建物は劣化していくため、修繕が不可欠です。「大規模修繕」という言葉はよく聞きますが、具体的にはいつから、どんなことをするのでしょうか?
今回は、マンションの修繕について詳しく解説していきます。
マンションに修繕は不可欠
マンションは、どのような素材で作られているか、考えたことはありますか?
戸建てと比べると、マンションは、そのほとんどを鉄筋コンクリートで作っています。鉄筋コンクリートは、木材にくらべ頑丈で自身や火災に強く劣化のスピードも緩やかです。つまり、マンションは、頑強な素材で作られているのです。
しかし、いくら強いといっても月日がもたらす劣化と無縁ではありません。鉄筋コンクリートも錆るのです。コンクリートは、中性化することで劣化します。簡単に説明すると、新築マンションのコンクリートは強アルカリ性です。
これにより鉄筋がさびる事を防いでいます。しかし、月日とともに空気中の二酸化炭素に影響され表面部分からだんだんと中性化してきます。中性化が進む過程で、コンクリートにひびなどがあるとさらに中性化の速度が早まります。
錆を放置すると、マンションの中に使われている鉄筋が膨張してしまいます。最悪の場合、この膨張が原因の爆裂という現象を引き起こしてしまうのです。
そこで、マンションを錆から守るために行われるのが、細やかな補修であり大規模修繕です。
長期修繕計画と大規模修繕
大規模修繕では、屋根・外壁・鉄部・エレベーター・給水システム・配水管などが修繕されることになっています。「修繕されることになって」いる理由は、マンションに使われている素材おのおの耐用年数が決まっているからです。
マンションでは、素材によりおおよそ25年から30年前後まで修繕工事の周期が予め決められています。「長期修繕計画」とは、修繕工事の周期や予算も含めた予定のことをいいます。修繕積立金もこの計画を基に算出されています。
ただし、綿密に計画されていても、実際の修繕工事は、環境や設備の劣化の速度、材料費の価格変動など予定通りにはいかないものです。そのため変動要素が多い長期修繕計画は、五年毎に見直しを行う必要があるとされています。
実際、多くのマンションでは見直しや調査を行っています。長期修繕計画と大規模修繕の関係は、大規模修繕のために必要な目安=長期修繕計画と考えてよいでしょう。
大規模修繕工事対象になる場所
大規模修繕の際にもっとも重要となる、修繕個所と参考修繕周期を一覧にまとめます。
項目 | 対象 | 区分 | 修繕周期 | 修繕方法 |
---|---|---|---|---|
屋上 |
屋上 |
補修 | 12年 | 保護コンクリート部分の補修等 |
修繕 | 24年 | |||
鉄部塗装 | 廊下、階段手すり、屋上フェンス、自転車置き場、遊具等 |
補修 |
4年 | 下地/塗装 |
タイル張補修 | 外壁など | 補修 | 12年 | 高圧洗浄~補修、張り替え |
コンクリート補修 | 外壁、床など | 補修 | 12年 | ひび割れ、モルタル浮の補修など |
配水管 | 屋内、屋外共用 | 更正 | 15年 | パイプシャフトを撤去、取り替え |
取り替え | 30年 | |||
給水管 | 屋内、屋外共用 | 更正 | 15年 | 塩ビライニング鋼管へ取り替え |
取り替え | 30年 |
大規模修繕のスケジュール
大規模修繕は、次の5段階を経ます。
1:調査診断
劣化部分や不具合を実際に確認し、各住戸によるアンケートで個別の症状把握などをおこない、修繕改修のポイントをあぶりだす。調査結果は、マンション内に広報し説明会等を行い住民の合意を形成します。
2:計画設計
長期修繕計画の見直しや、借入、修繕積立金の値上げの検討など資金計画を見直していきます。修繕や改修の基本構想計画も検討し、作成します。
そして、検討内容調査診断時と同様に住民に対し広報し、説明会や必要がある場合は、総会決議を行います。
3:設計工事請負者の選定
実施設計→見積もり合わせ面談と平行して、会社の公募や見積もり委託会社の選定を行います。工事請負者が内定したら、総会決議を行い、工事金額、工事請負会社、工事管理者などを決定します。
この段階で、長期修繕計画を基にした大規模修繕工事の仕様が具体的に決定されます。
4:工事管理
工事請負契約を締結し工事管理業務委託契約も同時に契約します。設計仕様通りに工事が成されるか管理をし、場合によっては工事中の不具合についての対応も検討します。
これらの書類準備が全て整った後、着工します。住民にたいする工事説明会も実施し、工事の内容を具体的に理解してもらいます。
住民理解は、住み続けながら工事が進む関係上、安全配慮のために欠かせません。工事を実施し、試験施行、定例会議、各種検査を終えると、竣工です。
5:アフターケア
工事を総括し、長期修繕計画の見直しをします。ここで、実施された工事内容を総括し、長期修繕計画との整合性を見直すのです。大規模修繕がおわっても、マンションの維持管理のために必要なアフター点検や補修事故に対する支援や助言も行います。
これらのスケジュールを表に表すと、次のようになります。年をまたいで、まさに大規模に準備が進められていく様子が分かると思います。
月 | 打ち合わせ | 施工業者選定期間 | 施工業者募集期間 | 工事準備期間 | 工事期間 |
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1年目6月 | 修繕委員会発足 | ||||
1年目9月 | コンサルティング業務発注決定 | ||||
2年目2月 | 通常総会/建物調査中間報告 | ||||
2年目3月 | 建物調査診断報告書提出 | ||||
修繕基本計画の検討 | |||||
グレードアップ項目検討 | |||||
2年目4月 | 修繕基本計画の検討 | ||||
グレードアップ提案書の提出 | |||||
2年目5月 | 修繕基本計画の検討 | ||||
修繕計画説明会資料の検討 | |||||
グレードアップ項目提案書の提示 | |||||
2年目6月 | 修繕基本計画の検討 | ||||
修繕計画説明会資料の検討 | |||||
グレードアップ項目提案書の決定 | |||||
2年目7月 | 施工業者選定方針の決定 | ○ |
|
|
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修繕基本計画決定 | |||||
修繕計画説明会資料決定 | |||||
グレードアップ項目提案決定 | |||||
2年目8月 | 修繕計画説明会 | ○ |
○ |
|
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見積依頼資料 決定 | |||||
見積発注業者 検討・決定 | |||||
2年目10月 | ヒアリング業者検討・決定 | ○ |
○ |
|
|
2年目11月 | 業者ヒアリング | ○ |
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施工業者 内定 | |||||
3年目1月 | 施工業者・工事概算金額決定 |
|
|
○ |
○ |
3年目2月 | 通常総会 |
|
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○ |
○ |
3年目3月 | 工事説明会 |
|
|
○ |
○ 同年12月まで |
工事着工 |
このように大規模修繕は、期間も長く、行程も大きな過程を経るものです。住み続けるにあたり絶対に必要なこの一大事業は、マンション住民全員が積極的に考え動く事により成功につながります。