室となるかは分かりませんし、その空室期間が長期に渡ることも予測しておかなければなりません。
その際の返済原資となるのが賃貸収益以外の収益源となり、その1つに年収が挙げられます。審査時には家賃収益から十分な収入が得られなかった場合に、返済原資として充てれる収入があるかが慎重に検討されます。
住宅ローンの場合も年収の大きさは重要な審査基準とされており、住宅金融支援機構でも年収に対する年間ローン返済総額の上限が下記のように制限されています。
- 年収 400万円未満 30%以下
- 年収 400万円以上 35%以下
400万円の年収で30年ローンの場合に借り入れできる上限額は4,200万円となり、収入の10倍ほどになりますが、満額融資されることはありません。年収以外の様々な要因によって下げられることが大半で、借入総額の目安は年収の約7倍といったところが相場です。
しかし、不動産投資ローンの場合はこれよりも低く、年収の約5倍というのが一般的な借入上限額となってきます。現在のところ不動産投資ローンが借り入れできる年収は500万円以上と言われており、この金額を下回る場合の借り入れは厳しいのが実情です。
次に説明する自己資金がふんだんにある場合は話は違ってきますが、近年増加している自己資金を持たないサラリーマン投資家の場合は、500万円以上の年収が不動産投資ローンを利用できる最低条件の1つとなってくると覚えておきましょう。
必要とされる勤務先は?
また年収はいくら大きくても、毎月安定して得られなければ意味がありません。そこで年収とともに確認されるのが勤務先です。
どのような職業についているのかで、その離職率は大きく違ってきます。離職率が高いということは収入の不安定さを物語ることとなり、離職により収入が得られなくなるリスクが高いと判断されます。
よって、住宅購入のように高額借り入れとなる際は、年収の大きさと共にその勤務先も重要視されることになるのです。そして離職率の測り方として注目されているのが3年後離職率。これは入社後の働きやすさを示す指標となり、入社後3年以内に退職した割合を表しています。
厚生労働省が発表した2016年度のデータによれば、2013年の侵入社員のうち3年以内に代謝したのは下記のとおりです。
- 大学卒 31.9%
- 高校卒 40.9%
そしてこの3年後離職率の低いベスト10は下記の通りとなっています。
- 中国電力
- 塩野義製薬
- 沢井製薬
- 国際石油開発帝石
- 安川電機
- 任天堂
- 商船三井
- ANAホールディングス
- カルビー
- 日本菅達
有名企業が名を連ねているのがお分かりいただけるでしょう。また、逆に離職率の高い業種は下記のようになります。
- 飲食業、宿泊業界 離職率52.3%
- 教育、学習支援業界 離職率48.8%
- 娯楽業界 離職率48.5%
- 小売業界 離職率39.4%
- 医療福祉業界 離職率38.8%
当然、これらのデータは各金融機関も持っており、申込者の勤務先がどうなのかを確認します。ここで勤務先が離職率が低いと判断されれば、今後も継続して安定した収入が得られる可能性が高いと判断され、返済能力、信頼度ともに高くなってきます。
自己資金
年収とともにもしもの時の返済原資となるのが自己資金。中には自己資金を使って残りを不動産投資ローンで借り入れるという人もいるでしょうが、その自己資金とは別の動かすことのできる預貯金がどれだけあるのかも審査には大きく影響してきます。
本来の投資家が融資を募り、不動産投資をできるのも自己資金があることが前提となっています。もしもの時はこの自己資金を返済に充てられることを見越して、金融機関も融資実行するのです。
サラリーマン投資家の場合はこの自己資金が十分でないことが多いため、家賃収益以外の返済原資は年収だけとなってくるため、投資を本業とする投資家よりも審査は厳しく行われることになります。
不動産投資ローンの借入可能額は?
それでは不動産投資ローンの審査基準のポイントについて理解してもらったところで、次は実際にどれくらいの借り入れが可能なのかを検証していきましょう。借入可能額は申込者の条件によって違ってきます。
ここでは条件によって借入可能額がどのようになるのかを見ていくことにします。
借入可能額はレバレッジ効果がものを言う!
レバレッジ効果は小さな投資で大きな利益が上がることを指します。審査の際に重要視される収益性は、今回の融資でどれくらい大きな収益性が得られるのかを判断した結果です。よって、投資物件のレバレッジ効果が高いことが認められれば自ずと借入可能額は大きくなります。
これは先にも説明したように収益性は投資物件と同様に担保対象として評価されるので、収益性が高ければ高いほど、高額な借入金額が期待できるからです。
頭金0円でも借り入れは可能?
これは先に説明した申込者の下記条件がどうかによって違ってきます。
- 年収
- 勤務先
- 自己資金
- 投資物件の収益性
これら条件が高く評価されれば頭金0円でも不動産投資ローンを利用することは不可能ではないでしょう。特に「投資物件の収益性」は大きく関係してくるため、高いレバレッジ効果の物件であると認められればその確率は高くなってきます。
しかし、頭金0円で借り入れできたとしても、物件の売買時には税金や仲介手数料等の諸経費が物件価格の7%ほど発生します。これはローンからではなく自己資金で賄う必要があるため、3,000万円の物件を購入するなら210万円の自己資金は最低必要となってくるのです。
頭金0円で不動産投資ローンを利用することはできますが、自己資金が全くない状況では不動産投資は無理である点は忘れず覚えておきましょう。
サラリーマンの借入可能額の目安は?
一般的にはサラリーマンの借入可能額の目安は先に話に出た年収の5倍というのが相場です。しかし、これも今回説明してきたように、申込者の諸条件によって大きく変わってきます。
一般的な借入可能額は年収の5倍と考えておくのが妥当ではありますが、実際にサラリーマン投資家でも年収の10倍、20倍という借り入れに成功した人は少なくないことからも、借入可能額は条件次第というのが実情です。
まずはこの年収の5倍を1つの目安とし、できるだけ借入額が大きく設定されるだけの好条件を揃えることが、高額借入を可能とする一番の近道となってくるでしょう。