カジノ法案とは、日本国内におけるカジノの合法化を推進する法案のことです。2013年に法案が提出され、2016年に方針が決定。2018年7月にカジノを含む合型リゾート(IR)実施法案が成立しました。刑法で賭博として禁じられていたカジノが、実質解禁になることを意味しています。
カジノができることで、経済活動が活発になり、周辺商業施設の不動産価値の上昇が予想されます。いっぽうで、治安の悪化から、居住用物件はニーズ減少し、不動産価値が下がると考えられます。
住まい環境への影響
カジノができることのメリットは、外国人観光客訪問、インフラ整備などによる経済的効果、雇用の創出、地域活性化、国の税収の増加です。デメリットは、ギャンブル依存症の増加、カジノ利用目的で借金する人が増える、治安の悪化、反社会的組織によるマネーロータリングです。
ギャンブル場建設で治安悪化の恐れはあるのか
法案の可決により、日本の3カ所にギャンブル施設ができることになります。海外の事例を見ると、ギャンブル場があると周辺の治安が悪くなるケースがあると予想されます。日本の場合はどうなのでしょうか。日本のギャンブルの代表であるパチンコ屋を例にとり、推測します。
表より、東京23区でパチンコ屋が多いのは、多い方から板橋区、大田区、江戸川区、豊島区、足立区です。犯罪件数が多いのは、多い方から、新宿区、世田谷区、江戸川区、大田区、渋谷区です。渋谷区を除くと、大半が、犯罪件数上位の区とパチンコ屋のある数が上位の区とほぼ一致しています。
犯罪件数とパチンコ屋の数
『経済センサス(2014年)』総務省統計局
『区市町村の町丁別、罪種別および手口別認知件数(警視庁)』より集計
このことから、カジノ施設は治安を悪化させると言えます。夜まで、ギャンブラーが歩き回る環境は、子どもを持つ親にとって、好ましいものとは言えません。周辺住宅は、防犯面で不安が募るでしょう。
海外のカジノの例から日本のカジノはどうなるかを予想
海外のカジノを見ると、レジャー性が強いカジノ、観光客相手のカジノは、治安が維持されています。ギャンブル職が強いカジノは、治安が良くないようです。どこの国にもギャンブル依存症になる人がおり、各国で対策を練っています。日本も海外の事例を参考に、国が主導権を持って、治安維持とギャンブル依存症に対する対策を講じておく必要があります。
アメリカのカジノは場所により特性が違う
日本人がカジノと聞き、イメージするのは、アメリカのラスベガスラスではないでしょうか。カジノは、1931 年に初めて合法化。1990年代に、カジノ中心からテーマパーク型のホテルや大型のショーを誘致し、テーマパーク化を行いました。ラスベガスのカジノは、イベントの1つと考えられています。
ラスベガスのカジノの治安は非常に良いです。海外からの観光客を誘致するため、国がインフラ整備と治安維持に力を入れています。カジノ以外のアミューズメント施設も多くあるため、ファミリー層も安心して過ごせるような配慮がしてあります。
ラスベガス以外の米国カジノは、趣が異なります。おもに車で1~2時間圏内に住む住民が顧客です。こちらのカジノは、ギャンブル依存症の問題が深刻になっています。問題改善のため、ギャンブル問題の低減を目指す団体が設立され、ギャンブル依存症対策に州の予算が使われています。
中国人富裕層に特化したマカオのカジノ
マカオのカジノは、VIP向けに特化しています。他国のカジノが複合総合施設の一部であるのに対し、マカオのカジノは独立しています。
入場には、顔認証システムが導入され、過去に問題を起こした人は入場を禁止されています。また、国が本人や家族が申請するとカジノに入場できない仕組みを作ったので、ギャンブル依存症の人数は低下しています。
マカオはカジノの収益が国の基盤難で、観光客を集めることが国の経済発展に直結します。そのため、警察官を常に巡回されるなどして、治安維持に努めています。
総合型リゾートを目指すシンガポール
シンガポールのカジノは、2か所あります。ファミリー層でも楽しめるよう、国がカジノの面積を制限。アトラクションは、会議ホールなどの施設とのバランスを考慮しています。観光客が来やすいよう、治安維持に努めています。
シンガポールのギャンブル依存症者の割合は下がっています。その理由は、入場料がかかること、民間のリハビリ施設が整っていること、生活保護者や破産者等のギャンブル会場への入場規制を行っていることなどがあげられます。国、民間ともに、ギャンブル依存症者への対策を講じています。
不動産価値が上がるのか?
カジノが不動産価格に与える影響を考えてみましょう。都心にできた場合と郊外にできた場合では、違いがあります。
都心にカジノができた場合
都心にカジノができた場合、周辺住民は、プラスイメージを感じるでしょう。外国人の滞在は、以前から多くあります。ホテルなども以前から整備されています。住民の意識や生活スタイルもあまり変わらず、利便性がよくなるため、不動産価格は上昇するでしょう。
郊外にカジノができた場合
今まで外国人の往来があまりないエリアの場合、住民は違和感を覚えます。また、カジノ建設に伴い民泊の増加が予想されます。このことに対しマイナスイメージを抱く人も多いでしょう。そのため、不動産価格は、思ったよりも上がらないと予想されます。
カジノができた場合の住居形態のケース別対策
もし、あなたの住んでいる住居のそばに、カジノができることになったら、早めに対策を講じましょう。オリンピックが終わっても、カジノができるから、住宅価格は高騰するという保証はありません。むしろ、下落の方向に動くと予想されます。
不動産を保有しているケース
海外の事例をみると、カジノの周辺は、インフラ整備が進むため、不動産価格が上昇すると考えられます。商業テナントは、売り上げが見込まれるため、賃料が急激に跳ね上がるでしょう。しかし分譲マンションは、風紀が乱れる可能性があるので、不動産価格が急激に跳ね上がることはないでしょう。
カジノができてから、ある程度の時間が経つと、注目度は下がり、パチンコ屋やレース場などと同様嫌悪施設としての色が濃くなります。そのため、不動産価格は下降傾向に変化するでしょう。周辺に不動産を保有している人は、早めに売却すべきです。
賃貸に住んでいるケース
賃貸住宅に住んでいる人は、治安悪化の恐れがあるので、引っ越しを検討した方がよいでしょう。不動産関係の費用、引っ越し業者関係の費用、新たな家具や家財関係の費用などの臨時出費が予想されます。いくらかかるかをざっと計算しておきましょう。
不動産関係の費用は、おおよそ家賃の6か月くらいみておきます。引っ越し費用は、家族形態により金額が異なります。単身者は5万前後、家族世帯は15万前後みておくとよいでしょう。
カジノ法案の成立で想定されること
カジノができることのメリットは、外国人観光客訪問、インフラ整備などによる経済的効果、雇用の創出、地域活性化、国の税収の増加です。デメリットは、ギャンブル依存症の増加、カジノ利用目的で借金する人が増える、治安の悪化、反社会的組織によるマネーロータリングです。
観光や地域経済の活性化
カジノに来る人たちは、飲食店や物販店を利用するので、経済は活況となります。政府は、日本人だけでなく、海外の人にも利用してもらおうと考えています。観光客誘致のため、道路の整備なども行います。
郊外にできた場合は、公共交通機関が充実します。カジノへ行くための電車やバスの本数が増える、高速バスの新たな路線が増えるなど、住民にとっても利便性が増し、経済的にも潤います。
ギャンブル依存症が増える
ギャンブル依存症者は、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を起こすと考えられています。依存症の人が増えることで、犯罪が起こることを、周辺住民は恐れています。
2018年2月15日に、カジノの利用に関し、日本人は週3回、4週間で10回までに入場利用を制限することで、政府は調整に入りました。入場にはマイナンバーカードを使う予定です。厳格な規制により、依存症患者の増加を予防したい考えですが、効果は分かっていません。
まとめ
カジノの解禁は、立憲民主党など野党の一部により、ギャンブル依存症患者が増える、治安が悪化するという理由で、依然、カジノ解禁に懸念がささやかれています。これらの懸念が改善される体制が、国や自治体を主体に行われれば、住まいに与えるマイナスの影響は少なくなり、周辺の不動産価値も下落しないでしょう。