少し前までシェアハウスという言葉は日本ではあまりメジャーではありませんでしたが、ドラマの影響もあって今では暮らし方の一つの道としてすっかり認知されています。とは言え、興味はあっても実際にシェアハウスで生活をしたことがある人はまだそれほど多くないと思います。実際のところシェアハウスの住み心地はどうなのでしょうか。
シェアハウスとは
シェア(分ける)の名前の通り、一つの建物を数人で分けてシェアし、一種の共同生活をするのがシェアハウスです。一般のアパートやマンションはそれぞれの部屋に住所があり、郵便物は別に届きますが、シェアハウスの場合は同じ住所に複数の人間が住むことになります。
よくあるパターンが、それぞれがプライベートスペースとなる個室を持ち、リビングやキッチン、バス、トイレなどを共同で使うものです。共同で使う分だけ、当然のことながら家賃はワンルームマンションよりもお値打ちになります。もし、家賃の安さだけを求めるのであれば、ドミトリータイプと言われるシェアハウスがあります。
これは、それぞれが個室を持つことがなく、二人部屋や四人部屋などで寝室をシェアします。二段ベッドを入れていることが多いのですが、基本的に自分のプライベートスペースはベッドの上だけということになります。貴重品も鍵をかけたロッカーに入れられる程度しか持てません。
完全に一人になれる空間がほぼないという状況に耐えられない人にはおそらく無理だとは思いますが、家賃はその分ぐっと下がり、都心部でも3万円程度の部屋もあります。
気になるプライベートはあるの?
他人と一緒に暮らすわけですから、一人暮らしとはわけが違います。同居人の気配のようなものはどうしても感じながら生活をすることになります。しかし、多くの場合、個室は個別に施錠でき、一人になりたい時には部屋にこもれるので、プライベートは「ある」と考えても大丈夫でしょう。
ドミトリータイプの場合、二段ベッドの自分のベッドスペースの周りにカーテンができるようになっているところもありますが、その中のスペースをプライベート空間と考えるかどうかは、個人の感覚によるでしょう。学生時代に寮生活をしていた人ならこういった共同生活にもなじみやすいかもしれません。
ルームシェアとの違い
元々明確な違いがあるわけではないのですが、こと日本に限ってみれば、ルームシェアはそこに住む住人が自分の裁量と責任でルームメイトを選び、一緒に暮らします。もし、何かのもめごとが住人同士であったとしても、解決をするのは自分たちです。
また、普通は複数の人間が住むことになったとしても、大家との間に賃貸契約を結ぶのは一人です。だから急に入居者同士の仲が悪くなって出ていくことになったら、残ったほうはその人の分の家賃も負担するか、自分も出ていくかのチョイスを迫られることになるリスクがあります。
一方で、日本で言うシェアハウスは管理会社が運営しており、入居者はその管理会社と個別に賃貸契約を結ぶため、誰かが出て行ったからその分の家賃を他の住人が負担するというようなことはないと思っていいでしょう。
また、何かトラブルがあれば、管理会社に間に入ってもらうこともできますし、多くの場合管理人のような立場の住人がいるので、その人に頼ることもできます。
住んでいる人はどんな人が多い?
基本的にシェアハウスに住んでいるのは、若い人が多いです。というのも、どうしてもプライベート空間が狭いので、持ち物の量が制限されるため、実家が別にあってそこに不用品を置いておける人が多いからです。特にドミトリータイプなら、ある程度近場に実家があるか、出し入れ自由のトランクルームを借りるかしないときついかもしれません。
また、一般の賃貸住宅に比べて入居審査がゆるい傾向があるので、普通では部屋が借りにくい人も多いです。家賃の滞納歴があってブラックリストに入っている、外国人、初期費用が払えない、などですね。
シェアハウスのトラブルや注意点
シェアハウスの入居審査は一般の賃貸住宅よりもゆるく、また短期間での出入りもできるということになれば、当然身元の不確かな人も住むことも考えられます。ここの部屋は施錠できるとは言え、セキュリティという面では不安があることは否めません。
盗難など事件に巻き込まれる
パソコンやカメラなど高価なものや現金がなくなったらショックですよね。でも、そこまで大騒ぎはしなくても、後で食べようと思って冷蔵庫で冷やしておいたプリンとか、作り置きしておいたシチューを食べられてしまったというトラブルはかなり日常的に起きます。
冷蔵庫は共有なので、普段は他人のものを食べてはいけないという良心が働いても、酔っぱらっていて訳がわからないうちに食べてしまう人もいます。仕事から疲れて帰ってきて、夜食のシチューがなくなっているというのはかなりショックです。
生活スタイルが違う
さまざまな人が住むシェアハウスですから、生活時間帯もバラバラかもしれません。また、シェアハウスの中には友人の訪問を禁止しているところもありますが、ものともせずに恋人を泊めたりする人もいます。
ただでさえ朝の混み合う時間帯のシャワーやトイレの混雑がひどくなったり、夜中にパーティーされて家の中を汚されていらっとしたり、静かな生活を望む人には同居者次第で耐えられなくなるかもしれません。
恋愛問題は厄介になることも
赤の他人が一緒に暮らすわけですから、当然性格の合う合わないは出てきます。これが単に馬が合うとか合わないとかなのであれば、大人同士なのですからお互い顔を合わさないようにするという解決策もあります。しかし、恋愛が絡んでくるとそうも言っていられません。感情的になってしまう人もいるでしょうね。
賃貸契約期間について
現在日本では賃貸契約は2年ごとの更新が多いと思いますが、シェアハウスの場合はかなりバラエティに富んでいます。普通の賃貸住宅のように2年更新のところもあれば、1か月程度からという短期間OKというところもあります。
また、イレギュラーですが、大家の都合で期間限定でシェアハウスにしているため、どれだけ気に入っていても契約満了時には出ていかなければいけないこともあります。契約途中の退出の場合も含めて、入居前に必ず確認しましょう。
シェアハウスのメリットとデメリットまとめ
どんなものにもメリットとデメリットがありますが、シェアハウスの最大のメリットは家賃が安くなることでしょう。家具や家電Wi-Fi設備も最初からこみのところが多いので、初期費用はぐんと安くなります。また、一人暮らしは寂しいという人は、誰かの気配をいつも感じていられるのは心強いかもしれません。
その一方で、シェアハウスは一緒に暮らす人によって住み心地ががらりと変わります。あまりにも自分とかけ離れたタイプの人たちと一緒だと、ストレスになりますよね。
最近では、「アーティスト専用」や「楽器を弾く人専用」など、あらかじめ趣味を限定して入居者を募っているようなところも出てきたので、こういうところなら「お互いさま」の気持ちで気分よく暮らすことができるかもしれません。
一人では住めないような広々リビングの部屋にお手軽家賃で住めるなど、シェアハウスにはいい点もあります。しかし、あくまでも家は家、入れ物であって、そこに住む人の暮らしぶりが生活の快適さを決めます。
シェアハウスに住む場合は、家の造りはもちろんですが、一緒に住むのはどんな人たちか、どんな雰囲気で暮らしているのか、実際に見てから決めたほうが後悔することは少なくなると思います。