不動産会社が早々に契約を取りたい物件というのは、どこの不動産会社にも必ず存在します。それは「自社物件→管理物件→家主管理物件」という順番になります。これらの物件についてはこのあと詳しく解説していきます
不動産会社が優先的に契約したい賃貸物件=収益が高い物件ということです。実際に編集長が不動産会社で働いているときも、その不動産会社が所有している自社賃貸物件を優先的に薦めるように指導されていました。
優先順位は収益に関係している
不動産会社に賃貸相談に行くと、だいたい3軒~5軒くらいの物件を候補として紹介してくれますよね。その中にシレっと1~2軒ほど自社で早々に契約を取りたいと思っている物件が紛れ込ませてあります。
なぜ早々に契約を取りたいのか?それには2つの理由があります。
- 収益率が高い
- 営業担当に謝礼が出る
それぞれについて詳しく解説していきます。
収益率が高い物件とは?
不動産会社が仲介している賃貸物件にも収益性の違いがあることはあまり知られていません。基本的に不動産会社の賃貸利益というのは、物件を契約したときの「仲介手数料」だというのは知っている人も多いでしょう。
確かにその通りです。賃貸物件の場合、一般的には仲介手数料が目先の収益となります。しかし仲介手数料にも2つのパターンがあります。
- 仲介手数料の全額(100%)が収益となる物件
- 仲介手数料の半額(50%)が収益となる物件
当然この2つでしたら1番の100%自社の収益になる物件の方で契約して欲しいと思います。会社の収益が大きいこともそうですが、営業担当にもノルマがあり、仲介手数料の額などでノルマが決められているからです。
つまり2番の仲介手数料50%の賃貸物件を2件契約するのと、1番の仲介手数料100%の物件を1件契約するのは、ノルマ金額にすると同額にしかならないのです。
でわこの2つの違いは何なのか?それは家主から直接入居者募集の依頼を受けている物件とそうでない物件の違いということになります。
1番の100%という物件は、家主から直接その不動産会社が入居者を募集してくれ!と頼まれている物件です。
2番の50%という物件は、他の不動産会社が家主から依頼を受けているが、その情報だけを自社でも紹介させてもらっている物件ということです。
よくインターネットで物件探しをしていると、同じ賃貸物件が複数の不動産会社で募集をしていますけど、そのパターンの多くがこういうカラクリになっています。これらのことを不動産の業界用語で「元付け業者」と「客付け業者」といいます。
元付け業者=家主から直接依頼を受けている不動産会社
客付け業者=他社の賃貸物件情報だけを自社でも紹介させてもらっている不動産業者
これが代表的なパターンですが、他にも不動産会社が優先したい物件はあります。それが「自社物件」と「管理物件」です。
自社物件とは?
自社物件というのは、その字の通り不動産会社が所有している賃貸物件のことをいいます。自社物件を薦めるときは営業マンも隠さずに本当のことを言ってきます。
例えば「当マンションは自社物件ですので、仲介手数料が不要です」という感じですね。
たしかに自社が所有しているので仲介してませんから、仲介手数料は払う必要が無く、それだけ初期費用を抑えることができます。
でわなぜ仲介手数料が取れない自社物件を薦めるのか?それだと収益にならないんじゃないの?と思いますよね。たしかに「仲介手数料」という目先の収益は出ませんが、毎月の家賃収入という大義名分があります。
当然不動産会社の経営者なら、目先の仲介手数料よりも毎月入ってくる家賃収入を優先します。ですのでどの不動産会社でも、まず1番入居者を確保したいと思っているのが「自社物件」なんです。これは不動産会社にもよりますが、自社物件を契約しただけで給料に(1万~家賃1ヶ月分くらい)手当てが付くケースもあります。
ちなみにその賃貸物件が自社物件であるかどうかを見極めるには、賃貸情報の「取引形態」という欄をみればわかります。そこに「貸主(家主)」と表示されていれば自社物件ということです。
管理物件とは?
管理物件というのは、家主から依頼され入居者募集だけでなく建物や入居者の管理を依頼されている物件のことをいいます。相場ですが、家賃の5%くらいが管理費として毎月不動産会社に支払われます。
つまり家賃10万円の1DKが12部屋あるマンションだとしましょう。10万円の5%は5,000円ですので、5,000円×12部屋=6万円が毎月管理費として支払われることになります。最近では管理専門の会社も増えていますが、本来は不動産会社が管理までしていましたので、今でも管理をしている不動産会社は少なくありません。
このように管理を依頼されている賃貸物件を優先的に入居者確保したいと思うのは、不動産業者としては当然のことです。だって入居者をいつまでたっても確保できなければ、家主から別の不動産会社に乗り換えられてしまう恐れがあるからです。
たった1棟でもさきほどの計算であれば6万円×12ヶ月=72万円の減収になってしまいますので、不動産会社としては管理依頼してくれる家主は神様のような存在なんです。
この管理依頼されている賃貸物件というのが、自社物件の次に入居者を決めたいと思っている物件ということになります。
覚えておいてください。不動産会社の営業マンが入居者を確保したい物件の順番は以下の通りです。
「自社物件→管理物件→自社仲介物件→他社紹介物件」
営業担当に謝礼が出る物件もある
実は上記で説明した優先順位とはまったく別の条件で営業マンが優先的に契約させたい賃貸物件というのも存在してます。それが「営業マンに謝礼が支払われる物件」ということです。
謝礼を出すのは基本的に家主なんですが、その大元は入居者が支払う「礼金」というわけです。
全ての物件がそうだとは言いませんが、都心部など競争が激しい地域ではこの「謝礼が出る賃貸物件」というのが、かなり多く存在しています。
謝礼の額は決まっておらず家主次第なのですが、平均すると家賃1ヵ月分なんてのが多いように思います。これも会社によって違いますが、家主からの謝礼金は基本的に営業マンがもらっていいようになっていて、会社に収める必要はありません。場合によっては会社と折半という場合もあるようですが。
家賃10万円の物件だったら契約を取るだけで10万円のお小遣い(謝礼)が手に入るわけですから、そりゃ営業マンも必至になって売り込みしてくれます。
この謝礼金に関しては、あくまでも家主と営業マンの取り決めなので、どんな大手で健全な営業をしている不動産会社でも必ずあることです。要するに引越し業者の従業員に「今日はありがとうね」と言って缶コーヒーを渡すようなものですからね。実際に支払われるのは皆さんが払う「礼金」というのが前提だったりするわけですから、家主にして見れば痛くも痒くもないお金ってことです。
それに空室の状態が長く続くほど家主の損失は大きくなります。次の入居者が決まるまで半年掛かると、家賃10万円の物件では60万円の損失となります。それだったら10万円くらいの謝礼を払って早々に入居者を確保したい!というのが家主の本音だということです。
このように営業マンに謝礼を支払うなんていう習慣は昔はほとんどありませんでした。年配の家主が他界し、相続した若い世代の子供たちが、さきほど説明したように長く空室にして損失を増やすより、謝礼を払っても早く入居者を確保するために始めた割と新しい風習のようなものです。
※最後にひとこと
このようにどこの不動産会社にも絶対優先的に入居者を確保したいと思っている物件があり、そういう物件を積極的に薦めてくる会社もあります。しかしそれが決して悪い物件ということではありません。
逆の発想をすれば、謝礼を出す物件なんて入居者をそれだけ大事に考えている家主という見かたもできます。あくまでも自分が希望する物件とは程遠い物件を紹介された場合は、このようなカラクリや裏話がある!という参考程度に考えてください。営業マンも目先のお小遣い欲しさに後々クレームが頻発するような物件を故意に薦めてきたりは決してしませんので。