家庭用の蓄電池と言っても、まだ「何それ?つけると何か良いことあるの?」くらいの認識の人が多いのではないでしょうか。
今から十数年前、太陽光発電がまさにそんな感じでしたね。太陽光パネルって、電卓についているくらいで、まさか家で使う電気の一部を太陽光で発電するなんて、まだまだ先の話だと思われていました。
しかし、今では太陽光パネルを屋根に乗せた家は簡単に見つけられますし、大規模な太陽光発電所も郊外に行けば多く見られます。
太陽光の次に来るもの、それが家庭用蓄電池です。まだまだ、時折テレビCMでその言葉を聞くくらいで、馴染みのないものですが、今から知っておくと、近いうちに役に立つ日がくるかもしれません。
家庭用蓄電池って何?
家庭用蓄電池とは、エアコンの室外機より少し大きいくらいの充電式の電池です。電池と言うと、単三とか、ボタン電池なんて言葉が思い浮かびますが、家庭用蓄電池には以下のような役割が期待されています。
- 深夜の安い電気を貯めて、昼の電気代の高い時間に使い、電気代を節約する。
- いざという時のための電源を確保し、災害時の停電に対応する。
- 家庭の節電だけでなく、社会全体での電気使用量のピークカットに貢献する。
- 太陽光発電と併用し、太陽光発電の電気を貯めて夜間に使う。
- 家庭内での電気の使用量をリアルタイムに知ることができるので、家族の節電の意識を高める。
家庭用蓄電池にできることとできないこと
エコにもなって、その上、電気代が節約できるなら、と乗り気になった人もいると思います。
いざという時のための電源を確保できるので、災害時にテレビやラジオから情報取得ができたり、スマホ、携帯の充電ができるということは、とても重要ではないでしょうか。また、災害が起こっても冷蔵庫が使えるので、食材の無駄も減るでしょう。
ただし、まだ家庭用蓄電池は万能ではありません。たとえば夜間の停電です。貯めた電気を昼間に使ってしまったタイミングで停電が起きると、充電池としての機能は十分に発揮できません。
また、蓄電池はエアコンの室外機より一回り以上大きくなりますので、その置き場所が室外になければそもそも設置できません。
太陽光発電と家庭用蓄電池で電気の自給自足はできる?
昼間に太陽光発電で発電し、家庭内で使用し、余った分を蓄電池に貯めることで、太陽光発電ができない時は蓄電池の電気を家庭内で使用することで電力購入量を削減できます。
しかし、現段階では自給自足をしようと思ったらかなり発電量の大きな太陽光パネルと容量の大きな蓄電池でなければいけません。当然初期投資はかなり大きくなってしまします。
例えば、1ヶ月に500kWhの電気を使用する家庭であれば、電気の自給自足のためには、約4kWhの出力の太陽光パネルと、約11kWhの蓄電池が必要です。その場合、補助金を含んでも400万円以上はかかるでしょう。
家庭用蓄電池で得をするのはどんな家?
家庭用蓄電池は太陽光発電の有無や、オール電化かどうか等の条件によって、経済性が変わってきます。そこで、いくつかのケースに分けて、考えていきたいと思います。
なお、詳細なシミュレーション結果は、やや前提・計算が複雑なため、記事の最後にまとめて記載しています。
1. オール電化住宅で太陽光発電と併用する場合
節約効果2.6万~3.5万/年程度
家庭用蓄電池に興味を持つ人の多くは、すでに家庭で太陽光発電をしている人が多いようです。実際にネットで検索をしてみても、太陽光発電と蓄電池の併用がすすめられています。
家庭用蓄電池と太陽光発電の併用にはシングル発電とダブル発電という2つの使い方があります。
太陽光発電で発電され、余った電気を電力会社が買い取る時の単価が売電単価です。この単価は場合によって異なります。
シングル発電とは
太陽光発電と蓄電池の2つの発電機器を同時に使うことはできません。太陽光発電の売電価格は、蓄電池がない場合と同じ、33円です(平成27年度契約分)。
シングル発電の場合、太陽光が稼働していない時間帯には蓄電池の電気を使い、電力会社からの購入量を蓄電分減らすことができるので、朝晩時間と夜間時間の単価の差額に蓄電容量を掛けた金額が電気代の節約になります。
シミュレーションでは、年間34,680円の節約効果が見込めます。
ダブル発電とは
太陽光発電と蓄電池の電気を同時に使うことができます。そのため、太陽光の発電分の自家消費を減らすことができるため、より多く売電することができます。ただし、売電単価は27円に下がります(平成27年度契約分)。
ダブル発電の場合は、太陽光発電が稼働していて単価の高い昼間に蓄電池の電気も使うことができるため、太陽光発電の売電量は増やすことができますが、売電単価が33円/kWhから27円/kWhへ6円下がるため、結果として売電収入を下げてしまい節約効果が出にくくなります。
シミュレーションでは、年間26,597の節約効果になります。
2. オール電化で家庭用蓄電池のみを設置する場合
節約効果5.3万/年程度
太陽光発電を使わない場合は、上述の通り、電気代の安い夜間に充電し、昼間に蓄電池を利用することで、その差額が節約分になります。
太陽光発電との併用の場合、最も電気代が高い日中の節約効果が太陽光発電の機能に相殺されてしまいますが、家庭用蓄電池の単体の場合は節約効果がダイレクトに反映されるため、電気代の節約効果が高くなります。
また、天候に左右されず、安定的に毎日蓄電池の電気を使えるのもメリットです。シミュレーションでは、年間53,487円の節約効果がでます。
3. オール電化でない住宅で家庭用蓄電池を設置する場合
節約効果6.2万/年程度
実は節約効果で言えば、今回試算したケースの中で、最も高いのがこのケースです。オール電化の場合、昼間の電気代に割引がありますが、このケースでは割引が効かないため、日中と夜間の電気代の差分が最も大きいのです。
シミュレーションでは、年間61,790円が節約できます。
ガス併用でも、ガスファンヒーターのように非常時に停電すると使えなくなるものもあるため、蓄電池があると頼りになると思います。
今すぐ家庭用蓄電池は付けるべき?
現在、国や自治体の補助金を含め、7kWhの容量の家庭用蓄電池の価格は100万円程度、耐用年数はおおよそ10年ですので、年間10万円の節約効果があればほぼ採算がとれるのですが、現段階ではこの数字は現実的ではありません。
しかし、電力使用のピークカット、CO2削減などの環境面での貢献や停電時の電気の確保など、家庭用蓄電池には期待できる点もあります。
今、電力自由化など、私たちのエネルギー環境は転換点にきています。まだ採算性という面では難しい家庭用蓄電池ですが、今後の技術の進歩も見据えて、将来の選択肢として考えておくのもいいかもしれません。
おまけ:状況別のシミュレーション
シングル発電の料金シミュレーション
前提条件:
電気料金メニュー 電化上手(東京電力) 蓄電池は7kWhの容量
作動条件:
電気料金の安い夜間時間(12.16円/kWh)で充電し、太陽光発電の稼働しない朝晩時間(25.92円/kWh)で蓄電池を使用
節約効果:
(25.92円-12.16円)×7kWh=96.32円 一日あたり 96.32円の節約 1ヶ月で2,890円 1年で34,680円
ダブル発電の料金シミュレーション
前提条件:
電気料金メニュー 電化上手(東京電力) 一日あたりの太陽光発電量を13kWhとし、うち売電分を5kWhとする 蓄電池は7kWhの容量
作動条件:
電気料金の安い夜間時間(12.16円/kWh)で充電し、昼間時間に蓄電池を使用し、太陽光発電の発電分を7kWh分多く売電(売電単価 27円/kWh)
節約効果:
(5kWh+7kWh)×27(※1)-(33円×5kWh)(※2)-(12.16円×7kWh)(※3)=73.88円 一日あたり 73.88円の節約 1ヶ月で2,216円 1年で26,597円
※1もともと5kWh売電していましたが、蓄電池の電気を昼間時間に使う事によって太陽光発電分の内7kWh売電分が増え12kWhを単価27円で売ることができます
※2しかし、ダブル発電でなければ、太陽光発電の売電単価は33円/kWh、それを5kWh売っていたので、その分を差し引きます
※3併せて、蓄電池を充電するための電気代として、12.16円×7kWh分を差し引きます
オール電化、家庭用蓄電池のみ使用の料金シミュレーション
前提条件:
電気料金メニュー 電化上手(東京電力) 蓄電池は7kWhの容量
作動条件:
電気料金の安い夜間時間(12.16円/kWh)で充電し、電気料金の高い昼間時間(31.64円/kWh)で蓄電池を使用
節約効果:
(31.64-12.16)×7=136.36円 一日あたり 136.36円の節約 1ヶ月で4,090円 1年で53,487円(※1)
※1夏季3ヶ月間は昼間時間の電気料金が38.63円になるため節約効果が、1ヶ月で5,559円になりますのでそれを考慮した金額です
オール電化でない住宅で家庭用蓄電池を使用する料金シミュレーション
前提条件:
電気料金メニュー 夜得プラン12.48円/kWhで充電(東京電力) 蓄電池は7kWhの容量
作動条件:
電気料金の安い夜間時間(12.48円/kWh)で充電し、電気料金の高い昼間時間(37円)で蓄電池を使用(おおよそ月の電気代が1万円を超える場合)
節約効果:
(37円/kWh-12.48円/kWh)×7円kWh=171.64円 一日あたり 171.64円の節約 1ヶ月で5,149円 1年で61,790円
※5:00~21:00の電気使用量が少ない場合(230kWh以下)は、昼間時間の電気料金の単価が変わりますので、節約効果は少なくなります