住宅を建築している途中や完成した時には、設計図書どおりに建てられているかどうかを確認する検査を行います。住宅の安全性や質を得るためにはとても大切な検査です。そこで今回は、住宅建築における検査の種類や内容、そして費用の相場についてまとめてみました。
中間検査や完了検査について
建築基準法で定められている住宅建築における検査には「中間検査」と「完了検査」の2種類があります。
中間検査の流れと検査内容
住宅の建築工事の途中で行われる検査をさします。住宅が完成してしまうと外から目視で確認することができなくなってしまう箇所があるため、その部分については工事の途中に検査します。阪神淡路大震災で多くの建物が倒壊したことを受けて1999年に導入されました。中間検査が義務付けられている対象建物は、各都道府県によって異なります。
検査対象となる住宅は、新築工事における中間工程(特定工程)が終了した日から4日以内に検査の申請をします。申請書の提出先は都道府県または市区町村の建築主事か民間の指定確認検査機関です。建築確認申請と同じく申請者は建築主ですが、一般的には工事監理者である工務店やハウスメーカーなどが代理人になって申請します。
都道府県または市区町村の建築主事か民間の指定確認検査機関の検査担当者が工事現場に出向いて、工事監理者立ち会いのもと目視や寸法の測定等を行います。建築確認申請時に添付した設計図書どおりに施工されているか、安全性が基準を満たしているかを検査します。
検査内容としては、
- 敷地の状況
- 仮設物の状況
- 基礎や柱や壁の配筋
- コンクリート供試体の試験状況
- 防水工事の施工状況
などの項目があります。
対象住宅が設計図書どおりに施工されていることが確認できたら中間検査合格証が交付されます。しかし不合格の場合は是正工事や計画変更の手続きを行う必要があり、それが完了するまでは次の工程には進めません。
中間検査の費用は、申請先や住宅の延床面積等によって変わってきますが、100㎡以内なら10,000円前後、200㎡以内なら15,000円前後が相場でしょう。
完了検査
住宅の建築工事が完了した時点で行われる検査をさします。建築確認申請のとおりに施工されているのかを確認する検査です。中間検査とは違い、建築確認申請を受けた住宅は用途や規模に関係なく検査の対象となります。この検査に合格しなければ原則としてその住宅を使用できない、つまり住むことができません。
建築工事が完了した日から4日以内に完了検査の申請を行います。申請書の提出先は中間検査と同じく都道府県または市区町村の建築主事か民間の指定確認検査機関です。
申請者も中間検査と同様に申請者は建築主ですが、工事監理者である工務店やハウスメーカーなどが代理人になって申請するケースがほとんどです。建築基準法で、申請書を受理した日から7日以内に検査を行うことが決められています。
検査についても基本は中間検査と同じです。都道府県または市区町村の建築主事か民間の指定確認検査機関の検査担当者が工事現場に出向いて、工事監理者立ち会いのもと目視や寸法の測定等を行います。建築確認申請時に添付した設計図書どおりに施工されているかを検査します。
対象住宅が設計図書どおりに施工されていることが確認できたら検査済証が交付されますが、不合格の場合は是正工事や計画変更の手続きを行う必要があり、それまでは住宅の使用は認められません。
完了検査の費用は、申請先や住宅の延床面積等によって変わってきますが、中間検査の費用と大きくは変わりません。100㎡以内なら10,000円前後、200㎡以内なら15,000円前後が相場でしょう。ただし中間検査を受けない場合は受けた場合より若干金額が上がります。
検査に合格しなかった場合
以前は、建築確認申請はしていても完了検査を受けていないという住宅は数多くありました。それは検査済証がなくても建物の登記ができたため、検査が必ずしも必要なものではないと判断したケースがあったためです。
しかし2003年に国土交通省から金融機関に向けて、検査済証がない建物に対する融資を行わないように指導を行ったことから、完了検査を受ける率が飛躍的に高まりました。
つまり現在では、検査済証がない新築住宅は一般の金融機関で住宅ローンを組むことは難しいと言えます。検査済証がないとなると検査を受けていないか検査項目をクリアできていないと判断され、建築確認申請の設計図書どおりに施工されていないいわゆる違法建築を疑われる可能性があるからです。
住宅ローンを利用するのであれば、完了検査をきちんと受けて検査済証を取得しておきましょう。
第三者住宅検査について
残念なことに、施工業者によっては施工管理をきちんと行っておらず欠陥工事や施工ミスが発生している現場も少なくありません。多額の資金を使って建てる住宅ですから、工事の途中で欠陥工事や施工ミスがないかチェックしておきたいという人が増えています。ここでは第三者による住宅検査について見ていきましょう。
第三者による住宅検査の調査箇所は?
在来工法による木造住宅の場合は、
- 基礎の配筋(床や立ち上がり)
- 基礎コンクリート(打設時や仕上がり時)
- 構造躯体(柱、梁、筋交い等)
- 壁等の断熱工事
- 外壁や屋根の防水工事
といった項目を重点的に調査することが多いです。地盤改良工事はもともと地盤がいい土地であれば原則として必要ないと判断します。
第三者住宅検査の費用の相場は?
第三者による住宅検査の費用は、検査項目の数によって変わってきます。基礎配筋や構造躯体、断熱工事の検査に竣工時の検査を加えた内容だと28~29万円、これに防水工事や設備配管、電気配線、下地材等のチェックを加えた内容だと50万円前後です。
鉄筋コンクリート造住宅の場合は配筋検査の範囲が広がるため、在来工法の木造住宅に比べて10~20万円高くなると考えておくといいでしょう。
第三者住宅検査は必要?
建築基準法で決められている検査は冒頭で紹介した中間検査や完了検査ですが、内容としては簡易です、また中間検査の対象ではない住宅の場合は、基礎や構造躯体に関してチェックするのは施工業者だけということになりますから、万が一工事過程で施工不良があっても見逃されてしまう可能性は捨てきれません。
第三者による住宅検査は、
- 中立的な立場で検査してもらうため安心感がある
- 後々トラブルが起こる可能性を少なくすることができる
- 実績や経験が豊富な専門家に検査してもらうことで施工ミスを防げる
- 数回の検査時には立ち会って現場の状況を一緒に確認することができる
といったメリットが建築主にはあります。
けして安くはない費用がかかりますが、より大きな安心を買いたいという人にとっては第三者による住宅検査は依頼する意味が大きいと言えるでしょう。
より質のいい住宅を建てるために行うのがこうしたさまざまな検査です。しっかりと施工管理を行う業者がほとんどとはいえ、施工ミスが起きないとは言い切れませんから、検査する目が多ければ多いほど住宅の性能チェックがより綿密にできるのは確かです。
何十年も住む住宅ですから安全性を求めるのは自然なこと。安心して暮らせる住宅を手にするためのひとつの方法として、第三者による住宅検査を検討してみるのもいいのではないでしょうか。