賃貸住宅を探していると、「リノベーション済」あるいは「リフォーム済」という文字をよく目にします。
「リノベーション」と「リフォーム」。
なんとなく語感は似ていますが、これは同じものの言い換えだと思っていいのでしょうか?
いえいえ、リノベーションとリフォームには考え方そのものに大きな違いがあります。どうせ借りるなら、自分にあった部屋を選びましょう。
リノベーションとリフォームの違い
賃貸住宅の場合、前の入居者が出た後、通常はそのまま次の入居者が入ることはありません。
狭い部屋の壁をぶち抜いて大きなワンルームにしたり、老朽化したバス、トイレをユニットバスに替えたりと、部屋の造作そのものに手を加えるのがリノベーションです。
一方のリフォームは、退去後に「部屋を清掃し、壊れているところや設備の不具合などを全て直してから、次の入居者が入ることになります。通常は壁紙やクッションフロアの貼り替え、畳の表替えなどを行いますが、これらの一連の作業はリフォームです。
つまり、リフォームは元々の状態に戻すことであり、ゼロだったものを1にする作業です。その一方でリノベーションは、大きく手を加えることによって1だったものを2や3へとグレードアップする作業と考えていいでしょう。
リノベーション物件の特徴
一時不動産投資信託が登場した時に、デベロッパーがこぞって都心の老朽化したオフィスビルを取得し、リノベーションして賃貸住宅にするのが流行しましたが、現在もリノベーション住宅は一定の人気を保っています。
古い
当たり前ですが、大家さん側も相当老朽化しなければリノベーションには踏み切りません。費用もそれなりにかかりますからね。だから「リノベーション済」と書いてあるマンションは、築年数はかなり経っていると見て間違いないです。
家賃が安い
家余りで家賃が全体的に下落傾向とは言え、下落しているのは郊外や周辺部で、都心の住宅は相変わらず人気で家賃もさほど下がってはいません。新築の賃貸住宅である程度手ごろな家賃を探そうと思うと、非常に狭かったり日当たりが悪かったりと、何らかの訳があって家賃が安くなっている部屋しかないことがほとんどです。
その点、リノベーション住宅は築年数は古くても中は現代風にアレンジされているため、生活空間としてはとても快適です。それなのに家賃は新築に比べればかなり安くなっているので、都心でそこそこ住み心地がいい部屋に住みたいけれども、お金にはそんなに余裕がないという人にはぴったりでしょう。
リノベーション物件のメリットデメリット
リノベーション物件はおしゃれというイメージが定着しています。新築のように真新しいというわけにはいきませんが、最新のセンスや技術が使われているため、快適な部屋にはなっていると思います。
リノベーション物件のメリット
まず、メリットは家賃の安さです。部屋のしつらえや広さの割にはお得な家賃で住めるはずです。また、リノベーションをするということは部屋の設備も刷新しているはずなので、かなり高い確率でエアコンなども新型モデルになっているでしょう。
また、どうしても新築の部屋だとどこも個性がなく、同じような造りが多くなってしまいますが、古い物件をリノベーションした場合、一部に昔のままのしつらえを残して逆に新築物件では望んでもみつからないような部屋もあります。
たとえば、バスルームに美しいタイル細工がある部屋もあります。また、窓ガラスがレトロガラスといって昭和初期のゆがみや気泡のあるガラスになっていて、そこから差し込む光のやさしさに一目ぼれしてその部屋に決めた人もいます。
古いからと言って最初から候補から外してしまうのはもったいないですね。
リノベーション物件のデメリット
家自体はピカピカにリノベーションされていたとしても、建物内部は変わっていません。たとえば、配管の傷み具合などは気になるところです。
また、耐震性も新しい建物に比べたら劣ることは否めないので、せめて後付けの耐震補強がされているかどうかは不動産屋に訊いてみる価値があると思います。最近は後付けの耐震補強の技術も日進月歩で進化しているため、とても頑丈にできる場合もあります。
そして、これが一番のポイントですが、大家がお金をかけてリノベーションするということは、そのままでは借り手が現れない、魅力のない部屋だったということです。
これが部屋が古臭いというだけなのであればリノベーションをすればそれですむことですが、大家さんが大金をかけてまで大規模なリノベーションをするような部屋は、立地や環境が少し訳アリかもしれません。
よくあるのが、エレベーターなしの建物の4階や5階というケースです。上階になれば日当たりや風通しが良くなることが多いのですが、その反面階段の昇り降りがきびしくなります。
部屋への出入りは一日に何度もありますよね?また、朝急いで下まで降りたところで忘れ物に気づいて部屋までまた駆け上がるのはなかなか悲しいものがあります。
中には例外的に心理的瑕疵物件があるかもしれません。
心理的瑕疵物件と言われてもピンとこないかもしれませんが、「事故物件」と言われればわかりますよね?
そこで自殺があったり、殺人など重大な事件や火災、あるいは孤独死をしてから何か月も発見されなかったなど、気にするタイプの人なら絶対に住みたくないような部屋の場合、大家さんが隣と壁をぶち抜いて一つの部屋にし、部屋番号も変えてしまうこともあります。
事故物件かどうかは不動産屋は訊かれたら正直に答える義務があるはずなので、気になるのなら訊いてみましょう。また、どうも不動産屋が信用できないと思ったら、近所に聞き込みしてみるのも手です。
リフォーム物件の特徴
リフォーム物件は、リノベーション物件に比べれば数は多いです。また、実際にはほとんど手を加えていなくても「リフォーム済」とうたっているようなケースもあります。
こんなところのリフォームが
まずリフォームで多いのが、壁紙やクッションフロアの貼り替えです。壁紙はどうしても住んでいると埃による黒ずみやたばこのヤニの黄ばみ汚れ、冷蔵庫の電気焼けなどのダメージを受けます。また、クッションフロアはどうしても家具を置いた場所のへこみが取れなくなります。
少し大がかりなリフォームは?
他にもキッチンのシンクやトイレの便座を洗浄便座にするケースもよくあります。やはり毎日必ず使う場所は新しいほうが嬉しいですよね。
リフォーム物件のメリットデメリット
リノベーションに比べればリフォームは費用も安く、一般的に行われるものなので、リノベーションほど特徴はありません。
リフォーム物件のメリット
清潔で一応気持ちよく新生活が始められるようになっています。もし、引っ越す前の段階でものが壊れていたり汚れを発見したら、絶対に報告しておきましょう。下手をするとその責任を負わされるかもしれません。
リフォーム物件のデメリット
特にデメリットはありませんが、一応引っ越す前、そして引っ越したらすぐに部屋の隅々まで掃除がてらチェックしましょう。たとえばリフォームが甘く、壁材にタバコのニオイが染み付いているのに壁紙しか貼り替えていないと、後からニオイが上がってくることもあります。
リフォームとリノベーション、言葉は似ていますが、似て非なるものです。多くの場合、「リフォーム済」の部屋を借りることになると思いますが、もし「リノベーション済」の物件をみつけたら、古いからと敬遠せずに見てみたら意外な掘り出し物に出会えるかもしれません。