フラット35は現在販売されている住宅ローン商品の中でも、最も利用しやすく低金利の長期固定住宅ローンのため、史上空前の低金利時代の今では実に多くの人に利用されています。
販売当初は新築住宅購入の支援策として販売されていましたが、今では様々なニーズに対応した新商品が次々と販売され利用者層の拡大を図っています。フラット35のリフォーム一体型もその1つです。
近年は中古住宅を買い上げてリノベーションを施す人も多くなり、中古住宅リノベーションブームとも称されています。この流れに対応すべく2015年より販売開始されたのがリフォーム一体型で、中古住宅購入資金と併せてリフォーム費用も借り入れすることができます。
そこで今回はこのフラット35のリフォーム一体型について説明していきましょう。
フラット35のリフォーム一体型とは?
それではまずフラット35のリフォーム一体型とはどのような住宅ローンなのか、その特徴からメリット・デメリットを見ていくことにしましょう。
リフォーム一体型のメリットは?
リフォーム一体型のメリットはリフォーム費用が住宅ローンの低金利で借り入れできる点に尽きるでしょう。通常の住宅ローンにはリフォーム費用は含まれません。よって、中古物件を購入した際には別途リフォーム費用の借り入れが必要となってきます。
しかし、厄介なのがこのリフォームローン。住宅ローンとは返済期間や借入金利が違ってくるので、返済に余裕がない場合には家計を圧迫する原因となってきます。下記は近年低金利の住宅ローンとして注目を浴びているネット銀行の一つであるイオン銀行のリフォームローンの条件です。
- 金利 固定金利2.50%
- 借入限度額 500万円
- 返済期間 最大10年(1年単位)
*2017年10月現在
下記のフラット35の条件と比べてみてください。いかにリフォームローンの条件が厳しいものかが分かってもらえるでしょう。
- 金利 固定金利1.29%(金利範囲1.29%~1.90%)
- 借入限度額 8,000万円
- 返済期間 15年~20年
*2017年10月現在
リフォーム一体型のデメリットは?
しかし、リフォーム一体型には下記のようなデメリットもあります。
- 既存住宅瑕疵保険の加入が必要となるケースがある
- つなぎ融資が必要
- 申込時にリフォーム工事金額の提示が必要
よって、これらデメリットについてもよく理解した上で、申し込みする必要があるでしょう。
既存住宅瑕疵保険の加入が必要となるケースがある
既存住宅瑕疵保険とは購入する中古住宅に隠された重大な欠陥がある場合、保険によって補修費用等が賄われる保証です。必ずではありませんがフラット35の申し込みで必要となる適合証明検査においてその検査とこの保証が必要と判断された場合にのみ加入が求められることになります。
マンションや2003年4月以降に竣工された一戸建て住宅の場合には必要ありませんが、2003年3月以前の物件に対してはこの保険に加入する必要があると考えておきましょう。
つなぎ融資が必要
フラット35のリフォーム一体型の資金供給はリフォーム工事が完了した時点となるため、それまでにかかる土地の購入費用や、リフォームに必要な着工金などの費用を自己資金で賄う必要が出てきます。
当然、自己資金のない人はつなぎ資金用のローンを組むこととなり、フラット35の資金受け取り後にその借り入れを返済することになりますが、発生した利息は自己負担することとなるのです。
短期ではありますが、その利息は数十万円にも上るため決して安価な金額とは言えません。
申込時にリフォーム工事金額の提示が必要
一般的には住宅の現状を詳しく調べることができるのは物件引渡し後となりますが、申込時にリフォーム工事金額を提示する必要があるのでそれでは遅いということになってきます。
よってリフォーム業者の選定から、リフォーム内容の決定までを事前に段取り良く行う必要が出てきます。さらにリフォーム内容が変わり費用に変動が出た場合には、再審査が必要。となってきます。
かなり面倒な作業となるので、よく肝に銘じておきましょう。
リフォーム一体型の利用条件
それではフラット35のリフォーム一体型の利用条件を紹介していきましょう。
申込者条件
その条件は下記のとおりです。
- 申込時の年齢が満70歳未満(親子リレー返済の場合は満70歳以上でも申込可能)
- 日本国籍を有するか、永住許可を受けている、または特別永住者の外国人
- 総借入額が規定の総返済負担率の基準を満たしていること
- 土地建物を共有している場合、申込者が共有持分を持っていること
この中でも総返済負担率の基準クリアは特に重要となってきます。総返済負担率は申込者の年収に占める年間ローン返済総額の割合を示す数値で、下記のような基準が設けられています。
- 年収 400万円未満 30%以下
- 年収 400万円以上 35%以下
年間ローン返済総額はリフォーム一体型の返済額だけでなく、下記のような各種借り入れが含まれます。
- ほかに組んでいる住宅ローン
- マイカーローン
- 教育ローン
- カードローン
- クレジットカードのリボ払い
決して新たに組む住宅ローンだけを指すわけではないことをよく理解しておきましょう。
借入対象となる住宅条件
その条件は下記のとおりです。
- 住宅金融支援機構が定める技術基準に適合した住宅
- 宅の床面積が規定基準に適合した住宅
- 借入総額が1億円以下の住宅(消費税額含む)
- 申込時に竣工から2年経過、または誰かの居住履歴のある住宅
技術基準に関してはリフォーム一体型だけでなくフラット35全般に言えることですから、今回は説明を省略しますが床面積には注意が必要です。床面積の規定基準は下記のとおりです。
- 一戸建て住宅、連続建て住宅、および重ね建て住宅 70㎡以上
- マンション等の共同建て住宅 30㎡以上
70㎡は約21坪ほどになります。近年は土地高騰の影響もあり、一戸建て住宅の坪数は減少傾向にあります。総務省統計局の発表でも昭和26年以降は69㎡以下の床面積住宅が増加しており、平成20年には全体の43.8%を占めるまでになっています。
以上のことからも特に一戸建て住宅購入の場合には、床面積が基準をクリアしているかは重要なポイントとなってくるでしょう。
リフォーム一体型の必要書類
それでは次は申し込みに必要な書類を紹介しましょう。その書類は下記のとおりです。
- 借入申込書
- 今回の住宅取得以外の借入内容に関する申出書
- 所得証明書
- 売買金額確認書類 売買金額が確認できる売買契約書の写し等
- 住宅の登記事項証明書
- 土地の登記事項証明書
- 物件検査の適合証明書
- 団信保険加入申込書
- リフォーム費用金額確認書類 費用が確認できる見積書等
(兼既融資完済に関する念書)
1. 給与所得者 特別徴収税額通知書、住民税納税通知書等の公的収入証明書
2. 個人事業主 納税証明書または確定申告書の写し等
フラット35の申し込みでは物件審査申請と借入申込の順序は問われていませんが、物件検査の適合証明書が出ても金融機関や住宅金融支援機構の審査通過がNGとなれば何の意味もありません。
中には審査短縮を狙って物件審査申請を先にする人もいますが、借り入れは金融機関や住宅金融支援機構の審査次第だということをよく覚えておきましょう。
リフォーム一体型融資の流れ
それでは最後にリフォーム一体型融資の流れを簡単に説明しておきましょう。その流れは下記のとおりです。
- 借入申込・審査結果の通達
- 事前確認
- 既存住宅売買瑕疵保険の契約締結
- 中古住宅の代金決済
- つなぎ融資実行
- リフォーム工事計画の確認
- リフォーム工事
- 工事後に適合証明検査
- リフォーム工事の代金決済
- 対象物件への抵当権設定手続き
- つなぎ融資の返済
- 火災保険への加入(返済完了まで継続必須)
- 物件引渡し
申し込みから物件引渡しまでは申込先の金融機関や住宅金融支援機構を積極的に利用し、分からないことがあればすぐに相談するようにしましょう。
ですがリフォーム一体型の場合は先に説明したとおり、申込時のリフォーム費用見積やつなぎ資金など自分で行わなければならない問題が出てきます。よってリフォーム工事が完了するまではスケジュール組など手を煩わすことがあることも覚悟しておかなければなりません。
支払い利息を極力抑えるためにもできるだけ短期間でリフォーム工事が完了するよう、事前準備だけはしっかりと行うようにしてくださいね。