住宅購入で一番頭を悩ませることになるのが住宅ローン。住宅ローンといっても借入先や金利種類、返済方法など、選択する住宅ローンよってその条件が違ってくるるため、どの住宅ローンがメリットの高いものなのかを簡単に判断することはできません。
よって、頭を悩ませる前に購入先の不動産業者が薦める提携ローンを利用する人も少なくありません。
事実、2016年に住宅金融支援機構が調査した「利用した住宅ローンを知るきっかけとして影響が大きかった媒体等」の結果によると、最も影響が大きかったのが「住宅・販売事業者」でその割合は45.0%と半数近くを占めています。
この次に多かったインターネットが18.2%ですから、住宅・販売事業者が薦めるローン、つまりは提携ローン利用者がいかに多いかは明白です。もちろん提携ローンは多くのメリットもあるので利用することについて問題はありませんが、これもまずはどのような住宅ローンがるのかを知った上であることが前提です
何も知らずに提携ローンを選んでしまうと、契約後に後悔する羽目にもなりかねません。
そこで今回は住宅ローンを選ぶ際の基礎知識として、住宅ローンにはどのようなものがあるのかを説明していきます。
住宅ローンの種類
現在、住宅ローンの借入先は大きく下記の3つに分類できます。
- 公的融資
- 公民提携融資
- 民間融資
それではこれら融資先にはどのような特徴があるのかを詳しく説明していくことにします。
公的融資
公的融資には財形住宅融資と住宅金融支援機構が自然災害により被害が生じた場合に限って、新住居の購入や補修に利用できる災害復興住宅融資の2つがあります。今回は一般的に利用できる住宅ローンの説明に限定しての説明となるため、財形住宅融資に焦点を絞って説明します。
財形住宅融資は財形制度を導入している会社に勤務しており、かつこの制度を利用して財形貯蓄を行っている場合にのみ利用できる住宅ローンとなります。
財形成度とは?
財形制度とは正式名称を「勤労者財産形成促進制度」といい、勤労者財産形成促進法に基づいて国と会社がその雇用者の財産つくりを支援する制度です。会社勤めしている人なら、「財形している」という会話を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
この財形制度は何も住宅ローンだけに適用されるものではなく、ほかにも結婚、出産費用など、多岐に渡って将来的に必要となる資金を給料天引きで確実に貯蓄することが可能です。財形制度は勤務先が財形制度の取扱いを行っている金融機関と契約することで利用できるようになります。
財形住宅融資の特徴
財形住宅融資の特徴は下記のとおりです。
- 全期間固定金利、および5年毎に見直す5年固定金利のいずれかが選べる
- 公的融資のため低金利
- 融資最高額4,000万円
- 財形貯蓄残高の80%まで必要額の80%を上限として借り入れできる
- 同居を条件に同居予定家族からの複数申込ができる
- ほかの住宅ローンとの併用ができる
- 利子補給制度が受けられる
この中でも注目してもらいたいのが利子補給が受けられる点です。これは簡単に説明すれば勤務先である会社が住宅ローン金利を一部負担してくれる制度で、利子を5年固定金利にした見直しで金利上昇した時には大きなメリットとなってくるでしょう。
しかし、残念なことに利子補給制度を導入していない会社も多くあるので、この点は事前に確認が必要となってきます。ですがほかの条件を見る限り、財形住宅融資を受けられるのであれば、利用しない手はないメリットしか見られない住宅ローンと言えるでしょう。
しかし、この財形住宅融資を受けるには、下記条件をクリアする必要があります。
- 1年以上の財形貯蓄を行っている
- 財形貯蓄残高が50万円以上
- 総返済負担率が一定の条件を満たしている
貯蓄残高に関しては毎月の貯蓄額を考慮すれば最短1年でクリアできるでしょうから、さほど気にする必要はありませんが、問題なのは総返済負担率です。総返済負担率とは年間返済総額が年収のどれだけを占めるのかを数値化したもので下記の基準が設けられています。
- 年収400万円未満 30%以下
- 年収400万円以上 35%以下
年収によっては希望の住宅購入が難しくなってきますが、ほかの住宅ローンとの併用でクリアすることができます。
しかし、この基準が設けられているのも返済負担が大きくなることを懸念してのことです。併用できるとしても利用時には、本当に返済できる予定が立つのかをよく検討するようにしましょう。
公民提携融資
住宅購入を検討しているなら「フラット35」という名は聞いたことがあるでしょう。このフラット35こそが公民提携融資の代表格です。公民提携融資は住宅金融支援機構と民間お金融機関が提携して提供している住宅ローンです。
財形住宅融資のように利用者が限定されることはなく、前年度の年収によって融資合否が判断されるので最も利用しやすい住宅ローンと言えるでしょう。
フラット35の特徴
それではそのフラット35の特徴について説明していきましょう。フラット35の特徴は下記のとおりです。
- 全期間固定金利
- 全期間固定金利なのに低金利
- 融資最高額8,000万円
- 建設費または住宅購入費用の全額借入ができる
- 民間金融機関では必要な保証料や繰り上げ返済手数料が無料
- 団体信用生命保険制度が用意されている
- 物件条件を満たせば金利優遇が受けられる
このフラット35が最も利用しやすい住宅ローンと呼ばれるのは、申込者の職業や職種が審査に影響しないという点です。安定した収入がありさえすればフリーターでも借り入れできます。また、銀行等で健康上の問題を理由に借り入れできなかった人でも借り入れできるので、利用者層が最も広い住宅ローンと言えるでしょう。
しかし、土台の安定性や耐久性などの技術基準において住宅物件に対する要件が民間金融機関より厳しいのがデメリットとして挙げられます。利用に際しては要件を満たしていることを証明する適合証明書が必要となります。この点は適合要件に照らし合わせた住宅購入が条件となるので注意が必要です。
また公民提携融資ということで、フラット35は多くの民間金融機関から販売されています。よって金利や返済条件等が利用先によって違ってきます。よって、どの金融機関を利用するのが1番メリットが高いのかをよく検討する必要があるでしょう。
フラット35には35Sも!
フラット35の適合条件は技術基準のみでしたが、ここに下記条件をクリアすることでローン金利をさらに引き下げることができるのがフラット35Sです。
- 省エネルギー性
- 耐震性
- バリアフリー性
フラット35Sには下記2つの金利プランがあり、上記適合案件がどれくらいのレベルなのかが住宅金融支援機構の審査で判断され、その結果によって適用金利が決定されます。
- 金利Aプラン 借入当初10年間、年利0.3%の金利引き下げ
- 金利Bプラン 借入当初5年間、年利0.3%の金利引き下げ
適用金利がどちらになるのかによって違いはありますが、フラット35と比べると最高で約90万円の総返済額軽減ができます。この軽減額と適合要件を満たす設備購入の兼ね合いも影響してくるので一口にフラット35よりもお得とは断言できませんが、これらの設備導入を検討した住宅購入をする方にはおススメとなってくるでしょう。
これら適合要件に関しては素人判断がつきにくいので、まずは購入検討先の不動産業者等に直接相談することをおススメします。
民間融資
民間融資としての代表格といえばやはり銀行の住宅ローンが挙げられるでしょう。冒頭でも出た提携ローンも銀行による住宅ローンとなります。また販売先が多数に上ることからサービス内容は各銀行で違っており、どの銀行が提供する住宅ローンがいいのかを判断するのはある種至難の業かもしれません。
銀行住宅ローンとは?
銀行による住宅ローンの特徴は下記のとおりです。
- 融資上限額は1億円など高額なものが多い
- 頭金ゼロでも借り入れできる
- 変動金利型と固定金利型の2つから金利タイプの選択ができる
- 2年、3年、5年、10年と鼓笛金利選択型も用意されている
- 保証料や繰り上げ返済手数料が有償の場合がある
フラット35は申込者よりも購入物件への要件が多かったため利用できる人は広範囲でしたが、銀行の場合は申込者に対する要件が厳しい傾向があり、返済能力と信用度に関する審査基準が高く設定されています。
また購入物件を担保とするのはもちろんのこと、保証人が求められることもあります。この点も審査の厳しさの表れといえるでしょう。よって銀行で住宅ローンを検討する場合には公民提携融資のフラット35がおススメとなってくるでしょう。
しかし、申込者の属性が高評価で返済能力、信用度ともに高いと判断されれば、公的融資や公民提携融資よりも低金利で借り入れすることもできます。ですが逆の場合は審査NGとなる可能性が低いので、自信のない方は公民提携融資のフラット35への申し込みをおすすめします。
つまり、民間融資の場合は申込者の審査結果次第で借入条件は大きく変わってくるというわけです。また申込先によって諸条件が大きく違ってくるため、申込時にはできるだけメリットの高い住宅ローンを利用するためにも、多くの金融機関を比較するよう心がけましょう。
モーゲージバンク
モーゲージバンクはまだ日本では馴染みがありませんが、欧米では主流となっている住宅ローンの借入手段です。
住宅ローンは預金金融機関が主な取り扱い先でしたがフラット35の誕生により、大きな変化をもたらしました。フラット35は民間金融機関が貸出した住宅ローン債権を買い取り、証券市場から資金調達する仕組みを取っています。
この預金を貸出原資としない住宅ローンが誕生したことから、それを持たない金融機関も住宅ローンの取り扱いが可能となったわけです。それが証拠に今では預金原資を持たない証券会社からも住宅ローンが販売されています。
このように自社資金を原資とすることなく、フラット35を中心とした住宅ローンを取り扱う金融機関をモーゲージバンクと呼び、下記のような企業が参画しています。
- あいおいニッセイ同和損保
- 旭化成モーゲージ株式会社
- ARUHI
- オリックス株式会社
- 協同住宅ローン株式会社
- トヨタファイナンス株式会社
- ミサワフィナンシャルサービス株式会社
- 三井住友海上火災保険株式会社
現在はこのモーゲージバンクは日本に20数社あり、フラット35成約の約8割を担っています。フラット35は銀行や信用金庫をはじめとする全国300以上の金融機関が取り扱っており、契約先は銀行だと考えている人も多いでしょうが、実際はモーゲージバンクが主流なのです。
モーゲージバンクは同じくフラット35を扱う銀行よりも下記のようなメリットがあります。
- 手持ちの口座を返済口座に指定できる
- 住宅ローン専門期間のため審査がスピーディー
- 銀行よりも低金利の場合が多い
しかし、下記のようなデメリットもあるので、利用時には銀行等との比較が重要となることはよく理解しておきましょう。
- 銀行のように他の住宅ローンが選べない(フラット35以外)
- 支払う事務手数料が高額
住宅ローンは自分にあったものを選ぶのが一番!
条件面だけに限った住宅ローン選びなら簡単ですが、まずはその住宅ローンを利用できるだけの条件が備わっているのかが重要となってきます。
よって金利面に拘るのは必要なことですが、まずは自分が利用できる住宅ローンにはどんなものがあるのかを考える必要があるでしょう。
そしてその中から現在だけでなく、将来的にも対応できる内容を持ったものを選択する必要があります。
住宅ローンの契約内容は多種多様ですが、一番重要なのはそれが自分にあったものなのかどうかです。
これは専門知識のない素人だけで考えでは難しいところもありますが、これを間違えると将来的に住宅ローンが家計を圧迫することにもなりかねません。
この点をよく踏まえた上で購入予定先の不動産業者をうまく利用するなどして、一番メリットの高い住宅ローン選びを行うようにしましょう。