注文住宅の契約書の注意点とクーリングオフについて

注文住宅の契約書の注意点とクーリングオフなどの契約解除

注文住宅を建てる際は、見積もりや実施設計の後、工事を依頼する施工業者と建主の間で工事請負契約を締結させることになります。しかし、施工業者に急かされるままに契約を締結してしまった後でトラブルになった事例も少なくありません。今回は無用なトラブルを避けるためにも、契約時においての契約書類確認の注意点とクーリングオフや契約解除についてご説明します。

請負契約時に失敗しないためのポイント

請負契約とは、請負人が仕事の完成を約束し、注文者は仕事の完成に対しての報酬を支払う約束をする契約のことで、建築工事においては建築工事請負契約や工事請負契約と呼ばれるものです。注文住宅においての重要な決断ポイントのひとつといえるため、失敗のないように注意しなければなりません。

契約時に施工業者から用意される書類は、工事請負契約書・本見積書・設計図書・工程表・契約約款など。以下は、それぞれの書類を確認する際の注意するポイントです。

工事請負契約書の注意点

工事請負契約書は、契約の基本的な内容が明記されたものです。工事場所・工期・引き渡しの時期・請負金額・支払い方法などが記載されています。しっかりチェックして問題がないか確認しましょう。

一般的な支払方法は、契約時に1/3、途中で1/3、引き渡し時に1/3というケースが多いようです。しかしこの場合は、工事をしていない段階で支払うことになりますから、可能なら最初の支払いは10%程度にしてもらえるよう交渉してみてもいいでしょう(本来は出来高払いが理想的)。

本見積書・設計図書の注意点

本見積書には、工事の内容や部材の単価がわかる内訳明細書の内容などが記載されており、設計図書は、平面図や断面図・展開図などの図面類一式と仕様書などが記載されています。これらの書類が全部揃うと膨大な量になり、一度にチェックするには大変な作業になります。可能なら、契約前にこれら書類のチェックを済ましておくことが望ましいですが、契約前に全ての書類を揃えてもらえないこともあります。何故なら、設計図を作成するには多くの労力やコストがかかるため、施工業者にとっては契約してもらえるかわからない時点でこれらの書類を作成するにはリスクに繋がるためです。

契約時にはまず、これらの書類がきちんと揃っているか確認し、じっくりチェックするための時間をもらうようにしましょう。

契約約款の注意点

契約約款とは、工事を進めるうえで、万が一のトラブルがあった場合の対処法などが記載されたものです。通常は施工業者が作成し、建主が同意するという形式です。契約約款で必ずチェックしておきたい重要なポイントは以下の通りです。

設計図通りに施工すること

工事は設計図書通りに施工すること、一括して下請けに出さないこと、工事が設計図書と違っている場合には是正することなどが明記されているか確認しておきましょう。

工事期間中の責任の所在

工事期間中に事故や災害などで損害が発生した場合の責任は、施工業者にあります。損害費用も施工業者が加入している保険などで負担することが原則になっています。これらが明記されているかは大切なこと。しっかり確認してください。

災害などに対応した保険加入の有無

また、様々な災害をカバーするために施工業者がどのような保険に加入しているかの確認も大切です。保険加入は義務付けられていないため、施工業者が加入していない場合、損害負担額が大きくなれば業者の倒産という可能性もあります。

保証期間

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって、新築住宅は工事完了日から10年間の保証が義務付けられています。ハウスメーカーなどはさらに長い保証期間を謳っていることもありますが、これは10年毎に有償のメンテナンスを受けることが条件になっていることもあるため、保証期間や条件などはしっかり確認しておきましょう。

その他、建主に不利になるような内容が記載されていないかをチェックし、もし不利な項目があれば、変更をしてもらうように交渉しましょう。また、契約約款には難解な事柄が多いため施工業者に読んでもらい、わからないことは質問することも大切です。

クーリングオフ制度と契約解除について

注文住宅の工事請負契約をした後、様々な事情から契約を解除するといった可能性も出てきます。契約を解除する方法はクーリングオフ制度を適用するか、一般的な契約解除の2種類があります。

新築建築でもクーリングオフ制度が利用できる

クーリングオフとは、訪問販売や勧誘によって契約に至った場合、一定の期間内であれば契約を無条件に解除できる制度のこと。以前は新築請負契約では適用外でしたが、平成21年から適用されるようになりました。
新築請負契約でクーリングオフを適用するための注意点や条件、利用方法などをご説明します。

クーリングオフ制度の注意点

クーリングオフ制度は、訪問販売などで消費者が正常な判断をしにくい状況において強引に契約させられてしまったなどの場合に、消費者を救済するための制度です。契約の全てにこの制度が適用されるわけではありません。

クーリングオフ制度を適用するには、「特定商取引法」によって適用期間と適用できる取引などが定められています。

クーリングオフ制度の条件

クーリングオフ制度を適用するには以下のような条件が必要です。

  • 施工業者の営業所以外で契約をした(訪問販売や電話勧誘販売などにより)
  • 契約書面の受領日から起算して8日間
  • 自らが施工業者を呼び出して契約をしていないこと

クーリングオフ制度の利用方法

クーリングオフを利用する場合は、契約から8日以内に書面にて施工業者に契約解除を通知します(内容証明郵便や簡易書留など)。解約通知は、通知を発信した日の証拠となるため、書面で行うことが重要になります。

請負契約後の契約解除について

請負契約において、クーリングオフ適用条件が満たされない場合は、一般的な契約解除を申し出ることになります。契約の解除については請負契約約款の中に記載されていますが、工事完成前であれば、注文者(建主)は一方的な理由で契約解除できることになっています。

契約を解除する方法

請負契約約款の契約解除の条項に従って、契約解除の手続きを行います。解約の申し出は記録に残るよう書面で行います。

契約解除の注意点

契約解除する場合、注文者(建主)は施工業者がそれまでに負担した経費、出来高部分や発注済みの材料費を賠償することになります。しかし注意したいのは、業者によってはそれ以上の金額を請求してくるケースがあることです。また工事が途中であれば、現場は中途半端なままになってしまうため、工事のやり直しをするためには解体費用などが余分にかかってしまうことになります。

解約に対しての取り決めや賠償額などについては契約約款に記載があるため、まずは約款を確認してみましょう。

法外な違約金を請求されたら?

賠償金や違約金などが適正な金額かということは、素人にはわかりにくい部分でもあります。納得のいかない金額が請求されたら、専門家の知恵を借りることが解決への近道です。主な相談窓口は、国民生活センターや住宅・リフォーム紛争処理支援センター、日本建築家協会建築相談室など。また、建築トラブルに強い弁護士や司法書士に相談することもおすすめします。

まとめ

契約とは、ビジネスにおける法的な約束事です。これは守るために締結するものであって、余程のことがない限り破棄することはできません(クーリングオフは別)。たとえ契約解除の条項があり解約できるとしても、解約する方に相当な負担がかかるようになっています。

大切なのは、契約をする前に契約締結の重みを考え、慎重に契約することです。契約書類の確認は勿論ですが、信頼のおける施工業者を選ぶことが最も重要になってきます。施工業者選びには時間をかけ、くれぐれも慌てて契約してしまうことのないように注意しましょう。


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