マイホームを建てる際に、おしゃれなデザインにこだわりすぎてしまいがちですが、今生活するためだけに建てる家ではないことを意識することが大事です。
夢のマイホームで老後までずっと暮らし続けることを想像しておき、30年後にも満足できる家づくりをすることで、よりその家の価値を高めることができるでしょう。
老後や体を壊してしまって、夫婦のどちらかに介護の必要が出てきたとき、介護しやすい家を建てていれば介護の負担は減り、どちらかが嫌な思いをすることも減るはずです。
そこで今回は、30年先や予期せず体を壊してしまった場合を見据えた家づくりについて、紹介していきたいと思います。
介護しやすい家づくりのポイント
それでは、ここからは介護しやすい家づくりについて、重要となるポイント毎に説明をしていきます。
介護しやすい家の間取り
基本的には、介護を受ける人のための、専用の空間を設けておくと良いです。
寝室を1階に設置して、介護用のトイレをその部屋に接続させておくと、とても便利になります。また、玄関に近い位置に寝室を設けることで、「デイサービス」などを受ける際にも簡単に移動することができます。
全体的に動線を短くすることも大切です。各部屋に行き来しやすくするために廊下部分を短くすることが一例となります。介護する人の滞在時間が多い場所から見渡せる位置に、介護を受ける人の部屋があるのも良いでしょう。
各部屋の細かいポイントについては、下記で説明をしていきます。
床をバリアフリーにする
バリアフリーな造り、と聞いてまず思い浮かべるのが、段差の少ない床だと思います。床を極力段差がないようにしておくことで、車いすでの移動が非常に楽になります。
介護を受ける人の居室の周りにトイレやお風呂などの必要な生活スペースを集めることができれば、非常に良いのですが、すべてを近くに集めることができなかったとしても、そこに至るまでの道がフラットであれば移動をする際の負担がとても軽減され、ストレスも小さくなります。
床をフラットにすることは介護だけでなく、妊婦さんやお子さんが転倒してけがをしてしまうことも防ぐことができるので、とても大事なポイントとなります。
トイレのポイント
トイレに関しては、介護をする人・受ける人の2人が動ける広さが必要です。トイレは、幅が狭いことが多いですが、介護のことを考えると幅の広い造りとする必要があります。
また、介護を受ける人の腕を首に回してもらい、介護をする人が中腰になることでトイレに座ってもらうことになるので、介護をする人の腰への負担も大きくなります。
介護を受ける人がまだ自分で立ったり座ったりできるのであれば、手すりを備えつけることで、1人で用を足すことができます。
介護される人は、恥ずかしさが伴うので、介護の段階に応じてなるべく1人でも用を足せる環境を整えておくことが大切です。
部屋で用を足さなくてはならなくなった場合には、お部屋置き用の水洗トイレもあるので、工事を行うと良いでしょう。比較的簡単な工事で済みますので、検討してみるのも良いかと思います。
お風呂のポイント
お風呂は滑りやすく、転倒の危険性も高いため、とても気を遣わなければならない場所です。
補助付きで入浴ができるうちは、極力床面からの立ち上がりが低い浴槽でもよいのですが、全面的にお世話の必要がある場合には、バスリフトの導入も検討する必要があります。
また、廊下とバスルームの床面がフラットであること、入口を広く取ることで車いすでそのまま入浴することができます。入浴用の車いすもあるので、出入口を広く取ることが重要です。
車いすから浴槽への移動を補助してくれる「トランスファーボード」というものもあるので、必要であれば購入すると良いでしょう。
ただし、車いすやトランスファーボードを利用するためには、介護を受ける人と介護をする人の最低2人が動き回れるだけの広さがお風呂場に必要となります。
玄関のポイント
手助けをすることで歩けるうちは、介護を受ける人もなるべく自分で歩きたいという希望があるかと思います。
そこで、玄関にもひと工夫入れておくと、その負担も減ります。外から家に入ってくる際に、階段があると介護の必要がある人にとって大きな負担となります。
入口のところにスロープを設けて、玄関の土間部分から廊下への段差も極力抑えることで、介護する人・受ける人の負担を減らします。
また、座って靴を履けるように、椅子を用意しておくのも良いでしょう。「デイサービス」を利用する際に、家の前に車を横づけにして、車いすのまま乗車できるように、開口部を用意することもおすすめします。
キッチンのポイント
キッチンは一見介護にはあまり関係がないのでは、と思う方も多いかと思いますが、キッチンにも一工夫できるところがあります。
それは、カウンターキッチンにすることです。カウンターキッチンにすることで、リビングを見渡すことができます。
料理をしながらも、リビングの様子がわかるため、もしリビングで何か異変があった場合に、気づくことができます。細かい点ではありますが、検討をする価値はあると思います。
車椅子で動けるスペースが必要
当然のことではありますが、車いすで入れないスペースがあると、そこに入る度に車いすの乗り降りが必要となります。
その負担を無くすためにも、なるべくどの場所にも車いすのまま通れて入れるだけのスペースを確保しておくことが大切です。1回1回の負担が積み重なって、大きな負担となってしまうので、細かいケアが必要となります。
将来的に、家族全員が集いやすく、住みやすいマイホームを建てることが大切です。何十年も暮らし続ける住まいだからこそ、先まで見据えて間取りや材料、家具などを決めていくことが必要になります。
何気なく過ごしていて室内の段差につまづいたり、トイレや浴室でのちょっといた動きが不便に感じたりすることが、加齢による体の変化に合わなくなり、不具合を感じてしまいます。
介護する人も介護を受ける人も住みやすい環境を作るためにも、バリアフリーを意識した設計が必要になってきます。
後々リフォームをするのも一つの手ではありますが、追加で大きな費用がかかってきますので、できることであれば最初の段階で準備をしてしまったほうが、金銭的にもメリットが大きいです。