不動産購入時にどうしても必要となってくるのが住宅ローン。高額な住宅を一括購入できる方はほんのひと握りでしょうから、住宅ローンをどうするのかは重要な問題となってきます。
そこで多くの購入者に利用されているのが提携ローン。提携ローンはその名のとおり不動産業者と金融機関が提携している住宅ローンで、今ではローンを組む6割もの人がこの提携ローンを利用していると言われています。
住宅金融支援機構が調査した「民間住宅ローン利用者編(2016年度・第2回調査)」では利用した住宅ローンを知るきっかけととして影響が大きかった媒体等で、「住宅・販売事業者」が2位のインターネット18%に圧倒的な差をつけた45%でダントツの1位となっていることからも、不動産業者が勧める提携ローンの利用者が多いのも理解できる話です。
確かに提携ローンには多くのメリットもありますが、利用した方が高いメリットが受けられるわけではありません。ほかの住宅ローンを利用した方がメリットが大きかったというケースもあるのです。
よって提携ローンを利用する際には、そのメリット・デメリットをしっかりと把握しておく必要があるでしょう。そこで今回は、提携ローンのメリット・デメリットについて説明していくことにします。
不動産業者の提携ローンとは
それではまずはメリット・デメリットをよく理解してもらうためにも、提携ローンとはどのような住宅ローンなのかを詳しく説明していきます。
提携ローンとはどんな住宅ローンなの?
提携ローンは住宅ローンに限ったローン商品ではなく、下記のように様々なものが用意されています。
- ゴルフ会員権
- 自動車
- 教育教材
- 太陽光発電設備
- オール電化
- ガス冷暖房
- 給湯システム
つまり提携ローンとは販売主である事業者がローン会社を斡旋することによってローン組みをスムーズに行い、販売チャンスを逃さない為に生み出されたローン商品で、金融機関側も事業主と提携することで多くの融資チャンスを得ることができる、互いにとってメリットになっています。
よって、ローンが必要となる高額商品を販売する事業主は、いくつもの金融機関との提携ローンを用意しているのですが、住宅ローンの提携ローンは通常の金融機関に申し込む住宅ローンとは全く違ったルートを持つという特異な性質をもちます。
提携ローンの扱いは住宅ローンセンター
通常個人が銀行に住宅ローンを申し込む際には、銀行の融資担当者と直接相談することになります。
しかし、提携ローンの場合は違います。聞き馴染みはないかと思いますが銀行には住宅ローンセンターと呼ばれる店舗があり、一般的な支店とは違う役割を果たしているのです。この住宅ローンセンターこそが提携ローンを専門に行う住宅ローン店舗となります。
サイトで住宅ローンセンターと検索すれば下記のように銀行の名が付いたものが多く出てきます。
- 近畿大阪銀行住宅ローンセンター
- ちゅうぎん住宅ローンセンター
- 横浜銀行住宅ローンセンター
- 三井住友信託銀行住宅ローンセンター
- 新生銀行住宅ローンセンター
この住宅ローンセンターが通常の銀行窓口にある融資窓口と一番大きく違うのは、交渉できるのは提携先の不動産業者のみで、申込者が直接相談できないという点です。
住宅ローンセンターの直接の取引相手は不動産業者であり、申込者である個人ではありません。提携ローンの事務続きを全て不動産業者が行ってくれるのも交渉相手が申込者ではないからです。
不動産業者の提携ローンのメリットとデメリット
そこで気になってくるのが利用者にとってのメリット・デメリットです。提携ローンが不動産業者と金融機関にメリットを生むのは分かりましたが、使う側としては利用者にどうなのかが一番重要なポイントとなってきます。
それでは提携ローンにはどのようなメリット・デメリットがあるのかを詳しく説明していきましょう。
提携ローンのメリット
提携ローンの主なメリットは下記の3点です。
- 物件審査の必要がない
- 書類手続きの負担が少ない
- 融資実行日の調整をする必要がない
それではこれらメリットについて詳しく見ていきましょう。
物件審査の必要がない
住宅ローン審査は通常、本人審査と物件審査の2つの審査が行われます。
本人審査は融資しても大丈夫なだけの返済能力と信頼度が申込者にあるのかが審査されますが、住宅ローンの場合は物件審査も審査通過のために欠かすことのできない重要なポイントです。
住宅ローンは購入物件である土地と建物に抵当権を付け、利用者が返済不能となった場合は土地と建物を売却額をローン残金の返済に充てます。よって、購入物件にいくらの評価額が付くのかによって融資額も違ってくるわけです。
評価額が2,000万円しかない土地・建物に対して3,000万円の融資はできません。これでは売却しても多額のローン残金が残ってしまうのですから当然の話ですよね。よって融資額は評価額に見合った額面しか融資されることはないのです。
物件審査がNGなって融資が実行されないことも珍しい話ではありません。となれば物件審査に時間がかかるのも致し方ない話ですよね。
しかし、提携ローンの場合は事前に不動産業者が提携先の金融機関で物件審査を行っているので審査時間を大幅に短縮でき、購入に必要な希望融資額の調整も必要ないのです。しかも物件審査が原因で融資NGとなることもないので、ローン申し込みが空振りに終わることもありません。
これは提携ローンを利用するにあたって、見逃せないメリットと言えるでしょう。
書類手続きの負担が少ない
先程言ったように提携ローンは金融機関との交渉窓口は不動産業者となります。よって、通常のローン申し込みでは面倒になってくる書類手続き等も不動産業者が行ってくれるため、利用者は大きな負担を解消することができます。
住宅ローンを組む際には実に多くの提出書類が必要となり、知識もなく対応に苦労する物件に関する書類だけでも下記のように多くのものが必要とされます。
- 建築、工事請負契約書
- 建築確認申請書
- 建築確認の検査済書
- 不動産登記簿謄本
- 土地の公図
- 地積測量図
- 建物図面
- 各階平面図
- 住宅地図または物件案内図
これら必要書類を一通り揃えた上、金融機関とやり取りし、漏れがないかどうかを確認する必要があるのです。仕事を抱えた忙しい社会人がそんな時間的余裕なんてありませんよね。
融資実行日の調整をする必要がない
通常の住宅ローンを利用した場合、販売会社の指定した日に融資実行してもらう必要があります。これも個人で住宅ローンを組んだ際は金融機関との打ち合わせが必要になってきます。
しかし、提携ローンなら事務手続きと同様に不動産業者が勝手にやってくれるので、自分で調整する必要がりません。
提携ローンのデメリット
それではメリットが把握できたところで、絶対に知っておかなければならないデメリットについて見ていきましょう。
提携ローンの主なデメリットは下記の2つです。
- 不動産業者への事務手数料がかかる
- ほかにもメリットの高い住宅ローンがある可能性も
それではこれらデメリットについて詳しく見ていきましょう。
不動産業者への事務手数料がかかる
提携ローンを利用するとローン事務代行手数料といったような名目で事務手数料が発生します。手数料額は一般的に5~10万円くらいが相場で、不動産業者に事務手続きを代行してもらった対価として支払いが求められます。
仲介手数料は法律によって上限が決められており、「(物件価格×3%+6万円)×消費税8%」の計算式をもとに算出されますが、ローン事務代行手数料には法律によって規制されていないため、不動産業者の言い値で決まるのが一般的です。
住友不動産販売や三井のリハウス、東急リバブルなど、一部の大手不動産業者ではローン事務代行手数料の請求がないケースもあるので、不動産業者によってかなりの差額が出てくることもありますが、10万円と消費税が一般的な手数料額と考えておけばいいでしょう。
ほかにもメリットの高い住宅ローンがある可能性も
提携ローンで住宅購入する人が多い一番の理由は面倒がない点でしょう。ただでさえよくわからない分野で面倒な手続きに時間をかけたいという人はいるはずありませんものね。
しかし、提携ローンを利用した場合は選択肢が限られてくる上、自分であれこれ調べようとすることもしないため、もしかするともっといい条件で住宅ローンが組めたのにと後悔することになる可能性もあります。
住宅ローンは何も提携ローンでなくてはならない理由はありません。自分でメリットが高く条件のいい住宅ローンを見つけることも可能なのです。特に今はネット銀行が用意した住宅ローンは低金利で注目されており、利用者も急増しています。
提携ローンはメリットもありますが、利用するにあたってはそのようなチャンスを自ら逃してしまう可能性があることをよく理解しておきましょう。