新築住宅を建てる際の建築構法には様々なものがあり、それぞれの構法ごとに使う材料や工期、工事費なども異なります。また、希望の構法が敷地の条件に合わない場合や、依頼する施工業者によっては、実績がなく対応できない場合などもあります。
構造・構法を選ぶ際は、それぞれの特徴や違いを知り、最適なものを選ぶようにしましょう。
- 戸建て注文住宅でおすすめの構法は?種類や特徴を比較
建築構法の種類と特徴
建築構法の種類と特徴を以下にご紹介します。
木造
戸建て住宅で圧倒的に多いのは、やはり木造住宅です。日本では昔から木造建築が発展してきましたが、その理由は森林面積が多く良質な木材の供給があり、日本の気候風土に適していることや居住性が高いことなどがあげられます。以下は木造住宅の代表的な構法です。
軸組(在来)工法
日本の伝統的家屋の構造は軸組工法によるもので、日本の代表的な構法です。近年では接合部の考え方などは変化していますが、軸組であることに変わりはありません。
軸組構法は、基礎・軸組・床組・小屋組で構成されています。構造上の制約が少なく、柱の位置や長さなどが比較的自由に設定できるため、開口部を大きくとったり広く開放的な空間を設けたりすることが可能です。
枠組壁(ツーバイフォー)工法
もともとは北米で建てられていた木造の伝統工法ですが、現在は世界中で採用されています。使用する木材の断面が、2インチ×4インチであるため、ツーバイフォー工法とも呼ばれていますが、日本での法令上の正式名は枠組壁工法です。ツーバイフォーの木材を組み上げて枠をつくり、その枠に構造用合板を打ち付け枠組壁を組み立てていきます。
丸太工法(ログハウス)
ログハウスという名称でお馴染みの丸太工法は、丸太を水平に積み上げて壁をつくる工法です。丸太は間伐材などの細い丸太を使用したものから、大断面のものまでありますが、細い丸太の場合は水平力に弱いため、鋼材でボルト締めを行います。
鉄骨構造
鉄骨造は、使用する鋼材によって軽量鉄骨と重量鉄骨に分かれます。戸建て住宅で多く採用されているのは、板厚が3~4mm程度の軽量鉄骨を使用した軸組構法・プレハブ構法が代表的です。
鉄骨軸組工法
木造軸組構法の構造材を鉄骨に置き換えた工法です。外観や内装などは木造とほとんど同じですが、強度のある鉄骨が構造体になっているため、柱の間隔が広く、大きな空間をつくることができます。鉄筋は強度が大きく、靭性に富み、加工が容易であることや、品質や精度が安定していることなどがメリットですが、一番の問題点が錆です。普通鋼の場合、条件によって年間0.02mm~0.2mm(海岸など)錆びるため、十分な防錆処理が必要です。
鉄骨系プレハブ構造
プレハブ住宅とは、Prefabricated houseの略。住宅の構造体の多くを工場で生産し、それを現場で組み立てる住宅のことです。プレハブ住宅にもハウスメーカーによって様々な工法がありますが、部材の種類によって木質系・鉄骨系・コンクリート系・ユニット系に分かれます。鉄骨系プレハブ工法は、軽量鉄骨の切断や穴あけ加工、防錆塗装などを工場で行った後、現場で組み立てる工法です。工期が短いことが特長のひとつです。
重量鉄骨構造
重量鉄骨造りは、高層ビルや工場・倉庫・体育館・劇場などの大スパンに適しています。戸建て住宅では、3階立て以上の住宅などで使用されることもあります。軽量鉄骨よりも厚みがあるため、強靭で耐久性・耐震性に優れていますが、建物自体の重量が大きく、強固な基礎が求められるため、コストが高くなります。
鉄筋コンクリート構造
鉄筋コンクリート構造はRC構造といいますが、これはReinforced Concreteの略で、「補強されたコンクリート」という意味です。圧縮強度は大きいが引っ張り強度の小さいコンクリートを、引っ張り強度の大きい鉄筋で補強した複合素材です。
鉄筋コンクリートのメリットは耐火性・耐久性・遮音性に優れ、型枠によってデザインの自由度が高く、多層化できる(重量があるため、超高層には不向き)ことなどですが、工期が長く、建築コストが高いことなどがデメリットです。
主な鉄筋コンクリート構造を以下にご紹介します。
壁式構造
壁式構造は、耐力壁と床スラブだけで構造体を形成します。柱も梁もないため、柱形や梁形が室内に現れることがなく、空間を有効に利用できます。ラーメン構造と比較して施工が簡単なことがメリットです。一般住宅や低層集合住宅で多く採用されている構造です(軒高16m以下、5階以下、階高3m以下と規定されている)。
ラーメン構造
ラーメン構造は、柱と梁、構造的な役割を持たない間仕切り壁で構成されています。柱と梁で構成されているところは軸組工法と同じですが、根本的に異なる部分が接合部です。鉄筋コンクリートの柱と梁はコンクリートによって一体に打設するため、接合部がなく剛接合となります。また、柱と梁の断面が木造や鉄骨造りよりも大きくなります。中高層ビルやマンションなどに多く採用される構造です。
鉄骨鉄筋コンクリート構造
鉄骨鉄筋コンクリート構造は、鉄骨構造と鉄筋コンクリート構造のそれぞれの短所を補った構造で、SRC構造とも呼ばれます。高層・超高層ビルやマンションの建築で採用される構造です。
※鉄骨は広い空間や高層建築が可能だが、耐火被覆する必要や上階の重量が増すと下階の柱が座屈しやすくなるという短所がある。また鉄筋コンクリートは、耐火性や圧縮性に強いが、建物を高層にする場合、柱などが極めて太くなり、実用性に欠けるという短所がある。
構法を比較
それぞれの構法を様々な視点から比較してみました。
価格で比較
建築価格で比較してみると、木造軸組構法は30万円~40万円/坪、枠組壁構法で40万円~60万円/坪、軽量鉄骨構造で60万円~70万円/坪、鉄筋コンクリート構造で70万円~90万円/坪が目安となります。
耐用年数で比較
法定耐用年数で比較すると、木造住宅が30年、軽量鉄骨造り(鉄骨材の肉厚3mm超4mmまで)が40年、鉄骨材の肉厚が4mm超の場合は51年、鉄筋コンクリート造りでは70年となっています。これはあくまでも法定耐用年数なので、実際の建物の寿命とは異なります。
耐震性や耐風性で比較
建物の耐震性能は、全ての構造・構法で耐震等級3の耐震性を確保することが可能です。耐震等級とは、1~3に分類され、耐震等級1は、建築基準法で定める耐震性と同程度の建物、耐震等級2は、等級1の1.25倍程度の地震に耐えられる建物、耐震等級3は、等級1の1.5倍の地震に耐えられる建物です。
地震力や風圧の水平力などに対して、構造上の強固さだけで比較した場合、鉄筋コンクリート構造が最も高くなり次に鉄骨構造、ツーバイフォー(木造)、木造軸組構造の順になります。
増改築のしやすさや間取りの自由度で比較
増改築のしやすさや間取りの自由度で比較すれば、木造軸組構法がおすすめです。木造枠組壁構法(ツーバイフォー)は、窓の位置や間取りに制約があり、増改築がしにくい構法です。また、鉄骨構造や鉄筋コンクリート構造の場合は構造体に手を加えたり、壁を抜いたりする増改築は難しくなりますが、内部のリフォームは問題ありません。間取りの変更は自由にできます。
建物を建てるには、さまざまな構造・構法がありますが、それぞれに特徴がありメリットやデメリットもあります。
構造・構法を選ぶ際のポイントは、敷地の形状や条件に対応できるか・希望の間取りや空間が実現できるか・工期が家づくりのスケジュールに合うか・建築費が予算内であるか・また、ライフスタイルが変化した場合に増改築の対応がしやすいかなどを考慮して、慎重に選ぶようにしましょう。