1995年に発生した、阪神・淡路大震災の甚大な被害によって、欠陥住宅がクローズアップされるようになりました。倒壊した木造住宅のほとんどが、住宅の構造上の欠陥が指摘されたからです。
住宅は、人が生きていくための3要素である衣・食・住のうちの、最も基本となる生活の場となるもの。欠陥住宅は、生命や健康に危険が及ぶ可能性とともに精神的な苦痛も計り知れないものになります。
欠陥住宅被害に遭わないためにも、まず欠陥住宅についての知識を持つことが大切です。ここでは欠陥住宅とはどのようなものか、また万が一欠陥住宅とわかった場合の対応方法や、住宅診断についてご紹介します。
欠陥住宅とは
欠陥住宅とは、建築基準法などの基準を満たしていない住宅や設計図通りに施工されていない住宅、安全性や快適性などに不具合をきたす住宅のことをいいます。欠陥住宅には様々な原因があり、コストダウンのため目に見えない部分を手抜きしたり、品質を落としたりする意図的なものと、意図はしていなくても、設計者や施工者の技術不足やミスによるものがあります。
また、注文住宅などなどで多く発生するのは、建て主と建築業者間の意思の疎通が図れていなかったため、建て主のイメージと違った建物や箇所になってしまった場合なども欠陥住宅と呼ばれることもあります。
欠陥住宅の定義
欠陥住宅の定義とは、
- 契約違反であること
- 建築関係の法令に抵触していること
- 一般に使用している技術基準に抵触していること
となっていますが明確な事例や範囲などは記載されていないため、欠陥住宅の定義付けは難しく、不具合の全てが欠陥住宅とは認められないものも多くあります。明らかに欠陥とされるものは建築基準法などの法令違反のものや、注文住宅の場合には請負契約に適合していない物件が欠陥住宅ということになります。
欠陥住宅の調べ方(見つけ方)
注文住宅の場合は、建て主側の意向が請負業者にきちんと伝わっているかが、欠陥住宅を回避するための大きなポイントとなるため、意思疎通の確認や工事図面のチェックが不可欠となります。住宅完成後の欠陥の有無は、以下のようなポイントをチェックしてみましょう。
床鳴りがないか
隅々まで歩いてみて、床鳴りや軋みがないか調べてみましょう。
ドアや窓の開閉不良がないか
全てのドアや窓の開閉がスムーズに行えるかチェックしましょう。
押入れやクローゼットの中に施工不良がないか
押し入れやクローゼットなどの見えない部分の施工もきれいに仕上げられているかチェックします。
床や壁に傾きがないか
床の不陸がないかのチェックはピンポン玉などを置くとよくわかります。転がる場合は不陸があるということです。
閉め切った状態での臭い
全ての開口部を閉め切った状態で、刺激臭がどの程度か調べてみましょう。
天井に剥がれや浮きがないか
天井材が一部剥がれたり浮いたりしている場合は漏水の可能性。全ての天井をチェックしてみましょう。
欠陥住宅だと判断したら
欠陥住宅だと判断した場合は、まず瑕疵担保責任期間の確認を行い、瑕疵の内容と箇所を書面で作成して、請負業者に修繕や補償の請求を行うことになります。
瑕疵担保責任期間の確認
新築住宅には、2000年施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって、引き渡しから10年間の瑕疵担保責任が売主や請負業者(注文住宅の場合)に義務づけられています。
但し、補償の対象となるのは、「構造耐力上主要な部分および雨漏りの侵入を防止する部分」に限られています。欠陥住宅だと気付いた時点で補償期間が過ぎていたというケースもあるので、注意が必要です。
欠陥の共通認識がポイント
請負業者による問題やミスが原因となる欠陥の場合は、請負業者に対して修繕、または修繕のための費用などを損害賠償請求することになりますが、業者によっては瑕疵(欠陥)を認めない場合があり、最悪の場合は裁判所に訴訟提起する事態に至ることもあります。
しかし欠陥住宅の裁判は、請負業者が施工の際に瑕疵があったことを証明しなければならないため、非常に専門的な作業であり、長期化する傾向があります。トラブルをいち早く解決するためにも、第三者の専門家の意見を聞くことが大切です。素人目には欠陥と見えるものでも、欠陥とまでは言えないものもあります。欠陥かもしれないと思った時は自分だけで判断せず、第三者の専門家に相談してみましょう。
住宅診断(ホームインスペクション)について
住宅診断(ホームインスペクション)とは、住宅診断士(JSHIが実施している公認ホームインスペクター資格試験に合格し認定会員として登録)が、第三者的な立場から、住宅の劣化状態や瑕疵の有無、改修が必要な箇所や大まかな費用などを調査し、アドバイスを行ってくれる業務です。
欠陥住宅がクローズアップされるに伴い住宅診断の必要性が高まり、近年は住宅診断業者が急増しています。住宅診断で最も重要なことは、第三者性です。不動産業やリフォーム業と兼業していない業者を選ぶようにしましょう。
※JSHI=日本ホームインスペクターズ協会
住宅診断内容と調査方法
住宅診断の調査方法は、調査の時点では解体などはしないで、目視が可能な範囲の調査となります。以下は、主な診断内容です。
- 建物の基礎外部のひび割れや劣化、モルタルの浮きなど
- 外壁のひび割れや仕上げ材の浮きや劣化など
- 軒裏の割れや劣化、漏水痕
- 屋根仕上げ材の劣化など
- 室内の床や壁の傾き、ひび割れや劣化
- 建具の開閉状況や傾き
- 水回りの動作状況や異常音、漏水の有無
以上の調査の他、もっと詳しく調査を望む場合は、オプションとして以下のような床下や屋根裏の調査があります。
- 基礎の内側のひび割れや劣化
- 構造部のひび割れや劣化、金物の固定が適切か
- 配管の状況が適切か
- 床下断熱材の状況が適切か
- 屋根裏構造部のひび割れや劣化、金物の固定が適切か
- 雨漏りの痕跡がないか
- 屋根断熱材の状況が適切かなど
住宅診断にかかる費用相場
住宅診断にかかる費用は、業者によって異なりますが、概ね一般的な目視での調査は100㎡程度(30坪程度)の住宅の場合、5万~7万円程度。屋根裏や床下のオプションを追加したり、機材を使用して調査したりする場合は10万~15万円程度になります。また、調査にかかる所要時間は2~3時間程度です。
住宅診断(ホームインスペクション)は、既存の住宅に限らず、注文住宅の建築中にも行うことができます。基礎や躯体がしっかり見えるため、建築後の診断よりも有効です。
まとめ
住宅の建築は、工場で生産される製品と違い、様々な人の手によってつくられるため、ミスのない完璧な住宅づくりは難しいのが実状です。さらにコストダウンのためにわざと手抜きや品質を落とす業者も存在します。欠陥住宅被害を未然に防ぐためには、信頼できる業者に依頼することが重要ですが、大手ハウスメーカーだから安心だとは限りません。
大手ハウスメーカーに依頼しても、実際に工事に携わるのは下請けや孫請けの業者だからです。住宅建築を依頼する際は、依頼先の評判や実績などを調べてみましょう。また、建築についての知識のないまま全てお任せでは、欠陥住宅に遭遇する可能性が高くなります。ある程度はご自分でも知識を持ち、工事図面や工事内容のチェックを怠らないことが大切です。