土地や建物などの不動産を取得した場合、必ず登記が必要になります。不動産登記は、不動産の所在地やどのような不動産であるか、また所有者が誰であるかなどの情報を公示(一般に公開)するためのもので、大切な個人の資産である不動産を守り、不動産取引を安全で円滑にするための制度です。今回は、新築した場合と建て替えした場合の登記についてご紹介します。
新築住宅の登記について
新築住宅の登記は、銀行でローンを組んだ場合、通常は銀行が指定する司法書士が行ってくれます。ローンを組んでいない場合は、自分で登記を行うか、自分が選んだ司法書士に依頼することになります。いずれにしても、登記の流れや必要な書類・費用相場などは把握しておきましょう。
新築住宅に必要な登記
新築住宅の登記は、土地の登記と建物の登記は別に行います。土地は購入後すぐに登記手続きを行うことができますが、建物は完成してから1か月以内と定められています。以下は新築の建物に必要な登記と費用相場です。
建物表題登記
平成16年までは「表示登記」と呼ばれていましたが、不動産登記法改正により「表題登記」に名称が変わりました。登記簿の表題部に初めて登記事項を記録することをいいます。不動産登記法164条では、新築時に行う表題登記を『1か月以内に行わない場合は、10万円以下の過料に処する』となっています。忘れずに早めに行いましょう。
表題登記を土地家屋調査士に依頼した場合、費用相場は6万円~10万円程度。建物の床面積によって費用が異なります。
所有権保存登記
保存登記ともいい、表題登記を行った後、所有権の登記(保存登記)を行います。これによって、登記簿の甲区に建物の最初の所有者として記録されることになります。保存登記は表題登記と違って必ずしも登記しなければならないというものではありません。所有者の任意で行うことができますが、保存登記をしていないと、不動産の売買や相続・抵当権設定などができないため、ローンを利用する場合は必須になります。
保存登記の費用は司法書士の手数料が2~3万円程度。登録免許税が不動産価額の1,000分の4かかります(個人が平成32年3月31日までに自己の居住用として家屋を新築した場合は軽減税率により、1,000分の1.5)。
抵当権設定登記
ローンを利用して住宅を取得した場合、その土地や建物には抵当権が設定されています。金融機関は、債務者がローンの返済ができなくなった場合の債権保存の目的で抵当権利(所有者以外の権利)を登記簿(抵当権設定登記は、登記簿の乙区)に記録することになります。わかりやすくいうと、「この不動産の抵当権は○○銀行が持っている」ということを公示することにより、優先的な債務回収権利を示すことになります。
抵当権設定登記の費用は融資金額によって異なりますが、一般的には3万円~5万円程度。登録免許税は、借りた金額の1,000分の4(3,000万円の場合12万円)ですが、適用条件を満たすことにより特例として1,000分の1(3,000万円の場合3万円)に軽減されます。さらに印紙代(1,000万円~5,000万円のローンでは2万円)が必要です。
※特例の条件=・自己の住居用として新築(平成32年3月31まで)
- 建物を新築するための貸付に関わる設定登記である
- 登記簿上の床面積が50㎡以上
登記名義人住所変更登記
登記手続きをする上で、登記簿上の住所氏名と印鑑登録上の住所氏名が一致していなければ同一人物とみなされず登記手続きができなくなります。そのため、登記名義人住所変更登記が必要になります。
司法書士に依頼する場合の費用は1万円程度、登録免許税は不動産1個につき1,000円かかります。
※新築住宅の登記費用の合計の例(住宅ローン3,000万円、軽減税率・特例が適用され、全て司法書士などに依頼した場合の合計額)
- 表題登記費用:6~10万円(土地家屋調査士報酬)
- 保存登記費用:2~3万円(司法書士報酬)+3万円(登録免許税)
- 抵当権設定登記費用:3~5万円(司法書士報酬)+3万円(登録免許税)+2万円(印紙代)
- 登録名義人住所変更登記費用1万円(司法書士報酬)+1,000円(登録免許税)
合計=201,000万円~271,000万円(司法書士などの報酬は、別途取引立会費や交通費が加算されることがあります)
※上記は建物だけの登記費用です。土地を購入した場合は所有権移転登記が必要です。登録免許税は土地の評価額の1.5%(平成32年3月31日まで)。司法書士の報酬は3~5万円程度です。
新築登記に必要な書類
新築住宅の登記に必要な書類は以下の通りです。
建物表題登記
- 登記申請書
- 住民票
- 印鑑証明書
- 建築確認書のコピー
- 建物図面
- 委任状(代理人が申請する場合)
所有権保存登記
- 住民票
- 委任状
抵当権設定登記
- 権利証または、登記識別情報
- 印鑑証明
- 委任状
【金融機関から交付される書類】
- 登記原因証明情報または、抵当権設定契約証書
- 資格証明書
- 委任状(金融機関から司法書士へのもの)
登記名義人住所変更登記
- 住所を1回だけ変更した場合は、住民票と委任状。
- 住所を複数回変更した場合は、住民票、戸籍の附票、委任状。
建て替え住宅の登記について
新築住宅と建て替え住宅では建物自体は同じ新築ですが、違いといえば、建て替えの場合は新しい建物を建てるために古い建物を取り壊す必要があることです。そこで、建物滅失登記によって、もうその建物は存在しないということを最初に登記しなければなりません。稀に取り壊す建物が登記されていないこともありますが、この場合は建物滅失登記の必要はありません。
建て替え住宅で必要な登記
建て替え住宅で必要な登記は、まず古い建物を解体したときの建物滅失登記、そして建て替え家屋が完成した後の建物表題登記・所有権保存登記、さらにローンを利用する場合は抵当権設定登記が必要になります。建物滅失登記以外は新築登記での説明と同じになります。したがって、ここでは建物滅失登記についてご説明します。
建物滅失登記
建物を解体した場合、不動産登記法によって1か月以内に滅失登記を行わなければならないとされています。これは申請義務になっているため、申請しなかった場合は10万円以下の過料に処されることになります。滅失登記をすると法務局から市町村の役所に連絡がいき、翌年からの家屋の固定資産税の徴収がストップされます。
建物滅失登記の依頼先は土地家屋調査士です。土地家屋調査士の報酬の相場は4万円~5万円程度(一般的な戸建ての場合)。建物滅失登記には登録免許税はかかりません。
建物滅失登記で必要な書類
建物滅失登記で必要な書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 建物滅失証明書または、建物取り壊し証明書(解体業者の署名捺印が必要)
- 現在の位置図
以上が基本的に必要な書類ですが、場合によっては住民票などが必要になることもあります。
まとめ
不動産の登記簿は表題部と甲区・乙区とに分かれています。表題部には土地・建物の所在地やどのような不動産かを記録するもので、甲区と乙区はその不動産の権利についての記録になります。表題部の登記は土地家屋調査士が担当し、権利部の登記は司法書士が担当すると決められています。したがって、建物表題登記と建物滅失登記は土地家屋調査士に依頼し、所有権保存登記・抵当権設定登記は司法書士に依頼することになります。
銀行ローンを利用していない場合、登記は自分で行うこともできます。自分で登記をしようと思う方は、まずお近くの法務局の「登記相談」窓口で相談してみましょう。書式の雛形ももらえます。しかしながら、建物表題登記と建物滅失登記は1か月以内と定められているため、スピード感を持って行うようにしましょう。