賃貸で集合住宅を借りる場合、建物の名前を見ると思います。「〇〇アパート」とアパートになっているものと、「××マンション」のようにマンションと名乗っているものがありますが、この違いは何なのでしょう?
なんだか、アパートと言われるよりマンションと言われたほうが高級感があっていい物件のような気もしますが、これはあっているのでしょうか?
まずは違いを知っておく
結論から言ってしまえば、法的、あるいは公式に「こういう建物がアパートでこういう建物はマンション」という違いはありません。大家さんが好きに名付けていいのです。
和製英語だと知っておく
アパートもマンションも、基本的には和製英語だと思っていいでしょう。アパートは英語のapartmentから来ていて、これは一般的に集合住宅の総称です。だからアパートメントだから安っぽいということは、たとえばアメリカではありません。
イギリスでは昔は一つの建物の中を仕切ってその中でそれぞれのスペースを借りて暮らす、日本で言うアパートもマンションもひっくるめてflatとよく言っていましたが、最近ではアメリカ風のapartmentという言い方が多くなっています。
ただ、イメージで言えば、flatよりapartmentのほうが設備も整っていて高級な感じはありますが、あくまでも感じです。apartmentもflatもよく知られた言葉なので、このどちらを使っても英語圏では大丈夫でしょう。
ただし、マンションはイギリス英語でもアメリカ英語でも全く日本と意味が違います。「マンションに住んでいる人」は映画スターや銀行のオーナーなど、大金持ちなセレブです。というのも、アメリカやイギリスで「マンション」とは、一戸建ての大邸宅のことだからです。
「ベッドルームは全部で32室あって、庭にはバラ園と噴水があるの」みたいなイメージですね。海外で「マンションに住んでいる」と言うと、とんでもない誤解を受けることがあるので注意しましょう。
ちなみにそれとは別にcondominium(コンドミニアム、通称コンド)もありますが、これは分譲マンションの概念に近いです。基本的に集合住宅ならapartmentと言っておけば間違いはないと思います。映画スターが住んでいるような豪華な部屋でも、apartmentはapartmentなので。
慣用的な違いはある
イギリスでflatとapartmentにイメージの違いがあるように、確かに日本にもマンションは鉄骨鉄筋コンクリート、あるいは鉄筋コンクリートの造りで比較的しっかりした建物で、アパートは木造モルタル二階建てでコンコンと階段の昇り降りをする住人の足音が響く、みたいなイメージは確かにあります。
そして、不動産広告もそれでマンションとアパートを分けているところが多いです。たとえば、社内的に2階建て以下の木造の物件はアパートで、3階建て以上はマンション、などです。
比較的外国人が多い青山あたりは、外国人の感覚に合わせてかなり豪華な物件でも「〇〇アパートメント」とついている建物が多いのですが、ここでは日本の一般的な感覚でいうところのマンションとアパートについて解説していきます。
ハイツやコーポって何?
ちなみに、「〇〇ハイツ」や「メゾン××」、ハイム、「△△荘」などもよく見るアパートやマンションの名称ですが、これも特に決まりはありません。ただ、流行りすたれのようなものはあり、最近では「~荘」というと、なんだか古い昭和の香りがするからとあまりつけられないかもしれません。
しかし、わざとレトロな感じを残しておしゃれにリノベーションをして、あえて「荘」とつけるようなケースもあり、これは大家さんのセンス次第でしょう。
アパートの特徴
一般的にアパートというと、二階建てで外階段、間取りも1DK程度で単身者向けの家賃が安い物件をイメージする人が多いと思いますが、住み心地はどうでしょうか?
単一オーナーの可能性が高い
アパートはマンションに比べて規模が小さいため、一棟まるまる一人の大家さんまたは会社が所有している単一オーナーである可能性が高いです。
アパートにどんな人を入居させるか、ペットはどうするか、小さい子どもや赤ちゃんがいる場合はどうか、外国人を入居させるかなどは大家の判断なので、他にどんな人が住んでいるのかは単一オーナーの場合、すべて把握しているので尋ねることができるのが最大の強みです。
たとえば、動物アレルギーがあってペットを飼っている人が同じ建物にいたら困るという場合、普通は大家さんがダメと言ったらまず飼えないので安心です。
家賃が安い場合が多い
アパートは鉄筋や鉄骨鉄筋のマンションに比べて、建築費が安くなります。また、階段も内階段よりは外階段のほうが安いです。建築費が安い分だけ、家賃が値ごろ感がある場合が多いと思います。
防音性は?
これまで鉄筋コンクリートの部屋にしか住んだことがない人なのであれば、最初はびっくりするくらい音が響くと感じるかもしれません。造りにもよりますが、赤ちゃんの夜泣きの声などは、よく聞こえることが多いです。
また、お手頃価格で学生が多かったら、深夜まで飲み会をしていたり、ギターを弾いたりする音が気になるかもしれません。
騒音に弱い人は、どんな人が入居しているのかリサーチしてから借りたほうがいいでしょう。部屋と部屋の境目が押入れになっていて、間に緩衝スペースがある物件とない物件でも全然違います。また、最近はしっかりとした防音材で処置をした物件も多いので、それも尋ねてみるといいですね。
マンションの特徴
鉄筋や鉄骨鉄筋造のマンションはアパートに比べて防音性が一般的に高く、ハイグレードな感じはします。
防音性、密閉性が高い
一般的に言えば防音性と密閉性はマンションに軍配が上がります。ただ、特に賃貸用に建てられた物件は、壁が薄く満足な防音性がなかったり、密閉性があるだけにカビが生えたりといったデメリットがある物件があることも覚えておいてください。
誰が住んでいるのかわからない
規模が大きく住民の数が大きいマンションでは、どんな人が住んでいるのか把握しづらいので、夜中にエレベーターで会ったときなど、ちょっと怖いことがあるかもしれません。
条件が物件によって違う
一口にマンションと言っても、工法や造りは物件によってまちまちです。一番しっかりしていると言われるのが、オーナーがそこに住むことを前提に買い、それを賃貸に回している分譲賃貸と言われる物件です。
自分が住むためのマンションなので設備も整っていることが多く、管理も資産価値を落とさないためにしっかりしているところが多いでしょう。
また、セキュリティも物件によってまちまちです。外部の人が勝手にいくらでも入れるような造りだったり、オートロックとは名ばかりで非常階段側はスカスカで侵入し放題ということだってあります。
投資物件と言われるワンルームなど比較的狭いマンションをオーナーが貸しに出している場合、収益を上げる目的で買ったのになかなか入居希望者が現れず、やむを得ずあまり好ましくないような人にも貸しているというケースがあるので、一度自分で行ってみて、共有部分が汚れているとか、ベランダがゴミ屋敷になっている部屋があるとか、共同ゴミ捨て場にルール違反のゴミが出されているなど、マンションが荒れていないかチェックをしにいくのもおすすめです。
モラルの低い人が住んでいると建物はどんどん荒れてくるので、そういった点は行ってみると感じることができるのではないかと思います。
マンションだからいい、アパートだから悪い、あるいはその逆と一概に言うことはできません。くれぐれも自分で足を運んでみましょう。写真や説明だけではわからないことがたくさんありますよ。