賃貸物件に設備として最初からあるトイレや風呂、キッチンに不具合が見つかったり、故障して使えなくなってしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。修理をして使うにしても、新しい製品に交換するにしても、その費用は大家である貸し主か、使用する入居者か、どちらが払うことになるのでしょうか。
トイレ、風呂、キッチンなどの設備が故障した場合の対応方法
まずは賃貸物件の管理会社と賃貸借契約を交わしたときの書面一式を確認してみましょう。確認もせずに、自分でタウンページやインターネットで修理業者を探して勝手に修理を頼んでしまってはいけません。
どういう取り決めになっていたかをまず書面で確認
賃貸借契約書や重要事項説明書など、契約時に渡された書類に目を通し、設備の故障に際しての条項があるか確かめてください。指示があれば、その通りに従いましょう。
通常は管理会社に故障したことを告げ、いつ、どうしたら故障したのか、現在どんな状態かなどの症状を説明します。
あとは管理会社が大家に確認を取り、提携先の修理業者へ手配をしてくれます。その後、修理業者から訪問日の確認の連絡がくるのが一般的な流れです。場合によっては、管理会社の担当者が故障箇所の確認に訪れることもあるかもしれません。
設備の修理代や交換費用は貸し主が負担してくれる
修理業者が故障箇所を調べ、その場ですぐに対応ができ費用も安価ですめば、即日修理をしてもらえることが多いです。
修理業者と大家の間でいくらまでなら修理をする、それ以上なら要見積もり、程度によっては買い替えも検討、など数パターンを想定してあらかじめ相談されていることが多いからです。
設備の故障の程度が悪く、すぐには直すことができず借り主がしばらくの間不自由な生活を強いられるような場合は、修理業者がその場で大家に連絡を入れ相談をすることもあります。
設備が老朽化していてそれまでにも不具合があり、次に故障があれば買い替えようなど大家としても心づもりしていることもあります。
そんなときは、修理はやめて新しい設備の設置を急いでくれるでしょう。もちろん、修理代金も新しい設備の購入費用も、貸し主である大家が全額負担してくれます。
自分の不注意で壊してしまった場合は
ですが、修理費用を大家が払ってくれるのは、あくまでも通常の使い方をしていて壊れた場合のみです。
例えば、以下のような状況だと大家さんが費用を払ってくれるでしょう。
- トイレの水道管から水漏れして床を濡らしている
- 洗面台のコンセントが通電しないためドライヤーが使えず蛍光灯も点かない
- ビルトインコンロの炎が赤く大きく出るようになり火力調節ができない
このように、自分の不注意で壊れたわけではなく、普段通りの使い方をしていたのに異常が生じたときは、大家が修理費用を負担してくれます。
逆に、修理費用が自己負担になる場合は以下のような場合です。
- 子どもがボール遊びをしていてエアコンのカバーを割ってしまった
- 洗面ボウルの陶器に重いものを落としたためヒビが入った
- キッチンのディスポーザーにスプーンを落としてしまい動かなくなった
これらのような自分の不注意で破損したものの修理費用は自己負担になります。
ただし、買い替えの場合は、設備の経年劣化を考慮すると、新しい最新式のエアコンと何十年も使い続けている古いエアコンの場合では、負担する金額も異なることが考えられます。とにかく、管理会社や大家に正直に申告し、今後の対応を相談しましょう。
入居1ヶ月以内で故障した場合の費用負担は大家?借り主?
困ってしまうのが、不具合のある設備を以前の入居者が不満を持ちながらも、だましだまし使っていたような場合です。
入居してから少しの期間使っただけで、壊れてしまったらどうなるでしょう。しかも、故意に壊したのか自然に壊れてしまったのか判断がつかない場合、修理費用は、大家と借り主、どちらが負担するのでしょうか。
入居時の初期設備が壊れた場合は
賃貸物件を選ぶときは、その初期設備も大きく関わってきます。たとえば、他の物件と迷った挙げ句にシャンプードレッサーがあることが決め手になった場合、それが入居早々壊れて使い物にならなくなったのでは納得がいきません。
浴室乾燥機も外のベランダに堂々と洗濯物を干しにくい女性にとってはありがたい設備です。
しかし、洗濯物が乾くまでに異常に時間がかかり過ぎて光熱費がものすごくかかってしまうなど不具合があることも考えられます。特に電気関係の設備は、空き室だった期間が長いと不具合が出てくることもあるようです。
ちゃんと脱水してないんじゃないのとか、干し方が悪いのでは、などと言われてしまい、修理をしてもらえなかったという例もあるようですが、ここはきちんと早いうちに検査してもらいましょう。それがあっての高めの家賃設定であれば、なおさら腑に落ちないのではないでしょうか。
設備の修繕に関しての特約は
国土交通省では、宅地建物取引業いわゆる不動産屋で使用する賃貸契約書の雛形となる「賃貸住宅標準契約書」を提供しています。この雛形を参考に不動産屋では独自の賃貸借契約書に作り変えていることがあります。
内容も、貸し主と借り主がその都度協議して解決するものとする、というような大まかなことしか記載されていない簡素なものから、別表で設備一式の一覧表や原状回復の条件や入居規約など、細かく記載されているものまで、さまざまなタイプがあります。
冒頭でも触れましたが、設備に対しての条文はどう記載されていますか。一般的には、設備の故障の際には、貸し主が必要な修繕を速やかに行うことが明文化されているはずです。借り主が故意や誤って破損した場合のみ、借り主に修繕費用の支払い義務があることも記載されているでしょう。
前入居者が寄付した残置物は設備ではない
気をつけて見てほしいのが「残置物」に関してです。残置物とは、以前の入居者が退去の引っ越しの際に、置いて行った物品を言います。運ぶつもりの家具がトラックに載せられずに残して行ったり、突然荷物を置いて夜逃げをしたり、事情はさまざまです。
また、前入居者が寄付のつもりで置いて行ったものもあります。たとえば、結婚のための引っ越しなどでは、一人暮らし用の冷蔵庫や洗濯機が不要になった。新品で購入したが、わずかな期間しか使わなかったため新品同様、もしよければ次の入居者に使ってもらってください、と残して行くことがあります。
今は、そのような家電製品を処分するにも家電リサイクル法に即した処分が必要で、リサイクル費用もかかってしまい、そのうえ運搬費用もかかってしまうことから、このような人は少なくないようです。
一番多いのは、取り付けるのも取り外すのも高額な費用がかかってしまうエアコンです。安く購入したエアコンなら、引っ越しの際に、旧居から取り外して運んでもらって、さらに新居で取り付けてもらうために、下手をすると本体価格と変わらないくらいの費用がかかってしまいます。
それなら新たに購入すれば取付工事も安くしてくれることが多く、長い目で見ればその方が得になることがあるからです。
このように、貸し主である大家が賃貸物件を貸し出す際に購入した付帯設備は、大家の所有物であり、通常の故障の際の修理費用は大家に負担義務があります。しかし、過去の入居者が手放した残置物は、「設備」にならないことが一般的です。
気をつけたいのは残置物の修理費用
以前の入居者が置いて行ったエアコンが壊れた場合は一体どうなるでしょうか。
このエアコンの所有である前入居者は所有権を放棄しているため、次の所有者は大家である貸し主のものと考えられます。
しかし、このエアコンが初期設備になっていないときは、通常に使用していて壊れてしまっても、その修繕義務は貸し主が負う必要はないとされています。
インターネットの賃貸物件検索サイトなどの室内写真を見て、新しそうなエアコンが付いていたから、この物件に決めたということもあるかもしれません。
また、不動産仲介会社がその室内写真を見て、物件情報にエアコンを設備として誤って載せてしまうこともあり得ます。万一の際のトラブルを防ぐためにも、そのような設備が残置物なのか、修理義務はどちらが負うのか、最初に確認しておくべきでしょう。
まとめ
もともと備え付けの設備は、それを含めての家賃なので、故障してしまったら早急に直してもらう必要があります。自分の不注意による破損や故障でなければ、所有者の大家に修理費用の負担義務があります。
厄介なのが残置物か設備かが入居者にはわかりづらいことです。契約時に設備のリストなどで明記されていれば分かりますが、そうではないこともあります。単身向けでも家族用の賃貸物件でも、残置物はあるようです。
部屋の照明なども、最初から付いているものかと思ったら、実は前入居者が取り外すのを忘れたために、そのまま寄付したということもあります。自分の趣味に合わない照明や、その他の残置物があれば、撤去して構わないものか、その際の費用は、など疑問点は必ず事前に相談しましょう。
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